露草を抱く

 後々思い返してみれば、彼女のことを特段意識して来なかったわけではない。
 けれど、どうしたってむくれる頬の丸さや男勝りに駆け回る膝小僧の擦り傷ばかりに目がいき、同い歳というのにどこか歳下のようにすら思っていたのだ。女は成熟するのが男よりも早いと言うものの、彼女の成熟はまだまだ先のように思っていた。

「ごめんね、私の方が先だったみたい」

 唖然とする面々を置き去りに、先頭にいた自身の肩に手を置いたのは、いつの間にか歩み寄っていた彼女の血に塗れた手であり、小袖を羽織っただけの彼女へとゆるゆると視線を向ける。
 白い肌に飛び散る鮮血は、たらりと妖艶にも彼女に意図せぬ模様を描き出し、くらりと脳内を焼かれる心地に眉を顰める。

「ふふっ、悔しいって顔に書いてある」
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