短編集
「康二!!ただいま!!」
「……おかえり、そんな汗かいて走ってきたん?」
なんの前触れもなく玄関のドアがいきなり開き、その先には十一月でだいぶ寒くなって来たというのになぜだか汗だくで満面の笑みを浮かべたダーリンの姿。
……まさか、ドラマの撮影で女優と熱烈なラブシーンを演じて来たのがそんなに嬉しかったのだろうかと一瞬頭によぎったが、もう長いこと俺だけを一途に愛してくれてるめめのことや。
それはないやろな。
「康二!!」
そうして、俺が気持ち悪いくらいニコニコしているめめを驚いた顔で見つめていると、浴室に片付けようとしていたバスタオルを抱えたままの腕を強く引かれ、
「うわ!めめっ、いきなりなんやねん!?」
そのままギューっとめめの腕に閉じ込められる。
——今日一日、ずっとめめが
俺以外の人間をその視界に捕らえて
俺にするように優しく触れて、
俺に囁くように愛の言葉を他の誰かに放っていたと思うとイライラして仕方がなかった。
しかもそんな日に限って俺はオフ。
気休めにカメラの調節を行なったり、洋服の新しいコーディネートを考えたり、語学の勉強をしたり、筋トレをしてみたり……
ありとあらゆることに時間を費やしてみたが、なにをしていても考えるのはめめが俺じゃない人間と”濡れ場”を演じているということだけ。
心配 しないで (だって、この愛は)
「康二……会いたかった」
「ん、俺もめめにめちゃくちゃ会いたかったで」
体に馴染んだ体温、鍛え上げられためめの胸の硬さ、心臓の音、耳に馴染む低いけど、とても柔らかな声。
その全てに俺の内に溜まっていたドロドロの感情が浄化されていく。
正直、一緒に暮らしてもう何年も経つのに俺はめめのことが出逢った頃よりも今の方が何万倍も大好きやけど、俺とめめは男同士やからもちろん結婚は出来ない。
しかし、俺はめめのことを旦那様やと思ってるし、
めめは俺のことを奥さんだと思ってくれている。
『康二だって男なんだから、俺の奥さんって言うのはなんか違くない?』
数年前にめめにプロポーズされた時、夫婦なら俺はめめの奥さんやなと言う俺にめめは困った顔をして言った。
『めめはいつでも俺を守ってくれるし、毎日可愛いって言ってくれるやろ?世の中の奥さんは旦那が結婚した後は自分の変化に気付かなくなるー、自分に見向きもしなくなるーって嘆いてるけど、めめは俺のちょっとした変化にも敏感で、一緒に台所にも立ってくれる理想の夫。
俺はめめが付き合った日から毎日欠かさずに今日も可愛いねって言ってくれるんも、道路側を歩かせないように気を遣ってくれるんも、重い荷物を持ってくれることにもめっちゃときめいてんねん。
だから、俺はめめの嫁さんっていう立ち位置がええんよ』
というか思い返せば俺たちは同棲する前から、もうすでに夫婦みたいなもんやったわ。
『そっか……これからもっとたくさん愛してあげるから、よろしくね目黒の奥さん』
『はい、旦那様』
二人で微笑み、見つめあった後、磁石のようにピッタリと熱い抱擁を交わし、永遠の愛を誓ったあの日のことを思い出しながら俺がめめの腕の中に収まっていると……
「あのさ、康二」
「どうしたの?目黒さん」
めめは俺の両肩を掴み、笑顔で俺と向かい合う。
そんなに俺に会えたことが嬉しいのか、俺にしか見せないわんこのようなめめが可愛くて堪らない。
思わず俺も笑顔になり、黄色いクマさんのモノマネをして返事を返す。
で、
「安心して!
もうなにも不安になることはないよ?
俺、Snow Manをやめて康二専属のマネージャーになるって決めたから!
そしたらずっと、なんの心配もなく俺と一緒にいられるよ」
「…………は?」
「え…………?」
全く予想もしていなかったことを言われ、俺は首を傾げたまま固まる。
あー、俺の正面にいる男はいきなり何を言い出すのだろうか。
俺の顔は今、多分「倍返しだ!」の俳優さんのような顔になっていると思う。
思うってか、俺の表情を見ためめの顔も引き攣ってるのを見ると絶対なっとるわ。
……エイプリルフールはまだ先やし、なにかの聞き間違えやろか?
いや、でもこの男は俺のことが好きすぎて本当にたま〜におかしなことを言い出すのよね。
しかし、あまりにもめめの発言がぶっ飛びすぎて帰り道の道中、もしかしたらどこかで頭を強く打って来たのではないかと、俺は急激に不安になる。
「……めめ、もうすぐめめの好きなシーフードグラタンが焼き上がるから、とりあえず着替えてき」
「うん……」
俺の腕の中にあるバスタオルでめめの顔と首の汗を拭いてやるが、めめは俺の反応にシュンとしてしまい、こんな突拍子もないことを言い出したのはきっと、朝の俺の態度のせいやと頭に浮かびなんだか申し訳なく思った。
「……ということでして」
「あー、確かにめめが俺専属のマネージャーやったら、家だけじゃなくて仕事中もずっと一緒にいられるな」
黒のスウェットに着替えためめになぜいきなり
”マネージャーになる”という答えに行き着いたのか、グラタンの焼き具合を確かめながら聞いてみれば、俺が今日一日めめのベッドシーンで悶々としていたように、めめも俺にどうすればやきもちを妬かせなくて済むのか、どうしたら俺ともっと長い時間を過ごせるのかを考えていてくれたらしい。
「そんなことを考えながら、演技をしていたらいつの間にか撮影が終わってた」
めめが自分の席にオレンジのランチョンマットを俺の席には黒のランチョンマットを敷き、お水とカスターを用意してくれた。
なにも言わなくても俺の行動を見てすぐさま準備する、めめのこういうところが大好きや。
「めめ、おおきに。
しかし、そんな上の空状態でよくカットがかからなかったな……で、帰りの車でマネージャーと話して感化されてしまったと? 」
「どういたしまして。
……まぁ、かなりぶっ飛んだ答えに行きつき反省しています。
うわぁ、今日も美味そう!!」
頭を掻きながら着席するめめの前にグツグツと煮立つ熱々のシーフードグラタンとナスやパプリカ、マッシュルームとバジルをトマトで煮込んださっぱりとしたカポナータ、オリーブオイルでカリッと焼き上げたバケットを並べればめめは歓喜の声をあげる。
「熱いからちゃんと冷まして食べるんやで?
火傷せんでな」
「いただきます!」
まずは料理の見た目を褒め、しっかりと手を合わせて俺の作った料理にありつくめめ。
「どうぞ召し上がれ」
「あっ、つつ!!でも、今日もめちゃくちゃおいひぃ〜」
フーフーするもまだ熱かったのか、口をはふはふさせながらグラタンを頬張るめめに俺の顔も綻び、俺自身も手を合わせていただきますをし、自分のグラタンに息を吹きかけ冷ます。
「めめの好きな牡蠣やで。ほら、アーンしてや」
「ん……どんな一流シェフが作る料理よりも、康二が作って康二にアーンしてもらって食べるご飯がこの世で一番美味しいよ」
俺が差し出したスプーンを大きな口を開けて食べるめめがとてつもなく可愛くて、こんな姿を見られるのは世界中で俺だけやと思うと、どうしたって弛む頬を抑えられない。
さらになにをしても毎日こんな褒め言葉を贈ってくれるんやから、めめのためにどんなことでも一生懸命やろうと頑張り甲斐がある。
「いつも俺の料理を褒めてくれてありがと。
俺もな、今めめの健康管理を出来ることがすごく嬉しいんよ。これはめめの嫁である俺だけの特権やな」
食べても、食べても中々太らない体質。
さらに忙しさで食事が取れないことも頻繁にあり、
めめと付き合う前の俺はそれがすごく心配で、めめと会える日はおにぎらずで作った具沢山のおにぎりや、めめのために栄養学を独自で学び、彩りやバランスを考えた自作の軽めのお弁当を自分のついでだと言って渡していた。
『康二、今日もお弁当ありがとう。
俺好みの味付けですごく美味しかったよ。
また食べたいから、康二が良ければこれからもお弁当を作って欲しい』
めめから送られてくる空になった綺麗なお弁当箱の写真とそのSMSのメッセージがどれだけ嬉しいか……
元々嫌いではなかったが、毎日料理をする楽しみをめめが与えてくれ、さらにお弁当のお礼としてめめは自身がアンバサダーを務めるブランドや企業の商品を他のメンバーが羨む中、俺にたくさんプレゼントしてくれた。
ほんまはあまり気を遣わせたくなかったんやけど、俺に出来るのはこれくらいだからとめめは言っても聞かず、俺はめめから貰ったものはどれだけ古くなっても今でも大切に使っている。
「料理だけじゃない康二だけの特権はまだあるよ?
康二の作ったご飯を食べてお腹いっぱいになったし元気にもなった。
でも俺さ、まだ康二が足りないみたいだ。
今日は濡れ場だったけど、康二は俺のことを受け入れてくれる?」
俺の言葉に相合を崩しためめは俺の頬に手を伸ばし、親指で俺の唇をゆっくりとなぞっていき、その指が唇全体を撫で終わる頃には俺を見つめるめめの目は真剣な眼差しへと変わっていた。
「むしろ俺で上書きしないと許さへんよ」
めめの手を慈しむように自分の手を重ね、めめの手の温かさを堪能する。
——この大きな手は本来俺だけのもの。
「康二、愛してるよ」
——この声も、愛も全て俺だけのものや。
めめの髪の毛一本たりとも誰にも触らせたくない。
女優だけじゃない、この世でめめに関係する全ての『モノ』に俺は嫉妬する。
メンバーにもファンにも、時にはめめの友人や家族にさえも。
俺は元よりやきもち妬き体質や。
でも、めめに色目を使うやつは全員◯えてしまえばいいと思うほどの感情を抱くのはめめが初めてやった。
——恋は盲目?
いや、猛毒。
一度、強烈な毒に侵されれば体だけやのうて、視界や思考、神経全てが麻痺しその場から動くことは叶わなくなってまう。
恋に効く解毒薬はない。
いかに毒を摂取しないかに限る。
でも、しゃーないやん。
「めめと出逢えた俺はほんまに幸せもんや、俺もめめのこと愛しとるよ」
「康二……」
めめの手を握り俺が立ち上がれば、めめも俺が求めてるものを察して立ち上がり、俺たちはテーブルを間に挟んで唇を重ね合う。
「(こんなイイ男に出逢ってしまったら、どうしたって関わらないなんて無理やろ)」
俺たちは毎日、目の前でゆらゆら揺れる綺麗な尻尾を追いかけるのに必死だ。
そして、息を切らしながら追っているのは実は自分の尻尾であると気付くことはもうないかもしれない。
その美しい尻尾を噛んだが最期。
自己の消尽を繰り返し、日々進化していく俺たちの愛は終わりのない無限のものとなり、一つの”環”となる。
俺たちの愛の形はそれでいい。
いつも血眼になって相手のことを見てる。
飽きられぬように、よそ見をされないように絶えず脱皮を繰り返して、常に相手の目線を自分から逸させない。
「俺の身も心も全て目黒蓮だけのモノやから。
今は俺の嫉妬心も寂しさも全てを受け入れて愛して欲しい。
そんで、俺たちがもっと歳を重ねてSnow Manとして活動するんが厳しくなった時、
俺とめめの二人っきりでどっかの山奥で暮らして、四六時中愛し合おうや」
軽いキスの後に俺がそう告げれば、めめはクイっと口角を上げ一言。
「なんか砂吐きそう」
「多分もっと出てくると思うで?
ベッドの上でたくさん受け止めたる」
そう。
だって俺のめめへの愛はヘビー級やから。
“女の情に蛇が住む”
俺を嫁にしたからにはもうどこにも逃げれへんで。
これから重くなっていく愛に覚悟して?
スーパーダーリン
もうこんなバカップル(夫婦)どこにもいないだろwww
とツッコミ爆笑しながら書いたのは内緒です。
二人はそもそも一匹の蛇なんですか?←
来年は巳年ですしね、中身おっさん駄洒落大好きな私が妄想じゃなくて考えて小説を書くと言葉遊びが始まり、ギャグというジャンルに一気に様変わりしてしまのですよ……
このお話の🖤は🧡と一つ屋根の下で暮らし、身も心も🧡が妻として管理してるんですけど、🧡という完璧な嫁がいたら旦那様はさらにカッコよくなりモテてしまうのはいや、まぁしょうがないですよね!
同じくらい愛重めの二人だから、いいけれど
これが片方だけだったら殺人事件が起きそうなレベルですね。
愛重め🖤だけじゃなく、ヤンデレ🧡にも目覚めそうです。
いい夫婦
↓
想い愛
↓
重い愛
↓
ヘビー
↓
巳年
↓
猛毒(盲目)
……という感じで恥ずかしくなってきたので、そろそろお開きにしましょう。
こまち