メイン本編(伊作)の短編
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「言えない、『会いたい』」
一人鍛錬で、木刀の素振りをしていても。
自室で読書に勤しもうとしても。
食事を摂っている時さえ。
会えない時ほど、君のことが頭に浮かぶ。
どうしているだろう。
怪我とかしてないかな。
気を付けて、って見送る時にもっとしっかり強く言っておけば良かった。
制服の袖が破けてたら、呆れたフリで、直してあげてもいいけど。
なんて。
あれこれ色々考えるけれど、一番に願っているのはやっぱり、君が無事に戻ってきてくれること。
何事もなく、ただ笑って。
「おーい、陽太ー!」
ここ数日、聞けなかった声。
ずっと、聞きたかった、あの声。
木陰で、読む、というより眺めていたに近い本から目を上げて、遠くから呼ばれた方を振り返る。
本を閉じて、傍に置く。立ち上がるけど、向こうから歩いて来てるんだからそのうち近くなるしと、何に向けての言い訳か分からないことを思いながらもどかしい距離の狭まりを立ったまま待つ。
会いたくて仕方なかった、なんて見透かされたくない。誰にも。君にさえ。
「ただいま。」
少し疲れているけど、それでも、いつもと変わらない笑顔。
おかえり、と小さい声で返す私は、呆れるほど素直じゃない。声が聞けて、嬉しいくせに。頭巾で顔を覆っているのをいいことに、素直に笑うことを拒んでしまっている。
「…袖、やっぱり破けてる。」
「あー、あはは…。帰りに近道を探して、山の中に入ったから藪で引っかけちゃって。……って、『やっぱり』って?」
「予想通りってこと。だって伊作、不運だもん。」
「もー、ひどいなあ。」
照れ隠しの、可愛げのない私の言い草。
眉尻を下げる伊作の顔がおかしくて、ついクスッと笑ってしまった。
伊作も、困ったように笑っている。
「あ、そうだこれ、お土産。ここのお饅頭好きだったよね?」
差し出された小さな包みの饅頭。私だけに、じゃないことは分かっているけれど。
「……ありがと。」
受け取る間も、胸がトクリトクリと、騒いでうるさい。
「じゃあ、お饅頭と交換条件ってことで、後で袖直してあげる。」
周りに誰もいないのを素早く確認して、顔の下半分を覆う頭巾を下ろしてその小さな饅頭を口に放り込みながら、何でもないようにそう言うと。
困ったように、じゃなくて。嬉しそうに。
「ありがとう、ひまり。」
くしゃりと笑った輪郭は、午後の日差しを受けて煌めく。
「っ…!」
饅頭が喉に詰まって、むせた。
「わああ大丈夫…?!あっ、まだ残ってるからこれ飲んで…!!」
差し出された竹筒を受け取るや、残っていた水を流し込む。冷たい水が、喉の中を流れていく。っはあ、と息をつく私に伊作も、一安心したように声をかける。
「良かったあ。大丈夫かい?」
「う、うん……、………!」
そして気付いた。
これ、伊作も飲んーーーーーーーーーー
「〜〜ッ!!」
「え、ひまり?!…あれ、本忘れてるよ?ひまり、じゃなくて… 陽太ってばー!」
その場から逃げるように走り去った後で、借りたままだった竹筒を返しに行かなきゃいけないことに気付いて頭を抱えることになるのはまた、別の話。
実習で出かけていた伊作の帰りを待つ夢主の話、でした。
大塚愛の『黒毛和牛上塩タン焼680円』とかaikoの『ボーイフレンド』辺りがイメージ曲です。
ほのぼのと終わるつもりだったのに、結局ギャグに走るんかい。笑
一人鍛錬で、木刀の素振りをしていても。
自室で読書に勤しもうとしても。
食事を摂っている時さえ。
会えない時ほど、君のことが頭に浮かぶ。
どうしているだろう。
怪我とかしてないかな。
気を付けて、って見送る時にもっとしっかり強く言っておけば良かった。
制服の袖が破けてたら、呆れたフリで、直してあげてもいいけど。
なんて。
あれこれ色々考えるけれど、一番に願っているのはやっぱり、君が無事に戻ってきてくれること。
何事もなく、ただ笑って。
「おーい、陽太ー!」
ここ数日、聞けなかった声。
ずっと、聞きたかった、あの声。
木陰で、読む、というより眺めていたに近い本から目を上げて、遠くから呼ばれた方を振り返る。
本を閉じて、傍に置く。立ち上がるけど、向こうから歩いて来てるんだからそのうち近くなるしと、何に向けての言い訳か分からないことを思いながらもどかしい距離の狭まりを立ったまま待つ。
会いたくて仕方なかった、なんて見透かされたくない。誰にも。君にさえ。
「ただいま。」
少し疲れているけど、それでも、いつもと変わらない笑顔。
おかえり、と小さい声で返す私は、呆れるほど素直じゃない。声が聞けて、嬉しいくせに。頭巾で顔を覆っているのをいいことに、素直に笑うことを拒んでしまっている。
「…袖、やっぱり破けてる。」
「あー、あはは…。帰りに近道を探して、山の中に入ったから藪で引っかけちゃって。……って、『やっぱり』って?」
「予想通りってこと。だって伊作、不運だもん。」
「もー、ひどいなあ。」
照れ隠しの、可愛げのない私の言い草。
眉尻を下げる伊作の顔がおかしくて、ついクスッと笑ってしまった。
伊作も、困ったように笑っている。
「あ、そうだこれ、お土産。ここのお饅頭好きだったよね?」
差し出された小さな包みの饅頭。私だけに、じゃないことは分かっているけれど。
「……ありがと。」
受け取る間も、胸がトクリトクリと、騒いでうるさい。
「じゃあ、お饅頭と交換条件ってことで、後で袖直してあげる。」
周りに誰もいないのを素早く確認して、顔の下半分を覆う頭巾を下ろしてその小さな饅頭を口に放り込みながら、何でもないようにそう言うと。
困ったように、じゃなくて。嬉しそうに。
「ありがとう、ひまり。」
くしゃりと笑った輪郭は、午後の日差しを受けて煌めく。
「っ…!」
饅頭が喉に詰まって、むせた。
「わああ大丈夫…?!あっ、まだ残ってるからこれ飲んで…!!」
差し出された竹筒を受け取るや、残っていた水を流し込む。冷たい水が、喉の中を流れていく。っはあ、と息をつく私に伊作も、一安心したように声をかける。
「良かったあ。大丈夫かい?」
「う、うん……、………!」
そして気付いた。
これ、伊作も飲んーーーーーーーーーー
「〜〜ッ!!」
「え、ひまり?!…あれ、本忘れてるよ?ひまり、じゃなくて… 陽太ってばー!」
その場から逃げるように走り去った後で、借りたままだった竹筒を返しに行かなきゃいけないことに気付いて頭を抱えることになるのはまた、別の話。
実習で出かけていた伊作の帰りを待つ夢主の話、でした。
大塚愛の『黒毛和牛上塩タン焼680円』とかaikoの『ボーイフレンド』辺りがイメージ曲です。
ほのぼのと終わるつもりだったのに、結局ギャグに走るんかい。笑