モンハン ウツシ夢短編



欠陥品



常に完璧であれ。
それが両親かれらの口癖だった。
全ての武器が使えるのは当たり前。
逃げる事は許されない。
敗北するのならば死を選べ。
言われるままに任務をこなし、死に物狂いで自身を鍛えて、文字通り血反吐を吐きながら戦ってきた。
それでも、力及ばず敗北し生き延びてしまった私に両親かれらは言い放った。
私は『欠陥品』だと。
傷も治らぬ内に家から放り出され、命辛々辿り着いたのは、奇しくも私が敗れた雷神龍の討伐依頼を出した里。
その里のハンター猛き炎が双龍を討ち滅ぼし英雄となった。
彼女のようにあの双龍を討てていたのなら、両親かれらは、私を認めてくれていただろうか。

「やあ!キミ、凄かったね!」
「…凄い…?何がですか?」

怪我が治っても行く宛のない私は、里に留まって依頼を受け生活をしている。
腕試しにどうだい?と、この里の教官から言われ闘技場でモンスターを倒した後に掛けられた言葉の意味をよく理解出来なかった。

「何もかもさ!モンスターの弱点を知り尽くした知識も、流れるような斬撃を繰り出す技術も、操竜だって覚えたてだとは思わないくらいに素晴らしかったよ!」

大きな声で矢継ぎ早に言われたが、両親かれらのように恐ろしくはなく、初めて聞く言葉ばかりで頭の中が混乱していた。

「…出来て、当たり前ですから…」
「当たり前なんてないさ!キミの弛まぬ努力の賜物だろう?」

私にかけられたのは常に完璧であれという事だけで、それ以外は全て叱咤の言葉だった。
彼の言葉が私が求めていたものだと理解した瞬間に視界が滲み、その滲みがボロリと溢れて落ちた。

「あれっ!?俺、何か変な事でも言った!?」

顔面を殴られた訳でもないのに鼻がツンとして、視界が滲んで、涙が次々と溢れて止まらなかった。
それは生理的に流す時以外に初めての事で、戸惑いを隠せない。
どうやったら止まるのかも分からなかった。

「教官!?なに女の子泣かせてるんですか!」
「ち、違うよ愛弟子!…いや、けど俺が話しかけて泣いたから…俺の所為かな?」

その言葉に首を横に振る。
私だって、何故泣いているのか分からない。
止め方も分からず、なんと情けない姿だろう。
産まれたての赤子のように泣きながら、けれども心は酷く安堵していた。

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