約束守り
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何かを決心したかのように言い放った。
「ちょっと用事を思い出しました」
それはいつもの様に店の奥の部屋でひっそりと二人きりの時を満喫していた時の事。
何かを思い出したかのように手をぽんっと叩き、用があると言って席を立つギャルソン。いつもは締め切ってある扉の方へと歩き、ポケットから小さな鍵を取り出して回した。古い鍵穴なのか重々しくがちゃりと音が鳴った。
鍵の開いた扉に手をかけつつ、ゆっくりとナナシの方へと振り返ると、含みのある笑みでにっこりと笑いかけては一言ナナシに言うのだった。
「ナナシさん」
「はい」
「決して覗いてはいけませんからね」
「え?」
どこかで聞いた昔話が頭を過ぎったナナシだったが、ギャルソンの言葉を聞き見られたくないものでもあるのかと、まだ見ぬ扉の向こうへの興味が沸きあがっていった。
「…いいですね?」
「は、はい…絶対しません!」
「ふふ…お願いしますね、ぜぇったい覗いちゃダメですからね」
本当に開けて欲しくなければもっと真顔で言うだろうに。
にやにやと嬉しそうに扉の奥に消え行くギャルソンを見送りながらそう思ったナナシだったが、ギャルソンとの約束の為に決して開けまいと固く心に誓ったのだった。
しばらくはお茶を飲みつつ一人で居たものの、時計を見れば既に20分は経過している。約束の為覗く事は出来ないが、こうも待たされると手持ち無沙汰とでもいうのか、段々と奥の部屋でギャルソンが何をしているのか気になり始めていた。
「…あら?」
そんな事を考えつつ扉に目をやると、本当ににわずかだが扉が開いているではないか。妙なタイミングの良さと誘惑しているかのような開き具合にナナシは気付いてはいないようだったが、それを見つけると席を立ち扉に手を掛けた。
そして
「見ちゃ大変ですし閉めなきゃ」
「ちょ」
しかしそこは根が真面目なナナシ。たとえ不意に扉が開いたとしても、約束の為に覗かないいい子なのだ。
ぱたん、といい音を立てて再び閉まった扉。一瞬声が聞こえた気もするが、ナナシは空耳だと判断し再び席へと戻ったのだった。
そうしてまたしばらくすると、今度は扉の向こうから何やら声が聞こえてくるではないか。
何事かと思いつつ耳を澄ますと、それはよく聞き慣れた声でこちらに聞こえるくらい大きな声を出しながら何かをしている様だった。
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