メイン番外編〜シリーズ・茶屋〜
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Mission:"彼女"の正体を探れ ー開店後しばらくー
※オリジナル設定満載。
※「ウソやで〜」表現あり。
開店後の、第一陣の客がはけて店の前が落ち着いた頃。
「んじゃ、ちょっくら宣伝してくるわ。」
「たっくさん売ってきますね!」
「行ってきまーす!」
お弁当チームは、店全体の宣伝も兼ねて、周辺を通りかかる人たち向けに弁当を店の外で売り歩く作戦に移行していた。
チームの中から選出された留三郎、三木ヱ門、そしてきり丸の三人は、売り歩き用の、上の開いた浅い木箱に弁当と竹筒のお茶を積めるだけ積むと、箱の端と端を繋いだ紐を首の後ろからかけて、手を振って出かけていく。
その売り歩き担当の三人を見送った後、気合いを入れ直すように小平太が声を張り上げる。
「よーし!こっちももっと呼び込んで、いけいけどんどんで捌いていくぞー!」
「小平太お前、訊かれた弁当の内容もう少し丁寧に説明しろよ。」
「ははは、細かいことは気にするな!」
文次郎の注意も全く気にした様子のない彼に、滝夜叉丸も困った様子を見せている。
「七松先輩、もうちょっとでいいので気にして下さい…。お客さんから訊かれる度に、毎回横からひまりさんが途中で説明代わられてたじゃないですか…。」
「あははは…。あ、そうだ一度補充しなきゃ。取ってくるね。」
ごまかすように笑っていたひまりは、弁当のストックを置いている厨房奥に向かいかけた。途中、文次郎に呼び止められる。
「ひまり、『海の幸』の方が売れてるからそっち多めで頼むわ。」
「はいはーい、了解。」
「海の幸」、とは海鮮食材を中心に使った「海の幸弁当」のことである。
因みに、肉料理中心の「山の幸弁当」もあるが、売れ行きと海鮮の足の早さを鑑みて先に捌ききろうと、文次郎は「海の幸」の方を多く持ってくるよう指示した。ひまりもそれに応じて、取りに行く。
「……っと、いけないいけない。」
積んであった弁当を一度に全部持って行こうとして、踏みとどまる。
それなりの数だが、持っていくことは不可能ではない。…が、「スペック発動禁止令」が出ている以上、"見かけによらず腕力があります"という姿を六年生以外の誰かに見られる訳にはいかない。
それにバランス崩して落とす可能性もあるし、と思い直しながら、持って行く数を調整した時だった。
「ーーーーーーーあっ。手伝いますよ。」
後ろから、声をかけながらひまりが持った数より少し多めに持ってくれる生徒がいた。
お弁当ブース担当の一人である、五年生だった。
「ありがとう、…ございます。」
お礼を言うと、相手は少し笑って首を振る。
「いいですよ、敬語。双子ってことは、上町先輩と同い年なんですよね?」
「あ、うん…。」
「僕、一個下なんで。五年生の、尾浜勘右衛門です。」
「うん。よろしくね。」
「こちらこそ。」
尾浜勘右衛門は、ニコッと爽やかに笑いかけた。ひまりも自然な感じで受け答えしつつ、さっき全部を持とうとしたところ見られてないよね…?と、内心ハラハラしていたが見たところ彼にその様子は無さそうである。
運ぶ途中で、また話しかけられる。
「ひまりさん、…って呼んでも大丈夫ですか?」
「うん、いいよ。何?」
「いやー何というか、ひまりさんって働き者なんだなあって。率先して動いていらっしゃるし。」
「えー、そうかな。」
「それにさっきの、」
「『さっきの』…?」
「チーム分けの提案されたの、ひまりさんでしたよね?僕、すごいなあって思って。」
「すごい、って?」
「確かに、七松先輩が外に出て行かれると、いけどんで地の果てまで売りに行ってしまわれそうですし。潮江先輩と食満先輩を別々にしたのも、お二人を喧嘩させないためですよね?」
「あー、まあ。うん。…あれが、一番バランス良いかなって思っただけで…。」
勘右衛門の言う通りひまりは、これまでの長年の付き合いから予測されるトラブルを回避すべく、チーム分けの話し合いに際してつい自ら采配を振るってしまっていた。自分的にはあくまで、
「デッカイ声してるんだから店前の呼び込みだけで効果絶大でしょ小平太は」
とか、
「皆が頼りにしてる司令塔なんだからここから動いちゃ駄目」
とか、喜車の術もこっそり使いつつ言い含める形で、文次郎たちにアドバイスする程度のつもりだったのだが。
「六年の先輩方のこと、よくご存知なんだなって。僕、感心しちゃったんですよ!」
「んー、まあ……兄を通じて、というか。何となく、ね。あはは…。」
自身のスペックのこともそうだが、あまり六年生の面々を知り尽くしていることを匂わせ過ぎてもいけないかと、内心少し後悔していると。
「…ひまりさんってもしかして、」
「うん?」
小首を傾げるひまりに対し、じっと見つめながら勘右衛門が言葉を続けている時。
ーーーーーーーーーー離れた場所から、その様子を観察する者が二人いた。
「…久々知隊長、勘右衛門が例の彼女に接触を図ったようです。どうぞ。」
「竹谷隊員、二人が何を話しているか、分かるか?どうぞ。」
「勘右衛門とは無線が繋がっていないので、話の内容はこちらでは分かりかねます。どうぞ。」
「唇の動きで予測をつけるのだ。どうぞ。」
「了解であります。」
勘右衛門と同じく五年生の、久々知兵助と竹谷八左ヱ門が物陰から、目線はしっかり前に固定しながら手にはありもしない無線機を握る形を作って口元に寄せ、ヒソヒソと話し合っている。
「……兵助、八左ヱ門、何をコソコソ話してるの?」
そんな二人の後ろから、同級生の不破雷蔵が声をかける。一緒にやって来た鉢屋三郎も、
「あーサボってやんの。潮江先輩に言いつけてやろっかなー。」
と言いながらニヤニヤしている。
「ちょ、三郎っ…それは勘弁してくれよ…!」
「二人とも、何を見てるんだい?」
「いやほら、あれ。」
雷蔵に訊かれ、兵助は見ていた方向に指をさしてみせる。
「勘右衛門、…と、上町先輩の妹さんが、どうかしたのかい?」
「雷蔵、お前何も疑問に思わないのか?」
「え、何が?」
キョトンとする雷蔵に、兵助はやや眉根を寄せる。
「今まで上町先輩に、双子の妹がいるなんて話聞いたこと無かったじゃないか。…なんか、怪しくないか?」
「そう?…でも、わざわざ家族の話なんて僕たちだってしないし、ましてや上町先輩は喋らないんだから、単にそういう話を聞く機会が無かったってだけなんじゃないの?」
「そうかもしれないけど…」
「まあ、雷蔵は割と素直に信じちゃう所あるもんなあ。」
八左ヱ門の台詞に、雷蔵が表情を少しムッとさせる。
「ちょっと、それどういう意味だよ。」
「まあまあ、雷蔵。こいつらは放っといて戻ろうぜ。立花先輩の雷が落ちる前に。」
「なあ三郎、お前から見てどう思う?…俺は、上町先輩が女装してる可能性もあるって思ってるんだけど。学園長先生からの課題か何かでさ。」
立ち去りかけた三郎を呼び止める兵助は、変装名人であり、また他人の変装を見破ることも得手とする彼の意見を聞こうとしたらしい。
それに対して、三郎はと言えば。振り返って、勘右衛門と話すひまりを観察するかのようにしばらく目を遣る素振りを見せてから。
兵助に向き直って、肩をすくめて笑った。
「そりゃ考え過ぎだろ。どう見ても女だよ、あれは。」
「…うーん、三郎が言うなら間違いないか。」
「でもなあ…」
納得したような、していないような、な様子で首を傾げる二人をその場に残し、三郎は雷蔵と共に担当のお団子ブースに戻っていく。
その途中、雷蔵にそっと訊かれる。
「ねえ三郎、さっきの、本当?」
「本当だって。こんなことで嘘ついたってしょうがないだろ。」
「そっか。そうだよね。」
……確かに三郎は、嘘はついていないのである。
「…つーか、"その逆"は思いつかないのな。」
「え?何か言った?」
「いや、何も。」
「嘘ぉ、絶対何か言ったって。」
さっき八左ヱ門に意味ありげに素直だと言われたのが引っかかっているのか、いつもよりほんの少し疑り深くなっている様子の雷蔵。やれやれ、と三郎は適当に返すことにした。
「んーまあ、先入観ってコワイよなあって思っただけ。」
「何だあ、それ?」
「気にするなって。ほら、仕事仕事。…どっちの卓に行くか迷うなよ?」
「う、うん。」
雷蔵に迷い癖を出さないよう忠告してから三郎は、オーダーを取りにさっさと歩いていった。
ーーーーーーー因みに兵助と八左ヱ門に観察されていた時、勘右衛門とひまりが何を話していたのかと言うと。
A型ですか?血液型。
え、分かる?
いやあ、何となく。きちんとしてるって感じがして。
えー、そう言われると何か嬉しいな。あははっ。
…というような感じで決して正体を探るような類いのものではなく、至って何の変哲もない、普通の日常会話を繰り広げていただけだった。
そうとは分からないまま、『もしかして上町先輩ご本人ですか?』と訊いたりしてないだろうかと希望込みで、二人が観察を続けていると。
「久々知くーん?仕事そっちのけで何してるのかなあ?」
「竹谷せんぱあい、美人に見惚れてて仕事サボってましたって中在家先輩にチクっちゃいますよぉ?」
貼り付けた笑顔の裏に仁王の形相を秘めたタカ丸と、本当にサラッとチクりそうな喜八郎とにそう言われ。冷や汗をかきながら慌てて仕事に戻っていったのだった。
※オリジナル設定満載。
※「ウソやで〜」表現あり。
開店後の、第一陣の客がはけて店の前が落ち着いた頃。
「んじゃ、ちょっくら宣伝してくるわ。」
「たっくさん売ってきますね!」
「行ってきまーす!」
お弁当チームは、店全体の宣伝も兼ねて、周辺を通りかかる人たち向けに弁当を店の外で売り歩く作戦に移行していた。
チームの中から選出された留三郎、三木ヱ門、そしてきり丸の三人は、売り歩き用の、上の開いた浅い木箱に弁当と竹筒のお茶を積めるだけ積むと、箱の端と端を繋いだ紐を首の後ろからかけて、手を振って出かけていく。
その売り歩き担当の三人を見送った後、気合いを入れ直すように小平太が声を張り上げる。
「よーし!こっちももっと呼び込んで、いけいけどんどんで捌いていくぞー!」
「小平太お前、訊かれた弁当の内容もう少し丁寧に説明しろよ。」
「ははは、細かいことは気にするな!」
文次郎の注意も全く気にした様子のない彼に、滝夜叉丸も困った様子を見せている。
「七松先輩、もうちょっとでいいので気にして下さい…。お客さんから訊かれる度に、毎回横からひまりさんが途中で説明代わられてたじゃないですか…。」
「あははは…。あ、そうだ一度補充しなきゃ。取ってくるね。」
ごまかすように笑っていたひまりは、弁当のストックを置いている厨房奥に向かいかけた。途中、文次郎に呼び止められる。
「ひまり、『海の幸』の方が売れてるからそっち多めで頼むわ。」
「はいはーい、了解。」
「海の幸」、とは海鮮食材を中心に使った「海の幸弁当」のことである。
因みに、肉料理中心の「山の幸弁当」もあるが、売れ行きと海鮮の足の早さを鑑みて先に捌ききろうと、文次郎は「海の幸」の方を多く持ってくるよう指示した。ひまりもそれに応じて、取りに行く。
「……っと、いけないいけない。」
積んであった弁当を一度に全部持って行こうとして、踏みとどまる。
それなりの数だが、持っていくことは不可能ではない。…が、「スペック発動禁止令」が出ている以上、"見かけによらず腕力があります"という姿を六年生以外の誰かに見られる訳にはいかない。
それにバランス崩して落とす可能性もあるし、と思い直しながら、持って行く数を調整した時だった。
「ーーーーーーーあっ。手伝いますよ。」
後ろから、声をかけながらひまりが持った数より少し多めに持ってくれる生徒がいた。
お弁当ブース担当の一人である、五年生だった。
「ありがとう、…ございます。」
お礼を言うと、相手は少し笑って首を振る。
「いいですよ、敬語。双子ってことは、上町先輩と同い年なんですよね?」
「あ、うん…。」
「僕、一個下なんで。五年生の、尾浜勘右衛門です。」
「うん。よろしくね。」
「こちらこそ。」
尾浜勘右衛門は、ニコッと爽やかに笑いかけた。ひまりも自然な感じで受け答えしつつ、さっき全部を持とうとしたところ見られてないよね…?と、内心ハラハラしていたが見たところ彼にその様子は無さそうである。
運ぶ途中で、また話しかけられる。
「ひまりさん、…って呼んでも大丈夫ですか?」
「うん、いいよ。何?」
「いやー何というか、ひまりさんって働き者なんだなあって。率先して動いていらっしゃるし。」
「えー、そうかな。」
「それにさっきの、」
「『さっきの』…?」
「チーム分けの提案されたの、ひまりさんでしたよね?僕、すごいなあって思って。」
「すごい、って?」
「確かに、七松先輩が外に出て行かれると、いけどんで地の果てまで売りに行ってしまわれそうですし。潮江先輩と食満先輩を別々にしたのも、お二人を喧嘩させないためですよね?」
「あー、まあ。うん。…あれが、一番バランス良いかなって思っただけで…。」
勘右衛門の言う通りひまりは、これまでの長年の付き合いから予測されるトラブルを回避すべく、チーム分けの話し合いに際してつい自ら采配を振るってしまっていた。自分的にはあくまで、
「デッカイ声してるんだから店前の呼び込みだけで効果絶大でしょ小平太は」
とか、
「皆が頼りにしてる司令塔なんだからここから動いちゃ駄目」
とか、喜車の術もこっそり使いつつ言い含める形で、文次郎たちにアドバイスする程度のつもりだったのだが。
「六年の先輩方のこと、よくご存知なんだなって。僕、感心しちゃったんですよ!」
「んー、まあ……兄を通じて、というか。何となく、ね。あはは…。」
自身のスペックのこともそうだが、あまり六年生の面々を知り尽くしていることを匂わせ過ぎてもいけないかと、内心少し後悔していると。
「…ひまりさんってもしかして、」
「うん?」
小首を傾げるひまりに対し、じっと見つめながら勘右衛門が言葉を続けている時。
ーーーーーーーーーー離れた場所から、その様子を観察する者が二人いた。
「…久々知隊長、勘右衛門が例の彼女に接触を図ったようです。どうぞ。」
「竹谷隊員、二人が何を話しているか、分かるか?どうぞ。」
「勘右衛門とは無線が繋がっていないので、話の内容はこちらでは分かりかねます。どうぞ。」
「唇の動きで予測をつけるのだ。どうぞ。」
「了解であります。」
勘右衛門と同じく五年生の、久々知兵助と竹谷八左ヱ門が物陰から、目線はしっかり前に固定しながら手にはありもしない無線機を握る形を作って口元に寄せ、ヒソヒソと話し合っている。
「……兵助、八左ヱ門、何をコソコソ話してるの?」
そんな二人の後ろから、同級生の不破雷蔵が声をかける。一緒にやって来た鉢屋三郎も、
「あーサボってやんの。潮江先輩に言いつけてやろっかなー。」
と言いながらニヤニヤしている。
「ちょ、三郎っ…それは勘弁してくれよ…!」
「二人とも、何を見てるんだい?」
「いやほら、あれ。」
雷蔵に訊かれ、兵助は見ていた方向に指をさしてみせる。
「勘右衛門、…と、上町先輩の妹さんが、どうかしたのかい?」
「雷蔵、お前何も疑問に思わないのか?」
「え、何が?」
キョトンとする雷蔵に、兵助はやや眉根を寄せる。
「今まで上町先輩に、双子の妹がいるなんて話聞いたこと無かったじゃないか。…なんか、怪しくないか?」
「そう?…でも、わざわざ家族の話なんて僕たちだってしないし、ましてや上町先輩は喋らないんだから、単にそういう話を聞く機会が無かったってだけなんじゃないの?」
「そうかもしれないけど…」
「まあ、雷蔵は割と素直に信じちゃう所あるもんなあ。」
八左ヱ門の台詞に、雷蔵が表情を少しムッとさせる。
「ちょっと、それどういう意味だよ。」
「まあまあ、雷蔵。こいつらは放っといて戻ろうぜ。立花先輩の雷が落ちる前に。」
「なあ三郎、お前から見てどう思う?…俺は、上町先輩が女装してる可能性もあるって思ってるんだけど。学園長先生からの課題か何かでさ。」
立ち去りかけた三郎を呼び止める兵助は、変装名人であり、また他人の変装を見破ることも得手とする彼の意見を聞こうとしたらしい。
それに対して、三郎はと言えば。振り返って、勘右衛門と話すひまりを観察するかのようにしばらく目を遣る素振りを見せてから。
兵助に向き直って、肩をすくめて笑った。
「そりゃ考え過ぎだろ。どう見ても女だよ、あれは。」
「…うーん、三郎が言うなら間違いないか。」
「でもなあ…」
納得したような、していないような、な様子で首を傾げる二人をその場に残し、三郎は雷蔵と共に担当のお団子ブースに戻っていく。
その途中、雷蔵にそっと訊かれる。
「ねえ三郎、さっきの、本当?」
「本当だって。こんなことで嘘ついたってしょうがないだろ。」
「そっか。そうだよね。」
……確かに三郎は、嘘はついていないのである。
「…つーか、"その逆"は思いつかないのな。」
「え?何か言った?」
「いや、何も。」
「嘘ぉ、絶対何か言ったって。」
さっき八左ヱ門に意味ありげに素直だと言われたのが引っかかっているのか、いつもよりほんの少し疑り深くなっている様子の雷蔵。やれやれ、と三郎は適当に返すことにした。
「んーまあ、先入観ってコワイよなあって思っただけ。」
「何だあ、それ?」
「気にするなって。ほら、仕事仕事。…どっちの卓に行くか迷うなよ?」
「う、うん。」
雷蔵に迷い癖を出さないよう忠告してから三郎は、オーダーを取りにさっさと歩いていった。
ーーーーーーー因みに兵助と八左ヱ門に観察されていた時、勘右衛門とひまりが何を話していたのかと言うと。
A型ですか?血液型。
え、分かる?
いやあ、何となく。きちんとしてるって感じがして。
えー、そう言われると何か嬉しいな。あははっ。
…というような感じで決して正体を探るような類いのものではなく、至って何の変哲もない、普通の日常会話を繰り広げていただけだった。
そうとは分からないまま、『もしかして上町先輩ご本人ですか?』と訊いたりしてないだろうかと希望込みで、二人が観察を続けていると。
「久々知くーん?仕事そっちのけで何してるのかなあ?」
「竹谷せんぱあい、美人に見惚れてて仕事サボってましたって中在家先輩にチクっちゃいますよぉ?」
貼り付けた笑顔の裏に仁王の形相を秘めたタカ丸と、本当にサラッとチクりそうな喜八郎とにそう言われ。冷や汗をかきながら慌てて仕事に戻っていったのだった。