太陽と月
「康二……くん」
「ふはっ!俺のこと呼び捨てにするの全然慣れへんやん!」
「なんだろう、なんか康二って呼ぶのが本当照れ臭くて……」
『いつまでも”くん”付けやとせっかく同じグループのメンバーになったのになんか他人行儀やない?』
康二くんに言われ、俺は康二くんを呼び捨てにしようと試みるが、何度呼んでも今だに慣れないのはやはり彼が俺よりも先輩であり、知名度も圧倒的に異なるということが大きい。
「……俺すらも見たことのない場所を知ってるのに?」
顔を赤らめて机に俯く俺に康二くんは意地悪く、そして妖艶にクスッと微笑む。
「っ〜〜!!またそうやって俺を煽るのやめてよ、その気もないくせに」
今日も雪の予報が出ているためにメンバーとの打ち合わせが早々に終わり、解散となった事務所の控え室には俺と康二くんの二人きり。
「めめの困ってる顔めっちゃ好きやで 」
「……うるさいよ」
……向かい合わせに座る康二くんはこんな風に俺の前では明るく笑っているが、彼の心が実はズタボロに傷付いていることを俺は知っている。
俺は同じグループになり、これまで関西でどんなことも卒なくこなしてきたと思っていた康二くんが実はかなり繊細で、今の康二くんは壮絶な努力により形成された人物であることを知り、ダンスの振り覚えが圧倒的に早いメンバー、さらに関西と関東の雰囲気の差に打ちのめされて、康二くんはメンバーに悟られぬようよく影で涙を流していた。
その姿を偶然見てしまってから俺は舞台に一緒に出演した時、康二くんに何度も背中を押してもらったことを思い出し、今度は俺が康二くんを支えるのだと意気込む。
「……じゃあ、めめの期待に応えて今夜どや?」
他にも席はたくさんあるのに康二くんはわざわざ俺の隣に移動し、この部屋には俺たちしかいないのに内緒話をするように俺の耳元にこそっと囁いた。
康二くんの口から放たれる、まだ聞き慣れないみんなと同じ『めめ』呼び。
「っ、康二……」
「……めめ、返事は?」
上擦った高い声に俺が俯いたまま視線を康二くんの方に向ければ、康二くんはあと少しで唇が重なる距離にいて、俺と同じように机に伏せ首を傾げて問う康二くんに俺の胸が大きく高鳴る。
「康二のこと抱きたい……」
「ん……今夜も俺の隣におってや、めめ 」
見つめ合い、どちらともなく唇を重ね合えば、
外ではちらほらと雪が降り始める。
本当は『蓮』って呼んで欲しいだなんて言えるわけもなく……。
俺は気を抜くと思わず放ってしまいそうになる
『康二くんのことが好きだよ』という言葉を必死で飲み込んだ。
—例え今ある寂しさや不安を打ち消すために俺に抱かれるのだとしても、それでいいよ。
俺の存在はこの先も康二くんのためだけにあるから。
「はぁ……ッ!めめっ、あ、んっ!!深いっ……」
「康二くんはここが好きなんでしょ……」
康二くんの泊まるホテルのダブルベッドの上。
俺たちはまだ指折り数えるほどしか体を重ねておらず、さらに今の体位は今日初めて挑戦するバックでの挿入。にも関わらず康二くんは俺が腰を振るたびに悦びの声を上げて俺を煽ってくる。
「んぅうっ!!あっ、好きやないっ……!!」
「……嘘つき、正直に言ったらもっと気持ちよくしてあげる」
枕に縋りつき、涙を流して振り返る姿に俺の男根は固さを増し、彼を素直にさせるためには彼の好きなコレを使って、快感の海にもっと溺れさせなければならない。
「う、っあ、……ンンッ!!
め、めの大きなモノで……突かれるのす、ァァアッ?!!」
「っ、よく出来ました」
康二くんが言葉を紡ぐ途中で俺の我慢が効かなくなってしまい、俺が康二くんの最奥に容赦なく熱くたぎるモノを打ち付ければ、康二くんから漏れるのは耳触りの良い高く上擦った甘美な喘ぎ声。
「めめっ!激し、い……ッ!!ふっ、ンッ…!はぁっ」
「ん、康二……のナカ、すごく気持ちいいよ」
好きな人を組み敷き、どんどん乱れていく様を熱に浮かされた俺は食い入るように見つめ、例え康二くんの心が手に入らずとも、この先も俺の体なしでは生きていけないように快楽を教え込まなければ。
しかし、このまま康二くんのナカでイってしまいたいと、逸る気持ちをなんとか抑え俺は容赦なく打ち付けていた腰のスピードを緩やかに落としていく。
「……え?めめ、なに……?」
「このままだとすぐイっちゃいそうだから、少し加減しようかなって……夜は長いしね」
戸惑う康二くんが可愛くて、俺は康二くんの背面に体重をかけ、康二くんをうつ伏せにさせて寝バックの体勢を取る。
さらに俺が康二くんに覆い被さることで、少し動き辛いがこれにより康二くんは俺が与える刺激から逃れることは出来ない。
まるで俺のために形成されたのではないかというくらパズルのようにピッタリハマる俺の肉棒と康二くんのアナル。
俺とのまぐあいで熱くなった康二くんの体温も心地良く、背後から康二くんのおでこにキスをして、耳に息を吹きかけ囁けば、それにより康二くんの体が大きく震え、俺のモノをぎゅっと締め上げる。
「め、め……!お願いや!そんな焦らさんといてっ……」
切なげに放たれる声に、また強く腰を振ってしまいたい衝動に駆られ、俺は目を一度強く閉じることでなんとかそれを抑えた。
「あー、康二のナカすごくあったかい…… 」
「んっ、ふぅ!そこばっか!い、やぁぁっ」
膝に力を入れ、一定の間隔でゆっくりとした律動を刻めば、康二くんが一番好きなところに俺の先っぽがピンポイントであたり、それにより康二くんは口から涎を流しながら、はしたない声を出す。
「康二とずっとこうして繋がっていれたらいいのに」
「っ、めめ……ぁ、ンンッ!そろそろイきたいっ!!」
思わず漏れた本音を彼はどう捉えたのだろう。
切なげに歪んだ横顔を俺は見逃さず、彼は俺の感情から逃れるように意識を行為に向けた。
「康二、今日はどこに出して欲しい……? 」
「あんっ!はぁっ、そこ、イイッ……!!
めめっ、このままナカに出してっ」
康二くんは腹痛を起こしやすく、俺は初めての行為以降ゴムを用意しているが、康二くんは俺がゴムをすることと外に出すことを極端に嫌がる。
「わかった……ナカに出すよっ、ッツ——!!」
「くっ、ああっ——!!」
俺が抑えていた律動を早めれば、それに感じた康二くんの陰部が収縮し、俺は康二くんのナカに白い液体を放ち、康二くんも絶頂を迎える。
「…………気持ちよかった?」
「…………うん」
枕元に投げ出された康二くんの両手を握り、汗ばんだ康二くんのうなじにキスを贈る。
慣れない環境、俺とのsexにより疲れたのか康二くんはうとうとし、俺の愛撫にされるがままだ。
「(愛してる、愛してる、康二……)」
どれだけ体を重ねても、俺の想いは外で舞う粉雪のように他の雪と溶け合うことはない。
それでも俺はただ、康二くんを愛し、支え、守ると誓う。
—しかし、康二くんは守られるばかりの雛ではなく、今後Snow Manのメンバーの中でも、より一層大きな翼を持ち、遠い世界へ羽ばたいていくことを俺は知らなかった。
康二くんは決して手の届くことのないみんなを照らす眩しい太陽(ソレイユ)。
俺は月(ルナ)。
君が輝き、君と同じ輝きをどれだけ求めても、
月の輝きは太陽の輝きなくしては成し得ない。
君の存在がなければ俺は輝くことすら出来ず、
君の隣に並ぶだなんてことはありえない。
じゃあ、なぜ君は
太陽と月を”対”だと言うのか。
「…………」
ホテルの喫煙所の窓枠に腰掛け、煙を吐き出す。
静かに降り積もる雪は東京のネオンを視界から遮断させ、見下ろす街には人っこ一人いない。
今年は雪が多い年なんだなとぼんやり考えていると、
——カシャッ、カシャ!
「……へぇ、めめ煙草吸ってたん?」
「バレちゃった」
喫煙所で響く少し重ためのシャッター音。
康二くんは口角を上げ、珍しい物を見るような目で俺にカメラを構える。
部屋に荷物はあるのに俺の姿がないと、ここまで探しに来てくれたのか……
康二くんの無邪気な寝顔を眺めていたかったが、煙草の臭いが嫌いだと言う康二くんのためにここ最近吸うのを控えていたが、さすがに体が限界を迎えていた。
「外は雪が積もってるよ、写真を撮りに行くの?」
「……煙草は体に良くないで。これからグループとして仕事も増えてくんやし、早いうちにやめえ」
カメラのレンズから逃れるように俺が外へと視線を移せば、康二くんは少し低めの声で俺を諭す。
「うーん……俺が煙草を吸いたい時に康二くんがキスをしてくれたら、やめられるかな?」
冗談混じりで笑い、口元に煙草を当てがおうとした時。
その手を康二くんに握られ、次の瞬間
ちゅっ
「…………え」
「……それ、ほんまやな?」
当たった柔らかな感触と康二くんの真剣な表情に俺の時が止まり、手の中にあった機械が床に音を立てて落ちる。
「俺がキスすれば、目黒くんは煙草やめられるんか」
まだ康二くんにめめと呼ばれて間もないが、康二くんの口からちょっとぶりに聞いた”目黒くん”呼びにどこか距離を感じ、俺に禁煙して欲しいという康二くんの強い想いが伝わってくる。
「……俺、結構ヘビースモーカーなんだけど、いいの?」
「俺やラウと会う日は気を遣って吸ってなかったんやろ?それならすぐにやめられる。キスくらい別にええよ」
煙草に親でも殺されたのかというくらい、康二くんが纏う雰囲気には威厳があり、ここで茶化せば俺は康二くんに空気の読めないヤツだと思われるかもしれない。
けど、
「最近我慢してた反動が今かなり来てるみたい。
だから、っ……!!?」
俺が全てを言い終える前に康二くんは俺の両頬に手を添え、唇を押し当てた後、俺の口内に舌を差し込む。
「んっ……」
「(なんでっ……別に俺のことが好きなわけじゃないんだろ?)」
康二くんの行動に俺の思考は追い付かず、ただやるせない想いを抱えたまま俺は康二くんを抱き寄せては必死で康二くんの舌に自分の舌を絡み付け、無我夢中で康二くんを求めた。
例え酸素がなくなっても康二くんの舌さえ吸えれば生きていけるんじゃないかというくらい、彼のキスは耽美で、俺を狂わせていく。
「……不味い」
どちらともいえない唾液が糸を引き、康二くんが眉根を寄せて自身の口元を手の甲で拭う。
「そう?俺は甘かったけど」
俺が目を細め微笑んでも、康二くんの真面目な表情は変わらず……
「体に悪いものはやめるって約束してや」
「俺以外にも煙草を吸ってるメンバーはたくさんいるけど……康二くんは他の人にも”ソウイウ”ことするの? 」
答えは”しない”と、分かりきっている。
でも、じゃあ康二くんはなぜ俺にここまで言う?
「……ずるい質問やな、俺がそんな尻軽な奴に見えるんか?」
「…………尻軽だなんて思ってない 」
悲しげに寄せられた眉根を直視することが出来ず、俺は思わず窓の方へと視線を逸らす。
「めめは東京に来たばかりの俺が唯一心を開ける人で、俺はきっとめめのことをこれからも頼りにするし、長い時間を一緒に過ごすことになるやろうから体を大切にして欲しい……こんな理由じゃ駄目やろか?」
どこか力無く語る康二くんの言葉に胸がギュッと締め付けられ、俺は床に落ちた機械を拾って近くにあったゴミ箱へ入れた。
「……ちゃんとやめるから、そんな顔しないで」
「ほんまに?」
俺の行動に驚き目を見開く康二くんの頬に手を添え、俺は微笑む。
「うん。だから、康二くんからご褒美のキスをして欲しいな」
「……明日はオフやから続きは俺の部屋じゃ、あかんか?」
俺の手に自身の手を重ね、やんわりと微笑む康二くんが可愛くて、
この時。
きっと彼も言葉に出来ない理由がありながらも、俺と同じ気持ちを抱いてくれていると、俺は信じて疑わなかった。
……康二くんも俺を好きでいてくれているのだと。
続く
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