晴光

TaeYeon side



チチチチチ…
チチチチチ…



遠くから鳥の鳴き声が聞こえて浅い眠りから目を覚ます
寝ぼけ眼でいつものように目覚ましがある方向へと手を伸ばした後、違和感に気が付いた
見慣れない部屋、自分の部屋ではない匂い、真新しいシーツ、
そして、目の前には未だすやすやと眠っているティファニー

どこか遠い日のことのように思えるあの夜を思い出した
ホテルで二人で眠った日


私はいつか見た夢の続きを見ているのかもしれない
短かった夢の続きを…


あのときと同じように、そっと手を伸ばして彼女の前髪を撫でる
だけど、あの日と同じように「好きだよ…」なんて言えなかった
言ってしまったら、過去がループするようにまた同じような日々が繰り返されるのかもしれない
それは絶対嫌だ

だから、私は心の中で呟いた


ティファニー、大好きだよ…



忘れようとしても、嫌いになろうとしても、避けようとしても、
どんなにもがいても結局私は彼女を自分の中から追い出すことなんてできなかった
こんなに彼女が自分の心を占めていたんだと悟り、
どうにかしたくて私は自分の日常を壊した
気づかれないように皆と距離を取った
それまでの自分を閉じていった


苦しくて苦しくて、私は何度涙を流しただろう


自分が恋愛にこんなに振り回されるなんて思ってもいなかった
淡い片想いだけだった頃の辛さはまだ全然マシだったんだと、後になってわかった

死にそうなくらい辛かった日々を思い出し、それから今の状況が本当に信じられなくて、
思わず涙がこみ上げてくる
慌てて枕に顔を埋めて涙を隠していると、
急に横からぐっと頭を引き寄せられ、ティファニーの温もりを感じた


パニ「も~テヨンってば一人で泣かないで…?
私に甘えてよ…」



なんで泣いているのがわかったんだろう…?


ティファニーは私の頭を胸に抱きしめ、背中を優しくさすってくれた
彼女を温もりを感じながら優しさに身を任せていると、グスッ…と小さく鼻をすする音が響いてしまい、
大泣きしているのがバレバレの状況になってしまった

だけど、彼女は何も言わず私の背中を撫でて慰めてくれる
その仕草にすごく安心して、甘えたくなって、
私は彼女の胸元に顔を寄せてたくさん泣いた









ひとしきり泣いて顔をあげると、ティファニーが私を見て優しい顔をして微笑んでいた
なんだか嬉しそうにさえ見える
不思議に思って尋ねる


テヨ「どうしたの?」


パニ「ん?」


テヨ「…なんか、嬉しそう」


パニ「え?
ふふっ…確かにそうなのかも」



ティファニーは私の目の下の涙を指で優しく拭い、また柔らかく微笑んだ


テヨ「なんで嬉しいの…?」


パニ「ふふっ う~んとね、テヨンが私の腕の中で泣いてくれたから」


テヨ「ん?」


パニ「テヨンが私の傍にいるんだ~!って嬉しいの……グスッ」



元気そうに笑顔で話していたのに、ティファニーはそう言いながら瞳を潤ませて鼻をすすり始めた
ヤバい!そう思ったけど間に合わなかった
私が拭うより前に彼女の目から涙が零れ落ち、枕にしみ込んでいく


パニ「グスッ…ねえテヨン
好きよ
本当に好き、大好き…」


テヨ「うん」


パニ「本当に本当に本当に好き…」


テヨ「…グスッ…へへっ 嬉しい
ティファニー、私も好きだよ」


きっと私は今、笑顔だと思う
そう自分でもわかるくらい、幸せな気持ちだった



パニ「…グスッ…絶対ね、テヨンよりも私の方が好きだと思うわ」


テヨ「…それはどうかな?
私の方が好きだと思うよ」


パニ「ううん きっとね、私の方がもっとずっと好きなの」


テヨ「3年…いや、もう4年くらいになるかもしれない
私はそのくらい前からずっと好きだったんだよ?」


パニ「期間は重要じゃないわ
まだ私がどれだけあなたを好きか知らないでしょ?
負ける気がしないわ」


テヨ「…ヤァ~!私がどれだけ好きで泣いたと思ってんの?」


パニ「あははっ ヤァ~!キム・テヨン!
私もどれだけ泣いたと思ってるの?」



負けず嫌いな彼女は笑いながらも頑なに負けを認めない
でも、そうやってどっちがもっと好きかで揉めるなんてバカバカらしくて、幸せで、
私も思わず笑ってしまった

ティファニーの胸元に顔を埋めて大きくなりそうな笑い声を押し込めていると、
彼女に体をぎゅっと抱きしめられ、大きな声で宣言された


パニ「ふふふっ ヤァ~!キム・テヨン!
もう絶対離さないからねっ!」


テヨン「あはははっ ヤァ~!ファン・ミヨン!
もう絶対離れてやんないぞっ!」


パニ「ふふふふふっ
私はテヨンがどこに隠れてもわかるんだからね!」


テヨ「あはははっ こっちだって、ティファニーがどこ行っても追いかけるんだからね!」



笑いながらそんなことを言い合う私達は、たぶん世界一幸せ
…いや、宇宙一かも
そして、たぶんじゃなくて絶対


だから、私は言えたんだ
よく考えたら今まで一度も言ったことがなかった
私はいつも逃げることしか口にしてなかったんだよね



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