メイン番外編〜シリーズ・茶屋〜
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抑えきれない牽制 ーお昼時ー
※夢主視点
※血(怪我)表現あり、注意
※一部、ギリギリR15?(※言うほどでもないかもしれない)な表現あり
お昼時、忙しさのピークの頃だった。
気を付けていたのに、つい、バタバタとしてしまって。厨房近くで綾部とすれ違いざまに少しぶつかってしまい、そのはずみで片付ける途中のお皿を落として割ってしまった。
「わっ、ごめんなさい…!」
「おやまあ。大丈夫ですかあ?」
慌てるでもなくのんびりと綾部に声をかけられ、私は曖昧に苦笑を返しつつ割れたお皿を拾うためしゃがむ。
割れた音が響いたことを仙蔵が店内に向けて「失礼いたしました」と詫びてから、駆け寄ってきてくれた。
「何をやってるんだ、全く…」
「ごめん、すぐ片付けるから。」
「大丈夫ですかっ?!」
比較的近くにいた乱太郎も心配してくれたのか、駆け寄ろうとしてくれたけれど。私は飛び散った細かい破片に彼が触ってしまったら危ないと、焦った。
「乱太郎君、まだこっち来ちゃ駄目だよ…!」
転んで、顔に破片が当たったりしたら大変だ。そう思って来させないよう言いながら、手元をよく見ないまま急いで破片を集めようとしてしまい。
「ッ、」
「馬鹿、素手で触る奴があるか!」
人差し指の先に痛みが走った。仙蔵に怒られる、その間にも、切れた指先から僅かに血が滲む。
「大変、血が出てます…!」
「ちょっと切っちゃっただけだから、大丈ーーーーーーー」
余計な心配をかけさせてしまったことが申し訳なくて、安心させようと笑顔を作った、次の瞬間。
視界の外から伸びた手に、指を切った方の手首を掴まれ。
「っ?!?!」
振り返るのと同じタイミングで、切った指先を、いつの間にか隣にしゃがんでいた綾部にパクッと咥えられた。
私は硬直し、さしもの仙蔵も隣で、目を丸くさせている。
……というか、忙しく立ち働いていたはずの店内全員に、思いっきり注目されていた。
綾部に指を吸われるという、この光景を。
「ん。止まったみたいです。そんなに深くなくて良かったですねえ。」
全方位から見られていることに内心恥ずかしさが爆発している私とは対照的に、口から指を離した綾部は相変わらず何を考えているのか分からない無表情のままでのんびりと言う。
「……喜八郎お前な…」
仙蔵が呆れたように何か言いかけた時、また視界の外から伸びてきた別の手がまだ私の腕を掴んだままだった綾部の手を引き剥がした。
「…触んないで。」
「っ、た、タカ丸…」
キョトンと見上げる綾部を怒ったように睨みつけるタカ丸は、私の腕を掴んで立たせるとそのままグイッと引っ張る。
「あっ、待って、お皿片付けなきゃ…」
「こちらは私たちがやっておくから、裏で手当てしてこい。…乱太郎、すまないが一緒に行ってやってくれ。」
「は、はいっ」
仙蔵にお願いされた乱太郎がついてこようとする間も、タカ丸は黙って私をぐいぐい引っ張っていく。
「ねぇちょっと、これくらいでわざわざ連れて行ってくれなくてもいいから…」
声をかけると、休憩室の入り口の手前で振り返られる。綾部を睨みつけた時のように、その顔は怒っていた。
「もう、ひまりちゃんてば!皆に好き勝手にさせ過ぎだよ!」
「な、何をそんなに怒ってるのよ…?」
「僕のことはいっつも避けるくせに、他の皆とはあんなに仲良さそうにして!」
「そんなこと言われたって…」
その剣幕に、追いついても声をかけることができないでオロオロしている乱太郎をよそに、タカ丸は続ける。
「尾浜君とも楽しそうにして、…それに喜八郎にだって!!」
腕をギュッと強く掴まれ、思わず「痛っ」と呻いてしまった。
するとタカ丸はハッとした顔になり、「…!…ごめん…」とバツが悪そうに手を離した。
「おい斉藤、声もう少し抑えろよ。店に響くぞ?」
気まずい空気の中、部屋の中からひょこっと顔を出したのは、お昼休憩中だった留三郎。そしてその後ろから、同じく休憩組の平、不破(多分)、しんべヱも心配そうに控えめに覗いていた。
「た、タカ丸さん。とにかく今は、傷の手当てをしないと…。」
留三郎が声をかけたタイミングに合わせて、乱太郎が宥めるようにおずおずとそう言うと。
タカ丸は力無く曖昧に頷いて、「…ごめん。後、お願い。」と乱太郎に言い置いて、店に戻ろうとした。
「…あの、手当て、ちょっと待っててもらえる?」
私は乱太郎に声をかけてから、戸惑いつつも頷いたのを確認してタカ丸を追いかけた。
「タカ丸!」
少し行った先で、とぼとぼ歩いていた背中を呼び止めると振り返った相手を私は真っ直ぐ見る。
「ごめん。…知ってる仲だからと思って。タカ丸に嫌な思いさせてしまって、ごめんなさい。」
彼をぞんざいにあしらった、というつもりは勿論無かったけれど。
…タカ丸は、最初からずっと私のことを好きだと言っている。私はそれを知っているのに。
好きな相手からそっけなくされたらどんな気持ちになるか、私にだって想像がつくはずなのに。
幼馴染、という関係性にむしろ自分の方が甘んじて、本来の礼儀を欠いていたのかもしれない。
「…僕の方こそ、ごめん。怒鳴ったりして。」
シュン、としおれたように謝るタカ丸に、
「ううん。…手当てしてもらったら、私もすぐ戻るね。」
と、なるべく明るく笑いかけて見せると。
不意をついて私の手を取ったタカ丸に、もうとっくに血の止まっている指先を咥えられた。
「っ、ちょっと……っ」
生温かい口の中で、指を舌先に撫でられる感触に、背中がぞわぞわとする。
「……消毒。いいでしょ、これくらい。」
不貞たように、そんなことを言われる。指先に唇をくっつけたまま、真っ直ぐな瞳で。
「絶対僕が、ひまりちゃんのこと一番好きなんだからね。」
「……!」
吐息のかかる指先が、くすぐったい。
さっきまで不機嫌だったのはどこへやら、「顔、真っ赤だねぇ。」なんて言ってへらりと笑いかけてくる。調子に乗って…!
「〜っもう!恥ずかしいことするからじゃん!早く行ってってば!」
というか、この小っ恥ずかしい光景を休憩組&乱太郎に後方から、こっそり&ばっちり見られている気配がしているから。…すごく視線を感じる。とにかくタカ丸をこの場から退散させようとグイグイと背中を押し出すと、彼はすっかり上機嫌になった顔で、
「早く来てね、待ってるよ。」
なんて言ってその場を後にする。
…何だその、彼氏力ありますみたいなアピール感は。
恥ずかしくて仕方なかったけれど、仙蔵に怒られた手前、手当てをせずに戻る訳にはいかないので、羞恥を堪えつつ戻って乱太郎にお願いする。
手当てされる間、終始ニヤニヤしている留三郎に態の良い暇つぶしにされたり。
「もしかすると目撃しちゃったかもなあ…浮気現場?」
「うっさい!そんなんじゃない…!」
そうかと思えば気まずそうに、「僕らは何も見てませんでした」というような顔を作りつつ静かにお昼を取り続ける不破や平と。
「お姉さんって、タカ丸さんと"おつきあい"してるんですかあ?」
「しっ、してないしてない…!」
「僕も、おシゲちゃんって子と"おつきあい"してるんです〜!すごぉく可愛くて、いつも僕の鼻かんでくれて…」
「しんべヱ、今手当てしてるんだからちょっと静かにしててっ!」
興味津々といった顔で自分の惚気まで始めてしまうしんべヱに、私の手当てをしてくれながら乱太郎がイライラした様子で一喝したり。
早くここから出たいような、さりとて店にも戻り辛いような、複雑な気持ちでいっぱいで。大きなため息をつきそうになるのを、何とか堪えていた。
※夢主視点
※血(怪我)表現あり、注意
※一部、ギリギリR15?(※言うほどでもないかもしれない)な表現あり
お昼時、忙しさのピークの頃だった。
気を付けていたのに、つい、バタバタとしてしまって。厨房近くで綾部とすれ違いざまに少しぶつかってしまい、そのはずみで片付ける途中のお皿を落として割ってしまった。
「わっ、ごめんなさい…!」
「おやまあ。大丈夫ですかあ?」
慌てるでもなくのんびりと綾部に声をかけられ、私は曖昧に苦笑を返しつつ割れたお皿を拾うためしゃがむ。
割れた音が響いたことを仙蔵が店内に向けて「失礼いたしました」と詫びてから、駆け寄ってきてくれた。
「何をやってるんだ、全く…」
「ごめん、すぐ片付けるから。」
「大丈夫ですかっ?!」
比較的近くにいた乱太郎も心配してくれたのか、駆け寄ろうとしてくれたけれど。私は飛び散った細かい破片に彼が触ってしまったら危ないと、焦った。
「乱太郎君、まだこっち来ちゃ駄目だよ…!」
転んで、顔に破片が当たったりしたら大変だ。そう思って来させないよう言いながら、手元をよく見ないまま急いで破片を集めようとしてしまい。
「ッ、」
「馬鹿、素手で触る奴があるか!」
人差し指の先に痛みが走った。仙蔵に怒られる、その間にも、切れた指先から僅かに血が滲む。
「大変、血が出てます…!」
「ちょっと切っちゃっただけだから、大丈ーーーーーーー」
余計な心配をかけさせてしまったことが申し訳なくて、安心させようと笑顔を作った、次の瞬間。
視界の外から伸びた手に、指を切った方の手首を掴まれ。
「っ?!?!」
振り返るのと同じタイミングで、切った指先を、いつの間にか隣にしゃがんでいた綾部にパクッと咥えられた。
私は硬直し、さしもの仙蔵も隣で、目を丸くさせている。
……というか、忙しく立ち働いていたはずの店内全員に、思いっきり注目されていた。
綾部に指を吸われるという、この光景を。
「ん。止まったみたいです。そんなに深くなくて良かったですねえ。」
全方位から見られていることに内心恥ずかしさが爆発している私とは対照的に、口から指を離した綾部は相変わらず何を考えているのか分からない無表情のままでのんびりと言う。
「……喜八郎お前な…」
仙蔵が呆れたように何か言いかけた時、また視界の外から伸びてきた別の手がまだ私の腕を掴んだままだった綾部の手を引き剥がした。
「…触んないで。」
「っ、た、タカ丸…」
キョトンと見上げる綾部を怒ったように睨みつけるタカ丸は、私の腕を掴んで立たせるとそのままグイッと引っ張る。
「あっ、待って、お皿片付けなきゃ…」
「こちらは私たちがやっておくから、裏で手当てしてこい。…乱太郎、すまないが一緒に行ってやってくれ。」
「は、はいっ」
仙蔵にお願いされた乱太郎がついてこようとする間も、タカ丸は黙って私をぐいぐい引っ張っていく。
「ねぇちょっと、これくらいでわざわざ連れて行ってくれなくてもいいから…」
声をかけると、休憩室の入り口の手前で振り返られる。綾部を睨みつけた時のように、その顔は怒っていた。
「もう、ひまりちゃんてば!皆に好き勝手にさせ過ぎだよ!」
「な、何をそんなに怒ってるのよ…?」
「僕のことはいっつも避けるくせに、他の皆とはあんなに仲良さそうにして!」
「そんなこと言われたって…」
その剣幕に、追いついても声をかけることができないでオロオロしている乱太郎をよそに、タカ丸は続ける。
「尾浜君とも楽しそうにして、…それに喜八郎にだって!!」
腕をギュッと強く掴まれ、思わず「痛っ」と呻いてしまった。
するとタカ丸はハッとした顔になり、「…!…ごめん…」とバツが悪そうに手を離した。
「おい斉藤、声もう少し抑えろよ。店に響くぞ?」
気まずい空気の中、部屋の中からひょこっと顔を出したのは、お昼休憩中だった留三郎。そしてその後ろから、同じく休憩組の平、不破(多分)、しんべヱも心配そうに控えめに覗いていた。
「た、タカ丸さん。とにかく今は、傷の手当てをしないと…。」
留三郎が声をかけたタイミングに合わせて、乱太郎が宥めるようにおずおずとそう言うと。
タカ丸は力無く曖昧に頷いて、「…ごめん。後、お願い。」と乱太郎に言い置いて、店に戻ろうとした。
「…あの、手当て、ちょっと待っててもらえる?」
私は乱太郎に声をかけてから、戸惑いつつも頷いたのを確認してタカ丸を追いかけた。
「タカ丸!」
少し行った先で、とぼとぼ歩いていた背中を呼び止めると振り返った相手を私は真っ直ぐ見る。
「ごめん。…知ってる仲だからと思って。タカ丸に嫌な思いさせてしまって、ごめんなさい。」
彼をぞんざいにあしらった、というつもりは勿論無かったけれど。
…タカ丸は、最初からずっと私のことを好きだと言っている。私はそれを知っているのに。
好きな相手からそっけなくされたらどんな気持ちになるか、私にだって想像がつくはずなのに。
幼馴染、という関係性にむしろ自分の方が甘んじて、本来の礼儀を欠いていたのかもしれない。
「…僕の方こそ、ごめん。怒鳴ったりして。」
シュン、としおれたように謝るタカ丸に、
「ううん。…手当てしてもらったら、私もすぐ戻るね。」
と、なるべく明るく笑いかけて見せると。
不意をついて私の手を取ったタカ丸に、もうとっくに血の止まっている指先を咥えられた。
「っ、ちょっと……っ」
生温かい口の中で、指を舌先に撫でられる感触に、背中がぞわぞわとする。
「……消毒。いいでしょ、これくらい。」
不貞たように、そんなことを言われる。指先に唇をくっつけたまま、真っ直ぐな瞳で。
「絶対僕が、ひまりちゃんのこと一番好きなんだからね。」
「……!」
吐息のかかる指先が、くすぐったい。
さっきまで不機嫌だったのはどこへやら、「顔、真っ赤だねぇ。」なんて言ってへらりと笑いかけてくる。調子に乗って…!
「〜っもう!恥ずかしいことするからじゃん!早く行ってってば!」
というか、この小っ恥ずかしい光景を休憩組&乱太郎に後方から、こっそり&ばっちり見られている気配がしているから。…すごく視線を感じる。とにかくタカ丸をこの場から退散させようとグイグイと背中を押し出すと、彼はすっかり上機嫌になった顔で、
「早く来てね、待ってるよ。」
なんて言ってその場を後にする。
…何だその、彼氏力ありますみたいなアピール感は。
恥ずかしくて仕方なかったけれど、仙蔵に怒られた手前、手当てをせずに戻る訳にはいかないので、羞恥を堪えつつ戻って乱太郎にお願いする。
手当てされる間、終始ニヤニヤしている留三郎に態の良い暇つぶしにされたり。
「もしかすると目撃しちゃったかもなあ…浮気現場?」
「うっさい!そんなんじゃない…!」
そうかと思えば気まずそうに、「僕らは何も見てませんでした」というような顔を作りつつ静かにお昼を取り続ける不破や平と。
「お姉さんって、タカ丸さんと"おつきあい"してるんですかあ?」
「しっ、してないしてない…!」
「僕も、おシゲちゃんって子と"おつきあい"してるんです〜!すごぉく可愛くて、いつも僕の鼻かんでくれて…」
「しんべヱ、今手当てしてるんだからちょっと静かにしててっ!」
興味津々といった顔で自分の惚気まで始めてしまうしんべヱに、私の手当てをしてくれながら乱太郎がイライラした様子で一喝したり。
早くここから出たいような、さりとて店にも戻り辛いような、複雑な気持ちでいっぱいで。大きなため息をつきそうになるのを、何とか堪えていた。