Happy Halloween!
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夕暮れ時の廃墟。普段は誰も寄り付かないこの建物では、住んでいるはずの無い支配人と来るはずの無い客が仲が良さそうに対談していた。
「とてもお似合いですよ、可愛いじゃないですか」
「そう、ですか?えへへ…ちょっと恥ずかしいですけどね」
タキシードを着ている男ギャルソン、そしてその目の前に居るのはナナシであるが、普段とは全く違った格好で若干の恥じらいを帯びながら笑っている。
「シスターですか、ナナシさんらしくていいですね。私はてっきりお化けの格好をしてくると思っていましたよ」
「…その、お化け系で仮装しようと思ってたんですけど…」
「…既に本物が居ると?」
「そうです…」
パーティーグッズであろうシスターの格好をしたナナシは、色々考えた末にこうなったと苦笑いを浮かべたのだった。何故こんな格好をしなければならなかったか、それは今日がハロウィンであること、そして今日は店でハロウィンを祝うので招待されたことに始まる。
話によれば、店に沢山のお化けが集まり朝になるまで騒ぐそうで、ナナシは普段から店の仲間と仲がいいため招待されたものの、沢山の幽霊やお化けの中に入るならばそれなりの格好をしなければ浮くのでは?とのことで、当日までに何か仮装をしてくるよう言われていたのだ。定番の魔女や妖精の格好を思い浮かべたが、既に招待されているという驚愕の事実に悩んだ挙句、多分居ないであろうシスターという格好に落ち着いたのだった。
「あれ…そういえば何だか静かですね?皆さん居ないんですか?」
「ん、ああ。それがですね」
そんなナナシの苦労もさておき、沢山のお化けが集うはずの店内はいつも以上に静まりかえっており、苦笑いするギャルソンに首を傾げるのだった。
「その、今日はハロウィンで仮装して歩く人が多いわけじゃないですか。朱に交われば何とやらで…」
「…え、まさか」
「…お菓子一つにここまで行動力があるなんてね。普段からこれくらい動いて欲しいものですけど」
百鬼夜行という言葉がナナシの脳裏に浮かび上がり、嬉しそうにお菓子を貰うメンバーと不思議そうにお菓子を渡す人々を思い浮かべては同じく苦笑いを浮かべた。
ギャルソン曰く、従業員全員が今日ならば普段の姿で出歩いても平気な上にお菓子まで貰えるので町内を一周しているらしい。特にお菊ちゃんや化け猫は甘いものが好きなため、ナナシの到着を待つより先に飛び出していったという。
「ど、どこまでもアクティブですね…。でも、ギャルソンさんは行かなかったんですか?」
「そりゃあ誰かさんをお待たせする訳にはいきませんから、お菓子なんかよりずっと楽しみにしてました」
「あ、ありがとうございます…」
「…ふむ」
面と向かってこの台詞を笑顔で言い切るのは彼くらいであろう。
一人店で待っていてくれたギャルソンに嬉しさが込み上げ、顔を伏せながら照れていたのだが、ややあって妙な視線に気付くのだった。
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