Kleines Kleinod
誰しも苦手な物はある。歳を重ねれば克服できるものもあれば、死ぬまで苦手なままというものもある。例えば、食べ物がそうだろうか。目の前で皿の上に残るジャガイモと長い間にらめっこをしている息子を見て思った。ジャガイモなどそれほどまで嫌がる要素などないと思うが、息子は違うらしい。
「…ジュニア、いつまでそうしている。早く食べなさい」
「…は、はい」
そう返事はするが、一向にフォークを持った手は動かない。俺はため息をついて席を立った。超人になろうと言うものが、食べ物の好き嫌いで時間を無駄にするとは情けない。子供だからまだ許すが、今後このままではいけない。何か手を打たねばと考えを巡らせ、ある事を思いついた。
「クライノート、お前は苦手な食べ物はあるか?」
ジュニアが持久力をつけるために屋敷の周りをひたすら走っているのに対し、彼女は椅子に座り数式がいくつも並んだ問題を解いていた。
「ないよ〜私、好き嫌いないもん!」
「そうか、ジャガイモは好きか?」
「うん、好き!蒸したジャガイモにね、バターを乗せて食べると美味しいの!」
問題集から目を離し、興奮気味に語る彼女の頭を掴んで目線を元に戻した。
「ならいい。問題の続きをやりなさい、残り一時間だ」
「そっちが聞いてきたのに…」
不服そうな顔をしてさらさらと難問を解いていく彼女を見て満足そうに頷き、その場から離れる。
「今日の夕食にジャガイモの料理を出してほしいのだが、できそうか?」
部屋に戻り、本を読んでいた妻に声をかけた。
「いいですけど…ジュニアが嫌がるんじゃないですか?」
「問題ない。今日はクライノートの分も頼めるか。彼女の家へは俺が連絡しておく」
「構いませんが、なぜ?」
「男というものは見栄を張りたがるものでね。気になる相手の前だと尚更なのだよ」
「…?」
妻はわかっていなさそうな顔をしていたが俺の言った通りに用意してくれるようで、今日の夕食が楽しみになってきた。
「わーい!ブロッケンママのご飯だー!」
「クライノート、静かにしなさい。行儀が悪いぞ」
いつも静かな食卓が一人増えただけで、賑やかになる。原因は彼女が騒がしいせいなのだが。
「やった、ジャーマンポテトだ!いただきまーす!」
目の前に並べられた料理を次々に食べていく彼女と、席に座ってから全く動かないジュニア。
(…さぁ、どうするジュニア)
料理に手をつけながら、息子の様子を見守る。
「ジュニアどうしたの?さっきから全然食べてないよ」
「え!いや、その…」
「お腹空いてないの?」
「そうじゃなくて…」
ジャガイモが苦手で食べられないとは恥ずかしくて言えず、だからといって食べるのも抵抗がある。彼女に見つめられ困っている息子が面白くてたまらない。思わず緩んだ口元を手で隠せば、隣で妻が咎めるように肩を叩いた。
「美味しいよ?ほら、はいどーぞ!」
彼女がフォークに刺したジャガイモを、ジュニアに差し出した。これはもう逃げられないなと思った。正直に食べられないと言うか、それとも我慢して食べるか。夫婦で息子を見守る。
「…っ、あーん…」
覚悟を決めたような顔をして、ジュニアが差し出されたジャガイモを口にした。あれほど嫌がっていたのに、恥ずかしいところを見せたくないと意地で食べたようだ。
「美味しい?」
「…うん」
ジュニアは微妙な顔をして頷いた。食べはしたが、苦手なのは変わらないらしい。その後も、微妙な顔をしながらも完食したのは驚いた。
「あの子、食べましたね。あんなに嫌がっていたのに…」
「やはりクライノートを呼んでいて正解だったな。あの子には、情けない所を見せたくないらしい」
「そういう事ですか」
やっと意味がわかったと笑う妻と顔を見合わせ、自分も小さく笑った。
「…ジュニア、いつまでそうしている。早く食べなさい」
「…は、はい」
そう返事はするが、一向にフォークを持った手は動かない。俺はため息をついて席を立った。超人になろうと言うものが、食べ物の好き嫌いで時間を無駄にするとは情けない。子供だからまだ許すが、今後このままではいけない。何か手を打たねばと考えを巡らせ、ある事を思いついた。
「クライノート、お前は苦手な食べ物はあるか?」
ジュニアが持久力をつけるために屋敷の周りをひたすら走っているのに対し、彼女は椅子に座り数式がいくつも並んだ問題を解いていた。
「ないよ〜私、好き嫌いないもん!」
「そうか、ジャガイモは好きか?」
「うん、好き!蒸したジャガイモにね、バターを乗せて食べると美味しいの!」
問題集から目を離し、興奮気味に語る彼女の頭を掴んで目線を元に戻した。
「ならいい。問題の続きをやりなさい、残り一時間だ」
「そっちが聞いてきたのに…」
不服そうな顔をしてさらさらと難問を解いていく彼女を見て満足そうに頷き、その場から離れる。
「今日の夕食にジャガイモの料理を出してほしいのだが、できそうか?」
部屋に戻り、本を読んでいた妻に声をかけた。
「いいですけど…ジュニアが嫌がるんじゃないですか?」
「問題ない。今日はクライノートの分も頼めるか。彼女の家へは俺が連絡しておく」
「構いませんが、なぜ?」
「男というものは見栄を張りたがるものでね。気になる相手の前だと尚更なのだよ」
「…?」
妻はわかっていなさそうな顔をしていたが俺の言った通りに用意してくれるようで、今日の夕食が楽しみになってきた。
「わーい!ブロッケンママのご飯だー!」
「クライノート、静かにしなさい。行儀が悪いぞ」
いつも静かな食卓が一人増えただけで、賑やかになる。原因は彼女が騒がしいせいなのだが。
「やった、ジャーマンポテトだ!いただきまーす!」
目の前に並べられた料理を次々に食べていく彼女と、席に座ってから全く動かないジュニア。
(…さぁ、どうするジュニア)
料理に手をつけながら、息子の様子を見守る。
「ジュニアどうしたの?さっきから全然食べてないよ」
「え!いや、その…」
「お腹空いてないの?」
「そうじゃなくて…」
ジャガイモが苦手で食べられないとは恥ずかしくて言えず、だからといって食べるのも抵抗がある。彼女に見つめられ困っている息子が面白くてたまらない。思わず緩んだ口元を手で隠せば、隣で妻が咎めるように肩を叩いた。
「美味しいよ?ほら、はいどーぞ!」
彼女がフォークに刺したジャガイモを、ジュニアに差し出した。これはもう逃げられないなと思った。正直に食べられないと言うか、それとも我慢して食べるか。夫婦で息子を見守る。
「…っ、あーん…」
覚悟を決めたような顔をして、ジュニアが差し出されたジャガイモを口にした。あれほど嫌がっていたのに、恥ずかしいところを見せたくないと意地で食べたようだ。
「美味しい?」
「…うん」
ジュニアは微妙な顔をして頷いた。食べはしたが、苦手なのは変わらないらしい。その後も、微妙な顔をしながらも完食したのは驚いた。
「あの子、食べましたね。あんなに嫌がっていたのに…」
「やはりクライノートを呼んでいて正解だったな。あの子には、情けない所を見せたくないらしい」
「そういう事ですか」
やっと意味がわかったと笑う妻と顔を見合わせ、自分も小さく笑った。
