アラバスタの守護神に恋をした

「ペル様〜!」
今日はえらく上から聞こえると思えば、塀の上に登ってこちらを見ている彼女がいた。
「…どうした」
声色から判断すると、大した用事ではなさそうだ。ならばいつものアレであろう。返事をしてやれば、嬉しそうに笑った。
「ペル様今日もかっこいいです!白い衣装が映えてます!」
「……はぁ、まったくお前は。なんなんだ毎日」
「よっ!アラバスタの守護神様!」
「話を聞け」
「今のはちょっと軽々しくて不敬ですかね?」
「気にする所はそこだけじゃないだろう」
毎日顔を合わせる度に彼女はこうしておれに色んな言葉を投げかけ、好きなだけ言うと満足して去っていく。全く意味がわからない。
「あぁ、あれか」
「知っているのか」
チャカにその事を話せば面白そうに笑った。
「前に聞いたんだ、知りたいか?」
直属の上司が知らずどうしてお前が知っているのかという不満が伝わったのか、彼はまたしても楽しそうに笑い話し始めた。

「チャカ様知ってますか?女の子は可愛いと言われると可愛くなるんですよ」
「ふむ」
何の話をしていてこんな会話になったのか覚えていないが、突拍子もない話を始めるのは大体彼女から。時々役に立つ事も聞けるので楽しみでもある。
「なので、私これから毎日ペル様を褒めまくろうと思うんです」
「うん?」
「女の子が可愛いと言われてさらに可愛くなるのなら!ペル様にかっこいいと言えばさらにかっこよくなるという事です!」
「そうか」
また変な事を言い出したと思ったが、面白いのでそのままにする事にした。
「かっこいい、強い、最強。これらを毎日言い続ければ、ペル様は超かっこいい最強の守護神になれると思うんです」
「それはすごいな」
なんて真剣な顔で言うのだろう。吹き出してしまいそうなのを必死に堪えた。
「言葉の力ってすごいですよね〜もし、チャカ様に恋人ができたら毎日褒めてあげてください。普通に嬉しいと思いますし、それに加えて可愛くなるんだったら良くないですか?」
「そうだな、心得た。教えてくれてありがとう」
「あ、チャカ様も毎日言いましょうか?」
「私はまだいいさ。まずはペルからにしておこう」
「承知です!」

「しれっと逃げたなお前…」
「別に悪口じゃないんだ、いいだろう?」
「だからと言って毎日言われてみろ。かなり恥ずかしいんだぞ」
誰といてもお構いなく褒めちぎってくる彼女にはほとほと困っている。
「彼女はお前に超かっこよくて最強の守護神になってほしいんだ」
「その幼子が言うような文言はどうにかならないのか」
「それは彼女だからな」
「…」
悪い事ではないのだが、もう少し控えてはくれないだろうかと頭を悩まる。
「…ちょっと待て。あれの言う事がその通りだとしたら、あれも言った通りになるという事か?」
「彼女が言い出した事だからな」
チャカはおれが何をしようとしているのかわかったのか、楽しそうに笑った。

「〇〇」
「はい、ペル様」
おれは早速計画を実行するため、休憩中だった彼女に声をかけた。
「いや、その…とくにこれと言って用事はないんだが…」
しかし、いざ言葉にして伝えようとするが意外と言う方も恥ずかしい事に気づく。
(よく毎日怯まずに言えたものだ…)
彼女の神経の図太さに感心しながら、自身も覚悟を決める。
「…ごほん!いつもお前は怒られてばかりだから、たまには褒めてやらないとと思ってな」
「え?」
「普段は元気の塊みたいなお前だが、隼を操る時の真剣な表情は特にいい。情報も間違いなく伝達ができているし、抜けがない。自身の未熟な部分を理解できているからこそ、何を優先すべきかわかっているのもいい事だ」
「ペ、ペル様…?」
「いずれ成長したお前は、冷静に物事を考え指揮が取れるほどの人間に育つだろう」
少し褒めすぎたかと彼女の様子を見れば、今まで見た事ないくらい驚いた顔をしていた。
「どうした」
「ペル様…頭大丈夫ですか…?」
「お前に一番言われたくない言葉だな」
みるみる彼女の顔が青ざめる。
「た、大変だ!ペル様がおかしくなってる!先輩先輩先輩!」
「どうした!」
「ペル様が変なんです!」
「はぁ?」
「ペル様が私をベタ褒めした!」
「そりゃあ大変だ!医者連れてこい!」
「……」
ただ褒めただけなのに、どうしてこのまで大騒ぎになるのだろうか。
「はぁ、本当に頭が痛くなってきた…」

後日、この騒ぎの一部始終を聞いたチャカはこうなる事をわかっていたかのように『だろうな』と腕を組んで頷いた。
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