— 約束の指輪. . . .

※デビュー十年めで出てくる『A子さん』とその恋人である『S』が登場し、それぞれめめこじと結婚します。

※不倫あり。

※さらに営みもあるのでメンバーのNLが苦手な方は閲覧を控えて下さいますようにお願い致します。




「蓮君、見ときっ!ターンはこうやで!」

「おぉー!康二君のターンって本当綺麗だよね……」

ライトアップされたステージで華麗に踊る君。
薄暗い観客席のど真ん中で俺はそれを見上げる。

俺の前で楽しそうに踊る君を見て

この瞬間から、俺の恋は始まっていた。




— 約束の指輪. . . .


K.


「あ……ふぁっ、ん……めめっ」

「康二、お願いだから逃げないで」

めめの匂いが染み付いた漆黒のベッドの上。

めめから与えられる乳首への刺激に俺は枕元へと下がって行く。

めめはそんな俺を咎め、俺の両手首をめめの大きな右手で俺の頭上にまとめ上げた。

俺はというと万歳をした格好となり、さらに俺一人が素っ裸な状況に恥ずかしくなって俺はめめから視線を逸らす。

「久しぶりだね。……こうしてセックスするの」

「ん……俺もずっと、めめとエッチしたかった」

左手で頬を撫でられ、そのくすぐったさに俺はめめの部屋の隅にある

青のフロアスタンドライトのぼんやりとした光に照らされためめに向き直る。

「康二。——愛してるよ」

「俺もめめを愛してる」

解かれた手をめめの両手と絡め合い、お互いの存在を確かめ合うように深いキスを交わす。

めめを狂おしいほどに愛してる、
ほんまはめめと片時も離れとうない。

こんなにも俺の心を揺さぶることが出来るのは
この世でめめ一人だけや。

互いの左手の薬指にはお互い違う色の指輪。

めめはシルバー。
俺はゴールド。

それが意味することはただ一つ。
俺らには互いにパートナーがいるということや。






「…………」

「康二……なに考えてるの?」

めめと生まれたままの姿で何度も愛を確かめ合い、俺がめめの胸の中で微睡んでいると、めめは俺のおでこに唇を当てる。

もう長いこと一緒におるから、めめは俺の意識がどこか遠くへ行っていることにすぐに気付いたようや。

「俺のかみさんは今オペラを楽しんでる最中かな〜って」

「……その隣では俺の奥さんが口を開けて眠ってるかもね 」

ふっと俺が微笑めば、めめは素っ気ない声でそれに応える。

日本でも人気のオペラのチケットを俺のかみさんが取れずに苦労していたところに、それを知った芸能界の知人が俺の奥さんにもぜひ来て欲しいと招待してくれたのだ。

『康二君、嬉しい。本当にありがとう。じゃあ、行ってくるね』

玄関先でピンクベージュのラメ刺繍があしらわれたレースドレスを身に纏い、柔らかな笑顔で微笑む俺の可愛らしい奥さん。

『おぅ、Dさんによろしく。慣れないヒールやから転ばんよう気ぃつけて』

セットされた髪を崩さないよう、そっと頭を撫でれば彼女は静かに目を閉じ、心に言い聞かせるように言った。

『ふふっ。私、康二君と結婚出来て本当に良かった』

『……俺もやで。じゃあ、また明日』

『うん、おやすみなさい』

薬指に俺と同じゴールドの指輪を嵌めた左手を振り、玄関を後にするかみさんを見送った後、俺はすぐさま自分の支度を始める。

——なぜなら、愛する彼が俺の帰りを家で待っているから。







「俺の前では俺のことだけ考えて」

「俺のかみさんはちょっとどころか、かなり抜けてるから心配やねん」

嫁の話ばかりする俺にめめは強いやきもちを妬く。
マンネリ防止に時にはこういう刺激も必要やろ?

「俺の奥さんが一緒だから大丈夫だよ。彼女は本当にしっかりした人だから」

——だから、今は俺のことだけを見てよ。

「っ……あっ!めめ!」

低く、でも力強く言い放った後。
めめに強引に唇を奪われ、俺は甘美な刺激に酔いしれる。

脳裏に浮かぶ現実から逃れるように。

『……早く、子どもが欲しいの』

俺の胸で涙を流すパートナーを強く抱きしめる。

『……もう少しの辛抱やから』

俺のこの選択は本当に合っていたのか。
自問自答を繰り返す日々に疲れてまう。

そんな俺を癒すのはいつでも側にいてくれる、この男だけだ。







R.


『俺、結婚することにした』

『…………』

二人で訪れた夜の教会。
この教会は世界でも有名な美術家が内装をデザインし、天井高くまで伸びた幻想的なステンドグラスがオープン前から早くも話題となり、結婚式の予約がすでに何年先も埋まっているらしい。

康二は信じられない事実に絶句する俺に切なげに微笑んだ。


目の前の彼は冗談でそんなことを言う人ではない。

それは俺が一番よく知っている。

なぜなら俺は彼の”恋人”だからだ。

『嫉妬ばかりする俺のこと嫌いになった?』

『…………』

上手く呼吸が出来ず、康二に向けてなんとか出た言葉は惨めに震えた。

そんな俺に康二は無言で首を振り、そして

『彼女の願いを叶えてあげたいと思った』

ステンドグラスに描かれた天使を見上げ、真摯な顔で言い放つ。

『っ、なんで……結婚って意味わかってる?ねぇ、俺はどうなるの?康二にとって俺は一体なんなんだよっ』

本来なら愛を誓い合うこの場所。
受け入れ難い現実に立っていることが困難になり、俺は康二の前に跪いてその体に縋り付く。

『俺にとってめめは……』

ゆっくりと俺を見下ろすその目には涙が浮かんでいた。

——例え地獄に堕ちても手放したくない、最愛の人。

赦されなくていい。
愛し合う二人を分つ事など誰も出来やしない。

それは神でさえも。



“向井康二結婚!
お相手は世界的な美術家A子!!”

『彼女の繊細で、だけど荒々しい感情を秘めた絵を初めて見た時から彼女に惹かれていました』

『康二さんのカメラを通した世界はどこか私の世界感と通ずるものがあり、この先の人生で起こる全てのことを彼と共有したいと思いました。痛みも喜びも悲しみも感動も、怒りでさえも』

世界的なアイドルとなり、グループの中でも上位の人気を誇る向井康二とその妻となるA子さんの異例の結婚会見だった。

生中継で放送されるソレを俺は自分の家のリビングでただただ一人、放心状態で見ている。

世間では突然の発表にも関わらず、お似合いの二人だとSNSでは両者のファンから祝福の声すら上がっているらしい。

なぜ?  
俺はこの何年も康二の
痛みも喜びも悲しみも怒りだって
全てを共有していたのに。

「っく、うっ、あぁぁあ———!!!!」

俺はぐしゃぐしゃな感情を打ち消すように叫び声を上げ、テーブルの上にあるものを全て払いのけては頭を掻き乱す。

そんなことでこの感情が消えるわけがないと分かっていても、それを止めることが出来ない。

『これからも僕たちのことを見守っていただけたらと思います』

俺と康二の二人ではあり得ない、世間には決してお願い出来ない言葉。会見。発表。

それが康二の隣で微笑む彼女には可能なのだ。

『康二っ、康二っ!

康二………!!!!』

大きな画面に映し出される至極幸せそうな最愛の人に俺は駆け寄り、泣き崩れ、康二と同じ男で生まれた自分を初めて呪った。



A.

「……向井さん、初めまして〇〇先生から紹介に預かったA子です」

「A子さん初めまして、僕は向井康二です。
単刀直入に聞きたいんですけど、どうしたらこんなふうに繊細に、そして力強く世界を表現出来るんですか?」

私と夫の康二君が出会ったのは暖かな季節に行われた私の絵画展でした。

康二君はカメラが好きで、私と芸術面で通ずるものがあり、お互い今後の作品作りの良い刺激になるのではないかと私の師匠に紹介してもらったんです。

麦わら帽子を被った少女がひまわり畑の中で沈みかける夕陽を見て、夏が終わる寂しさを表現した絵を康二君はしばらく眺めていました。

声をかけるのが躊躇われるほど、真剣に。

そしてどこか切なそうに……。

「私は抽象画がメインで普段実在するものは描かないんです。

でも、今回のこの絵画展は特別。

私が生きていて幸せを感じた瞬間を突然、絵に残してみたくなったんです。ここにあるのは心の中にいつも光り輝く、なににも変え難い私の大切な記憶たち」

「A子さんの記憶……」

「はい。私の普段の絵は想像やイメージから生まれているのではなく、そのかけがえのない思い出からポワポワと具現化されていったもので、私の絵は私の中の記憶。私のそのものなんです。

向井さんは実在するものをカメラに収めて作品化するのでしょうから、形のない私の表現は少し難しいでしょうか……」

大きな額に収められた絵を見ながら淡々と語り出す私に康二君は引いてしまったんじゃないかと心配になり、私が横にいる康二君に視線を送ると、

「いえ、A子さんがこの絵の中の女性に強く憧れを抱いているのが俺にもちゃんと伝わってきましたよ。このひまわりはA子さんそのものでしょ?」

私の絵から目を離さず、康二君から予想外の返答が返ってきました。

「…おっしゃる通りです。私の人生の半分以上は彼女で出来ているんです。私の絵は”彼女”ありき。彼女がいなければ私は画家にはなってなかったと思います。向井さんはアイドルですから、答えにくい質問かもしませんが……特別な誰かはいらっしゃいますか?」

この時、私はアイドルとしての彼のことはよく知りませんでしたが、同じ芸術家として”本来の彼”と本音で話してみたいと思ったんです。

本気で応えてくれるかは分かりませんでしたが……

「……俺にもいますよ。誰よりも愛してやまない最愛の人が」 

こちらに顔を向け、やるせなく微笑む向井さん。 

この人になら、

彼女には話せない

私の全てを話せるのではないかと。
淡い期待が膨らみ始めた瞬間でした。

「もし、向井さんが良ければ私と”友達”になっていただけませんか?」

大きなキャンバスに描いた私自身の記憶を見上げ、
私の自信のなさを康二君に隠す。

……私の人生の半分以上をともに過ごし、
常に私の人生を彩ってくれる絵の中の少女。

今は私よりもグンと身長も伸び、彼女は初めて出会った少女の頃から、常に輪の中心にいてみんなの憧れだった。

私は日陰で過ごすことしかできず、太陽を追うひまわりにすらなれない。

保健室から見るまさに健康そのもので、私とは正反対の日の光の下で強い自信を持った貴女のことを私は密かにずっと想っていました。

だから、貴女が怪我をして保健室を訪れた時。

『あっ、あの、えと、私と友達になってもらえませんくわっ!?』

『……くわっ?ふふっ、いいですよA子先輩』

いきなりのことに目を丸くし、だけども少し照れながら微笑む貴女。

『私のこと知ってるの……?』

『実は先輩が描いたコンクールの絵のファンで、毎朝美術室の前まで見に行ってます』

太陽のような貴女が私の名前を知っていてくれたこと、貴女が私の人生で初めての友達になってくれたことが嬉しくて、私はその場で泣いてしまいました。

「もちろんです。俺はA子さんの絵のファンなので、これからもよろしくお願いします」

「っ…!」

この時の康二君の言葉が最愛のSちゃんの言葉と重なり、私はまた嬉しくなって康二君の前で号泣してしまい、そんな私の頭を彼はそっと撫でてくれました。








R.


「本当にいいの……?」

「うん。キスや余計な愛撫はいらない。手短に終わらそう」

子どもは欲しい。
でも、セックスはしたくないという俺の奥さん。
彼女は『とある日』以降、妊娠しやすい日をしっかり割り出し前々からこの日にセックス、もとい子作りを開始すると決めていた。

一応、奥さんの為に高級ホテルのスイートルームを予約はしたが、こうもあっさりベッドの上で服を脱がれては俺もどうも拍子抜けしてしまう。

彼女は子どもさえ出来ればきっと、どこでしようと気にしないだろう。

——ただ一つの場所を除いて。

「鍛え上げられたすごく綺麗な体です……
一応確認だけど、Sさんって処女だよね?」

今をときめく人気ダンスボーカルユニットのリーダーであるSさん。

彼女は天才的なダンスや歌唱力だけではなく、高身長でキリッとした顔立ちとメリハリのあるボディー、そして物怖じしない芯のある発言や行動力が男女問わず絶大な人気を誇っている。

そんなSさんは恋愛の噂が一切なく、バイセクシャル、もしくはレズビアンなのではないかと界隈では噂されていた。

Sさんはすごくモテるし、実はうちのグループでも密かにSさんに恋心を抱いているメンバーがいたのだと、俺はSさんと結婚してからその事実を知り、一悶着があったりもしたのだが、その話はまた後日。

「この体に触れていいのはただ一人。これでお前の知りたい答えは分かるでしょ?」

気まずそうにSさんから目を逸らす俺にSさんは淡々と言い放つ。

「いや、答えは分かるんですけど……それなら尚更丁寧にやって行かないとじゃありません?」

「結構。電気を消そうか?」

露骨に断られ、一応俺も男。
……これでは勃つものも勃たない。

「お願いします」

俺が深々と頭を下げればSさんは速攻で電気を消し、かろうじてお互いの顔が見えるくらい部屋は真っ暗となる。

それが返って良かったのかも知れない。

『めめ、久しぶりやから優しくしてな?いつもみたいに先走っちゃ駄目やで?』

それにより、男の癖に上目遣いで甘えた声を出し、いちいち可愛い最愛の人を秒で脳裏に浮かべることが出来、俺の陰茎が首をもたげ始める。

どれだけSさんに簡潔に済ませろと言われても、いきなり突っ込むのは嫌だし、もちろん聞きはしないが康二はA子さんを丁寧に抱いてるに決まっている。

「(あぁ、康二が俺以外の奴に触れてる想像をするだけでイライラする)」

元はと言えばだ。 

康二の奥さんが事の発端で康二がそれに感化され、こんなことになってしまい、俺とSさんはそれにだいぶ振り回されたのだ。

なにも聞かされず、二人の計画だけが進んだ時。
俺は正直、康二を殺して俺も死んでしまおうかと考えたほどだ。

しかし、

“私の遺伝子を遺したいの”

“俺はどうしてもめめの子どもが欲しい”

二人の結婚から数ヶ月。
俺が呼び出されたのはA子さんの絵画展の会場の控え室だっだ。

『こんばんは…………』

『…………』

そして何故か着いた先にいたのは俺たちSnow Manと肩を並べて人気の世界的ダンス&ボーカルパフォーマーのSさん。

彼女はA子さんと並んで座る康二のことを何故だかすごい顔で睨み、そんなSさんを二人は苦笑いして見ていた。

Eさんがどういう気持ちなのかは分からないが、出来るなら俺も二人のことを睨んでやりたかった。

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