海中トライアングル

今日も船の掃除をするためにモップとバケツを用意していると、ドンと大きな影に挟まれる。
「ねぇねぇお嬢さん。掃除もいいけど、おにーさん達と楽しい事しなーい?」
振り返ればペンギンさんとシャチさんが、にこにこしながら私を見ていた。
「こっち来て」
掃除道具を取り上げられると二人に背中を押され、とある部屋の前に連れて行かれる。
「一名様、ご来店でーす」
そう言ったペンギンさんに背中を押されて部屋に入る。部屋の中には椅子が一つ、その横に机があり大きな白い布に覆われていた。
「はい、ここ座って〜」
椅子へと座れば、シャチさんが机を覆っていた白い布を取った。
「よし、じゃあやるか!」
ばさりと音がして肩の上から何かに覆われた。ゆっくりと目を開ければ先ほどテーブルにかけられていた布が、自分の首から下を覆うようにかけられている。
「さ〜て、お客様〜?今日はどういった髪型にしますか〜?」
困惑していると目の前に椅子が置かれ、ペンギンさんが大きな鏡を持って座った。
「えっとぉ〜傷んじゃってる所全部切ってもらう感じで〜今よりもっと可愛くしてほしいな!」
「カマ言葉こわ、なんでお前が決めてんだよ」
「失敗したらマジで許さないから、後で〆る〜♪」
「おい!変なプレッシャーかけんな!」
困っていると、後ろでシャチさんが一つにまとめていた髪を解き櫛を通し始めた。
「ん〜まぁ、確かに傷んでんな〜バッサリ切っちゃうか!これから暑くなるし、長い方が好きならまた伸ばせばいいしな!」
「おれはロングの方がタイプだけど、可愛かったらどっちでもいいな〜!」
「お前に聞いてねぇよ。じゃあ切ってくぞ〜」
背後でザクザクと音がし始める。未だに焦っていると、ペンギンさんがさっと前髪に触れた。
「前髪も伸びてるな〜こっちもバッサリ切っちゃおうか!」
「あ、勝手な事すんな!バランス悪くなんだろ!」
「大丈夫大丈夫!長すぎる所落とすだけだから。調整代は残しとくって!」
くるりとハサミを手にすると、顔の前に近づける。
「動くなよ。怪我するからな〜」
そう言われ、私は身体が動かないよう全身に力を込め目を閉じる。
「はい、できた〜これで前がよく見える」
恐る恐る目を開ければ、今まで伸びきった前髪で隠れていた視野が随分と広くなった。
「ほら見て!こっちんが可愛い!」
「やだホント!」
「お前もカマ言葉使ってんじゃねぇか」
「うつったんだよ」
わいわいと二人が話しているうちに、少しずつ頭が軽くなっていく。最後にシャチさんが目の前に来て前髪を整えると、首に巻かれていた白い布を取り払われた。
「はい!いっちょ出来上がり!」
「やだ〜!超可愛い〜!」
「ほんとほんと〜!他の海賊に攫われないか不安になる〜!」
「前髪はさーぱっつんの方が可愛くない?」
「じゃあ今度はもうちょっと切ってみる?」
二人が遠慮なく髪の毛に触れる。
「いや、まじ可愛くできた。おれの腕すごくね?まぁもとが良いから当たり前か」
「お前二割、お嬢さん八割だな」
そして最後にするりと頬を撫でられる。
「「ほんと、まじ可愛い」」
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