雨四光
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弾丸のような雨粒に、蒼い閃光。
静かにたたずむ廃墟の中で、鈍く轟音が響いていた。
「水も滴るなんとやら」
「…雨が降るなんて聞いてませんでした」
廃墟には居るはずのない人影が二つ。真っ黒なタキシードに身を包んだ男、そして頭の先からつま先まで水が滴るほど濡れている少女。
「突然降ってきましたね。夕立でしょう」
「すみません…床を濡らしてしまって」
「いいんですよ。今拭くものをお持ちしますから、奥で待ってて下さい」
轟音の響く中、奥の部屋に通される。部屋は時折青く光り、物音一つしない古ぼけた部屋に更なる不気味さを醸し出していた。もっとも、この少女にはそんな不気味さは通用せず、むしろ居心地のよささえ感じさせている。
「ナナシさん」
「…あ、すみません。何から何まで」
「乾かしましょう」
物音一つ立てずに部屋に入ってきた男は、持っていたタオルを椅子の背にかけ、少女の目の前に立ちはだかった。
ゆっくりと品定めするかのように視線を這わせ、薄っすらと浮かび上がっている青白い顔に笑みを浮かべると、少女の髪をそっと手に取り顔を近づけると何のためらいもなく口に含んだ。
「まずは髪から」
少女の髪から滴る雫を嬉しそうに吸い上げた。一瞬何をされたか分からなかった少女だったが、事を理解すると驚いて一歩後ろへと下がる。それを逃がすまいと男は手を伸ばし、少女の両肩を掴んでは思い切り自分の方へと抱き寄せ、そして耳元で囁いた。
「次は肌ですね」
ぬるりと柔らかい何かが首筋を這う感覚に、少女は短い悲鳴と背中がぞくりとする感覚に目を見開いた。
男の舌が濡れた少女の首筋を丹念に舐め挙げていき、ゆっくりと少女の耳をなぞる。
.
外の雨音とは違う水音が少女の耳に響き、恥ずかしい声が出そうになって身をよじって男から離れようとするが、頭を抑えられ更に深く攻め立てられてしまう。
押し返そうとする手も手の甲から始まり指先まで唇を這わせる男に、抵抗しても無駄なのだと悟った少女は目を瞑って力を抜いた。
観念したらしい少女を見て微笑を浮かべた男はそのまま下へ下へと口を這わせ、鎖骨の辺りまで行くと飽き足りないのか吸い付くように甘噛みをしていく。男が与えるこそばゆくもどかしい感覚に、次第に腰の力が抜けていく妙な気分が少女を襲った。
「っ…ギャルソンさん…」
「忘れてました、脱がないと風邪引いてしまいますね」
「ん…」
白いブラウスのボタンに、男の青白い手が伸びた。
その時だった。
がらがらがら!
「「!」」
耳を衝く爆発音にも似たその音が部屋中に響いた。
気付けば音に驚いた少女が男の頭を抱き抑え、破裂しそうな心臓の鼓動が自分の耳にまで届くほど動揺していた。
「…近くに落ちたみたいですね」
「あ」
呆然としていた少女だったが、胸から聞こえてくるくぐもった声で我に返り、その手を話した。
「ご、ごめんなさい…!驚いちゃって…」
「いえいえ、息しなくても平気ですからお気遣いなく」
「あはは…。でも今の雷、聞いたことないくらい大きかったですね…」
「ええ、私も驚くくらいでしたね」
「でしたね」
「ですね」
その音は二人を驚かせただけでなく、冷静の淵に二人を立たせたのだ。
じんじんと火照る顔、そして先ほどまでの行為を思い返し、少女は節目がちに視線を泳がせた。
「…雷、収まってからにしましょうか」
「…はい」
大きめのタオルを頭から被せられると、そう小さく頷いた。
雨音は止みつつある。
fin.
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