狼と夜
FFI日本代表メンバーの選抜が行われ、観客は声を出して盛り上がり、選手は安堵の表情を浮かべたり悔しそうに歯を食いしばる者もいた。
そんな中、入場ゲートの壁にもたれ掛かり表情1つ変えずスクリーンを見ている少女がいた。
選抜選手の中に少女の名は無かった。彼女は目を細めスクリーンを眺め続ける。
ふと実況者の声がマイクを通し全体に響く。
《さらに、このメンバーに加えて監督が直々にお願いし特別選手として迎えられたフィールドの怪盗こと、織乙莎印選手も日本代表となります!》
その言葉を聴き、観客は驚嘆の声を上げた。
彼女は納得したように笑った。
「なるほどね…名前が呼ばれなかったかと思えばまさか特別選手だったとは…ね。監督?」
彼女はそう言いながら視線を左に移した。
視線の先にはいつの間にか日本代表監督の趙金運が来ていた。
「ほーほっほっほっ…ちょっとしたサプライズですよ、『織乙莎印』さん」
「どうしてわざわざ特別選手に?他選手同様の紹介で良かったと思いますが?」
「…1つ目の理由は貴女が最近の注目選手だからです。特別選手のほうが盛り上がるでしょう?そして2つ目は貴女の事情を知っているからですよ莎印さん」
「確かに特別選手の方が都合が良いですね。それにしても流石日本代表の監督。情報が早いですね。一応隠しているつもりですが」
「舐めてもらっては困りますねぇ。『オリオン財団』については情報収集は欠かせませんから」
「そうですか。まあその方がこちらも動きやすいです。さて、そろそろ皆さんと合流しないとですね。それでは」
話を終え、彼女は趙金運の隣を通り過ぎた。水縹色の髪によく映えた赤色のリボンを揺らしながら。
趙金運は見逃さなかった。袖が揺れてめくれた時に見えた、青に光る刻印を。
「色々大変でしょうが頑張ってくださいね」
彼女に聞こえない声量で、そう呟いた。
そんな中、入場ゲートの壁にもたれ掛かり表情1つ変えずスクリーンを見ている少女がいた。
選抜選手の中に少女の名は無かった。彼女は目を細めスクリーンを眺め続ける。
ふと実況者の声がマイクを通し全体に響く。
《さらに、このメンバーに加えて監督が直々にお願いし特別選手として迎えられたフィールドの怪盗こと、織乙莎印選手も日本代表となります!》
その言葉を聴き、観客は驚嘆の声を上げた。
彼女は納得したように笑った。
「なるほどね…名前が呼ばれなかったかと思えばまさか特別選手だったとは…ね。監督?」
彼女はそう言いながら視線を左に移した。
視線の先にはいつの間にか日本代表監督の趙金運が来ていた。
「ほーほっほっほっ…ちょっとしたサプライズですよ、『織乙莎印』さん」
「どうしてわざわざ特別選手に?他選手同様の紹介で良かったと思いますが?」
「…1つ目の理由は貴女が最近の注目選手だからです。特別選手のほうが盛り上がるでしょう?そして2つ目は貴女の事情を知っているからですよ莎印さん」
「確かに特別選手の方が都合が良いですね。それにしても流石日本代表の監督。情報が早いですね。一応隠しているつもりですが」
「舐めてもらっては困りますねぇ。『オリオン財団』については情報収集は欠かせませんから」
「そうですか。まあその方がこちらも動きやすいです。さて、そろそろ皆さんと合流しないとですね。それでは」
話を終え、彼女は趙金運の隣を通り過ぎた。水縹色の髪によく映えた赤色のリボンを揺らしながら。
趙金運は見逃さなかった。袖が揺れてめくれた時に見えた、青に光る刻印を。
「色々大変でしょうが頑張ってくださいね」
彼女に聞こえない声量で、そう呟いた。