そのうすべに色を隠して。
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『十八頁更ニ余白(さらにおまけ) こっちも仲直り』
※現在軸
いると思った。
ひまりは、河原に座り込む与四郎の後ろ姿を見つけた瞬間、そう心の中で苦笑した。釣竿の糸は垂らしているが、心ここにあらず、という様子が見て取れる。
歩み寄っていくと、気付いたのか相手が振り返って少し驚いた表情になる。
「ひまり…」
「懐かしいね、ここ。」
話しかけながら、彼の隣に少し間を空けて座る。
忍術学園近くの、裏山の麓を流れるこの川は、昔、ひまりが与四郎に魚釣りのできる場所として教えた場所だった。三年生の時、仙子としての仙蔵と買い出しに出かけた先で再会した後、何となく訪れた時にも偶然いて。
釣りをする彼の隣で、他愛のない話をしたり。急に引きの強い大物がかかって、慌ててひまりも手を貸したり。
そして、顔に傷を負って、それでも忍たまとして学園に通い続けるんだと話して聞かせたり。
……そういえば、あの時からだ。与四郎に、会う度に「嫁にする」なんて言われるようになったのは。
ひまりが思い出している横で、与四郎がポツリと呟く。
「…俺のこと、きれーにならねぇでくれ…。」
ずっと、気にしていたらしい。いつもの勢いはどこへ行ったのか、というくらい弱気な彼に、ーーーーーーーそれだけ傷付けたということを改めて自覚したひまりは、優しく笑いかけた。
「当たり前じゃない。…私、与四郎のこと、大事な友達だと思ってるもの。」
与四郎が、顔を上げてこちらを見てくる。
「こないだのこと、許してくれんのか…?」
「もう、私が訊かれたくないことを、私以外の人に訊いて探ろうとしないって約束してくれるんなら、ね。」
「…!する!ぜってー、もう誰にも訊いたりしねーから!」
釣竿からも手を離して、身を乗り出すようにして何度も頷く彼に、クス、と笑う。
「与四郎だったら、守ってくれるって信じてるよ。私。」
牽制のつもり、だったが。それを聞いた与四郎の表情が、パァッと明るくなって。
「ひまり…!」
あ、マズい。この表情は……と、一瞬後ろに身を引いたのもほぼ意味無く、次の瞬間には抱きつかれていた。与四郎は、我慢していたぶん、というくらいの勢いでギュウウゥッと抱きしめてくる。
「ちょっ、苦しい…!!」
「やっぱ俺、ひまりのこと大好きだべ!おめーのこと、ぜってー、ぜってー嫁にすっからなッ!」
「もう、それはいいから離し……あ!与四郎、釣竿!引いてる!」
ひまりが気付いたように声を上げるので、与四郎も反射的に後ろを振り返る。
「えっ?!いけね、忘れて……」
その隙を狙って、腕を振り解き。すぐに立ち上がって距離を取るひまりと、何も反応していない釣竿とを交互に見て。
与四郎は不満そうな顔を向けてきた。
「…って、ひまり!嘘つくなんて酷ぇよぉ…」
「あんた、こうでもしないと離してくれないんだもん。…私だって、好きな人いるんだから、そうそうあんたに抱きつかれるわけにはいかないっての。」
「あーもう!やっぱすげー気になる!頼むから教えてくれんせ、ひまり!」
頭を抱えるようにして与四郎は頼み込んでいるが、ひまりは困ったように、けれども少し悪戯っぽく笑った。
「駄目、内緒っ。それじゃあ、ね。」
ひまりが立ち去っていく方向を、与四郎はしばらく呆けたように見つめていたが。
やがて、一人で笑いがこぼれてしまった。
「…一本取られちまった。はは……やっぱ、くの一だべなぁ。」
彼女の、その強かさに。
その笑顔に、自分が抗えないのは。やはり、惚れた弱みというものなのだろうと、少し顔を赤くする与四郎だった。
よーし、決めた!おら、ひまりのこと嫁にすんべ!
…は?いきなり、何言ってるの?あんた。
おめーの、その前向きな所が気に入っただぁよ。な、ひまり!風魔の里に来ねーか?
いや、んな急に行くかい。
えーっ?あんで?!
あんで…?…というか、あのねぇ…私さっき、忍術学園に通い続けるって話したばっかりでしょ?
ンなもん、忍術の勉強くれぇ風魔の里でもできんべーよ!
話通じないやっちゃな…。
※現在軸
いると思った。
ひまりは、河原に座り込む与四郎の後ろ姿を見つけた瞬間、そう心の中で苦笑した。釣竿の糸は垂らしているが、心ここにあらず、という様子が見て取れる。
歩み寄っていくと、気付いたのか相手が振り返って少し驚いた表情になる。
「ひまり…」
「懐かしいね、ここ。」
話しかけながら、彼の隣に少し間を空けて座る。
忍術学園近くの、裏山の麓を流れるこの川は、昔、ひまりが与四郎に魚釣りのできる場所として教えた場所だった。三年生の時、仙子としての仙蔵と買い出しに出かけた先で再会した後、何となく訪れた時にも偶然いて。
釣りをする彼の隣で、他愛のない話をしたり。急に引きの強い大物がかかって、慌ててひまりも手を貸したり。
そして、顔に傷を負って、それでも忍たまとして学園に通い続けるんだと話して聞かせたり。
……そういえば、あの時からだ。与四郎に、会う度に「嫁にする」なんて言われるようになったのは。
ひまりが思い出している横で、与四郎がポツリと呟く。
「…俺のこと、きれーにならねぇでくれ…。」
ずっと、気にしていたらしい。いつもの勢いはどこへ行ったのか、というくらい弱気な彼に、ーーーーーーーそれだけ傷付けたということを改めて自覚したひまりは、優しく笑いかけた。
「当たり前じゃない。…私、与四郎のこと、大事な友達だと思ってるもの。」
与四郎が、顔を上げてこちらを見てくる。
「こないだのこと、許してくれんのか…?」
「もう、私が訊かれたくないことを、私以外の人に訊いて探ろうとしないって約束してくれるんなら、ね。」
「…!する!ぜってー、もう誰にも訊いたりしねーから!」
釣竿からも手を離して、身を乗り出すようにして何度も頷く彼に、クス、と笑う。
「与四郎だったら、守ってくれるって信じてるよ。私。」
牽制のつもり、だったが。それを聞いた与四郎の表情が、パァッと明るくなって。
「ひまり…!」
あ、マズい。この表情は……と、一瞬後ろに身を引いたのもほぼ意味無く、次の瞬間には抱きつかれていた。与四郎は、我慢していたぶん、というくらいの勢いでギュウウゥッと抱きしめてくる。
「ちょっ、苦しい…!!」
「やっぱ俺、ひまりのこと大好きだべ!おめーのこと、ぜってー、ぜってー嫁にすっからなッ!」
「もう、それはいいから離し……あ!与四郎、釣竿!引いてる!」
ひまりが気付いたように声を上げるので、与四郎も反射的に後ろを振り返る。
「えっ?!いけね、忘れて……」
その隙を狙って、腕を振り解き。すぐに立ち上がって距離を取るひまりと、何も反応していない釣竿とを交互に見て。
与四郎は不満そうな顔を向けてきた。
「…って、ひまり!嘘つくなんて酷ぇよぉ…」
「あんた、こうでもしないと離してくれないんだもん。…私だって、好きな人いるんだから、そうそうあんたに抱きつかれるわけにはいかないっての。」
「あーもう!やっぱすげー気になる!頼むから教えてくれんせ、ひまり!」
頭を抱えるようにして与四郎は頼み込んでいるが、ひまりは困ったように、けれども少し悪戯っぽく笑った。
「駄目、内緒っ。それじゃあ、ね。」
ひまりが立ち去っていく方向を、与四郎はしばらく呆けたように見つめていたが。
やがて、一人で笑いがこぼれてしまった。
「…一本取られちまった。はは……やっぱ、くの一だべなぁ。」
彼女の、その強かさに。
その笑顔に、自分が抗えないのは。やはり、惚れた弱みというものなのだろうと、少し顔を赤くする与四郎だった。
よーし、決めた!おら、ひまりのこと嫁にすんべ!
…は?いきなり、何言ってるの?あんた。
おめーの、その前向きな所が気に入っただぁよ。な、ひまり!風魔の里に来ねーか?
いや、んな急に行くかい。
えーっ?あんで?!
あんで…?…というか、あのねぇ…私さっき、忍術学園に通い続けるって話したばっかりでしょ?
ンなもん、忍術の勉強くれぇ風魔の里でもできんべーよ!
話通じないやっちゃな…。