雨曝

Jessica side




「「「テヨナァ(オンニィ)~~~!!」」」


テヨン「うぉっ!」



ここは廊下
テレビ局の廊下

だけど、その真ん中で生き別れた家族の感動の再会みたいな光景が繰り広げられている




私とテヨンはホテルから直接テレビ局に向かい、皆と合流した
皆はテヨンと私の姿を見るや否やわらわらと集まり、
テヨンにほとんどタックルみたいな抱擁をかましている


本当、はた迷惑だわ…



テヨンとともに熱い抱擁を受けながらそんなことを思ったけれど、
やっぱり皆のそんなところが大好きな自分もいるわけで…

耳元でうるさく騒ぐ仲間達と笑いながら抱擁を交わしていたけれど、私はすぐに気づいた


ティファニーがいない



皆がやってきた方向を見ると、ティファニーは駆け出したいような顔をしながらも近づくことができず、
泣きそうな顔で楽屋の入り口に立ち尽くしていた
そして、そんなティファニーの隣には、
泣き笑いみたいなほっとした表情をしたソニとユリが寄り添っていた

私はわちゃわちゃやってるテヨン達を置いて、ティファニーのところにゆっくりと歩いていく



シカ「パニ…、大丈夫?」


そう声をかけると、ティファニーはやっと私が近くに来たことに気づいたようにはっとした顔をした後、
次の瞬間には今にも泣き出しそうな顔で私を見た


パニ「ジェシー…」


シカ「ご飯は?食べてるの?」


パニ「…うん……
ジェシー…」


ティファニーは私に抱きついて私の肩に顔を埋める



パニ「テヨンは…?
テヨンは大丈夫?」


自分も大丈夫そうじゃないくせして、テヨンの様子を聞いてくる


ああそういえば、テヨンもそうだった
電話が繋がって最初に聞いてきたのはティファニーのことだったわ

本当にあなた達って…



シカ「大丈夫よ
ご飯も食べてるし、ちゃんと寝てるわ」


まだ完全には元に戻っていないけれど…



シカ「パニは?大丈夫なの?」


パニ「私はいいの…
私は大丈夫だから…
テヨンが…、テヨンが心配なの…」


シカ「パニ、あなたの方が心配になるわ
お願いだから無理しないで」


パニ「うん、大丈夫
大丈夫よ…」


明らかに無理をしているようなティファニーの様子にたまらなく心配になる
すると、ソニが優しい顔をして私に抱きついたままのティファニーの頭をそっと撫でた



ソニ「パニ…、テヨンのところに行かなくていい?」


パニ「…」



ユリの視線は何か言いたげに、
テヨンがいる私の後方と私に抱きついているパニの頭辺りを行ったり来たりしている

きっとテヨンがこちらを見ているのだろう



ユリ「パニ…」



とうとうじれったくなったのかユリがティファニーに声をかける
だけど、ティファニーは私に抱きついたまま頭を小さく左右に振った


あぁ…



どうか
どうかティファニーの動作をテヨンが見ていませんように…




胸がとても痛い
ずっとテヨンと一緒にいるからなのか、テヨンの気持ちが手に取るように分かってしまう
ティファニーの拒否が、きっとまたテヨンの心に大きなダメージを与えてしまうに違いない


あぁ…これ以上テヨンに傷ついてほしくない



シカ「パニ、もう衣装はチェックした?」


なるべく早く話題を違う方向に持っていって、
私の後方にいるに違いないテヨンがさっきの動作を仕事のことだと誤解してくれたら…

ティファニーの背中に手をやって早く楽屋に入ろうと促すと、
彼女は小さく頷いてテヨンの方に遠慮がちに視線をやった後、楽屋に入っていった

楽屋に入っていくティファニーに続いて私も楽屋に入る
その寸前、テヨンのいる方向を見ると、彼女が傷ついた顔をしてこちらを見ていた


あぁ…テヨン、泣かないで
お願い
これ以上傷つかないで…



心の中で泣いているに違いないテヨンに胸が痛む
テヨンは私の視線に気づくと、明らかな作り笑いで私に笑ってみせた
私もテヨンにぎこちなく微笑み返すと、スヨンに声をかける


シカ「スヨン、テヨンを頼んだわよ」


スヨン「分かってる
ほらテヨン、行こう?」



スヨンは力なく歩き始めるテヨンを連れ、マネージャーオッパの元へ向かった


テヨン、仕事よ
頑張って…



傷を隠して気丈に振舞うテヨンを見つめながら、私は心の中でそう祈った





→あとがき
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