デビュー十年目


「……えーと、一度ヌいとく?」

目「いや、俺は最初は絶対康二の中でイくって決めてるから」

「……分かった」

恥ずかしくも一応めめに気を使ったつもりなんやけど、真顔で即答され、そんなこと一体いつどこで決めたん?というツッコミは心の中に留めておいた。

改めて横になり、目をキツく閉じながら両脚を開く。

目「……うわ、すっげぇ、やらしい」

「めめ感想はええから、はよぉ、せぇな……」

穴があったら入りたいとはまさにこのことだ。 

今この瞬間は俺の人生で究極の羞恥プレイランキング堂々一位間違いなしや。

……まぁ、これから穴に入るんはめめの方なんやけど。

目「えと、なんも準備してないから、とりあえず康二の出したやつで中拡げるけど、いい?」

「……おぅ、頼むわ。もうなにも聞かんでええよ」

目「……分かった。ちゃんと優しくするから」

期待とは裏腹に初めてのことにめめもだいぶテンパっているのだろう。

準備があったら、逆にビックリするわ。

俺の投げやりな態度を緊張しているからと勘違いしたのか、めめが俺の額にチュッと柔らかいキスをする。

「………」

目「………」

俺の鳩尾に飛んだ精液をめめは右手の中指でたっぷり掬い、それを俺の秘部にあてがう。

「……っ、」

めめの中指がゆっくり、ゆっくりと熱い俺のナカに進んでいく。

——イタイ。

本来受け入れる器官でないそこはかなりキツく、めめの指一本でもかなりの圧迫感があり、裂けるような痛みに俺は思わず息を潜める。

目「……康二、大丈夫?」

そんな俺にめめが手を止め、心配そうに俺の顔を覗き込む。

「……大丈夫。俺も早くめめと一つになりたい、から……」

俺はめめの頭をポンポンと軽く叩き、続きを促した。

目「……うん」

めめが一度入れていた中指を引き抜き、もう一度俺の中に侵入させる。

「…は、っ、あ…」

それを何度か繰り返し、俺の異物感もだいぶ治まり、めめが二本目の薬指を慎重に挿し込んでいく。

「あ、ッ、ンッ…!」

薬指が俺の奥深くまで到達した瞬間、体の奥底になにか痺れが走り、俺の体がビクッと大きくしなった。

目「康二、もしかしてここが気持ちいいの?」

「…っ、あぁ、そうみたいやな」

俺が頷くとめめはもう一度指を奥底まで進め、例の場所をトントンと突く。

「あ、ぁんっ ……!」

乳首でイった時とはまた違う今まで感じたことのない感覚に俺は悶え、痛みで萎えていた性器がムクリと首を擡げ、めめの指の動きに呼応するようにめめの指をギュッと締めつけた。

目「康二、触るよ」

それに気付いためめが空いている左手で俺の固くなったモノを上下に扱き、中は三本に増えためめの長い指が縦横無尽に暴れる。

「や、ぁア、ンッ、ひっ、あぁッ…!くっ、めめッ、きもちぃ、いっ…!」

目「っ、康二っ、挿れるよ…!」

めめから与えられる一人では絶対に得られない強烈な快感に俺は目を見開き、意識がぶっとびそうになる。

そんな俺の淫気に当てられためめは指を引き抜き、ズボンのチャックを下ろして、大きく張り詰めたモノを今までめめの指を受け入れていた俺のナカに、ゆっくりと押し進めていく。

「 ッッ!!!!」

苦しい!!
指の何倍もの圧迫感に呼吸が出来ずパニックなる。

めめの熱り立ったモノを俺の尻穴が引きちぎるのではないかというほどキツく締め上げ、めめの侵入を拒む。

目「…ハァっ、こーじ、俺に抱きついて、あとちゃんと息して……うわッ!」

「ふぅっ、んっ、ふぁ、」

しかし、めめも初めて感じる快感なのだろうか。

大きく息を吐き、今まで見たことのない全く余裕のないめめの表情に俺はさらに欲情し、俺が肩に手を回せるように近づいためめを強引に引き寄せ、その唇を奪い暴走する。

目「ん…ッ、はぁっ、……康二」

何度も何度も唾液を垂らしながら、みっともなくめめの舌を乞い、俺はこれまで以上にめめの存在を求めた。

めめの感じる声が、
俺を見る余裕の無い眼差しが、
厚い唇もゴツゴツした男らしい指も
めめの全てが俺を熱くする。

暗闇の中、めめの首に回した俺の左手の薬指に光る、俺の想いと共に今まで隠されていた、ゴールドのリングが本来あるべき場所でチラチラと光り俺の視界に入る。

「あ、ンっ、…はぁ、ぁん、め、めぇっ、もっと……!」

俺の想いもめめの元へと届き、もう隠すものは何一つない。

俺は今まで我慢していた以上に、貪欲にめめを欲し、はしたなく快感を求める。

好きな人と繋がる行為はこんなにもこれまでの自分を壊していくものなのやろか。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

目「こうじ、全部入ったよ」

俺が激しいキスに夢中になっている間、いつの間にかめめのモノが俺の中に収まっていたらしい。

俺と一つになれたことにめめも喜びを噛み締めている。

「ん…はよ、うごいて」

目「あー、康二がほんっと、可愛いすぎて、なんかもうすぐイっちゃいそうなんだけど、」

愛しむ目で俺を見ながら、ゆっくりと腰を動かすめめ。

この世のものとは思えない痛みも圧迫感もどこかに消え、残るものはこの上ない愛しさと、もどかしさだけやった。

「俺もめめと早く一緒にイきたい…ッ」

目「康二、あんまり俺を煽んないで…っ!」

「あンッ!ァッ、う…ンンッ、ゥ…は、んっ!めめぇ、すき、すきぃ…!」

俺の言葉に我慢の限界が来ていためめが大きく腰を振り、俺のパンパンに張り詰めたモノに手を伸ばし、上下にしごかれ俺の視界に火花が飛び散る。

目「俺も、ッ……!愛してるよ、康二…」

めめの愛の囁きを聞いたそこからは記憶がない。




———あれはデビューから三年を迎えた、一月末のこと。

「(収録終わってもーた。次の仕事までなんか考えんと…)」

大雪崩のような仕事の量もまだ微妙たるものだが、年末年始に比べればだいぶ落ち着いてきていた。

実は俺には年明け前から決心していたビッグイベントがあり、年が明けてからはその日が近付くごとに心が浮き足立ちソワソワする。  

それは何か別のことをしていないと、そのまま空に飛んで行ってしまうのではないかと思うほどやった。


「向井、ちょっと」

ドッキリ番組の収録が終わり、スタジオで挨拶まわりを終えた後、一緒に同行していたマネージャーにナイスなタイミングで楽屋に呼び出される。

「今日の俺も結構良かったんちゃう?」

「あぁ、さっきの収録ね、うん、良かったよ」

Snow Manは九人体制ということもあり、専属のマネージャーが何人かおって、今話をしているのは俺らがデビュー当時にマネージャーになってくれた人や。

主に俺やめめ、ラウールの新規加入メンバーを気にかけてくれている。

まさにマネージャーが天職と言っても過言ではないくらい周りをよく見て気が利いて、さらに俺たちと年も離れているから、大人の余裕がある。

そんなマネージャーは頼り甲斐もあり、人の話を聞くプロでもあり、デビューから三年が経った今も彼からアドバイスや学ばせてもらうことも多く、このマネージャーは俺が尊敬する人間の一人でもあった。

「あー、向井さ」

次の仕事も同じマネージャーやから、それまで話し相手になってもらおうと思ったんやけど、今日のマネージャーはやけに歯切れが悪い。

「なんや、改まった話でもあるんか?」

心配になって、顔を覗き込む俺にマネージャーはゆっくり息を吐き、真っ直ぐ俺を見据えた。

「向井、目黒のこと好きだよな」

確信をついた質問に俺はドキッとする。

「そりゃ好きやで、当たり前やん。
同じグループのメンバーなんやし」

いきなりどしたん?とあくまで自然に返す。

……もしや、あの計画を知られてしまったのだろうか。

「誤魔化さなくていい。お前が本気で目黒に恋愛感情を持っているのは分かってる」

マネージャーの感情の読めない瞳と抑揚のない話し方からして、めめへの想いを知られたところで決して恋愛相談が出来るような雰囲気では無さそうや。

「……俺がめめのこと好きやったら、なんなん?」

来月はめめの二十六歳の誕生日。
俺はめめの誕生日に本気で「好きや」と告白をし、七年の片想いに終止符を打とうと大晦日に一大決心をしていて……

人前ではこの想いを悟られぬよう、かなり気をつけていたつもりやけど、そんなに露骨に態度に出てたやろか?

「向井、単刀直入に言う——————」

「……………………え」

俺がめめを好きなことをまるで責めているようなマネージャーの口調に俺はこの場に居辛さを覚え、そして、この後聞かされたマネージャーの衝撃的な事実に俺は言葉を失い、絶句した。

Snow Manとして想い人と一緒にデビューしてから、どんどん色艶やかになった俺の世界のキャンパスもこれを機に色を失っていくことになる。

「……以上の理由により、男同士の恋愛はタブーだ」

大きな翼の生えた俺のめめに対する想いは飛び立つことなく、この日を境に翼を掻き毟られ地に堕ちた。

グループの存続にも関わるなんて言われたら、俺の気持ちはもう一生めめに届くことはない。



まだ寒い、冬の帰り道。
俺が駅からマンションまでの帰り道を歩いていると、ポケットでスマホが振動する。

二十二時半。
この時間の連絡は見なくても誰だか分かる。
めめからや。

気付かないふりをしてやり過ごすが、二回目、三回目と中々着信が鳴り止まない。

観念してお風呂に入っていたことにしようと、緑の通話ボタンを押す。

「…遅くなってすまん!めめ、どしたん?」

目『……時間があったら、ユイカフェでコーヒー買ってさ、康二と公園散歩したいんだけど』

二月に入り以前にも増して、めめからの誘いの連絡が増える。

それというのも、めめが去年うちの近所のマンションに引越したからやった。

俺のマンションの近くには植物園と湖のある公園があり、自然の多い場所が好きなめめは俺の家に遊びに来てはいつもここに引っ越したいとぼやいてたんやけど、ドラマの主演俳優としての仕事が増えた去年、俺の家から歩いて行ける距離のマンションに本当に引っ越してきた。

めめがあまりにも多忙で、息抜きをしたいと連絡をくれる時は例え寝る準備をしていたとしても、遅くまで営業している近くのユイカフェでコーヒーをテイクアウトし、めめと月を眺めながら公園内を他愛のない話をしながら歩く。

俺はめめと人気のない深夜の公園を歩くその時間が大好きやった。

その時間はデビュー当時、慣れない東京、慣れない環境に疲れ果てていた俺をめめが気遣って毎日家まで送ってくれたあの宝物のような時間を再現している気持ちになれるからや。

でも、もう、それもやめなあかんね。

「ごめんな、めめ。今、風呂入ってんねん。今から外出たら湯冷めしてまう」

目『…わかった』

「ほな、」

俺が断ることをなんとなく予想はしていたのだろう。めめの声のトーンが明らかに下がった。

そんなめめに罪悪感が湧きながらも、俺は電話を切ろうとするが、

目『明日は康二オフだよね』

めめがすかさず次の日の予定を聞いてきた。

マネージャーに忠告されて以来、付き合いの悪くなった俺を不審がってめめは中々食い下がってくれへん。

「オフやけど、明日は」

目『もうすぐ、俺の誕生日だけど俺、まだ康二にプレゼント何欲しいか聞かれてないよ。だから、明日俺と一緒に選んで』

「……じゃあ、明日な」

なにか理由を付けて断ろうとするも、またも言葉の途中でめめは俺が断れない最もな理由を付けて、明日の約束を強引に取り付ける。

「はぁ、しんど……」

どうにも踏ん切りの付かないめめへの想いに俺も酷く疲れていた。

重い足取りの中、たどり着いたユイカフェ。
ついこないだまで胸を躍らせてめめと待ち合わせたこのカフェも今はどこか知らない店のようだ。


目「康二、おはよう」

「めめ、昨日はごめんな」

顔の前で手を合わせると、めめは今日たくさん付き合ってもらうからいいよと笑う。
その笑顔が、少し無理をしていることに俺は気付く。

めめは自分の弱いところを絶対人には見せない。
だけど、ジュニア時代から信頼関係のある俺だけに見せる脆い部分がいくつかある。

俺はそれを分かっているのに、今後は見て見ぬふりをしなくてはならない。

———これ以上、めめへの想いを加速させない為に。


日中はめめの誕生日プレゼントを時間をかけて一緒に選び、手配を済ませた後は静かな老舗の懐石料理屋で食事をし、今話題の映画を観て、ゆったりとした時間を過ごす。

「めめ、明日もお互い仕事やしそろそろ帰ろか 」

日が傾きかけた頃、俺はめめに帰宅を施す。
あまり長い時間めめといたくない。

今日この半日だけで隣にいるめめの言動一つ一つに心を奪われ、その度に自分を叱咤した。

「(これ以上、めめを好きになりたくない……)」

一緒にいてもどこか上の空だった俺にめめは気付いていたのだろう。

目「俺、康二からも個人的なプレゼントが欲しい」

めめの返答を待たずに駅の方向に体を向けると、めめが俺の腕を掴み引き止める。

「……何が欲しいん?」

そう問う俺にめめはどこか切羽詰まった表情をする。

なぁ、めめ。なんで、俺にそんな辛そうな顔をするん?



目「こうじさ〜、最近やたらとオレのこと避けてな〜い?」

「……めめ、飲み過ぎや」

めめが俺にねだったプレゼントは俺の『時間』だった。

それなら、飯でも奢ろかと言ったんやけど、めめは頑なに自分の家で宅飲みをすると言って聞かなかった。

俺は酒は嫌いじゃないが、そんなに強くもない。
そんな俺とは対照的にめめはザルだ。

以前何人かのメンバーでめめのペースに合わせて酒を飲んだら、詳細は省略するが、飛び交う言葉の応酬でとんでもないことになったのを覚えている。

深酒は本音が出やすい。
俺は用心して酒を飲んでいたが、めめは終わりの見えない仕事と周りからの期待に心身ともに疲弊しているのだろう。

普段あまり酔わないめめが珍しく泥酔し、俺の肩に腕を回し絡んでくる。

目「むかいー、おまえひとの話聞いてんのかぁ?」

「ちゃんと、聞いとるよ。俺も忙しくてごめんなぁ、めめ」

目「おまえ、ごめんなって、本当最近そればっか!」

「ほら、水も飲み」

俺は初めて見るめめの泥酔している姿に心底驚き、普段どれだけのことを内に秘めているのか心配になってしまう。

本当はそんなめめを俺が癒してやりたいが、めめへの想いは封印すると決めたからには中途半端な優しさは捨てることにした。

水の入ったグラスをめめに差し出すと、めめは手元が狂い受け取れず、グラスをカーペットに落とす。

「あっ、めめ!」

目「あーあ!落ちちゃった!!」

グラスを指差し、小さな子どものように叫ぶめめに俺は頭を悩ませる。

「めめ、なんか拭くもんあるか?」

目「そのへーん!」

めめが指を刺した場所には洗ったのか、はたまた着終わったものなのかわからん服がいろんなところで山積みになっている。

もちろん散乱してるのは服だけやない。
雑誌やら香水やらいろんなものが至る所に放置されていて、俺はその中からテキトーにタオルを引っ張り、カーペットを拭いた。

目「こーじ、なにしてんの?」

「あー、もう!びっちゃ、びちゃや。……ん?」

カーペットがシミにならんように、タオルでトントン叩いてるいるとテーブルの下にゴールドのリングが落ちていることに気付く。

俺はめめはほんまにダラシない奴やなと心の中でツッコミ、それをテーブルの上に置いた。

目「こーじ、こーじ、もしかして掃除してんのっ?」

「ふはっ!そうやで、誰のせいや。まったく〜。めめはほっとけない奴やな」

うーん、と首を傾げ考えるめめの普段見られない姿に俺は思わず吹き出した。

いつもの調子を取り戻した俺にめめはすぐさま反応し、満面の笑みを浮かべて、めめの右横にいる俺の左手を取る。

いきなりなにをするのかと思えば、めめは俺がテーブルの上に置いたゴールドのリングをスッと俺の指に嵌めて言った。

目「康二、俺と結婚しよ」

薬指に嵌められたサイズの合わないリングを凝視し、しっかりと放たれためめの言葉に耳を疑った。

「へ…………めめ今なんて言ったん?」

すぐさまめめの表情を確認すると、相変わらずその目はトロンとしている。酔っ払いは健在や。

目「だからぁ、こーじが俺の奥さんになればー?って」

「……っ、自分、なにいうてんの」

目「う〜ん、ねむい……」

例え、酔っ払いの戯言だったとしても俺はこの瞬間を、今のめめの言葉を、今日のこの特別な出来事をきっと死ぬまで忘れることはない。


俺はこの時分かった。

めめを好きな気持ちを消すことは出来ないんやと。

こんなにも胸が高鳴り、今すぐにでも抱きしめたいと思うこのめめと今後、何事も無かったかのように過ごすことは不可能や。

目「すぅ……」

だから、めめへの想いは諦めず、消さず、俺の胸の中に隠して生きようと決めた。

俺の『時間』をプレゼントに欲しいと言っためめ。

俺はめめが俺の薬指に嵌めてくれたリングをそっと手のひらに収め、胸の前でギュッと握った。

「……なんや、プレゼントをもらったのは俺の方やん。ありがとう、めめ」

めめがどういうつもりで俺に結婚しようと言ったのか、真意はわからん。けど、そんなことは別にどうでも良かった。

俺には目の前で眠る、俺に心を許し、甘え、嫉妬するこの男がいないと生きていかれへんのやから。

目「……うー、ん」

ある程度の片付けをした後は寝室から毛布を持ってきて、ソファーに持たれるめめに掛けてやり、俺はめめの部屋を後にする。

「長い片想いになりそーやなぁ」

あんなに重くのしかかっていた心の翳りは長い雨が止んだように、どこか遥か遠くに消えていた。





チュンチュンと鳴く、スズメの声に重い瞼を開く。

「………」

寝ている時にまためめの夢を見て泣いたんやろか……。

今日は瞼どころか体も鉛のようにやけに重たい。

右の腰に乗っている長い右腕を後ろに退け、俺は目の前のライトスタンドが乗った台に光る、見覚えのある二つのリングをボーッと見つめる。

「ん……?」

目「こーじ、おきたの?おはよ……」 

「えっ!?」

背後から聞こえてくるよく知った想い人の声に横になったまま思い切り後ろを振り返る。

「えっ、めめ?」

驚く俺にめめは眉を顰める。

目「なに寝ぼけてんの?

——それとも照れ隠しとか?」

ニヤリと笑うめめに俺の思考が追いつかない。

なんだか頭の下が硬いことに気付き、めめの左腕が俺の頭の下にあり、どうやら腕枕をされていたらしい。

「……昨日のは夢じゃない?」

目「すごい、声掠れてんね。まぁ、あんだけ俺の下でアンアン言ってればそうなるか」  

俺の普段よりもさらにかすかすの声にめめは口角を上げ、

目「体は大丈夫……?」

心配を装い、右手で俺の左腰を撫でる。

「 ……なっ」

俺は布団の中で向かい合うめめ卑猥な表現といやらしく腰を行き来する手に顔が一気に熱くなるのを感じた。

「え、と……………ッ!!」

ようやく意識がハッキリとし、蘇る記憶に顔どころか体全体も熱を帯びる。

赤くなる俺にめめはクスクス笑い、額に軽くキスをした。

目「康二はもうこれから先もずっと、俺の彼女だよね?」

「……はい。俺はめめの彼女です」

こんな男前に至近距離でそんなことを言われて素直に頷く以外、答えはあるか?

問題はまだまだ山積み。

だけど、長い片想いの終わり。

今日だけはめめと二人きりでこの幸せを噛み締めてたい。

続く
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