海中トライアングル
「いいか、心配だからついて行くのは構わない。だがなこいつの買い物に逐一口出ししてたら、いつまで経っても買い出しに行かせられないだろうが。大人しく見てろ」
前回の外出の一件でそうキャプテンにきつく言われ、今回はついて行くのをやめようと思っていた。思っていたのだが。
「いやーやっぱりついてきちゃうよな」
「だって心配だもんなー」
彼女から何メートルか離れた場所で様子を伺うおれ達。
「さーて、今日はちゃんと好きな物買えるかな?」
「この前はメモ帳とペンだけだったもんな。あれから色んなもん食べさせたし、本も読ませたから何か興味持っただろ!」
未だに奴隷だった頃の名残が抜けず毎日雑用ばかりする彼女を、なんとか年頃の女の子のようにしてあげたいと日々取り組んできた。その成果を見るためにも、今日は口出ししないと誓う。
「あ、クラゲが止まったぞ!」
「なんだなんだ?何の店?」
建物の影から覗けば、オシャレな外装にハサミの看板がかけられていた。
「美容院?」
「えっ!?待って!?髪の毛はおれがいつも切ってたのに!?もしかして嫌だった!?」
彼女はゆっくりと店内へと入って行く。
「え!?髪の毛ならおれが切るから!他のヤツに切られるなんて嫌なんだけど!!」
止めに行こうと飛び出したシャチを押さえつける。
「なにすんだ!離してくれ!」
「今日は黙って見てるって決めただろ!あいつが決めた事だ、男なら綺麗になったあいつを褒めてやるんだ…!」
「うぅ…おれの楽しみが…」
がっくりと力なく座り込んだシャチの肩に手を置いた。いじけるシャチを放置して待っていると、彼女がいつもとは違いふわふわとした髪型になって出てきた。
「ちくしょー!可愛いー!でもおれの方がもっといい感じにできる!!」
さっきまでいじけていたシャチがおれの頭を押し退けて彼女を見る。
「はいはい。今度はどこに行くんだろうな〜」
上に乗っかったシャチを退かし、彼女の次の行き先を見つめれば本屋へと入っていった。
「本か、何か読みたいものでもあったのか?」
「あ、出てきた」
彼女が手にしていたのは料理のレシピ本だった。
「な…なんでおれと言う先生がいながら、そんな本に頼るんだよ!この浮気者ーっ!!」
彼女は掃除、洗濯などの雑用は完璧だったが料理はした事がなく、いつもペンギンに教えてもらっていたのだ。
「作りたいものがあるならおれに聞けばいいだろ!?そんな紙の塊なんておれが燃やしてやる!」
「落ち着けって!今日は静観するんだろ!お前さっきおれに言ったじゃねぇか!」
今度は飛び出そうとしたおれを、シャチが押さえつけた。
「嫌だー!おれに頼ってー!」
そんな叫びも虚しくご機嫌な表情で船へと戻る彼女を見送り、がっくりと肩を落とすおれ達二人。
「…どうする?この後」
「どうするも何も…おれ以外のヤツが切った髪型を見るのは今のおれには辛い!」
「おれも!!おれがいるのに本を見ながらキッチンに立たれたら辛くて死ぬ!」
「「やけ酒だ!!」」
おれ達二人は肩を組んで街へと引き返すのだった。
「ただいま戻りました」
「クラゲか…その様子だと、アイツらに邪魔はされなかったみたいだな」
「アイツら?」
「いや、気にしなくていい。で、何を買ったんだ?」
彼女は持っていた本を、この船の船長へ見せる。
「…レシピ本?料理ならペンギンにでも聞けばいいだろう」
「たまには自分だけで作って喜んでもらいたくて…」
「…髪の毛切ったのか。いつもシャチにやってもらうのに」
「はい。最近シャチさん忙しそうだし、疲れていると思って…」
「…おれが言えた事じゃないが、そういうのは本人達にはっきり言っておいた方がいいぞ。特にアイツらには」
「?」
「二日酔いの薬を用意する。お前も手伝え」
「は、はい」
突然椅子から立ち上がった船長に、私は慌ててついて行く。
そして次の日、船のすぐ近くの林の中で眠りについてしまった二人の男をベポが拾ってきた。
「キャプテーン、シャチとペンギンいたよ」
「よし、そこら辺に寝かせてろ。出発する」
「アイアイキャプテン!」
「クラゲ、そいつら起きたら昨日用意した薬を飲ませろ。船内で吐かれると困る」
「は、はい」
私は薬の瓶を持って、廊下に雑に寝かされた男達の側に座る。
「う〜ん、もっとおれらを頼ってくれよぉ…」
「頼ってくれないと寂しいんだよぉ…」
「厄介な先輩達だな〜」
ベポさんがそう言いながら、飲み水の入ったタンクをその隣に置いた。
前回の外出の一件でそうキャプテンにきつく言われ、今回はついて行くのをやめようと思っていた。思っていたのだが。
「いやーやっぱりついてきちゃうよな」
「だって心配だもんなー」
彼女から何メートルか離れた場所で様子を伺うおれ達。
「さーて、今日はちゃんと好きな物買えるかな?」
「この前はメモ帳とペンだけだったもんな。あれから色んなもん食べさせたし、本も読ませたから何か興味持っただろ!」
未だに奴隷だった頃の名残が抜けず毎日雑用ばかりする彼女を、なんとか年頃の女の子のようにしてあげたいと日々取り組んできた。その成果を見るためにも、今日は口出ししないと誓う。
「あ、クラゲが止まったぞ!」
「なんだなんだ?何の店?」
建物の影から覗けば、オシャレな外装にハサミの看板がかけられていた。
「美容院?」
「えっ!?待って!?髪の毛はおれがいつも切ってたのに!?もしかして嫌だった!?」
彼女はゆっくりと店内へと入って行く。
「え!?髪の毛ならおれが切るから!他のヤツに切られるなんて嫌なんだけど!!」
止めに行こうと飛び出したシャチを押さえつける。
「なにすんだ!離してくれ!」
「今日は黙って見てるって決めただろ!あいつが決めた事だ、男なら綺麗になったあいつを褒めてやるんだ…!」
「うぅ…おれの楽しみが…」
がっくりと力なく座り込んだシャチの肩に手を置いた。いじけるシャチを放置して待っていると、彼女がいつもとは違いふわふわとした髪型になって出てきた。
「ちくしょー!可愛いー!でもおれの方がもっといい感じにできる!!」
さっきまでいじけていたシャチがおれの頭を押し退けて彼女を見る。
「はいはい。今度はどこに行くんだろうな〜」
上に乗っかったシャチを退かし、彼女の次の行き先を見つめれば本屋へと入っていった。
「本か、何か読みたいものでもあったのか?」
「あ、出てきた」
彼女が手にしていたのは料理のレシピ本だった。
「な…なんでおれと言う先生がいながら、そんな本に頼るんだよ!この浮気者ーっ!!」
彼女は掃除、洗濯などの雑用は完璧だったが料理はした事がなく、いつもペンギンに教えてもらっていたのだ。
「作りたいものがあるならおれに聞けばいいだろ!?そんな紙の塊なんておれが燃やしてやる!」
「落ち着けって!今日は静観するんだろ!お前さっきおれに言ったじゃねぇか!」
今度は飛び出そうとしたおれを、シャチが押さえつけた。
「嫌だー!おれに頼ってー!」
そんな叫びも虚しくご機嫌な表情で船へと戻る彼女を見送り、がっくりと肩を落とすおれ達二人。
「…どうする?この後」
「どうするも何も…おれ以外のヤツが切った髪型を見るのは今のおれには辛い!」
「おれも!!おれがいるのに本を見ながらキッチンに立たれたら辛くて死ぬ!」
「「やけ酒だ!!」」
おれ達二人は肩を組んで街へと引き返すのだった。
「ただいま戻りました」
「クラゲか…その様子だと、アイツらに邪魔はされなかったみたいだな」
「アイツら?」
「いや、気にしなくていい。で、何を買ったんだ?」
彼女は持っていた本を、この船の船長へ見せる。
「…レシピ本?料理ならペンギンにでも聞けばいいだろう」
「たまには自分だけで作って喜んでもらいたくて…」
「…髪の毛切ったのか。いつもシャチにやってもらうのに」
「はい。最近シャチさん忙しそうだし、疲れていると思って…」
「…おれが言えた事じゃないが、そういうのは本人達にはっきり言っておいた方がいいぞ。特にアイツらには」
「?」
「二日酔いの薬を用意する。お前も手伝え」
「は、はい」
突然椅子から立ち上がった船長に、私は慌ててついて行く。
そして次の日、船のすぐ近くの林の中で眠りについてしまった二人の男をベポが拾ってきた。
「キャプテーン、シャチとペンギンいたよ」
「よし、そこら辺に寝かせてろ。出発する」
「アイアイキャプテン!」
「クラゲ、そいつら起きたら昨日用意した薬を飲ませろ。船内で吐かれると困る」
「は、はい」
私は薬の瓶を持って、廊下に雑に寝かされた男達の側に座る。
「う〜ん、もっとおれらを頼ってくれよぉ…」
「頼ってくれないと寂しいんだよぉ…」
「厄介な先輩達だな〜」
ベポさんがそう言いながら、飲み水の入ったタンクをその隣に置いた。
