デビュー十年目
「康二にも早くパートナーを見つけて、私たちが生きている間に幸せになってもらいたいんだ」
「(ごめん、じぃちゃん。その願いは叶えてやれない) 」
俺のパートナーはこの先もめめ以外は考えられへんし、めめがいなければ俺は幸せになれない。
俯く俺にじいちゃんはなにかを察したのか、
「康二。人生はあっという間。
あっ、と思った時に人は多くのチャンスを逃し、あっと思った時に人は予期せぬ体験をするもの。
あっという間の中には小さな出来事と大きな出来事が無数にある。その中の些細な一つをいつでも見逃さないように生きなさい。後悔だけはしないようにな」
めめに想いを告げることを諦めた俺の七年間は後悔ばかりやった。
どうして、めめのことを好きになってしまったのか。
こんなに苦しいなら、めめのことを好きな気持ちに気付かなければ良かったと。
でも、その中にはめめが与えてくれる喜びや愛おしさもたくさんあって、俺はそれにすらも蓋をしてしまっていた。
めめの存在は黒やブルーだけじゃなく、白や赤、緑にピンク、紫に黄色と俺の人生をカラフルに彩ってくれていたのに。
俺は服の下に隠れた、ゴールドのリングをギュッと握った。
じいちゃんの言葉に俺はいても立ってもいられなくなり、
「……ごめん、じいちゃん。
俺、やり残してることあった。一日早いけど、日本に帰るね」
じいちゃんは笑顔で頷き、俺の背中を押してくれた。
日本に来て、
事務所に所属したからめめに会えた。
Snow Manになれたからこそ、めめとこうして一緒にいられる。
——こうなることは運命と言っても過言ではないやろ?
「(違うな、背中を押してくれたじぃちゃんとマネージャーに感謝やね)」
食後にめめがコーヒーを強請るので、俺が以前めめにプレゼントした俺とお揃いのコーヒーメーカーで心を込めてコーヒーを淹れる。
俺が豆を挽きながらめめと同じ空間にいられる幸せを噛み締めていると、
—♩—♩—♩
いつの間にかめめがお風呂を入れていたらしく、軽快な音楽がお風呂が沸いたことを知らせた。
「ほら、めめ。コーヒー入ったで 」
ソファーにもたれ、次のドラマの台本を読むめめのテーブルにコーヒーを置く。
目「ありがと。先に風呂入ってくれば?康二も疲れてるだろ」
めめは康二のコーヒーがずっと、飲みたかったんだと穏やかに微笑む。
舘さんへの嫉妬はとっくに消えたみたいで、ほんまによかったわ。
「台本読むの手伝ぉたろか?」
真剣な眼差しで台本に目を通すめめに俺も手伝えることはないかと声をかける。
目「……それは後でお願いするから、まずは風呂でゆっくりしておいで」
「じゃあ、行ってくるな」
コーヒーを一口含み、美味いと口元を綻ばせるめめに俺も嬉しくなった。
「めめ、おかえり」
目「ただいま、康二」
歯を磨いた後、俺は枕元にあっためめが表紙の雑誌を読みながら、めめの広いベッドでめめが風呂から出るのを待っていた。
タオルでわしゃわゃと髪を乾かすめめが俺の隣に座る。
「ちゃんと乾かさんと、風邪ひくで」
目「いいよ、ある程度乾いてるし」
ドライヤーを取りに行こうと立ち上がった俺をめめは引き留め自分の隣に座らせた後、俺の腰にゆっくりと長い腕を回した。
目「康二……キスしていい?」
「うん……」
タオルから覗く潤んだ瞳に目が逸らせず、俺は静かに頷く。
「あ……ん、」
まずは互いの唇をそっと重ね合いめめが俺の下唇を軽く吸い、次に俺の上唇を舐め、今度は俺の唇全体をめめの舌が往復していく。
「う、ふ……ンッ、」
それにより開いた俺の口内にめめの舌がゆっくりと侵入した。
俺の舌を探り当てためめの舌の先でトントンと突かれる。
さらに今度は舌の上をヌルりと舐め上げられ、俺もそれに呼応するようにめめの舌に自身の舌を巻きつけた。
目「こうじっ……」
「ん、はぁ、ッう……ん」
一度離れては何度も角度を変え、水音を立てながら深く絡まり睦み合うめめと俺の舌。
めめの目を閉じることを許さない熱い眼差しにクラクラし、腹の下が渦を巻くのを感じた。
めめがそっと俺をベッドに押し倒し、
目「じゃあ、康二。今日はもう寝よっか」
さらっと、笑顔で言う。
「…………え、いいの?」
昨晩知った性欲の強いめめのことだ。
てっきり今日も抱きしだかれると思ったのだが……
目「腰痛いんでしょ?」
めめの右手が俺の左腰を撫でる。
「気付いてたん?」
目「俺は康二のことをいつも見てるから」
新曲のダンスの振り付けの練習中、俺は態度に出さないようにかなり気を付けていたのだが、どうやらめめにはお見通しだったらしい。
まぁ、この痛む腰の原因はめめ本人なんやけど。
でも、俺のことをちゃんと見ているからこそ、舘さんとの些細な空気の変化の一つにもめめは気付けたんやね。
めめの家に来るまでは冷や冷やしていた俺やけど、めめが俺を常に気にかけていてくれることに心が温かくなる。
「めめ、大好きやで」
目「俺もだよ……おやすみ、康二」
俺を胸の中に優しく閉じ込めためめから、おでこにたくさんのキスのプレゼントが贈られる。
めめの少し早い、心地の良い胸の音を聞きながら俺はゆっくりと目を閉じた。
この時、まんまと『あまりにも優しさすぎるめめ』という些細な変化を見逃した俺は自分を呪うことになる。
———ピチャ、ヌチャァ、
「ん…………?」
しっぽりとした水音と腕の痺れ、下半身の肌寒さに目を覚ます。
寝起きのボーッとした頭で考える。
——なにかが変だ。
「……めめ?……アッ!うっ、あッ!んンッ?!!」
れろっと下半身をなにかに舐め上げられるねっとりとした感覚になにが起きているのか確かめようと、勢いよく起きあがるも、俺は起き上がれない。
「何これ!?」
なぜなら、俺の両腕は頭の上で動かせないようにネクタイでキツく縛りあげられていたからだ。
声を上げて驚く俺に再度、かつて感じたことのない強烈な刺激が襲いかかる。
「あっ……!ひゃ、ンッッ!?……あっ、あっ!!」
布団で隠れて見えないが、両膝をがっしり押さえて俺の脚を強制的に開き、じゅぼじゅぼと音を立てて俺の脚の間でソレを咥えこんでいるのは
もちろん、他の誰でもなく
「…………」
布団の下で俺のモノを扱いてキツく吸い上げるめめと目が合い、
「めめっ!そこ、やめ……!てぇなっ……
あぁっ、んんッっ、イクッ——!!」
俺は訳のわからないまま絶頂を迎える。
「やっ……!」
ドクドクと波打ち、痙攣する俺のモノから放たれる白い液をめめが飲み干していく。
「あぁ、……やぁ、ンッ!」
そして、めめは最後の一滴まで搾り出すように吐き出したばかりのモノをチュウチュウと吸い上げる。
初めての快感に俺の脳内はショートした。
目「……康二はフェラされるの初めて?気持ち良かった?」
「はぁっ、はぁっ、はぁ、っ、な、なに?」
めめは布団を剥がし、俺に見せ付けるようにイったばかりのものを猫の毛繕いのように何度も舌で舐めとり綺麗にする。
その刺激に思考は全然追いつかへんのに、はっきりと臍の下が疼く感覚だけが分かる。
目「康二さ、さっき台本読むの手伝ってくれるって言ったよね」
「う、ん」
俺の白い液体がついた口の端を手で脱ぐい、頷く俺にめめが覆い被さる。
目「俺の今度の役って、嫉妬深い旦那の役で浮気した奥さんを監禁しちゃう話なんだ」
だから、康二に役作りを手伝って欲しいんだよね?となにやらヤバい顔をして笑うめめ。
「え、と、今のめめなら十分役にハマってると思うで……?」
目「そぉ、かなぁ……?」
いまだに状況が理解出来ずに、言葉を返す俺にめめは白い歯を見せニタァと笑った。
寝る前は今日はしないって言ったのに。
どうやらめめの舘さんへの嫉妬は消えるどころか、時が経つごとに増していたらしい。
これから、なにが起こるのか……
俺は恐怖に震えた。
グヂュ、グヂュッ
「あっ、ンッ!ふぅ、ん!!やぁっ、気持ち、いい……っ!」
いつの間に購入したのか、めめはローションを自分の左手に垂らし手に馴染ませた後、俺の小さくなったモノにそれを絡める。
その冷たさに腰が引けたが、めめはそれに構わず俺の陰茎を上下にゆっくりと扱いていく。
ヌルッとしたローションの感覚に俺は鳥肌が立つ。
もっと、強く握って素早く手を動かして欲しいのに、ローションのぬめりとめめの利き手じゃない左手がそれを邪魔してもう歯痒くて仕方がない。
目「康二、もっと気持ち良くなりたくない?」
「んぅンッ、きもちよく、なりたい……っ! 」
そんな俺に気付いためめがなにを考えているのか、読めない表情で俺に問いかける。
目「じゃあ、聞くよ。康二を気持ちよく出来るのは誰?」
「めめ……!」
目「そうだよねぇ」
すぐに即答する俺にめめは満足そうに笑う。
これで、さらなる快感を与えられると喜んだのも束の間、
目「ねぇ、舘さんの家によく行ってたけど、舘さんとはナニしたの?」
「なに言って……ヒ、ィッ!!?」
ナニとは間違いなくSEXのことだ。
めめのあり得ない問いに声を発しようとしたが、めめは俺の尿道に親指の爪を立て俺はチリッっとした痛みに悲鳴を上げた。
目「質問に答えて」
眉根を寄せて、目を細めるめめに俺の目から涙が溢れる。
「なにも、なにもしてない、……めめん家に来るラウとそんなに変わらんって!」
目「どうして、そこで俺以外の男の名前が出る?」
口を開くごとに口調が強くなるめめに焦り、つい出たラウールの名前にめめの怒りがさらに増す。
「ごめんなさいっ、俺にはほんまにめめだけやから!!———ンン、ッ!!」
めめだけと言葉を放った瞬間、めめがふわりと俺の亀頭を大きな手のひらで包み、そこだけをピンポイントで擦る。
意識がぶっ飛びそうな強烈な快感が俺を襲う。
目「っ、ねえ、俺、康二のこと愛し過ぎてマジでおかしくなっちゃうよ」
「ふ、う……ん、ハァ、」
今にも涙をこぼしそうな、悲痛な表情で俺を見下ろすめめの右手が俺の顔を撫でる。
目「康二、愛してるよ」
これは演技なのか、はたまた本心なのか……
俺には分からない。
「っ!?やッ……!!」
めめの唇が俺の唇に近づき、俺は先程自分のモノを咥え、吐き出した精液を飲んだめめの唇を反射的に避けてしまい、まためめの地雷を踏む。
めめの目が至近距離で俺の瞳を射抜くように俺を見据える。
目「俺とキスするの、やなの?」
「やじゃない!嫌じゃないです……」
目「そうだよね。 康二、口開けて」
俺はめめに言われた通り口を開けると、
「っ!?」
めめの長く、太い指をいきなり三本も突っ込まれる。
目「舐めて。康二の中にコレを入れるからね。痛くないようにちゃんと濡らして」
中指と人差し指、そしてゴールドのリングが光る薬指で俺の舌を捉え俺の口内を蹂躙する。
「ふぁ、……ふ、ん、うん……」
そんなめめの指を俺は一生懸命に追いかけ、吸い付き、甘噛みするとめめは嬉しそうに頬を緩ませた。
目「ハハッ、俺の指が康二のよだれでまみれてる」
めめは俺の上の口から自分の指を引き抜くと、俺の唾液で濡れたその指を俺に見せつける。
「っ……!」
思わず目を背けそうになったが、ここで目を逸らせばまためめの機嫌を損ねることになるだろう。
俺がめめの指越しに負けじと視線を絡ませると、
目「その目、いいよ」
めめは舌舐めずりをした。
「あっ、んぅ……、やァァ……!うぅ、んッ!」
一本、二本と俺の唾液で濡れためめの指が今度は俺の下の口を犯す。
めめは俺のイイ所を知っているのに、あえてそこには触れず、二日間めめので慣らされたソコは貪欲に刺激を求めて俺はなんだかもう、もどかしさで気が狂いそうやった。
目「康二のエロい声だけで、
……俺もイっちゃいそうだよ」
掠れた声で耳元で囁かれ、胸が締め付けられた。
めめのモノがズボンの中でキツキツに張り詰めているのが分かる。
「っ、……どいて」
目「ん……?」
俺の声が聞き取れなかっためめは顔をあげ、俺と目を合わせた。
「あん……な、めめのに触りたから、これ解いて」
めめの瞳に映る自分の目が潤み、俺がめめをどんな風に誘惑するのか良く分かった。
目「ッ、……今日は俺はいいよ」
そんな俺の姿にめめは困った顔をし、俺のおでこに自分のおでこを重ねて言った。
「なんでっ、……俺が舘さんのこと話したから……?」
目「違う舘さんに妬いてるのは事実だけど、一回やったらまた歯止めが効かなくなって、康二がキツくなるから」
———俺の体のためと言いながら、こうやって寝込みを襲ってくるん?めめ、お前それはズルいわ。
このまま終わるなんて、許さない。
「……自分で火ぃ付けた責任はちゃんと取れや、ボケ」
続きを催促するように、俺の尻の中に入っためめの指をキツく締めてやると、
目「……そんな煽って明日、後悔しても知らないよ」
めめは口元に手を当て、照れを隠すように俺から顔を背ける。
めめも三十代となり仕事の幅が広がり、もちろん撮影で濡れ場のシーンなんかもあると思う。
ただ俺やって、いくら仕事や言うても、さっきから嫉妬深い旦那の役(?)になりきっているめめを俺以外に見せるのは抵抗がある。
めめがこうやって嫉妬する姿は俺だけが知ってたい。
けど、世間にめめのそんな姿が暴かれるのは仕方のないことや。今ならそれも割り切れる。
何故なら、こんなマニアックなことをしてしまう程、めめが俺のことを好きなことが十分に伝わったから。
だから、俺は我慢するわ。
「めめの好きにしてや」
余裕の笑みで微笑んでやると、めめの頬が緩む。
目「……これからはこんなに可愛い康二を、
俺以外の奴に見せちゃ絶対駄目だから、ね?」
そんな俺の嫉妬はめめには内緒。
めめだけが俺に狂ってればええ。
「うわぁあ〜っ!」
「今康二の中がすごい締め付けてるよ」
ネクタイを解いてもらうと電気が流れたようにビリビリと腕が痺れ、雄叫びを上げて悶える俺にめめは笑いを堪え、締め付けられた己の指をゆっくり引き抜く。
かと思えばその動きはフェイクで、俺の一番奥のいいところを中指で擦り上げた。
「ああァっ、ん!!」
交際開始からまだ三日目にして、めめのやることがどんどんと過激になって行き俺の心と体がめめ仕様に鍛え上げられて行く。
目「今夜もたっぷり可愛がってあげるから」
よせばいいのに俺は先程めめのやる気のレバーを自分で最大限まで引き上げてしまい、この関係が最終的にはどこまで行くのか一抹の不安を覚える。
「いいから早く挿れろや!!」
目「ハハッ、
——じゃあ、遠慮なく、いただきます」
「アッ—————」
めめと想いが重なり三日めの夜。
「(これじゃ、めめがDV彼氏にしか見えへん……) 」
一昨日、めめに強く掴まれた痣になった手首に今度はネクタイでキツく結ばれた跡が残っている。
次にめめが演じる嫉妬深い旦那の役はめめに適役どころか、実はめめがモデルの役なんやないの?
とにかくこのドラマは大反響間違いなしやなと俺は薄れゆく意識の中で密かにイイネした。
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