キン肉マン
「うわぁ〜ん!ブラックぅ〜!」
ここは悪魔超人界。常に薄暗く陰湿な雰囲気のここへ、場違いな男がやってくる。
「…おい、あんまりここには来るなって言ってるだろ」
「言われたけどさ!でも、君に聞いてほしいんだよ!」
そう言って、従兄弟であるペンタゴンは白い翼をバタつかせて俺に縋りついた。
「…今度は何なんだ」
俺が悪魔超人でありながら親しい関係のため、正義超人と悪魔超人との壁を全く気にしないこの従兄弟には困ったものだ。毎度来るたびに、スプリングマンからの小言も聞き飽きた。来るならこっそりと来てくれればいいのだが、俺とは真反対の純白な彼では目立って仕方がない。
「前に好きな子ができたって教えただろう?」
「あーそうだな」
白い羽根を撒き散らしながら嬉しそうに報告しに来て、スプリングマンにぐちぐち言われながらその羽根を片付けたのを思い出した。
「それから彼女にアプローチをしてるんだが、まったく上手くいかないんだ!どうしてだと思う!?」
「…」
俺が知るかと口から出そうになったが、余計に駄々を捏ねそうだとグッと堪える。
「…とりあえず、どんなアプローチをしてるのか教えてくれ」
「えっと、毎日は多いだろうから週に4回。花を持って彼女に会いに行ってるよ」
『週4も多いだろ』と言いそうになったが、話が拗れるので口にするのを我慢する。
「…ちょっとどんな感じかやってみろ」
「え、ブラックに?ちょっとやだなぁ」
「よし帰れ。話は終わりだ」
「ごめんごめん!やるよ!意地悪だなぁ」
強制的に返してやろうと俺が構えるのを、慌ててペンタゴンが止めた。
「おほん!じゃあ昨日やった事をやるね。昨日は薔薇を99本渡したんだ。そして、彼女にこう伝えた…薔薇の本数には意味があってね。99本は永遠の愛っていう意味があるんだ。この薔薇の花束に誓って、君に永遠の愛を…」
「重い」
想像の斜め上を行く彼の発言に、最後まで聞かずぴしゃりと言い放った。
「どうして!?今までの女の子達はこれで喜んでたのに!」
「常にそんな事言ってんのか…それだろ原因」
「え?」
本当にわかっていないのか、首を傾げる従兄弟にため息をつく。
「誰にでもそんな事言ってるから、信用されないんだろ。言ってる内容はくそ重いが、言葉が軽いんだよ」
お前の羽根みたいにとまでは、可哀想なので言わなかった。
「そ、そんな…!私は本気で言ってるのに!どうしたらいいのブラック!」
「簡単だ、その甘ったるくて軽い発言をやめろ。テンプレートで構わないから、真面目に向き合ってみればいい」
なんで悪魔超人がこんなアドバイスをしないといけないのか。でも仕方がない、彼はこれでも可愛い従兄弟なのだから。
「なるほど…相手が緊張しないようにとフランクに行き過ぎたんだね。わかったよ!早速明日それで行ってみる!」
「おい昨日会ったんだろ、そんなすぐに…」
「ありがとうブラック!また来るね〜!」
彼は話を聞かずに、白い羽根を広げて飛び立っていってしまった。
「アドバイス聞きに来といて、最後まで聞かねぇのか」
小さくなっていく白い姿に、またしても大きなため息をついた。
「うわぁぁぁ〜ん!ブラックぅ!」
次の日、またしても真っ白な羽根をバタつかせ俺の元へとやってくる男。
「どうしてくれるんだい!君のいう通りにやってみたら、彼女がさらに離れちゃったよ!」
聞けば、真面目に告白をしてみたらいつもと違いすぎてさらに距離を取られてしまったらしい。
「私はあの子が好きなのに〜!」
バサバサと翼を動かすせいで、あちこちに羽根が舞う。これをまた俺が掃除するのかとうんざりした気持ちで、ふわふわと舞う羽根を見ていた。
「どうしたらいいんだ…フランクに言ってもダメ。真面目に言ってもダメ…もう、お手上げだよ!」
「じゃあ諦めろ」
「嫌だ!私はあの子が好きなんだ!」
変な所で頑固なこいつは、めそめそしながらもどうにか仲良くなりたいと必死に考えていた。
「…はぁ。そもそも聞く相手を間違えてるんだ、俺が人間の女の事なんてわかるか」
「それでも今まで私が困っていた時に、ブラックは助けてくれた。それだけで聞く価値はあるんだよ」
そう言ってぶつぶつと独り言を言いながら次の作戦を練っている彼を見て、またため息をつく。どうやら随分と自分の事を信頼しているようで、突き放す事ができなくなってしまった。
「…わかった。ちゃんとアドバイスしてやるから、最後まで話を聞け」
「本当かい!?」
顔を上げた彼が嬉しそうにしている。
「あぁ、だがこれはお前の忍耐力が必要だ。俺がいいと言うまで、絶対に我慢しろ」
「わかったよ。で、何を我慢すればいいんだい?」
「その女に会うのをやめろ」
そう言えば、この世の終わりのような顔をして地面に崩れ落ちた。
「ど、どうして!?」
「押してダメなら引いてみろっていう言葉があるだろ。お前は押しすぎなんだ、少しは様子を見てみろ」
「でももし私がいない間に言い寄ってくる奴がいたらどうするんだい!?」
「それは心配するな、変な虫が寄りつかないよう俺が見といてやる。そうだな…一週間くらい近寄らないようにしろ」
「い、一週間も彼女に会えないなんて!死んでしまうよ!」
「死ぬわけないだろ。一週間我慢すれば、一生側にいられるかもしれないんだ。少しの間、我慢しろ」
ペンタゴンはしばらく葛藤しながらも、最終的に頷き俺の言った通りにする事にした。
それから一週間後。
「おーい!ブラック〜!」
ご機嫌な様子でペンタゴンがこちらへと向かってくる。
「君のアドバイスのおかげで、彼女とお付き合いできる事になったよ!」
「そうか、そいつは良かったな」
「でも彼女、久しぶりに顔を見たらすごくやつれていてね…何があったのって聞いても、よくわからないって言うんだ」
「…気にするな。お前と一緒にいれば元気になるだろ」
「本当かい?じゃあ、早速彼女を誘って空中デートにでも行ってくるよ!」
「あぁ、そうしろ」
彼は元気よく飛び立っていくと、すぐさま見えなくなった。
「…あいつ気付いてんのか?あの女に寄ってくるのは生きてる奴じゃねぇって事」
一週間、様子を見ていて気づいた事。彼の好きな相手は何かと不運に付き纏われ、ろくな目に合っていない。不思議に思いカーメンに頼んで探りを入れれば、どうやら悪霊を引きつける性質を持っているらしい。彼女本人は気づいてないようで、日に日に弱っていく様子を見て不安になる。
(あいつはこれのどこに惚れたんだ…)
悪霊が呼ぶ不運のせいで人から怒鳴られ、つまづいて転ぶわの踏んだり蹴ったり。自信をなくし俯いた顔からは、惹かれる要素などない。そこで気づいた。
「あぁ…あいつは正義超人だった」
あまりにも不運な彼女を救いたいという気持ちが、どう転んだのかわからないが好意へと変わったらしい。
(無意識に自分がいないと彼女がダメになるとか思ってそうだな…)
少し愛が重い彼が心配になった。
「まぁ、悪霊よりか全然いいだろ。あんな明るい男が隣にいれば悪霊も逃げる」
そんな事をぼんやりと考えながら、落ちていた真っ白な羽根を拾い上げたのだった。
ここは悪魔超人界。常に薄暗く陰湿な雰囲気のここへ、場違いな男がやってくる。
「…おい、あんまりここには来るなって言ってるだろ」
「言われたけどさ!でも、君に聞いてほしいんだよ!」
そう言って、従兄弟であるペンタゴンは白い翼をバタつかせて俺に縋りついた。
「…今度は何なんだ」
俺が悪魔超人でありながら親しい関係のため、正義超人と悪魔超人との壁を全く気にしないこの従兄弟には困ったものだ。毎度来るたびに、スプリングマンからの小言も聞き飽きた。来るならこっそりと来てくれればいいのだが、俺とは真反対の純白な彼では目立って仕方がない。
「前に好きな子ができたって教えただろう?」
「あーそうだな」
白い羽根を撒き散らしながら嬉しそうに報告しに来て、スプリングマンにぐちぐち言われながらその羽根を片付けたのを思い出した。
「それから彼女にアプローチをしてるんだが、まったく上手くいかないんだ!どうしてだと思う!?」
「…」
俺が知るかと口から出そうになったが、余計に駄々を捏ねそうだとグッと堪える。
「…とりあえず、どんなアプローチをしてるのか教えてくれ」
「えっと、毎日は多いだろうから週に4回。花を持って彼女に会いに行ってるよ」
『週4も多いだろ』と言いそうになったが、話が拗れるので口にするのを我慢する。
「…ちょっとどんな感じかやってみろ」
「え、ブラックに?ちょっとやだなぁ」
「よし帰れ。話は終わりだ」
「ごめんごめん!やるよ!意地悪だなぁ」
強制的に返してやろうと俺が構えるのを、慌ててペンタゴンが止めた。
「おほん!じゃあ昨日やった事をやるね。昨日は薔薇を99本渡したんだ。そして、彼女にこう伝えた…薔薇の本数には意味があってね。99本は永遠の愛っていう意味があるんだ。この薔薇の花束に誓って、君に永遠の愛を…」
「重い」
想像の斜め上を行く彼の発言に、最後まで聞かずぴしゃりと言い放った。
「どうして!?今までの女の子達はこれで喜んでたのに!」
「常にそんな事言ってんのか…それだろ原因」
「え?」
本当にわかっていないのか、首を傾げる従兄弟にため息をつく。
「誰にでもそんな事言ってるから、信用されないんだろ。言ってる内容はくそ重いが、言葉が軽いんだよ」
お前の羽根みたいにとまでは、可哀想なので言わなかった。
「そ、そんな…!私は本気で言ってるのに!どうしたらいいのブラック!」
「簡単だ、その甘ったるくて軽い発言をやめろ。テンプレートで構わないから、真面目に向き合ってみればいい」
なんで悪魔超人がこんなアドバイスをしないといけないのか。でも仕方がない、彼はこれでも可愛い従兄弟なのだから。
「なるほど…相手が緊張しないようにとフランクに行き過ぎたんだね。わかったよ!早速明日それで行ってみる!」
「おい昨日会ったんだろ、そんなすぐに…」
「ありがとうブラック!また来るね〜!」
彼は話を聞かずに、白い羽根を広げて飛び立っていってしまった。
「アドバイス聞きに来といて、最後まで聞かねぇのか」
小さくなっていく白い姿に、またしても大きなため息をついた。
「うわぁぁぁ〜ん!ブラックぅ!」
次の日、またしても真っ白な羽根をバタつかせ俺の元へとやってくる男。
「どうしてくれるんだい!君のいう通りにやってみたら、彼女がさらに離れちゃったよ!」
聞けば、真面目に告白をしてみたらいつもと違いすぎてさらに距離を取られてしまったらしい。
「私はあの子が好きなのに〜!」
バサバサと翼を動かすせいで、あちこちに羽根が舞う。これをまた俺が掃除するのかとうんざりした気持ちで、ふわふわと舞う羽根を見ていた。
「どうしたらいいんだ…フランクに言ってもダメ。真面目に言ってもダメ…もう、お手上げだよ!」
「じゃあ諦めろ」
「嫌だ!私はあの子が好きなんだ!」
変な所で頑固なこいつは、めそめそしながらもどうにか仲良くなりたいと必死に考えていた。
「…はぁ。そもそも聞く相手を間違えてるんだ、俺が人間の女の事なんてわかるか」
「それでも今まで私が困っていた時に、ブラックは助けてくれた。それだけで聞く価値はあるんだよ」
そう言ってぶつぶつと独り言を言いながら次の作戦を練っている彼を見て、またため息をつく。どうやら随分と自分の事を信頼しているようで、突き放す事ができなくなってしまった。
「…わかった。ちゃんとアドバイスしてやるから、最後まで話を聞け」
「本当かい!?」
顔を上げた彼が嬉しそうにしている。
「あぁ、だがこれはお前の忍耐力が必要だ。俺がいいと言うまで、絶対に我慢しろ」
「わかったよ。で、何を我慢すればいいんだい?」
「その女に会うのをやめろ」
そう言えば、この世の終わりのような顔をして地面に崩れ落ちた。
「ど、どうして!?」
「押してダメなら引いてみろっていう言葉があるだろ。お前は押しすぎなんだ、少しは様子を見てみろ」
「でももし私がいない間に言い寄ってくる奴がいたらどうするんだい!?」
「それは心配するな、変な虫が寄りつかないよう俺が見といてやる。そうだな…一週間くらい近寄らないようにしろ」
「い、一週間も彼女に会えないなんて!死んでしまうよ!」
「死ぬわけないだろ。一週間我慢すれば、一生側にいられるかもしれないんだ。少しの間、我慢しろ」
ペンタゴンはしばらく葛藤しながらも、最終的に頷き俺の言った通りにする事にした。
それから一週間後。
「おーい!ブラック〜!」
ご機嫌な様子でペンタゴンがこちらへと向かってくる。
「君のアドバイスのおかげで、彼女とお付き合いできる事になったよ!」
「そうか、そいつは良かったな」
「でも彼女、久しぶりに顔を見たらすごくやつれていてね…何があったのって聞いても、よくわからないって言うんだ」
「…気にするな。お前と一緒にいれば元気になるだろ」
「本当かい?じゃあ、早速彼女を誘って空中デートにでも行ってくるよ!」
「あぁ、そうしろ」
彼は元気よく飛び立っていくと、すぐさま見えなくなった。
「…あいつ気付いてんのか?あの女に寄ってくるのは生きてる奴じゃねぇって事」
一週間、様子を見ていて気づいた事。彼の好きな相手は何かと不運に付き纏われ、ろくな目に合っていない。不思議に思いカーメンに頼んで探りを入れれば、どうやら悪霊を引きつける性質を持っているらしい。彼女本人は気づいてないようで、日に日に弱っていく様子を見て不安になる。
(あいつはこれのどこに惚れたんだ…)
悪霊が呼ぶ不運のせいで人から怒鳴られ、つまづいて転ぶわの踏んだり蹴ったり。自信をなくし俯いた顔からは、惹かれる要素などない。そこで気づいた。
「あぁ…あいつは正義超人だった」
あまりにも不運な彼女を救いたいという気持ちが、どう転んだのかわからないが好意へと変わったらしい。
(無意識に自分がいないと彼女がダメになるとか思ってそうだな…)
少し愛が重い彼が心配になった。
「まぁ、悪霊よりか全然いいだろ。あんな明るい男が隣にいれば悪霊も逃げる」
そんな事をぼんやりと考えながら、落ちていた真っ白な羽根を拾い上げたのだった。
