人生は白竜ゲー。
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シオンの手を引いて2階の廊下に出た。シーンと静まり返っている。階段のところの化け物以外誰もいない。
「今のうちに・・・」
「あ、分かれ道」
「どっちに行きたい?」
「・・・左へ」
「よし」
左へ続く廊下を歩いて、とある部屋に辿り着いた。来客室のようだ。二人がけソファと一人用ソファ、ローテーブルが置かれている。隣にもドアがあるので入ってみる。こっちは来客用の寝室か。キングサイズのベッドとドレッサーがある。
「ねぇ白竜くん。ちょっと休憩しない?」
「そうだな。少しだけ休むか」
そう言いながら彼女をベッドに座らせて抱き寄せる。柔らかくて良い匂いがする。
「ちょっと!?恥ずかしいよ!」
「別にいいだろう」
シオンが照れている。こんな状況だというのに随分と余裕のある奴だな、俺は。
「もう、こんな時に・・・」
我慢できず、俺はシオンの唇を奪った。
「んむっ・・・!」
驚いて目を丸くしている彼女を見て満足する。そのまま舌を入れようとしたところで突き飛ばされた。残念。
「ぷはっ!いきなり何するの!?」
「キスぐらいでうるさい。俺達は付き合っているんだぞ」
「そ、そうだけど・・・」
「続きは家に帰ってからだ」
「・・・帰りたい」
「あぁ、絶対に帰ろう。二人で」
そう言うとシオンはまた顔を赤く染めて黙り込んでしまった。やっぱり初心だな。シオンが落ち着いたところで部屋の探索に入る。ドレッサーの椅子にぬいぐるみがちょこんと座っていた。青色のピエロみたいだな。ベッド脇にも色違いのぬいぐるみが置いてある。
「なにかヒントになるんじゃないかな。例えば・・・こんな感じで」
シオンがベッド脇のぬいぐるみを持ってきて、ドレッサーのぬいぐるみにキスをさせるように頭をくっつけた。・・・何も起こる気配はない。
「はは、そうだよね・・・」
彼女が苦笑いを零した、その時。また何かを引き摺る音が近づいてきた。二人して固まる。まさかこんなに早く来るとは思わなかった。シオンと顔を見合わせる。俺は頷き、彼女の肩を抱いてベッドの陰て息を潜める。しかし、そう甘くはないようだ。
「隠れているのは分かっているのよ!出てらっしゃい!」
セシリア!?まだ息があったのか!またシオンが乗っ取られるんじゃないのか?それだけは避けたい!焦っている間にセシリアが部屋に入ってきた。だがその姿を見て驚愕する。左半身が無い!左腕は肘から下が欠損し左脚も太股から先が無い。頭も半分ないし左手を右手で押さえている。その声はとても艶っぽく妖しい雰囲気を纏っていた。まるで娼婦のようだ。
「また会ったわね?可愛いお嬢さんがた」
「っ・・・」
彼女はこちらを見るとニタリと笑みを浮かべて言った。シオンが声にならない悲鳴を上げる。無理もない。片方が欠損した状態の人間は初めて見た。それに彼女は美しい容姿をしている分、余計に恐ろしく見えるのだろう。俺はシオンを後に隠しながらセシリアに話しかける。
「何の用だ」
「決まってるじゃない。アナタたちの肉を喰らいに来たの」
「白竜くん・・・」
「大丈夫だ。そこを動くなよ」
「そうじゃない。私にやらせて」
「おい!危険だぞ!」
「私を信じて、お願い」
そう言うと、彼女が俺の前に出てくる。何をする気だ?俺が戸惑っているうちにセシリアがシオンに近付いた。その表情は恍惚としている。
「さぁいらっしゃい・・・痛くしないから・・・」
「・・・・・・」
シオンは何も答えない。ただ黙ってセシリアを見つめていた。そして、
「私だってサッカー部の一員だ!」
彼女が叫ぶと、全身が白い光に包まれて、白黒のシャチが姿を現した。あれはシオンのソウル!初めて見た!彼女は潜って姿を消すと、激しい動きでセシリアを翻弄する。
「小細工を!」
アイツは焦っている。潜ってしまえばどこにいるか分からないからな。するとセシリアの真後ろから、シオンが急襲した!
「はぁぁっ!!」
このソウルはドリブルタイプのものだと聞いている。しかしシオンは容赦なくセシリアに噛みつく。その衝撃でセシリアの胴体が真っ二つに裂けた。
「ううぁぁぁあああっ!?」
セシリアが断末魔を上げる。それと同時に彼女の身体はボロボロと朽ちていった。そして塵となって消えてしまった。あっさりだ。
「白竜くん!今度こそやったよ!」
戻ってきたシオンは得意げな表情でVサインを作る。
「すごいなシオン」
「へへっ。白竜くんを傷つけられて、黙ってられなくなったの」
少し偉そうに胸を張るので微笑ましく思う。そんな彼女に笑みをこぼしながらも先に進もうと提案する。シオンもそれに賛成してくれた。来客室から出てさらに奥へ進む。
「また鍵がかかってる」
「3の鍵か?」
「やってみよう」
ドアノブの鍵穴に鍵を差し込んで回す。カチャッという金属音が鳴って鍵が開いて、また階段が現れた。3階へ行けそうだが、真っ暗だ。
「スマホはあるか?」
「うん、持ってる」
「それのライトで照らす。心許ないが、無いよりは良いだろう」
「バッテリー切らさないようにね」
「言われなくても」
スマホのライトを点灯させ、シオンを腕に捕まらせて歩きだす。長い間使われていないのか、階段の手すりの塗装が剥げかけている。ギシリギシリと足元が軋んだ。一番上の段りきり、ドアノブに手をかける。ゆっくりと扉を開けると光が漏れた。
「ここは・・・」
そこはどうやら剥製の部屋のようだ。床には大型ネコ科動物の剥製絨毯が2つ並んでいる。さらにヒョウ柄のソファもある。何やら宝箱もある。この中にヒントがあるかもしれない。
「ひぇ・・・」
シオンが情けない声を漏らした。確かに気持ち悪いが怯むな!勇気を出して宝箱の方へ向かう。その中に入っていたのは銀色の鍵だ。これで4つ目だな。
「他に何かあるか見てみよう」
「うん。じゃあ・・・」
「グルルル・・・」
「「え」」
うなり声が背後から聞こえた。突然、ガタガタッと音を立てて棚に飾られた虎の剥製が動き出した!慌てて距離を取る。そしてこちらを威嚇するように低い唸り声を上げた。
「うわぁ!剥製が動いてる!」
シオンが叫ぶ。虎がこちらに向かってきた。それを避ける。そして背後に回り込んで蹴りを放った。だが虎はひらりと身をかわす。反撃として爪を振るってきたがこれも避けることができた。その後も攻防を繰り広げるがなかなか決め手に欠ける。彼女を守りながらではいずれやられてしまう。どうしたら良いのか考えている時だった。
「白竜くん!私があいつの注意を逸らすからその隙にお願い!」
「・・・シオン!」
覚悟を決めるしかないか。だがシオンを守ることが最優先だ。そのためならどんな犠牲も厭わない。シオンが再び前に立って叫ぶ。
「こっちだよー!」
すると虎が彼女の言葉に反応した。シオンの声に導かれるようにこちらにやってくる。そしてシオンに襲いかかろうとした時だ。
「白竜くん!」
その合図で俺は素早く虎の横腹に蹴りを叩き込む。硬い毛皮とぶ厚い肉に阻まれて思った程のダメージを与えられなかった。虎は怒り狂ったように雄叫びを上げながら突進してきた。
「しまった!」
俺は咄嵯に回避しようとするが間に合わないと思った瞬間、
「えいっ!」
という掛け声と共にシオンが飛びだしてきた。彼女は虎に思い切り体当たり。虎は悲鳴を上げて床に倒れ込む。その隙を逃すまいと俺は渾身の一撃をお見舞いした。それを受けた虎はピクリともしなくなり動かなくなる。
「やった!」
「お前、危ないことするな」
安堵して互いにハイタッチ。しかし油断は禁物だ。他の敵が来る可能性もある。早く次の場所へ行かないと・・・
『うぅ・・・!』
この声まさか!?見ると、倒したはずの虎の剥製がゆらりと身体を起こしたではないか。その目は真っ赤に染まっている。
『よくもワタクシの邪魔をしてくれたわね』
「貴様!まだ生きていたのか!」
なんとセシリアだ!コイツまだ諦めていなかったのか!
『ワタクシは宿る肉体さえあれば何度でも蘇る・・・お前達だけは絶対に許さない・・・!必ず喰ってやる・・・!』
「白竜くん、逃げよう!」
「あぁ!」
俺達は剥製部屋から廊下へ逃げ出し、そのまま突き当たりの扉へ。そこはバルコニーだった。星空が見渡せる。高いが、ここから脱出できるかもしれない!
「シオン!」
「た、高い・・・」
「行けるか?」
下を見て怖じ気づく彼女に問いかける。シオンが首を縦に振った。それを確認すると俺はシオンをお横抱きする。そして、思いっきり飛び降りた。フワリと浮遊感を感じたのも束の間のこと。重力によって落下していく感覚に襲われる。
「きゃあああっ!!」
「くっ!」
衝撃に備えて歯を食いしばる。だが予想していたような痛みはなかった。ガサガサッと草の中に飛び込んだような音がして、何かに身体が引っかかって止まった。恐る恐る目を開けてみると俺達は木に引っかかっていた。
「怪我はないか?」
「うん、なんとか」
「そうか、よかった・・・」
お互いの無事を確認して、木から降りた。しかし。視界の端に見覚えのあるドアが飛び込んできた。思わず見渡す。近くには噴水。やけに整理された芝生・・・俺は、判断を誤った。
「ここは・・・屋敷の裏庭だ」
「えっ嘘、私達出られたんじゃ!?」
「すまない、俺のミスだ・・・完全に外だと思い込んでいた」
「ううん。私が早く逃げようって言ったせいだし・・・ごめん」
「謝るな」
自分を責めて泣きそうになっているシオンを抱きしめる。彼女を傷付けたくなかった。シオンが落ち着いたのを確認して屋敷に入る。彼女の手を引いて最初のエントランスを目指して走り出した。
「・・・!まって、白竜くん」
「?」
「あの突き当たり・・・気にならない?」
「あれか?」
エントランスから出て右の突き当たりのドア。シオンはあれが気になるようだ。確かにそこは見ていなかったので調べてみることにした。やっぱり開かない。
「となると、4の鍵で・・・」
鍵穴に鍵を差し込んで回すとやはり開いた。今度は地下へ繋がる階段が現れた。
「地下だ!もしかしたら出られるかもしれないぞ!」
「よし、行こう!」
用心しながら進んでいく。2つの扉が見えてきたのでどちらに行くか相談する。
「ここは白竜くんが決めて?」
「・・・なら左だ」
左の扉を開ける。倉庫のような部屋で、埃の匂いがツンと鼻にくる。しかしモタモタしていられないので一気に突破する。もう手がかりも何もないが、脱出するためだ。仕方が無い。出口の扉を見つけ、迷わずドアを開けると真っ暗な地下通路であった。しかも長い!スマホのライトを点けて照らす。そしてその先にまたドアを見つけた。
「ここか!」
「よしっ!」
二人揃って駆け出す。そしてその扉を開けると・・・祭壇が目の前に飛び込んできた。目の前には背の高い男が佇んでいる。彼は振り返り、こちらを見据えた。
「よく来たな・・・君たちが今回の生贄か」
「生贄!?」
「どういうことだ!?」
すると男は不敵な笑みを浮かべた。
「教えてやろう。私の名はアルバート」
アルバートは一歩踏み出す。そして語り始めた。
「まず初めに。私がこの屋敷の主だ。そして屋敷内を彷徨う怪異の親玉と言ってもいい」
「怪異・・・あの変な化け物たち!?」
「そうだ」
アルバートは再び口角を上げる。
「あの者は私の信者だった者達だ」
「信者・・・だと?」
「何かの宗教の教祖ってこと?」
「そうだ。君達を付け狙っていたセシリアは、私の妻にして信者第一号だった。」
アルバートは人間を喰らうことで魂が浄化されて救われる、という思想の宗教を興して信者を屋敷に集めて活動していた。その最初の信者がセシリアだというわけだ。彼女は随分アルバートに陶酔しているようだが。
「あぁ・・・アルバート様!このセシリア、貴方様のために新鮮な獲物をご用意致しましたの!」
「セシリアか・・・ご苦労。だが私は子供の肉は喰わない。それはお前が喰うといい」
「まぁ素敵!流石ですわアルバート様!では遠慮なく頂戴致しますわ!」
セシリアは俺達の方を向き直ってニヤリと嗤う。その顔は恐怖そのものであった。するとシオンが俺の服の裾を掴んできた。震えているのが伝わってくる。
「大丈夫だ。俺がいる限り絶対守り抜く」
「白竜くん・・・」
「それに、こんな所で死ぬ訳にはいかない」
シオンの手を握り返す。そして正面に向き直り構えた。アルバートが不愉快そうな顔をして眉間に皺を寄せる。
「やれやれ・・・勇敢だな」
その刹那。セシリアが飛びかかってきた。それをなんとか避けると彼女は壁に激突する。
「うっ・・・おのれぇ・・・!!」
起き上がって再び襲いかかる。シオンが叫んだ。その声に反応してセシリアが俺達の方を向く。シオンが危ない!
「シオン!」
咄嵯に彼女を抱きしめる。しかし代わりにセシリアの爪を背中に受けてしまう。
「白竜くん!」
セシリアに掴まれてそのまま押し倒された。シオンが駆け寄ってくる。それを見てセシリアは勝ち誇るように嗤った。
「あはははははははは!!ようやく大人しくなったか!さぁ今すぐ喰ってやる!覚悟なさい!」
やはり、いくら究極でも所詮は人間。あんな化け物に敵う筈がないのだ。だが・・・死ぬならコイツと・・・シオンと一緒がいい。俺はまた死を覚悟した。そして目を瞑る・・・はずだった。
「やめろおおおおおっ!」
誰か大声で叫んだかと思うとシオンがセシリアに向かっていった。その瞳からは涙が流れ落ちていた。
「絶対に助ける!」
すると彼女の背中から黒いオーラが形成され、ヒトの形になった。まさか、あれは。
「化身・・・!?」
そんな馬鹿な。シオンは化身使いではなかった筈だ。絶望的状況から生き延びるための本能で、今まで出せなかった化身を出したというのか!?シオンはそのままセシリアと対峙する。セシリアは余裕綽々と言った感じで彼女を見下ろした。
「ふん・・・それがどうしたと言うの?ワタクシに敵うと思っているのかしら?」
セシリアは余裕の笑みを浮かべる。しかしシオンは真剣な眼差しで彼女を見る。
「私は負けない!」
「生意気な・・・!」
シオンとセシリアの戦いが始まった。セシリアが攻撃してくる。だがシオンはそれを避ける。そして反撃に出た。シオンの化身がパンチを繰り出すがそれをかわされる。シオンは悔しそうな顔を浮かべる。
「どうしたの?そんなものなの?」
「まだだ・・・!」
シオンが化身で殴りかかる。しかしそれも簡単に躱されてしまった。
「弱い・・・弱すぎる!」
「それでも諦めない!」
シオンはまた立ち上がりセシリアに向かっていった。
「諦めの悪い小娘ね!」
シオンはまた躱される。それを見たセシリアは高笑いをあげた。そしてそのままシオンに襲いかかってくる。しかしその攻撃をすり抜けて懐に入った。
「はぁぁぁぁ!!」
「ぎゃああああっ」
化身の一撃が入ったのだ。そしてそのまま連続でパンチを繰り出す。
「ぐぁぁぁ!!」
セシリアは大きく吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。シオンは勝利を確信したのか嬉しそうに拳を突き上げた。そして俺の方を振り返る。
「白竜くん!勝ったよ!」
まだ油断は出来ない。親玉がまだ残っているからな。俺は立ち上がってシオンの隣へ行く。
「次は貴様だ。覚悟しろ」
「・・・君達は面白い。殺すのは惜しいな」
アルバートがゆっくりと近付いてくる。その顔は愉悦に浸っていた。奴の手には剣が握られている。その刃先がこちらに向けられた瞬間、悪寒がした。殺される・・・いや死ぬものか。シオンとの約束を果たすまでは。絶対に生き延びてみせる・・・!
「俺は絶対に負けない!」
俺の意志に呼応するように身体の奥底からエネルギーが湧き上がってくる。そしてその力を解放した。
「うぉぉっ!!」
見るが良い、これが究極の化身!
「聖獣シャイニングドラゴン!」
「・・・なるほど」
なにか蹴るものは無いか。それさえあればシュートで一網打尽に出来るのだが・・・あった!石ころ!これさえあれば。俺は小石をリフティングして大きく振りかぶる。
「ホワイトブレス!」
聖獣シャイニングドラゴンがブレスを吐く。それを喰らったアルバートは膝を着いた。
「人間のくせにここまでやるとはな・・・」
アルバートが呻き声を上げながら苦悶の表情を浮かべる。どうやら相当苦しんでいるようだ。
「終わりだ!」
そう言って更に追い討ちをかけようと二度目のホワイトブレスを打つ。しかし。
「なっ!?」
何かががアルバートを庇うように立ちはだかった。セシリアだった。彼女はそのまま俺達に背中を向けてアルバートを攻撃から守っている。
「セシリア、お前・・・」
「ワタクシは貴方様の愛のために生きましたわ。この世界に絶望し、その絶望を生み出す人間を喰らうことで、救われようとする貴方様を・・・心から愛しておりました。例えこの命尽きようとも貴方様のお側にいられますようにと願い続けましたのよ。そして今こうして貴方様の盾となれることがワタクシにとって至上の喜びなのですわ。ですからどうか安心して下さいませアルバート様・・・貴方様の為ならばワタクシは何度でも甦って見せますわ」
そしてセシリアは振り返る。その姿はとても美しかった。まるで女神のようだった。そしてその両手を大きく広げる。
「さぁ!最後の晩餐ですわアルバート様!存分にお楽しみ下さいませ!!」
「セシリア・・・!」
そして彼女の身体が眩い光を放ち始める。俺達は咄嗟に目を瞑った。暫くすると光が収まっていった。そしてそこにはアルバートだけが残されていた。彼は悲痛な表情をしている。シオンが不安そうに呟いた。
「彼女は一体・・・」
「セシリアは私を慕い、寄り添ってくれた女性だ。信者の中でも彼女が最も私に忠実だった・・・だから私も彼女に惹かれたのかも知れないな」
アルバートは自嘲気味に笑った。そして続けた。
「だが、やはり人間の肉では満たされぬ。私はこれからもずっと孤独なままなのだ」
孤独・・・か。人間を喰らい続け、そのせいで彼の傍には誰もいなくなったのだろう。だが俺は自業自得だと思っている。もし仮に奴が改心したとしても、喰らった人々の家族の恨みが晴れるわけではないからだ。それに、俺だってシオンや仲間以外の人間を信じたりしない。いや・・・シオン以外は必要ない。
「もう終わりにしよう?アルバートさん。こんなことをしても誰も救ってはくれないよ」
「あぁそうだな・・・終わりにしよう」
アルバートは祭壇に置かれた燭台に手をかけたかと思うと、そのまま祭壇に引火させたのだ。炎はみるみるうちに大きくなっていく。
「おい何をするつもりだ!?」
「終わりにしようと言ったのは君達だ。私の絶望は海より深い・・・」
「あ、熱い・・・!」
「急いで脱出だ!」
燃える地下通路を必死で走る。途中で瓦礫が崩れてくるのをなんとか避けながらエントランスへ向かう。そして玄関の扉が見えた。
「そのドアは開かないよ!」
「開かないんじゃない!蹴破るんだ!」
いつの間にか屋敷全体に火が回っている。こんな短時間で炎に包まれるのはおかしいが、今は脱出することが先決だ。俺はそのままドアノブに手をかける。案の定ビクともしなかった。やはりここからは脱出できないようになっているのか?
だったら壊すしかないだろう。幸いにもこの扉は木製だ。なら俺とシオンの脚力ならどうにかなりそうだ。深呼吸をする。
「いくぞ!」
「まかせて!」
二人で勢いをつけて回し蹴りを放った。すると扉が派手な音を立てて砕け散る。その衝撃で少しバランスを崩してしまう。しかしすぐに立て直した。
「上手くいった!」
「白竜くんも一緒に!」
「ああ!」
俺達は出口を目指して走り続けた。そして漸く外へ出ることができた。
「やっと出られた・・・!」
シオンが息切れしている。体力が限界を迎えているのだろうが、無理もない。俺も実は結構限界だったりする。だが今は早くここから離れなければ。俺はバテたシオンをお姫様抱っこで持ち上げて走り出した。背後では屋敷が激しく燃えている。
「すごい燃え方だ、ここにいても熱を感じる」
「早く安全なところに行かないと!」
俺達は安全な場所を探して走り続ける。しばらくすると消防車のサイレンが聞こえてきた。どうやら近いようだ。そして道路に出ると多くのパトカーと消防隊員が待機していた。
「あそこの建物です」
「ありがとうございます!」
どうやら通報してくれた人がいたようだ。俺はその人に感謝してシオンを抱えたまま走り去っていく。シオンは疲れてしまったようで気絶した。その後俺達は警察署へ連れていかれ事情聴取を受けることとなったのだった・・・
数日後、俺とシオンは学校で会話を交わしていた。話題はもちろんあの屋敷の事だ。あれから捜査が入り屋敷からは大量の骨が発見されたとのことだ。中には若い女性のものもあり、恐らくそれはセシリアと思われるものが混ざっているだろうという話だ。
「え・・・私、化身出したの?」
「あぁ。覚えてないのか?」
「あの時はセシリアを倒すことに集中してて・・・」
「そんなことあるのか」
「ちなみに、どんな化身だった?」
「何重にもヴェールを纏った花嫁に見えたぞ。あるいは幽霊か」
「幽霊て・・・」
「俺には結構強そうに見えたがな」
「ほんとに?」
照れくさそうに笑う彼女に俺の胸が締め付けられる。やはり可愛いなと思うと同時に不安になる。この幸せがいつまで続くのかわからないからだ。
「あの夜はありがとう」
「・・・別に礼を言われることはしていない」
「ううん。私一人じゃ死んでたかもしれないし・・・本当に感謝してるんだよ」
そう言って微笑む彼女に俺は胸が高鳴るのを感じた。
「生きてて良かった」
「あぁ」
俺はそう言いながら彼女の頭を撫でる。そしてそのままキスをした。軽く触れるだけの優しいキスだ。
「シオン・・・」
「ん・・・」
俺達は互いの存在を確かめ合うように強く抱きしめた。
おしまい