人生は白竜ゲー。
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こんにちは!私はシオン!雷門中サッカー部の女子生徒で一年生。ポジションはDFです。こっちが同じくサッカー部のチームメイトの白竜くん。彼のポジションはFW。サッカーが上手くて、しかも凄く強いんだ!
私達、実は・・・宇宙の遙か彼方にある惑星、ファラム・オービアスという所に来てるんだけど、
「ファラムにも動物園があったんだね・・・」
「あの剣城も知らなかったらしいな・・・地球よりも規模が大きい」
「凄いね・・・」
そんな感想を言いながら、私と白竜くんは園内を歩いてたんだけど・・・。
「あ、あれって・・・」
「?」
私はある展示スペースを見て思わず足を止めた。その生き物は鋭く尖る二又の尻尾を持った、大きな猫みたい。
「ペリオンだ」
「ペリオン?」
「ファラムのチームの、リュゲルっていう選手のソウルだね」
「ほう」
「肉食性で軽やかな身のこなしで獲物を追い詰めるんだって」
「詳しいな・・・そういえばお前もアースイレブンだったな」
「あのソウルストライクは強烈だったなぁ」
透明な壁の向こうで気持ちよさげに寝そべるペリオン。その愛らしい姿に私達はすっかり見入ってしまう。すると、展示スペースの奥の方から黒い個体が現れて、お客さんたちに愛想を振りまき始めた。
「黒いのがきたぞ」
「そっちがベリオン。ペリオンの亜種なんだけど、すごく気性が荒いんだって」
「・・・その割には人懐っこくみえるが」
「なんだかガンダレスを思い出すなぁ。元気にしてるかな」
「しかし・・・ここは奇妙な生き物ばかりだな。地球にも未発見の生物がいくらでもいるということか」
白竜くんがしげしげと呟く。すると、私達の傍までやって来たベリオンが、やがてその視線に気づいて嬉しそうに尻尾を振った。あ、そういえば・・・。私はふと思い出して、白竜くんに言った。
「ね、白竜くん。ベリオンってね・・・猫みたいにゴロゴロ喉を鳴らして甘えるんだって」
「そうなのか?」
「うん! ガンダレスが教えてくれたの!」
私がそう言うと急に、寝そべっていた筈のペリオンが起き上がってこちらを睨み付けていて、岩肌に前足を引っ掛けて爪を研ぎ始めた。まるで私の言葉に反応したみたいに・・・。
「おい、こいつは本当に大人しいのか? 今にもガラスを突き破ってきそうだが」
「たぶん大丈夫じゃないかな。ほら、動物園だし」
「いや待て、これ本当に平気なのか?」
白竜くんが不安そうな顔をするのも無理はない。確かに目の前のベリオンとペリオンは予想以上に大きくて迫力があるし、二叉の尻尾をバタつかせる度に周囲の空気が変わる感じがする。でもガンダレスの話では「スッゲーかわいいんだぜ!」って言ってたから大丈夫だと思うんだけど・・・
そんなことを考えていた時、「ヴォーン」と低いうなり声が響いた。ビクリとしてペリオンを見ると、彼(?)は私たちをロックオンした様子で、いつの間にか私達の目の前に来ていた。まるでコイツに近づくなと凄んでいるかのようだ。
「・・・やっぱりちょっと怖いかも」
「ほら見ろ。だから言っただろう! 早く出て次に行くぞ」
白竜くんは私の腕を引っ張ってペリオンとベリオンの展示スペースを後にした。次に来たのは大きめの檻。そこには美しい尻尾と大きな翼を持ったワイバーンみたいな生き物。
「フェニキアス・・・なんかかっこいい」
「おい、お前の目は節穴か?なんだあの目玉模様は。俺のシャイニングドラゴンの足元にも及ばん」
「シャイニングドラゴンに脚あったかな・・・?」
「腕ならある」
フェニキアスが翼を広げると周りのお客さんたちから歓声が上がる。
なんて、優雅なのだろうか。
「こうやってファラムの動物園に来られるのも、お前達がブラックホールを消し去って平和をもたらしたおかげなんだろうな」
「みんなのおかげで、こうやってまた全宇宙が笑顔で過ごせているなら嬉しいな」
「・・・フン」
白竜くんはなぜかそっぽを向いてしまった。あれ、耳が赤い様な・・・?私が首を傾げていると、遠くの方から子どもが駆けてきた。
「ママ~!! あの鳥さん飛んでるよー!」
「本当だねぇ」
檻の中ではちょうどフェニキアスが飛び立った所だった。フェニキアスが宙を舞う度に辺りに鱗粉のようなものが舞う。光を受けたそれはキラキラと輝いて見えてとても綺麗で幻想的だった。
次の展示スペースには人だかりが出来ていた。どうやら、餌やり体験が出来るらしい。白竜くんの服の袖をクイッと引っ張った。
「何だ?」
「餌やり体験だって」
「参加したいのか?」
「うん。ほら、あっちにエサ箱があるみたいだよ。行ってみよう!」
「やれやれ・・・仕方のない奴だな。少しだけ付き合ってやろう」
「ありがとう!」
係員さんの指示に従って、木製のトレイに乗った餌を持って行く。獲物を見て目を輝かせる猛獣、その名もアンギドラ。ギリシャ神話に出てくる三つ首の竜・ヒュドラみたいな怖いヤツ。
「うわぁ・・・凄い迫力!」
「おいシオン。危ないからあまり近づくなよ」
「うん」
白竜くんに注意されながらもゆっくり歩み寄っていく。アンギドラが牙を見せると背筋がゾクッとするような感覚を覚えるけれど・・・。
「じゃあ投げるね?」
「ああ」
私は息を飲んで腕を振り上げる。そして勢いよく放った餌がアンギドラの口の中に吸い込まれていった。
「よしっ! 上手くいった!」
「ハァ・・・焦らせてくれる」
「あはは。ごめんね」
「まったく。まぁ・・・悪くはないな。こういうのも」
その後しばらく観察しているとお腹が空いてきて思わずお腹を押さえた。
「どうした?」
「えへへ。あの子、あんまり美味しそうに食べるからかな。お腹空いちゃった・・・」
「はぁ・・・」
呆れたように溜息をつくと白竜くんは近くの売店へ向かった。私も後を追うことにしたのだけれど・・・。
白竜くんが買ってくれたのはアイスクリームみたいだ。
「やる」
差し出されたそれを受け取るとひんやり冷たい感触が伝わってきて心地良かった。舌先で舐めると不思議な味が口の中に広がっていく。
「おいしい」
「そうか。」
「ありがとう! 白竜くんは食べなくていいの?」
「俺は太るようなモノは食わん」
そう言うと白竜くんは再び歩き出したので慌てて後を追う。次はどんな生き物に出会えるだろう。きっと面白いことが待っているに違いない。期待で胸がいっぱいになった。
今度は屋内の展示場らしい。薄暗い建物の中に入ってみると広い運動場には二本の角が生えた四足獣が。トリケラトプスに似ている。サイにも似ている。
「名前はなんだったか・・・あ、思い出した。ガンドランだ」
「ガンドランか・・・名前負けしない立派な体躯だ」
「ホントにね」
意外と彼はガンドランを気に入っているみたい。のっしのっしと歩き回るあの子を興味深そうに見つめる彼の横顔を覗いてみる。鼻が高いなぁ、とか顔の堀が深いなぁ、だったり。
「あの巨体に体当たりされたらひとたまりも無いんだろうな」
「ふふ、物凄く痛いよ」
「経験ありか?」
「うん。私達結構吹っ飛ばされてる」
ああいうソウルが屈強で身体の大きな選手に相応しい。それに比べて自分は華奢で小柄で体重だってあまりない。剣城さんからは「なんか折れそうだな・・・」って言われる始末。ソウルは使えるのだが。隣にいる白竜くんは、今はジャージを着ていて分かりづらいけど筋肉質だ。腕は太くてがっしりだし、首も太め。筋肉の付きやすい身体に生まれたのか、彼の努力の賜物か。すごい。流石究極。羨ましい。
「・・・」
「シオン?」
「・・・白竜くんって逞しくて素敵だよね・・・」
つい口を滑らせて私は思ったままの事を呟いた。しまった・・・すると白竜くんが驚いた顔で固まってた。
「・・・」
「えっと・・・。気に障った?ごめん・・・」
「・・・別になんともない」
「それならよかった」
「全く・・・調子が狂う・・・」
「?」
「お前はいつもそうだ。唐突で脈絡がない上に突拍子もない事ばかり言って・・・少しは自重しろ」
「うん」
「次で最後みたいだね」
「最後に相応しい生き物だといいが」
最後の展示スペースは何だか豪華だ。アンギドラの餌やり体験よりも人だかりが多い。こういうときは注意深く人々を観察してみる。皆帆くんからのアドバイスです。
「ついにここまで来たわねー!」
「ファラム・オービアスの絶滅危惧種!早く見たいなぁ!」
カップルだろうか。若い男女の会話から、ここに展示される生き物は貴重なのかも。だとしたらかなりのものになるに違いない。しかし展示スペースにはシャッターが降りており、中の様子を窺うことは出来ない。
白竜くんと一緒に柵の近くに寄ってみると・・・
『皆さまお待たせ致しましたー!』
アナウンスと共に照明が一斉に落とされる。ざわつく人々を余所に私たちは息を整えた。どんな生き物なんだろうか。楽しみ!
『それではお目にかけましょう!本日限定の特別展示コーナーは・・・ファラムの神秘!絶滅危惧種、ドラグノヴァでございます!』
重いシャッターがゆっくり持ち上がり、あの生き物の姿があらわになった。身体のあらゆる部分が尖った、狼みたいなフォルム。尻尾の先は悪魔が持ってるような槍のように三叉に別れている。
「これがドラグノヴァ・・・神秘的だ」
「初めて見た・・・」
「ファラムの選手にはこいつのソウルが使えるヤツはいなかったのか?」
「うん、いなかった。絶滅危惧種だからかな・・・あ!」
登り木の影からもう一匹姿を現した。そして私達の前にいた一匹にちょっかいを出してきた。応戦するかのように一匹がもう一匹の後を走って追いかけた。観客からは感嘆の声が漏れる。
「楽しそう」
「そうだな」
二匹は互いにじゃれ合いながら駆け回る。見ていて飽きない。白竜くんも微笑ましげな表情になっているし。
『現在残されているのは僅か四頭のみ!絶滅危惧種ですので保護下においています!しかし、彼らも自然の中で暮らせるように、このファラム・アニマルランドで野生に還す取り組みをしています!』
なるほど。つまり元の住処に戻すために頑張っているのか。
『なお、今回は特別にドラグノヴァの公開エサやりを行います!ご覧ください!』
「えぇっ!?」
「なんだとっ」
飼育員さんが巨大な骨を取り出した。骨を渡した途端ドラグノヴァ達は骨に食らいつき始めた。ガツガツ音を立てて食べ進めていく。その間にも彼らはじゃれ合っていて可愛らしい。しばらく様子を見ていた。
『さぁエサやり終了です!』
アナウンスと同時に骨がドラグノヴァ達から取り上げられた。彼らは少し不満そうな声をあげるもののまた遊び始めた。私と白竜くんは思わず顔を見合わせてしまった。
「あんな風に仲良く遊ぶんだね」
「ああ。ファラムの動物は奥が深い」
そんな話をしていたら、観客がざわついた。なんだ、と二匹のドラグノヴァに視線を戻すと、あろうことかさっきまでじゃれて遊んでいたはずの二匹が、重なっているではないか。これはいわゆるマウンティングと呼ばれる行為。雄が雌の上に乗って興奮している。息遣いも荒くなって、こっちにも聞こえてくる。この状況はまずいかもしれない。
「ぁ・・・」
思わず声が漏れてしまい、顔が熱くなる。命の神秘とは言うものの、大勢の前で・・・しかも男の子と一緒に来ているのに・・・!
いやでも、見なかったフリしようか? でもなんか目が離せない。だって私まだ中学生だし。こんなシーン直視できないよ!!
「シオン、行くぞ」
「えっ、ちょっと待って!」
突然白竜くんに強く引っ張られ慌てて後に続いた。後ろから聞こえるのは観客たちの歓喜の悲鳴だったり黄色い声であったり。そして私は白竜くんと二人きりになった途端我に帰った。恥ずかしさやら何やらが込み上げてきて全身真っ赤になるくらい体温が上がったような感覚に襲われる。
「ぅうう・・・」
「・・・何も言うな。俺も同類だ」
「でも・・・」
白竜くんはどこか気まずそうな雰囲気だったけど気を使ってくれているのがわかる。だからこそ申し訳ない気持ちもあるのだ。
「・・・ああいうのは初めて見た」
「私も・・・」
「あの様子だと多分交尾だ」
「言わないで・・・」
「すまん」
「・・・」
暫く沈黙が流れる。その間ずっと手を握ってくれていたので安心できたし落ち着けたと思う。
「・・・もう大丈夫か」
「うん。ありがとう」
「ならいいが・・・」
白竜くんはまだ何か言いたげにしていたけれど結局それ以上何も言わなかった。代わりに繋がれた手に力を込められたので黙って彼についていくことにした。
「白竜くん、今日はありがとう。一緒に来てくれて」
「フッ、これくらいどうということはない」
今日一日で色々な体験をした。動物たちとの触れ合いはもちろんだけど何より新鮮だったのが白竜くんのこと。彼と二人きりで過ごす時間が増えていくにつれて少しずつお互いの距離感が変わっていったような気がする。それが良い事なのか悪いことなのか今の私にはわからないけど一つ確かなことがあるとすれば。
「・・・楽しかった?」
「・・・まぁな」
「良かった」
「・・・お前はどうなんだ」
「えっ? 私?」
正直言うと最初は緊張してたし不安もあった。それでも終わってみれば充実していて楽しい時間だったと思えるようになっていた。
「すごく楽しかった」
「そうか。ならいい」
「また行きたい」
「・・・その時は付き合ってやらなくもない」
「ありがとう!」
「フ・・・」
白竜くんは目を細めて私の頭の撫でた。この体験は一生モノの宝物になる。これからも大切にしていきたいな。
おしまい
私達、実は・・・宇宙の遙か彼方にある惑星、ファラム・オービアスという所に来てるんだけど、
「ファラムにも動物園があったんだね・・・」
「あの剣城も知らなかったらしいな・・・地球よりも規模が大きい」
「凄いね・・・」
そんな感想を言いながら、私と白竜くんは園内を歩いてたんだけど・・・。
「あ、あれって・・・」
「?」
私はある展示スペースを見て思わず足を止めた。その生き物は鋭く尖る二又の尻尾を持った、大きな猫みたい。
「ペリオンだ」
「ペリオン?」
「ファラムのチームの、リュゲルっていう選手のソウルだね」
「ほう」
「肉食性で軽やかな身のこなしで獲物を追い詰めるんだって」
「詳しいな・・・そういえばお前もアースイレブンだったな」
「あのソウルストライクは強烈だったなぁ」
透明な壁の向こうで気持ちよさげに寝そべるペリオン。その愛らしい姿に私達はすっかり見入ってしまう。すると、展示スペースの奥の方から黒い個体が現れて、お客さんたちに愛想を振りまき始めた。
「黒いのがきたぞ」
「そっちがベリオン。ペリオンの亜種なんだけど、すごく気性が荒いんだって」
「・・・その割には人懐っこくみえるが」
「なんだかガンダレスを思い出すなぁ。元気にしてるかな」
「しかし・・・ここは奇妙な生き物ばかりだな。地球にも未発見の生物がいくらでもいるということか」
白竜くんがしげしげと呟く。すると、私達の傍までやって来たベリオンが、やがてその視線に気づいて嬉しそうに尻尾を振った。あ、そういえば・・・。私はふと思い出して、白竜くんに言った。
「ね、白竜くん。ベリオンってね・・・猫みたいにゴロゴロ喉を鳴らして甘えるんだって」
「そうなのか?」
「うん! ガンダレスが教えてくれたの!」
私がそう言うと急に、寝そべっていた筈のペリオンが起き上がってこちらを睨み付けていて、岩肌に前足を引っ掛けて爪を研ぎ始めた。まるで私の言葉に反応したみたいに・・・。
「おい、こいつは本当に大人しいのか? 今にもガラスを突き破ってきそうだが」
「たぶん大丈夫じゃないかな。ほら、動物園だし」
「いや待て、これ本当に平気なのか?」
白竜くんが不安そうな顔をするのも無理はない。確かに目の前のベリオンとペリオンは予想以上に大きくて迫力があるし、二叉の尻尾をバタつかせる度に周囲の空気が変わる感じがする。でもガンダレスの話では「スッゲーかわいいんだぜ!」って言ってたから大丈夫だと思うんだけど・・・
そんなことを考えていた時、「ヴォーン」と低いうなり声が響いた。ビクリとしてペリオンを見ると、彼(?)は私たちをロックオンした様子で、いつの間にか私達の目の前に来ていた。まるでコイツに近づくなと凄んでいるかのようだ。
「・・・やっぱりちょっと怖いかも」
「ほら見ろ。だから言っただろう! 早く出て次に行くぞ」
白竜くんは私の腕を引っ張ってペリオンとベリオンの展示スペースを後にした。次に来たのは大きめの檻。そこには美しい尻尾と大きな翼を持ったワイバーンみたいな生き物。
「フェニキアス・・・なんかかっこいい」
「おい、お前の目は節穴か?なんだあの目玉模様は。俺のシャイニングドラゴンの足元にも及ばん」
「シャイニングドラゴンに脚あったかな・・・?」
「腕ならある」
フェニキアスが翼を広げると周りのお客さんたちから歓声が上がる。
なんて、優雅なのだろうか。
「こうやってファラムの動物園に来られるのも、お前達がブラックホールを消し去って平和をもたらしたおかげなんだろうな」
「みんなのおかげで、こうやってまた全宇宙が笑顔で過ごせているなら嬉しいな」
「・・・フン」
白竜くんはなぜかそっぽを向いてしまった。あれ、耳が赤い様な・・・?私が首を傾げていると、遠くの方から子どもが駆けてきた。
「ママ~!! あの鳥さん飛んでるよー!」
「本当だねぇ」
檻の中ではちょうどフェニキアスが飛び立った所だった。フェニキアスが宙を舞う度に辺りに鱗粉のようなものが舞う。光を受けたそれはキラキラと輝いて見えてとても綺麗で幻想的だった。
次の展示スペースには人だかりが出来ていた。どうやら、餌やり体験が出来るらしい。白竜くんの服の袖をクイッと引っ張った。
「何だ?」
「餌やり体験だって」
「参加したいのか?」
「うん。ほら、あっちにエサ箱があるみたいだよ。行ってみよう!」
「やれやれ・・・仕方のない奴だな。少しだけ付き合ってやろう」
「ありがとう!」
係員さんの指示に従って、木製のトレイに乗った餌を持って行く。獲物を見て目を輝かせる猛獣、その名もアンギドラ。ギリシャ神話に出てくる三つ首の竜・ヒュドラみたいな怖いヤツ。
「うわぁ・・・凄い迫力!」
「おいシオン。危ないからあまり近づくなよ」
「うん」
白竜くんに注意されながらもゆっくり歩み寄っていく。アンギドラが牙を見せると背筋がゾクッとするような感覚を覚えるけれど・・・。
「じゃあ投げるね?」
「ああ」
私は息を飲んで腕を振り上げる。そして勢いよく放った餌がアンギドラの口の中に吸い込まれていった。
「よしっ! 上手くいった!」
「ハァ・・・焦らせてくれる」
「あはは。ごめんね」
「まったく。まぁ・・・悪くはないな。こういうのも」
その後しばらく観察しているとお腹が空いてきて思わずお腹を押さえた。
「どうした?」
「えへへ。あの子、あんまり美味しそうに食べるからかな。お腹空いちゃった・・・」
「はぁ・・・」
呆れたように溜息をつくと白竜くんは近くの売店へ向かった。私も後を追うことにしたのだけれど・・・。
白竜くんが買ってくれたのはアイスクリームみたいだ。
「やる」
差し出されたそれを受け取るとひんやり冷たい感触が伝わってきて心地良かった。舌先で舐めると不思議な味が口の中に広がっていく。
「おいしい」
「そうか。」
「ありがとう! 白竜くんは食べなくていいの?」
「俺は太るようなモノは食わん」
そう言うと白竜くんは再び歩き出したので慌てて後を追う。次はどんな生き物に出会えるだろう。きっと面白いことが待っているに違いない。期待で胸がいっぱいになった。
今度は屋内の展示場らしい。薄暗い建物の中に入ってみると広い運動場には二本の角が生えた四足獣が。トリケラトプスに似ている。サイにも似ている。
「名前はなんだったか・・・あ、思い出した。ガンドランだ」
「ガンドランか・・・名前負けしない立派な体躯だ」
「ホントにね」
意外と彼はガンドランを気に入っているみたい。のっしのっしと歩き回るあの子を興味深そうに見つめる彼の横顔を覗いてみる。鼻が高いなぁ、とか顔の堀が深いなぁ、だったり。
「あの巨体に体当たりされたらひとたまりも無いんだろうな」
「ふふ、物凄く痛いよ」
「経験ありか?」
「うん。私達結構吹っ飛ばされてる」
ああいうソウルが屈強で身体の大きな選手に相応しい。それに比べて自分は華奢で小柄で体重だってあまりない。剣城さんからは「なんか折れそうだな・・・」って言われる始末。ソウルは使えるのだが。隣にいる白竜くんは、今はジャージを着ていて分かりづらいけど筋肉質だ。腕は太くてがっしりだし、首も太め。筋肉の付きやすい身体に生まれたのか、彼の努力の賜物か。すごい。流石究極。羨ましい。
「・・・」
「シオン?」
「・・・白竜くんって逞しくて素敵だよね・・・」
つい口を滑らせて私は思ったままの事を呟いた。しまった・・・すると白竜くんが驚いた顔で固まってた。
「・・・」
「えっと・・・。気に障った?ごめん・・・」
「・・・別になんともない」
「それならよかった」
「全く・・・調子が狂う・・・」
「?」
「お前はいつもそうだ。唐突で脈絡がない上に突拍子もない事ばかり言って・・・少しは自重しろ」
「うん」
「次で最後みたいだね」
「最後に相応しい生き物だといいが」
最後の展示スペースは何だか豪華だ。アンギドラの餌やり体験よりも人だかりが多い。こういうときは注意深く人々を観察してみる。皆帆くんからのアドバイスです。
「ついにここまで来たわねー!」
「ファラム・オービアスの絶滅危惧種!早く見たいなぁ!」
カップルだろうか。若い男女の会話から、ここに展示される生き物は貴重なのかも。だとしたらかなりのものになるに違いない。しかし展示スペースにはシャッターが降りており、中の様子を窺うことは出来ない。
白竜くんと一緒に柵の近くに寄ってみると・・・
『皆さまお待たせ致しましたー!』
アナウンスと共に照明が一斉に落とされる。ざわつく人々を余所に私たちは息を整えた。どんな生き物なんだろうか。楽しみ!
『それではお目にかけましょう!本日限定の特別展示コーナーは・・・ファラムの神秘!絶滅危惧種、ドラグノヴァでございます!』
重いシャッターがゆっくり持ち上がり、あの生き物の姿があらわになった。身体のあらゆる部分が尖った、狼みたいなフォルム。尻尾の先は悪魔が持ってるような槍のように三叉に別れている。
「これがドラグノヴァ・・・神秘的だ」
「初めて見た・・・」
「ファラムの選手にはこいつのソウルが使えるヤツはいなかったのか?」
「うん、いなかった。絶滅危惧種だからかな・・・あ!」
登り木の影からもう一匹姿を現した。そして私達の前にいた一匹にちょっかいを出してきた。応戦するかのように一匹がもう一匹の後を走って追いかけた。観客からは感嘆の声が漏れる。
「楽しそう」
「そうだな」
二匹は互いにじゃれ合いながら駆け回る。見ていて飽きない。白竜くんも微笑ましげな表情になっているし。
『現在残されているのは僅か四頭のみ!絶滅危惧種ですので保護下においています!しかし、彼らも自然の中で暮らせるように、このファラム・アニマルランドで野生に還す取り組みをしています!』
なるほど。つまり元の住処に戻すために頑張っているのか。
『なお、今回は特別にドラグノヴァの公開エサやりを行います!ご覧ください!』
「えぇっ!?」
「なんだとっ」
飼育員さんが巨大な骨を取り出した。骨を渡した途端ドラグノヴァ達は骨に食らいつき始めた。ガツガツ音を立てて食べ進めていく。その間にも彼らはじゃれ合っていて可愛らしい。しばらく様子を見ていた。
『さぁエサやり終了です!』
アナウンスと同時に骨がドラグノヴァ達から取り上げられた。彼らは少し不満そうな声をあげるもののまた遊び始めた。私と白竜くんは思わず顔を見合わせてしまった。
「あんな風に仲良く遊ぶんだね」
「ああ。ファラムの動物は奥が深い」
そんな話をしていたら、観客がざわついた。なんだ、と二匹のドラグノヴァに視線を戻すと、あろうことかさっきまでじゃれて遊んでいたはずの二匹が、重なっているではないか。これはいわゆるマウンティングと呼ばれる行為。雄が雌の上に乗って興奮している。息遣いも荒くなって、こっちにも聞こえてくる。この状況はまずいかもしれない。
「ぁ・・・」
思わず声が漏れてしまい、顔が熱くなる。命の神秘とは言うものの、大勢の前で・・・しかも男の子と一緒に来ているのに・・・!
いやでも、見なかったフリしようか? でもなんか目が離せない。だって私まだ中学生だし。こんなシーン直視できないよ!!
「シオン、行くぞ」
「えっ、ちょっと待って!」
突然白竜くんに強く引っ張られ慌てて後に続いた。後ろから聞こえるのは観客たちの歓喜の悲鳴だったり黄色い声であったり。そして私は白竜くんと二人きりになった途端我に帰った。恥ずかしさやら何やらが込み上げてきて全身真っ赤になるくらい体温が上がったような感覚に襲われる。
「ぅうう・・・」
「・・・何も言うな。俺も同類だ」
「でも・・・」
白竜くんはどこか気まずそうな雰囲気だったけど気を使ってくれているのがわかる。だからこそ申し訳ない気持ちもあるのだ。
「・・・ああいうのは初めて見た」
「私も・・・」
「あの様子だと多分交尾だ」
「言わないで・・・」
「すまん」
「・・・」
暫く沈黙が流れる。その間ずっと手を握ってくれていたので安心できたし落ち着けたと思う。
「・・・もう大丈夫か」
「うん。ありがとう」
「ならいいが・・・」
白竜くんはまだ何か言いたげにしていたけれど結局それ以上何も言わなかった。代わりに繋がれた手に力を込められたので黙って彼についていくことにした。
「白竜くん、今日はありがとう。一緒に来てくれて」
「フッ、これくらいどうということはない」
今日一日で色々な体験をした。動物たちとの触れ合いはもちろんだけど何より新鮮だったのが白竜くんのこと。彼と二人きりで過ごす時間が増えていくにつれて少しずつお互いの距離感が変わっていったような気がする。それが良い事なのか悪いことなのか今の私にはわからないけど一つ確かなことがあるとすれば。
「・・・楽しかった?」
「・・・まぁな」
「良かった」
「・・・お前はどうなんだ」
「えっ? 私?」
正直言うと最初は緊張してたし不安もあった。それでも終わってみれば充実していて楽しい時間だったと思えるようになっていた。
「すごく楽しかった」
「そうか。ならいい」
「また行きたい」
「・・・その時は付き合ってやらなくもない」
「ありがとう!」
「フ・・・」
白竜くんは目を細めて私の頭の撫でた。この体験は一生モノの宝物になる。これからも大切にしていきたいな。
おしまい
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