メイン番外編〜シリーズ・茶屋〜
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苦肉の策 ー開店前①ー
※夢主視点。
寒さも日毎に緩み、少しずつ春の気配を感じる今日この頃。
……なんて、のどかな空気をしみじみと感じる暇も、きっと今日は無いのだろう。
ここは忍術学園から少し離れた、とある街道。
見頃を迎えた桜並木が青空に映える。…そんな光景を尻目に、かつて茶店だったらしい空き店舗を綺麗にした建物の中では"準備"に追われる声が慌ただしく飛び交う。
「そっちは仕込み終わったか?」
「おーい、ちょっとこっち手伝ってくれ!」
「せんぱぁい、お砂糖どこですかあ?」
「弁当の数、これで足りるかな?」
「さっきまで使ってただろう?近くに無いかよく探せ!」
「セッティングはこれで良し、と。あ、それも運ぼうか。」
「おう、頼む。」
「これどこに置くんだっけ?」
私たち忍術学園の生徒は今、一大プロジェクトに取り組もうとしていた。
…プロジェクト、と言っても、例によって学園長先生の突然の思いつきによるものだけれど。
「一通りは済んだか…。よし皆、一旦こっちに集まれ。」
そのプロジェクトの、全体を仕切る取りまとめ役を任されている文次郎が号令をかけると、その場の全員が作業の手を止めて集まってくる。
社会勉強、社会奉仕活動の一環として、忍術学園の生徒たちだけで茶屋を開き、運営すること。
それが、今回学園長先生から課されたプロジェクトの内容だった。
季節は丁度、お花見シーズンに入っている。暖かい気候に、出かける人も増える時期だろう。
そこで私たちはこの期間限定の茶屋で、街道を通る人向けに持ち帰りのお弁当の販売と、店の中で一服できるお茶と茶菓子を提供することにしていた。
このプロジェクトを課されているのは主に私たち六年生で、更にそのサポート役として四年生と五年生、そして一年生からも乱太郎、きり丸、しんべヱ、喜三太が今回召集されていた。
集まった彼らの顔を見渡して、文次郎が声を張る。
「いいか?期間限定とは言えやるからには、手を抜くわけにはいかない。これも鍛錬の一つと思って、各々誠心誠意、全力で取り組むように。」
はい、という綺麗に揃った四、五年生の返事に一年生組の「はーい!」が重なって、思わず微笑ましい気持ちになっていると、文次郎の隣に立った仙蔵がこう言い添えた。
「…それと、六年い組の上町陽太は野外訓練中に足を骨折したため、今回参加することができなくなってしまった。そこで代わりに、双子の妹が手伝いに来てくれることになっている。」
その言葉に、ーーーーーーー何となく距離を取って立っていた私の方を、全員が振り返った。
…厨房の方でこっそり準備を手伝っていた時から、周りにチラチラと見られているなあとは感じ取っていたけれど。まあ、見慣れない姿がいればそれも仕方ない。
「まあ、そういうことで、ほれ。挨拶。」
文次郎に手招きで促されて、私は少し息を整えて、前の方に進み出る。
うわー、めっちゃ注目されてる当たり前だけど、と内心思いながら精一杯、自然な笑顔になるよう努める。
「…えっと、ひまりって言います。いつも兄がお世話になっております。動けない兄に代わって少しでもお役に立てるよう頑張るので、どうぞよろしくお願いします。」
今回、私はいつもみたいに顔を隠さず、もう真っ向から"双子の妹"設定を通すことにしていた。
なるべく抑え気味に、大人しめのトーンで挨拶し頭を下げる私に、今度はまばらに「よ、よろしくお願いします…」と返ってくる。彼らのその反応や表情を見回し、まあ、そうだろうなと心の中で苦笑した。
…正直これは、苦渋の選択だった。
学園長先生からは、無論私も例外なく参加するように言われている。
けど、正体がバレるリスクが上がるため、そのまま上町陽太としてここに来るわけにはいかない。
となれば、六年生全員に課されたこのプロジェクトをこなすためには、多少不審な存在に思われても、女の格好で出るしかないわけで。しかもその上で、陽太と同一人物だと思われてはいけない。
仙蔵からも、プロジェクトが始まる前に「くれぐれも張り切りすぎて、いつものお前のスペックを発揮するなよ?」と忠告されていたので、キャラ付けとして、私は努めて大人しく振る舞うことにしていた。
因みに、そうした作戦などの話をしていた時、近くにいた文次郎に「無理無理、速攻で化けの皮剥がれるに決まってんだろ」と笑いながら言われたので光の速さで鳩尾を殴っておいた。…それを最後に、私は"お淑やかな双子の妹・ひまり"に、精神のスイッチを切り替えた。
わざわざ化粧まで、いつもと違う系統にしてきたんだから。絶対にバレないよう、隠し通してみせる。
まだ戸惑っている様子の乱太郎、きり丸、しんべヱと並んで、もう一人の一年生の当番、喜三太はもう既に私の正体を知っているからかニコニコ笑いかけてくれてる。その笑顔に、少し癒された。
……そして五年生の中で一名、後ろの方でめちゃくちゃ笑いを堪えて俯いてる奴がいるけどあれは無視だ、無視。
「それじゃ、挨拶も済んだ所で仕事に取り掛かるぞ。」
文次郎が改めて全体にそう呼びかけると、戸惑いを若干残しつつ彼らはそれぞれの担当ブースに散らばっていった。
※夢主視点。
寒さも日毎に緩み、少しずつ春の気配を感じる今日この頃。
……なんて、のどかな空気をしみじみと感じる暇も、きっと今日は無いのだろう。
ここは忍術学園から少し離れた、とある街道。
見頃を迎えた桜並木が青空に映える。…そんな光景を尻目に、かつて茶店だったらしい空き店舗を綺麗にした建物の中では"準備"に追われる声が慌ただしく飛び交う。
「そっちは仕込み終わったか?」
「おーい、ちょっとこっち手伝ってくれ!」
「せんぱぁい、お砂糖どこですかあ?」
「弁当の数、これで足りるかな?」
「さっきまで使ってただろう?近くに無いかよく探せ!」
「セッティングはこれで良し、と。あ、それも運ぼうか。」
「おう、頼む。」
「これどこに置くんだっけ?」
私たち忍術学園の生徒は今、一大プロジェクトに取り組もうとしていた。
…プロジェクト、と言っても、例によって学園長先生の突然の思いつきによるものだけれど。
「一通りは済んだか…。よし皆、一旦こっちに集まれ。」
そのプロジェクトの、全体を仕切る取りまとめ役を任されている文次郎が号令をかけると、その場の全員が作業の手を止めて集まってくる。
社会勉強、社会奉仕活動の一環として、忍術学園の生徒たちだけで茶屋を開き、運営すること。
それが、今回学園長先生から課されたプロジェクトの内容だった。
季節は丁度、お花見シーズンに入っている。暖かい気候に、出かける人も増える時期だろう。
そこで私たちはこの期間限定の茶屋で、街道を通る人向けに持ち帰りのお弁当の販売と、店の中で一服できるお茶と茶菓子を提供することにしていた。
このプロジェクトを課されているのは主に私たち六年生で、更にそのサポート役として四年生と五年生、そして一年生からも乱太郎、きり丸、しんべヱ、喜三太が今回召集されていた。
集まった彼らの顔を見渡して、文次郎が声を張る。
「いいか?期間限定とは言えやるからには、手を抜くわけにはいかない。これも鍛錬の一つと思って、各々誠心誠意、全力で取り組むように。」
はい、という綺麗に揃った四、五年生の返事に一年生組の「はーい!」が重なって、思わず微笑ましい気持ちになっていると、文次郎の隣に立った仙蔵がこう言い添えた。
「…それと、六年い組の上町陽太は野外訓練中に足を骨折したため、今回参加することができなくなってしまった。そこで代わりに、双子の妹が手伝いに来てくれることになっている。」
その言葉に、ーーーーーーー何となく距離を取って立っていた私の方を、全員が振り返った。
…厨房の方でこっそり準備を手伝っていた時から、周りにチラチラと見られているなあとは感じ取っていたけれど。まあ、見慣れない姿がいればそれも仕方ない。
「まあ、そういうことで、ほれ。挨拶。」
文次郎に手招きで促されて、私は少し息を整えて、前の方に進み出る。
うわー、めっちゃ注目されてる当たり前だけど、と内心思いながら精一杯、自然な笑顔になるよう努める。
「…えっと、ひまりって言います。いつも兄がお世話になっております。動けない兄に代わって少しでもお役に立てるよう頑張るので、どうぞよろしくお願いします。」
今回、私はいつもみたいに顔を隠さず、もう真っ向から"双子の妹"設定を通すことにしていた。
なるべく抑え気味に、大人しめのトーンで挨拶し頭を下げる私に、今度はまばらに「よ、よろしくお願いします…」と返ってくる。彼らのその反応や表情を見回し、まあ、そうだろうなと心の中で苦笑した。
…正直これは、苦渋の選択だった。
学園長先生からは、無論私も例外なく参加するように言われている。
けど、正体がバレるリスクが上がるため、そのまま上町陽太としてここに来るわけにはいかない。
となれば、六年生全員に課されたこのプロジェクトをこなすためには、多少不審な存在に思われても、女の格好で出るしかないわけで。しかもその上で、陽太と同一人物だと思われてはいけない。
仙蔵からも、プロジェクトが始まる前に「くれぐれも張り切りすぎて、いつものお前のスペックを発揮するなよ?」と忠告されていたので、キャラ付けとして、私は努めて大人しく振る舞うことにしていた。
因みに、そうした作戦などの話をしていた時、近くにいた文次郎に「無理無理、速攻で化けの皮剥がれるに決まってんだろ」と笑いながら言われたので光の速さで鳩尾を殴っておいた。…それを最後に、私は"お淑やかな双子の妹・ひまり"に、精神のスイッチを切り替えた。
わざわざ化粧まで、いつもと違う系統にしてきたんだから。絶対にバレないよう、隠し通してみせる。
まだ戸惑っている様子の乱太郎、きり丸、しんべヱと並んで、もう一人の一年生の当番、喜三太はもう既に私の正体を知っているからかニコニコ笑いかけてくれてる。その笑顔に、少し癒された。
……そして五年生の中で一名、後ろの方でめちゃくちゃ笑いを堪えて俯いてる奴がいるけどあれは無視だ、無視。
「それじゃ、挨拶も済んだ所で仕事に取り掛かるぞ。」
文次郎が改めて全体にそう呼びかけると、戸惑いを若干残しつつ彼らはそれぞれの担当ブースに散らばっていった。