Happy Halloween!
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その視線顔を上げると、そこには顎に手を当てナナシを見つめるギャルソンの姿があった。先ほどとは打って変わって、まるで品定めをするかのような、それでいて嬉しそうで意地悪そうな、紳士らしからぬ笑みでこちらを見つめているのだ。
「幽霊の言葉に恥らうシスター…なんとなく背徳的ですね」
「はい!?何言って…」
「ナナシさんはシチュエーションを考えるのがお上手で…これには私も大満足ですよ」
「何でご満悦なんですか」
「ここで大切なのはいかに脱がさず尚且つ辱(はずかし)めるか、それが問題ですね…」
「その発言が既に大問題ですよ!」
そんな厭らしい考えなど微塵もなかったナナシ。そう言われてしまうと自ら辱めをしているかのように思えてしまう。明らかにハロウィンの目的を逸脱した発言に、ナナシは身の危険を感じ始めるのだった。
「…あぁ!私としたことが言い忘れてましたよ!」
「今度は何ですか!?」
「今日はハロウィンです、お化けである私はお菓子をねだらなければ!丁度甘い香りもするようですし…ね?」
「…あ」
突如芝居掛かった声を上げ、ぽんっと手を叩くギャルソンに対し、急に口にしたお菓子の話題で身構えていた緊張を解くこととなったナナシ。
優しい笑顔に戻った彼に対し拍子抜けしてしまうのと同時に、濃い会話に思わず忘れていたのだが、今日の日のためにお菓子を焼いてきたのを思い出したのだ。
「そ…そうでした!実は今日クッキー焼いてきたんですよ、なのでよかったら…」
忘れていたとばかりに、店の全員に配ろうと思い持ってきたお菓子の袋に手をかけるナナシ。しかしその手はお菓子に届くことはなく、素早く伸びてきた白く冷たい手によって阻まれることとなってしまう。
驚き顔をあげれば、息がかかる距離まで近づいているギャルソンの顔。その目は真っ直ぐこちらに向かって伸びており、真っ黒い眼球の中に驚きの表情を浮かべる自分の顔が見える程であった。何故彼が手をつかんでいるのか、何かいけないことでもしただろうか、思考も追いつかないまま状況に困惑するも、そんなナナシの表情を楽しむかのようにギャルソンは微笑んだ。
相変わらず冷たいその手でナナシの手の甲をゆっくりと自分の口元に寄せ、そのまま見せ付けるように小さな音をたて口付けをする。驚きの声を上げる間も与えず、ナナシの腕を引っ張り抱き寄せると、耳元で囁くように呟いた。
「Trick or Treat. お菓子を下さらなくて結構なので、美味しい思いさせて下さい」
素早く、そして是非も無く。ナナシを取り込んで扉は音を立てて閉まる。
玄関の扉の前には、勢い余って落ちた袋と甘い香りだけが取り残されたのだった。
fin.
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