膏霖(こうりん)

TaeYeon side


「ん~~っ!チュッ
ただいまテヨナ、会いたかったっ!チュッチュッ…」


私の頬に手を添え、嬉しそうにキスを繰り返すティファニー

呆気に取られてされるがままになっていると、
視界の端に呆然と私達を見ているマンネがいることに気づいた


しまった!
初心なマンネの前でこんな…こんなキスとかっ…
あああああっ


ティファニーのお姉さんに引き続き、
身内のような存在に目撃された恥ずかしさで顔が熱くなる
慌ててティファニーの頬を持ってキス攻撃を止めに入ると、
途端に彼女が不満そうな顔をした


パニ「テヨナ、どうしたの?
まだただいまの途中なのに」


テヨ「えっと…何か忘れてない?」


パニ「え?ハグ?
もう一回?
ふふふっ も~早く言ってよ~」


テヨ「ち、違っ…!」


目がなくなっちゃうくらい嬉しそうに笑うティファニーから再びぎゅっと抱きしめられ、
首筋にキスを落とされた


ちょ!今どこにキスした!?
く…首っ!?


首筋に経験のない感触を感じて混乱し、
私は彼女を軽く抱きしめ返した状態で固まる
一方のティファニーは私の背中全体を撫で、私の肩を抱き締めた後、
耳辺りに唇を寄せ、
「会いたかった…」
そう掠れた声で囁いた

…っ…


自分の意識が全てティファニーの吐息が当たる左耳に集中する
彼女への愛おしさとか欲情とかいろんなものがたくさん溢れて心臓辺りがきゅーっとした


私も、すごく会いたかった…


こみ上げるけど言葉にならない気持ちを伝えるように彼女を強く抱き締め返すと、
再び首筋に彼女の優しいキスが降りてくる


ティファニーの甘い香りと温かさと柔らかさ
全部全部大好き…


頭の中がティファニーでいっぱいになってクラクラした
休む暇もなく彼女が私にたくさんくれる幸せな心地に浸りながら、
私は彼女の首筋に顔を埋める


しあわせ、しあわせ、しあわせ…


ほわほわした気持ちでティファニーに抱き付いていたら、
いつの間にか心の声を口に出していたらしい
「ふふふっ しあわせ?」
ティファニーがそう言って私の耳元近くで優しく笑った


テヨ「ふひっ しあわせ…」


パニ「私も、幸せ…」



ティファニーは私の頬に頬を優しくすり寄せ、小さく微笑む
そしてシャツから出た私の素肌の肩口にキスを落とすと、
再び私の肩に回した腕を滑らせ、私を強く抱き締めた

ティファニーの素肌の肩が私の口元に近づく
私も彼女の肌に唇で触れたい衝動に駆られた


その、先にしてもらったのは私だし、
その、恋人だし、私がしてもきっとおかしくないし…っ


誰に説明しているのか、頭の中をいろんな言い訳がぐるぐる回る
想像するだけで心臓がドキドキしてきて、
背中に回した手で彼女の洋服をぎゅっと掴んだ
きっと私のうるさ過ぎる胸の鼓動は、
抱き締めている彼女に伝わってるんじゃないかと思う

誘われるように彼女の首筋にゆっくりと顔を近づけていく
近づくにつれて余計に強くなる彼女の甘い香水の香り
胸いっぱいにその香りを吸い込み、
唇が触れる直前、興奮で唾をごくんと飲み込んだ







「ぶふぉっ…!!!」



すると、いきなり背後から誰かの吹き出す音が聞こえ、驚きで体がビクッと揺れる


えっ?誰?



「ヤァ~~!あんたらこんなとこで何やってんのっ
ふざけんなリア充!部屋に行ってやれや!!」


誰が来たのか確認する間もなく背後からスヨンのキレる声が聞こえ、
彼女に向けていた私のお尻が長い脚に思い切り蹴られた


テヨ「あ痛ぁあっ!」


パニ「きゃあ!テヨンっ!」


膝がガクンと落ち、ティファニーを抱き締めたままバランスを崩す
ティファニーが慌てて私を支えてくれたが、
私は彼女にしがみつくようにして尻もちをついた

腕を組んだスヨンがずんずんと近寄ってきて、私達の目の前で仁王立ちする
お尻の痛みを耐えて恐るおそる目線を上げると、
眉間にしわをよせて目を見開いたスヨンに睨むように見下ろされた


スヨ「次見つけたらケツバットな」


恐ろしいほどの殺気を漂わせながら冷酷にそう告げるスヨンに反論は許されない


テヨ「は、はい…っ!
しゅみませんでした…っ」


スヨ「よし」



怯えた私の返事を聞いてようやく表情を元に戻したスヨンは、
近くに立っていたマンネの手を取る
と、そこで私はマンネが近くにいたことを思い出した


テヨ「あ、あわわわわわ…
そ、そひょ、ソヒョナ…っ」


娘に見られてはいけないシーンを見られてしまったような気持ちになり、
気まずさと恥ずかしさと戸惑いと申し訳なさで動けない
隣のティファニーもすっかりソヒョンのことを忘れていたらしく、
「やだっ…!ソヒョナ、ごめんね」と戸惑いながら謝っていた


スヨンは「けっ!リア充が」と捨て台詞を残し、
放心状態のソヒョンの手を引いてリビングに戻っていった




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