短編集
「こ、こ、こんなん履けるかぁあぁあ!!!!」
「ふふっ、いつもの康二だ」
俺が手渡した紙袋の”中身”を確認した康二の叫ぶ声に俺は脱衣所で腹を抱えて笑う。
キミに一万を超えるとびきりの”愛”を 中編
「(しかし驚いたな……ここ最近なんかソワソワしてると思ってたら、康二もまさか俺と同じことを考えていたなんて)」
バレンタイン当日の今日。
イベント毎が大好きな俺の恋人はこの日が近付くにつれ、俺の顔を見て俺と目が合っては視線を逸らしを何度も繰り返し、俺の誕生日の準備を進めながら、心がだいぶ浮き足立っているんだなぁとわかりやすく、かくいう俺も康二と付き合って四年目となるが、日に日に康二に対する想いは強くなっていき、久々に二人っきりで過ごせる事実に気持ちが逸り、気を抜くと上がってしまう口角を自分の指で何度も下げることで日々をやり過ごした。
「康二のメイド服可愛いかったな…」
熱いシャワーを浴びながら、メイド服を着た康二を脳内で思い出す。
男にしては華奢でスタイルの良い康二のことだ。
女装も意外と似合う。
特に長い靴下と短いスカートから覗く魅惑の白い太ももには俺も悩殺された。
しかし康二のメイド服を見た瞬間、俺の頭に真っ先に浮かんだのは佐久間くんとあべちゃんの姿。
「(あのメイド服は多分あべちゃんの入れ知恵かな……)」
恐らく康二は俺との夜の生活にマンネリを感じていることをあべちゃんに相談し、その打開策として提案されたのが”コスプレエッチ”だという予想は簡単についた。
なぜなら、
『実は最近康二が俺とのえっちに満足してないんじゃないかなって思ってて……』
『え?マンネリ?そんなの誰にだってあるだろ!俺はあべちゃんと一線超えてからコスプレで毎回楽しんでるよ』
たまたま番組を撮影する局が被り、廊下で遭遇した佐久間くんに「最近康二とどうよ?」と何気なく聞かれ、同じく阿部亮平というメンバーをパートナーに持つ佐久間くんに俺が最近の悩みを素直に打ち明ければ、同じ大学を卒業した先輩はケタケタと豪快に笑って「ナースにセーラー服、ポリスの定番からアリスに赤ずきんの童話でしょ〜?あと初音◯ミクに◯ーニャにぃ……さらに〜、なんだっけ?あっ!ウ◯娘は制覇したな〜!」と、今までにあべちゃんの前で披露したコスプレを指折り数えて行き、出てくるワード数に俺はドン引きし、Snow Manで一番普通に見えるあべちゃんもああ見えて結構マニアックな男なんだと苦笑いをする。
まぁ、あまり大きな声では言えないが珍獣より珍獣っぽい佐久間くんを研究対象ではなく”恋愛対象”として見れる時点であべちゃんも案外、佐久間くんと通ずるものがあるのかもしれないなと、俺は失礼なことを考えながら目の前で自分の世界に入っている佐久間くんに言葉を投げかける。
『俺はどちらかというと康二のありのままが好きなんだよね。あと、康二のことだからノリノリでコスプレされても俺多分スイッチ入らないと思う……』
俺の言葉に佐久間くんの動きがピタッと止まり、佐久間くんは俺の顔を見ては悪戯っ子のように微笑んだ。
『あ〜ね、蓮はそっちタイプかぁ。
じゃあ、ちょっと早い誕生日プレゼントってことで俺が良いモノやるよ』
佐久間くんは近くにあった自分の鞄を漁り、小さな紙袋を取り出せばそれを俺にどうぞと差し出す。
『……なにこれ?』
条件反射で受け取った紙袋は中身が入っているのかというくらい軽く、俺が首を傾げて紙袋を振ればカサカサと音が鳴る。
『あべちゃんも最近コスプレはお腹いっぱいになってきたんじゃないかなぁ〜と思って、一度初心に帰ろうと買ったんだけど、俺もしばらくあべべと会えないから康二に着用してもらえよ』
お前らバレンタインは一緒に過ごせんのいいなぁー、俺なんて舞台が重なって次会えるのはかなり先だぜー?と俺をそっちのけでまた一人で喋り始める佐久間くん。
『……着用?』
密閉された紙袋を何度も振り、中は一体なんなんだろうと俺は眉を寄せて考える。
『相手のありのままが好きなら、どんなコスプレより”ソレ”が一番燃えんじゃね?あとはシュチュエーションとココ!』
意地の悪い顔をしながらいちごのように赤く、蛇のように長い舌を出して指差す佐久間くんは小悪魔のようで、性には淡白だと言っていたあべちゃんがベッドの上で佐久間くんに翻弄される理由が別に知りたくもないけど、今わかった気がした。
そんなこんなで、康二は俺とのマンネリを解消すべく、格好だけでなく態度や言葉遣いもしっかりとしたメイドになりきってくれたわけだけど……
正直俺のことを『ご主人様』と呼ぶ康二と、例え似合っていても見慣れぬ康二の女装姿に強い違和感を感じたし、さらに康二が本格的なメイドになりきったことで康二が全くの他人に見えてしまい、非日常に興奮するどころか全然落ち着かなかった。
あと、康二が俺の誕生日祝いにコスプレをしたことで、もしかして俺との営みに物足りなさを感じでいるのではないかという不安が確信に変わり、俺は男としての自信をビミョーに喪失した。
……俺は関西弁を話して、明るく元気に甘えてくれる自然体な康二が大好きなんだけど、今康二が求めている俺はどんな俺?
「…………」
「えー……なんで服着てんの?」
俺がワクワクしながら康二の家のリビングのドアを開ければ、そこにはメイクを落とし、ウィッグを外し、緩めの白いシャツとジーンズを履いて佇むいつも通りの康二の姿。
ただし、その顔は仏頂面だ。
「あっ、あんなの恥ずかしくてつけられるかっ……!!」
眉根を寄せて機嫌の悪そうな康二の顔を見ているとついつい意地悪をしたくなってしまい、俺は思わず笑ってしまいそうになるのを必死で堪えながら、わざと低い声を出して康二を責める。
「メイドはなりきってたじゃん」
「あんなん付けるくらいならメイドの方が千倍マシや!!」
「さっき、それがめめのお望みとあらばって言ったよね?」
「な、中に入ってるものが”アレ”だとは思わへんやろ!?」
……うん、普段陽気な康二が真っ赤な茹だこのような顔をして怒る姿が見れただけでも俺は大満足だ。
俺が唇を尖らせて康二にいかにも怒っているぞとアピールすれば、康二の話すスピードがどんどん早くなっていき俺はとうとう堪えきれずに吹き出してしまう。
「ハハッ!!ごめん康二……っ、冗談だよ!」
「はぁぁ!?」
俺の胸ぐらを掴む勢いでブチギレる康二に俺は笑いが止まらず、プルプルと震える。
「康二が可愛くてさ、ついからかいたくなって……
ねぇ、今日は俺の誕生日でしょ?お願い、許して?」
俺が目尻に溜まった涙を拭いながら、そっぽを向いて頬を膨らませる康二の顔をツンツンと突けば、張り詰めた風船の空気がプシューっと抜けていく。
「……しゃあーない。今日は特別に許したる」
「ありがと康二」
腕の中に可愛い恋人を閉じ込めて額や耳にキスを贈れば、康二はふぅと息を吐き、俺にされるがままとなる。
「今日はな、料理だけやなくてケーキも俺の手作りやねん。ほな、少し早いけどめめの誕生日祝いしよか」
ニカっと白い歯を見せて笑う姿に俺はどうしようもなくときめいてしまい、康二の耳元に甘い言葉を囁くことでそれを康二に共有する。
「……ありがと、康二。康二が俺のためにここまでしてくれてすごく嬉しいよ。
これが終わったら今日はいつも以上に愛してあげるから、覚悟して?」
「〜〜っ、ほんま今日のめめはなんかおかしいわ!」
「ハハッ!さっ、たくさんお祝いしてくれるんでしょ?座って座って」
「誰のせいや誰の!」
耳を押さえて俺を突き離す愛くるしい康二を見ているだけで、俺はもうお腹がいっぱいだ。
それなのに、康二はいつも俺の予想や期待を遥かに超えてくる。
「めめ、大丈夫かいな」
「んー、久々の酒でちょっと酔っちゃった……」
康二が作ってくれた料理とお手製のレアチーズケーキをつまみに酒が進み、大した飲んでないのに俺は少しばかり酒に呑まれてしまった。
「ほら、水飲みや」
ダイニングテーブルからソファーに場所を移し、なんとなく機嫌の良い俺は隣にいる康二の肩に寄りかかり柄にもなく甘えてみる。
「康二に飲ませてほし〜な〜!なーんて」
水の入ったグラスを持つ康二の手に俺の手を重ねて、康二に先に飲むように施せば、
「なんや、今日のめめちゃんは子どもみたいやな。ええよ、誕生日やから特別に許したる。ほら」
康二が困ったように笑って、水を口に含み俺に口付ける。
「ん…………」
「…………っ、ぁ」
マシュマロのように柔らかい康二の唇が触れ、冷たい水が体内に流れ込んでいった瞬間。
酒の勢いもあってか俺は康二をソファーに押し倒し、康二に覆い被さっては
——もっと、もっと欲しいと康二の唇や舌に噛みつき康二の酸素を必死で奪い取り、絡め合った舌が気持ちよくて康二のこと以外もうなにも考えられなくなってしまう。
「はっ、んぅっ!めめ、やっ、苦しッ……!! 」
しかし、康二にドンドンと強く胸を叩かれ、俺はハッとして康二の口内から急いで舌を抜き去る。
「ごめん、少し強引になった……」
「ええよ、別に嫌やない。
……むしろたくさんシて欲しい」
離れた俺の首に腕を絡め、潤んだ瞳で見つめられればそれを断る男がどこにいよう?
ハニーブラウンの逸らすことが出来ない目。
ドクン、ドクンと高鳴る心臓。
締め付けられるような胸の痛み。
熱く熱を持つ体の局部。
康二と出逢ってから、常に付きまとうこの感覚に俺はいつも踊らされている。
「今日はいつもみたいに寝かせないよ」
「うん、俺もそのつもりやで」
俺だけを映す眼に吸い寄せられるように唇を合わせ、飽きる事なく康二と口付けを交わし、舌を絡ませたまま俺は康二を抱っこしてベッドへと連れ去る。
「あっ、ンッ!めめっ、ふぁ、ん……!」
「甘い……」
ベッドに下ろしても必死で俺にしがみついてくる康二が愛おしくて、俺はキスから先に中々進めず、それに焦れた康二が俺の手を握り、ピンと存在を主張する乳首へと誘導していく。
「お願いっ、他の場所もちゃんと触って……!」
「うん、まずはシャツのボタンを外そうね」
「あ……ンッ、ぅ!」
白いシャツの下でぷくりと腫れ上がった康二の小さな実を親指と人差し指で軽く摘んでやれば、その微々たる刺激に康二は感じて腰を浮かせる。
「康二のカラダ今日も綺麗だよ」
「そんなマジマジと見んなや…っ」
シャツのボタンを外して現れた白く、程よく筋肉の付いた康二のしなやかな裸体を視界に入れれば、俺の男根は急激に硬さを増し重くなっていく。
相変わらずピンクの乳首がエロすぎて、それは一度この目に入れてしまえば吸い付かずにはいられない魅惑の果実。
だけど、
「今日は康二がここでイけるように開発してみようか」
「や!そんなんええって…んっ」
左の乳首の先端を爪の先でカリカリと掻き、もう片方の乳首を唇の間でそっと啄めば、康二は微弱な刺激に身を捩り吐息を漏らす。
「ほら、見て康二のおっぱいの色が変わったよ」
「め、めっ、いややっ!もっとちゃんと触ってや、ぁ 」
そんな事を何回か繰り返すと、桃色だった康二の乳輪は俺の愛撫により小豆色へと変わり、さらに俺が康二の突起物を舌先を尖らせてペロペロと舐め上げれば康二は嫌々と首を振ってその刺激に耐える。
いつもだったらとっくに上半身の前戯を済ませ、緩く勃ち上がった康二の息子を愛でてやるのだが、今日はマンネリ脱却のため、俺もsexのテクニックを磨こうと悩ましげな声を漏らす康二を組み敷きたい気持ちをグッと堪え、俺は康二の乳頭にこれまでにないくらい強く吸いついては噛みつく。
「アアッ!?んんんぅっ……!! 」
「嘘……今のでイっちゃった?」
初めての刺激に康二は目を見開き、大きな声を上げて腰をしならせる。
「…………」
久しぶりの絶頂に虚な目で天井を見上げる康二に俺はフッと小さく息を吐き出す。
……メイド服を着ていた時にちんこを強く握った時とソファーの上でキスをした時にも思ったが、康二には少しMっ気があるらしい。
佐久間くんから貰ったアレを着けてくれたら、ソレをネタにとことん康二をいじめ抜いたのに。
なーんて俺は頭の片隅でそんなことを考えながら、次は康二の下半身をどう可愛がってあげようかと康二のジーンズを下ろせば
「…………え?は?えっ!?」
「〜〜っ、そんなマジマジとみ、見るなぁ!!」
「うわ……」
「わぁーッ!?めめぇ!?!」
意図せず現れた康二のドエロい姿に俺の脳内は一気にパニック状態となり、興奮で両方の鼻の穴から鼻血を出すという生まれて初めての経験をする。
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