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「うお…」
「…」
久しぶりにびっくりしたときの声が出た。
ニット帽とマフラーの間から出ているその目を見つめるとお互いに数秒間強直状態が続き、ややあって防寒具を着た何かは足をひるがえし脱走を試みるが、ギャルソンはそれを許さずにすかさずマフラーを引っ張り脱走を阻止するのだった。
「待たんかい」
「ぐえ、ごめんなさごめんなさいごめんなさい!」
何故だか防寒具を着た何かは必死にギャルソンに謝り始めるのだ。マフラーをつけているためか篭った声に聞こえるが、確かに聞き覚えがありその声にギャルソンは目を見開いた。
「ナナシ、さん…?もう治ったんですか?」
「ね、熱下がってからじゃないと入れないから…その…」
しどろもどろなその口調に、次第に嫌な予感が頭を過ぎる。
「…まさかずっと立ってたんですか」
「…実は来ちゃ駄目って言われた次の日から通ってました」
「はぁ…」
「だ、だって怒られると思って」
盛大な溜め息をつくと、防寒具を着た何かはニット帽とマフラーを外してその顔を見せた。やはりそれはナナシ。赤い鼻先はまだ体調が整っていないことを意味しており、困った表情でギャルソンの顔色を伺っていた。
そんなナナシの顔を見て何か言おうとしていたギャルソンだったが、眉間に皺を寄せてはただ黙ってその顔を見つめていた。
「…やっぱり、怒りました?」
「…」
「ごめんなさい…ちゃんとお家で寝ます」
そんな表情のギャルソンを見て、ナナシはすっかり反省したのかマフラーを付け直して背を向けた。
一歩踏み出そうと足を前に出したが、それは首にかかる圧力によって制止するしかなくなる。
「ぐえっ、も、もう引っ張らないでくだ」
「…遅いじゃないですか、酷いですよ」
「え…そ、その…」
一歩を制止せざるをえなかったが、それと同時に言葉もとめるしかなかった。
それはマフラーは思いっきり引っ張られ、ナナシはいつの間にか抱きしめられていたからで、痛いほどの抱擁がナナシの体を締め付け熱で軋む身体に応えたが、ギャルソンのいつもとは違う様子に静かに身を委ねるのだった。
「…もう、いいですから。いかがでした?私の居ない生活は」
「そりゃ…扉の前で立ち尽くすくらいですよ?すごく寂しかったです…」
「…んふふ、ナナシさんは変な所で約束に忠実ですよね」
「変って酷いですよ!私は真剣です!ここ数日ずっと熱を出しながらも会いたいが為にどれだけ…」
「はいはい、それはいつもの部屋で聞きますから」
そう言うギャルソンはとても嬉しそうで、一歩踏み入れた店はとても温かく感じられた。
fin.
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