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【迷う僕と即決な彼女】
五年ろ組の図書委員、不破雷蔵。十四歳。
僕には今、付き合っている女の子がいる。
「雷蔵先輩っ。」
「わっ!…何だひよりか、おどかさないでよ。」
「あははすみません、そんなに驚かれるとは。またランチのメニューで迷ってるんですか?」
「はは…まあね…。」
食堂入口横のメニュー表の前でAランチにするかBランチにするか、迷っている僕に後ろから声をかけてきた彼女がそう。名前はひより。くの一教室に通う生徒だ。
彼女は、迷い癖のある僕とは正反対で、何事も即断即決、らしい。
僕より少し背の低い彼女は更に身を屈めて、僕の顔を下から覗き込むような格好になる。
「私、先輩と同じもの食べたいからAランチにしましょう?」
「ええっ?」
「おばちゃん、Aランチ二つくださーい!」
何気に上目遣い可愛い、なんて一瞬見惚れていたら、いつの間にかメニューを決められてしまっていた。既に彼女は入口から入ってカウンターに注文しに行っている。
…何か、僕って情けないかも?
「はあ…」
メニュー決めすら彼女にリードされていることに、思わずため息が漏れてしまった。
そして付き合い始めた時も、気が付いたら彼女にリードされるような格好だったことを思い出す。
明るくて活発だけど、本を読むのも好きらしくて、よく図書室を訪れては閉まるまで読書に勤しんでいたり、気に入った本を借りていったり。
自分が図書委員の仕事の傍ら、そんな彼女の横顔をこっそり盗み見てしまっていることに気付いたのは、随分と前のこと。
当番の日に彼女が図書室に来なかったらひどく落胆するのに、いざ来ると、何て声をかけたらいいのか分からなくなる。
と言っても話したことが全く無いわけではない。探してる本が見つからないとか次の授業の参考になる本はどれかとか、大抵は彼女の方から話しかけてくるパターンだったけど。
それでもそういう時も、彼女は普段と変わらない様子だったから、その時たまたま図書室の当番だった僕に訊いてるだけなんだと思っていた。
特別に僕を、意識しているようには思えなかったから。
こんな自分なんかが、果たして告白しても良いんだろうかって。
悩んで悩んで悩みまくって、その日も、また彼女が本を借りて部屋を後にするのを見送るだけなんだと思ったらひどく情けなくて、僕は図書室を出てすぐの廊下の壁に背を預けて頭を抱えるようにして座り込む。
「あぁあ…ひよりさんに、付き合って下さい、なんて僕が言ってもいいんだろうか…」
「いいですよ?」
「そうだよ第一そんなあっさり返事なんか貰えるわけ………えっ?」
独り言に、まさかの返事が頭上から降ってきて。
思わず振り返ると、正にその相手がすぐそばに立っていて。彼女は、硬直する僕に目線を合わせるようにしゃがんで、もう一度。
「だから、いいですよって。お付き合いしても。」
あっさり。そう言ってくれた。
そんな感じで、僕らは付き合うことになったわけだけれど。
「…ねえ。訊いてもいいかい?」
「何ですか?急に改まって。」
放課後、図書室の当番も無いので、二人で池のそばに隣り合って座っている時に思い切って訊いてみることにした。
「あの、…本当に、僕なんかで良かったの?」
僕を見上げる彼女の表情が、キョトンとする。
「……何のことですか?」
「だからえっと…付き合う、のを、さ。ほら、僕って迷い癖ひどいし、…武術なんか僕と同級生の三郎の方がよっぽどすごいし、……かっこよくないし。」
言いながら自分で情けなくなってきて下を向く。きっと彼女も、返事に困っているか、呆れているに違いない。
やっぱり、言わなきゃ良かったかも。
後悔していると、彼女は身を乗り出すようにしてズイッと顔を覗き込んできた。ち、近い…!
心の臓がドキドキする中。
「だって雷蔵先輩、私のこと好きなんでしょ?違うんですか?」
その距離と、あまりの直球な台詞に、固まってしまった。
まっすぐな彼女の大きな目は、僕の姿をはっきりと捉えて離さない。
「雷蔵先輩は、好きでもない人に付き合ってくれなんて言うような人には見えないですし。それに、あの時迷っていたのは私への気持ちに対してじゃなくて、言うか言わないか、の方だったので。」
そこで、彼女の表情がはにかむ。
「先輩が、私のことでそんなに悩んでいるんだもの。…嬉しくて。返事、即決でしちゃいました。…あと、」
カッコ悪いなんて思ったことないです。と、いつになく彼女は照れくさそうに、赤い顔で俯いて呟いた。
「…図書室行って、先輩がいたら、私も、緊張して大変だったんですよ?意識してるってバレたら恥ずかしいなって。」
「…以前から、意識してたってこと?それ、いつから?」
彼女の台詞からそのことに気付いて、つい気になって訊くと。
「………定期的に通うようになった辺りから、です。」
普段のハキハキとした姿と、今の、そのすごく恥ずかしそうな姿とのギャップに。
彼女も、頑張って平静を装っていたんだということに、今更気付かされる。
言うか言うまいか、なんて僕が迷う必要もなかったんだということも。
「というか、先輩こそ、いつからなんですか。」
「それは、えっと……お、同じくらい、かな…?」
「…先輩、迷い過ぎです。遅い。」
「ご、ごめんね…。」
むうっとした顔に、慌てて謝る。でも、そんな表情さえも可愛いと思ってしまった。
この迷いの無い眼差しと言葉に、見合う男にならないとな。そんなふうに心の中でこっそり誓っていると。
「…ちゃんと、捕まえておいてくださいね。迷わないで。」
そうイタズラっぽく笑いかけられて、また、心の臓が大きく跳ねてしまった。
ひとこと後書き。
対照的なヒロインとかn番煎じだなあと思いつつ、ほのぼのが書きたかったので。
五年ろ組の図書委員、不破雷蔵。十四歳。
僕には今、付き合っている女の子がいる。
「雷蔵先輩っ。」
「わっ!…何だひよりか、おどかさないでよ。」
「あははすみません、そんなに驚かれるとは。またランチのメニューで迷ってるんですか?」
「はは…まあね…。」
食堂入口横のメニュー表の前でAランチにするかBランチにするか、迷っている僕に後ろから声をかけてきた彼女がそう。名前はひより。くの一教室に通う生徒だ。
彼女は、迷い癖のある僕とは正反対で、何事も即断即決、らしい。
僕より少し背の低い彼女は更に身を屈めて、僕の顔を下から覗き込むような格好になる。
「私、先輩と同じもの食べたいからAランチにしましょう?」
「ええっ?」
「おばちゃん、Aランチ二つくださーい!」
何気に上目遣い可愛い、なんて一瞬見惚れていたら、いつの間にかメニューを決められてしまっていた。既に彼女は入口から入ってカウンターに注文しに行っている。
…何か、僕って情けないかも?
「はあ…」
メニュー決めすら彼女にリードされていることに、思わずため息が漏れてしまった。
そして付き合い始めた時も、気が付いたら彼女にリードされるような格好だったことを思い出す。
明るくて活発だけど、本を読むのも好きらしくて、よく図書室を訪れては閉まるまで読書に勤しんでいたり、気に入った本を借りていったり。
自分が図書委員の仕事の傍ら、そんな彼女の横顔をこっそり盗み見てしまっていることに気付いたのは、随分と前のこと。
当番の日に彼女が図書室に来なかったらひどく落胆するのに、いざ来ると、何て声をかけたらいいのか分からなくなる。
と言っても話したことが全く無いわけではない。探してる本が見つからないとか次の授業の参考になる本はどれかとか、大抵は彼女の方から話しかけてくるパターンだったけど。
それでもそういう時も、彼女は普段と変わらない様子だったから、その時たまたま図書室の当番だった僕に訊いてるだけなんだと思っていた。
特別に僕を、意識しているようには思えなかったから。
こんな自分なんかが、果たして告白しても良いんだろうかって。
悩んで悩んで悩みまくって、その日も、また彼女が本を借りて部屋を後にするのを見送るだけなんだと思ったらひどく情けなくて、僕は図書室を出てすぐの廊下の壁に背を預けて頭を抱えるようにして座り込む。
「あぁあ…ひよりさんに、付き合って下さい、なんて僕が言ってもいいんだろうか…」
「いいですよ?」
「そうだよ第一そんなあっさり返事なんか貰えるわけ………えっ?」
独り言に、まさかの返事が頭上から降ってきて。
思わず振り返ると、正にその相手がすぐそばに立っていて。彼女は、硬直する僕に目線を合わせるようにしゃがんで、もう一度。
「だから、いいですよって。お付き合いしても。」
あっさり。そう言ってくれた。
そんな感じで、僕らは付き合うことになったわけだけれど。
「…ねえ。訊いてもいいかい?」
「何ですか?急に改まって。」
放課後、図書室の当番も無いので、二人で池のそばに隣り合って座っている時に思い切って訊いてみることにした。
「あの、…本当に、僕なんかで良かったの?」
僕を見上げる彼女の表情が、キョトンとする。
「……何のことですか?」
「だからえっと…付き合う、のを、さ。ほら、僕って迷い癖ひどいし、…武術なんか僕と同級生の三郎の方がよっぽどすごいし、……かっこよくないし。」
言いながら自分で情けなくなってきて下を向く。きっと彼女も、返事に困っているか、呆れているに違いない。
やっぱり、言わなきゃ良かったかも。
後悔していると、彼女は身を乗り出すようにしてズイッと顔を覗き込んできた。ち、近い…!
心の臓がドキドキする中。
「だって雷蔵先輩、私のこと好きなんでしょ?違うんですか?」
その距離と、あまりの直球な台詞に、固まってしまった。
まっすぐな彼女の大きな目は、僕の姿をはっきりと捉えて離さない。
「雷蔵先輩は、好きでもない人に付き合ってくれなんて言うような人には見えないですし。それに、あの時迷っていたのは私への気持ちに対してじゃなくて、言うか言わないか、の方だったので。」
そこで、彼女の表情がはにかむ。
「先輩が、私のことでそんなに悩んでいるんだもの。…嬉しくて。返事、即決でしちゃいました。…あと、」
カッコ悪いなんて思ったことないです。と、いつになく彼女は照れくさそうに、赤い顔で俯いて呟いた。
「…図書室行って、先輩がいたら、私も、緊張して大変だったんですよ?意識してるってバレたら恥ずかしいなって。」
「…以前から、意識してたってこと?それ、いつから?」
彼女の台詞からそのことに気付いて、つい気になって訊くと。
「………定期的に通うようになった辺りから、です。」
普段のハキハキとした姿と、今の、そのすごく恥ずかしそうな姿とのギャップに。
彼女も、頑張って平静を装っていたんだということに、今更気付かされる。
言うか言うまいか、なんて僕が迷う必要もなかったんだということも。
「というか、先輩こそ、いつからなんですか。」
「それは、えっと……お、同じくらい、かな…?」
「…先輩、迷い過ぎです。遅い。」
「ご、ごめんね…。」
むうっとした顔に、慌てて謝る。でも、そんな表情さえも可愛いと思ってしまった。
この迷いの無い眼差しと言葉に、見合う男にならないとな。そんなふうに心の中でこっそり誓っていると。
「…ちゃんと、捕まえておいてくださいね。迷わないで。」
そうイタズラっぽく笑いかけられて、また、心の臓が大きく跳ねてしまった。
ひとこと後書き。
対照的なヒロインとかn番煎じだなあと思いつつ、ほのぼのが書きたかったので。
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