とある機械科女子の日常

ほぼ外と言っていいほど開放的な廊下で、体育後の汗ばんだ身体を少しでも乾かそうと下敷で自分を扇ぐ。教室にはクーラーがあるので中で涼めばいいのだが、入れない理由がありこうして教室の外で待っている。
(あと少しで次の授業始まるんだけど、みんな着替えたかな…)
女子は更衣室があるが、男子は教室で着替えを行う。その為、教室に入れないのであった。窓は全て中が見えないようになっており状況がわからない、確認しようにもそんな勇気はない。ただ外で待つしかないのだ。
「〇〇、そこで何してる」
声がする方へと向けば、次の授業を担当する月島先生が紺色の作業着姿でこちらに歩いてきていた。
「月島先生、今体育終わりでみんなが着替えるの待ってるんです」
「あぁ、そう言う事か」
月島先生は納得すると教室の入口を開け放つ。
「お前ら早く着替えろ!〇〇が待ってるぞ!」
(そんな言い方したら、私が急かしてるみたいだよ先生!)
大人しく目立たないを意識して高校生活を送りたいのに、そんな言い方をしてしまっては彼らが意識してしまう。外でおろおろしていると、近くの窓がガラリと開いた。
「別にいつでも入ってきていーよ」
「見られても俺達平気だし」
二階堂双子がまだ体操着の状態で声をかけてきた。
(いや、アンタ達は平気でも…)
「〇〇、入っていいぞ」
月島先生にも言われ渋々教室へと入り、そして盛大に顔を歪めた。一応男ばかりなので覚悟はしていたが、教室が大変な事になっている。汗の匂いに様々な制汗剤の香りが混ざり、とんでもない混沌状態になっている。これには流石の月島先生も感じたのか、それとも私を気遣ってくれたのかすぐさま窓を開け出した。
「お前ら窓を全部開けろ。すごい匂いだぞ、この教室」
当の本人達は特にそんな事はない様子だったが、月島先生と私の表情を見て慌てて窓を開け出した。
(私も気をつけよう…)
そのうち授業が始まるチャイムが鳴り二階堂双子はまだ体操着のままで、先生に怒られたが着替える事なくそのまま授業を受けていた。

次の週の体育後。みんなからはいつでも入っていいと言われたが、やはり入りにくい。教室の入口前で立っていると、ガラリと戸が開き上半身裸の二階堂双子が現れた。
「入っていいよ!」
「いや良くないわ!上着てよ!」
「それセクハラだぞ、二階堂」
教室から笑い声が響き入口を開けたまま彼らがいなくなった為、中が丸見え状態となる。他の人に見られては困ると、慌てて中に入り戸を閉めた。
「…ふぅ」
「きゃー〇〇のえっちー!」
「は!?」
突然そんな事を言われ振り返れば、クラスメイトのほぼ半数が上半身裸で中にはパンイチ姿もいた。
「ちょ…入っていいって言ったじゃん!」
慌てて顔を隠したがレインボー柄の下着が目に入ってしまった。というか、なぜ着替え終わっていない。
「いや、入っていいよ。見られても平気だし」
そういう問題ではないのだが、説明するのも大変なので適当に相槌を打ち自分の席へと座る。
「なぁ、〇〇。このパンツどう思う?」
「やめろって野間!それ変態だぞ!」
「女子の意見も大切だろ」
「いや、でも…うぅん」
今意見を求める時じゃないんだよ、岡田君もちゃんと止めてくれと頭を抱えた。
「で、どうだと思う?」
(まだ聞いてくるのか)
仕方なく指の隙間からチラリと見れば、先ほどのレインボー柄だった。
「いや、そんな柄のパンツどこで売ってんの…」
インパクトの強すぎるパンツに、最早笑うしかなかった。

それから一年も経つと慣れたもので、パンイチだろうがなんだろうかお構いなく教室に入れるようになった。
「〇〇、このパンツどう?」
「それお揃いなんだ、可愛いと思う」
読んでいた教科書から顔を上げ、二階堂双子のお揃いパンツを見る。
時々発生するパンツのお披露目会にも、普通にコメントできるようになってしまった。
「お前ら何やってんだ!〇〇の前で、服を脱ぐなっていつも言ってるだろうが!〇〇もそれを受け入れるんじゃない!」
こうして先生に怒られるのが当たり前になってしまうのだった。
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