水仙を絶つ

 どうしてこうなったのか、思い出そうとしても頬に押し当てられた柔らかな感触が思考を阻害し、もがこうとする体をしなやかな肌に縫い止められていく。
 耳元に熱い吐息がかかり、静かに、と零された声音の艶に思わず喉を鳴らした。

「——いい?」

「——ああ」

 短い確認はすぐに互いの息を求めるように重なり合い、淫靡な音を立てて深い口付けを交わす二人。
 そこへ挟まれてこんな音を聞かせられ、一体どんな罰なんだと喚きたくなる。
 走って高鳴っていた心臓も、別の要因でドクドクと煩くて仕方がない。
 鼻にかかるような声を上げ、舌の交わる音が狭い布の中では木霊するようで、さらにはぎゅうぎゅうと二人の間に挟まれたとなればこちらまでもが酸欠になりそうだった。
 そんな折、ガサッと一際大きな音が布の外から聞こえ、どきりと心臓が跳ね上がる。

「なんだ……チッ、変なところで盛りやがって」

 未だに響く舌の絡まる音に、去って行く足音は酷く苛立っており、それが追っ手の者であることは十分に理解していた。
 だからこそ、再度ガサリと音がしたことで、殊更に淫猥な音を立てて口吸いをしていた二人が今度は舌打ちをしたことに、驚くことは無かった。
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