デビュー十年目


康二side

「だいぶ跡になってもーたな」

目「……ごめん」

「気にせんでええよ」

俺の両手首にめめにがっつり押さえつけられた青い痣が残る。

その痛々しい跡を見てめめが申し訳なさそうに項垂れ、俺は普段あまり見る事のないめめのつむじをポンポンと軽く叩いて笑った。

めめがゆっくりと顔をあげ、

目「……康二、好きだよ」

「俺もめめのこと大好きやで」

めめは俺の返答に頬を緩ませ、めめの膝上に乗る俺をさらにグッと引き寄せた。

俺の首筋に顔を埋め、おでこや頬をなすりつけてくる。

まるで俺はめめのものだと、マーキングされているみたいやな。

他のメンバーには絶対に見せない、俺だけに見せるめめの一面をいくつか知っているが、めめが恋人にはここまで甘えたやったなんてのは知らんかった。

めめと結ばれて、幸せいっぱいやけど、

「(まだ長袖を着られるニ月でほんまよかったわ) 」

……こんな跡を見られたら、また誰になにを言われるか堪ったもんやない。

問題は山積みや。

目「あのさ、」

「ん?どうしためめ」

まずはメンバーに結婚の誤解を解かなあかんなぁと、これからのことを考えていたら、めめが上目遣いで俺を見上げた。

目「俺、康二と続きシたいんだけど、いいかな?」

「……っ、なんや露骨に言われると照れるわ」

はっきりシたいと言われ、普段とのギャップに顔中が熱を帯びる。
そういえば俺のお尻にめめの固いもんがまた当たってるような……

目「やっぱ、だめ……?」

コイツは俺が断らんとわかってて、えらいずっこい奴や。

「……初めてやから、優しくしてくれるなら、ゆる、わあぁっ!?」

そう言った瞬間、ふわりと体が宙に浮き間抜けな叫び声が出る。

目「当たり前じゃん。死んでも大事にするよ」

「えと、死んだら大事に出来へんよ」

めめに所謂お姫様抱っこをされ、さらにおまけでどんな女性もイチコロの王子様スマイルで俺の額に口付ける。

俺は今まで受けたことのない姫扱いがこそばゆく、めめにおかしなツッコミを返す。

そんな俺をめめは寝室まで軽々と運び、めめのクイーンサイズのベッドにまるで壊れ物を扱うかのように、そっとおろされ

目「康二のこと死ぬまで一生大事にするから」

今度は真剣な目つきで、めめが俺自身の全てを捉えた。

「(アカン……!ドキドキしすぎて、心臓がいくつあっても足りひん!)」

さっきまで少女漫画のヒロインばりに泣いて、俺に縋り、まるで子どものようだっためめが急に男らしくなり、そのギャップに俺はついて行かれへん。

——めめは好きな相手にはこんなにも甘々になるんやなぁ。

目「康二、キスするよ」

「……もぅ。さっきからいちいち全部言わんといてや」

なんだか全てに恥ずかしくなり、赤くなった顔を両手で覆う。

そんな俺を見てめめがふふっと優しく笑った。

目「康二。手をどかして。

———ねぇ、俺と康二を遮るものはもうなにも無いよね?」

「それはこないだ俺がやった舞台の台詞やないかい!」

目「んー。女優さんとのキスにめちゃくちゃ妬いたよね〜」

つい、照れ隠しで雰囲気ぶち壊しのツッコミをしてしまう。

「(めめと恋人になってその、初めての夜を過ごすゆーのにこんなんにいちいちときめいてどうすんねん……俺!)」

これからという時に茶化すめめもめめや全く。

わーきゃーする俺にめめはどこか勝ち誇った顔をして、これは絶対さっきの意地悪の仕返しやと確信する。

それならば、俺も意地でもこの手はどかさへん!

ギュッと顔を覆う俺にめめはまた笑う。

目「康二はいつまで、みざるのままで入れるかなー」

「あっ…!ちょ、やッ、くすぐった!」

めめの冷たい右手がシャツの中に侵入し、脇腹をゆっくり撫で上げながら、胸へと到達する。

「…っ、」

先程、めめに乳首をギュッと摘まれ感じたことを思い出し、無意識に腰が浮いた。

「んっ、やぁ、う、………ん」

が、くるくると人差し指で軽く撫でられ、親指と人差し指でなにをされているのか分からんくらいの絶妙な力で触れられる。

——物足りない。

そんな俺を見透かしたようにめめは条件を突き付けてきた。

目「もっと触って欲しかったら、早くその手どけて」

「………ライト消してや」

蚊の鳴くような俺の小さな呟きも聞き逃さず、めめはすぐさまベッドサイドにある照明に手を伸ばす。

カチッと音を立ててライトが消え、俺は顔を覆っていた手をシーツに下ろそうとするが、

目「……やっと、康二とキス出来るね」

その手はめめの指に絡め取られ、シーツに貼り付けられた。

「……っ」

都会の夜の街明かりが俺らをうっすらと照らし、まるでこの世界にめめと二人きりなったような錯覚に陥る。

俺は薄暗い部屋の中で優しく微笑むめめから目が離せんくなって、ゆっくり近付くめめの瞳に写る自分と目がかち合う。

「ふッ、ぅん……ん、ンッ、はっ、あ、んぅ…」

先程、ソファーに押し倒された時の舌を根こそぎ引き抜かれるんじゃないかと思うくらいの、荒々しいキスとは裏腹にめめは俺の上顎と歯列をゆっくりと舌で撫で上げ、生々しい水音を立てながら、今度はねっとりと熱い舌と視線を絡めてくる。

目「……康二、シャツ脱ごっか」

めめが俺の口内から名残惜しそうに自身の舌を抜き取ると、めめと俺の間に二人の混ざり合った液体が糸を引く。

なんとも、ヤラシイその光景をボーッとした頭のまま辿ると、

俺の視線に気付いためめが俺を見下ろしながら、めめの下唇を濡らす『ソレ』をペロリと舐めあげた。

その姿を見て俺はズクン!と腰が一気に重くなるのを感じ、

舌舐めずりをする捕食者の視線から逃れるように顔を背け、上体を起こしめめにシャツを脱がせてもらった。  

「……さ、むっ!」

暖房のスイッチが入っていない二月初めの寝室はシャツを脱いだら、とても肌寒く、思わず裸になった上半身に勢いよく腕を絡めると首からぶら下げていたゴールドのリングが胸元で揺れる。

めめがそれを眉を顰めジッと見ていた。

その視線に気付き俺は苦笑いをする。

誰の目にも止まらぬよう、服の下に隠していたこの指輪を俺が大切にし、誰にもらったのかめめが長いこと気にしていることに俺は気付いていた。

そして、この指輪を俺の左手の薬指にはめたことを持ち主本人が忘れているということも。

「めめ、指輪はめてくれへん?」

目「え、」

いつでも取り外しがしやすいように長めのチェーンに付けたリングをめめの前に差し出し、お願いするとめめは抵抗を見せる。

「えぇから、早く」

めめが困惑しながら、リングをチェーンから抜き取るのを確認し、俺は自分の左手をスッとめめに差し出した。

目「………」

複雑な顔をしながら、指輪をつけるのはもちろん薬指。

目「あれ?なんかでかい」

首を傾げるめめに俺はプッと吹き出した。

「そりゃ、めめの指輪やからな。めめが今つけてるこの指輪と同じサイズやと思うで」

目「え、え!?どういうこと?!」

俺がめめが左手の薬指に付けているお揃いのリングを指差すとめめが互いのリングを見比べ始める。

男前になったと思えば、今度は動揺するめめがおかしくて思わず笑いを堪えるが、やはり寒い。

「それは後で教えたるから、めめ早く俺を温めてえな」

可愛らしくちょこんと首を傾げてみたら、めめがゴクリと生唾を飲んだ。




目「康二、俺がすぐに熱くしてあげるからね」

グチュっと音を立てて、めめの舌が俺の耳に侵入した。

「やッ!ちょ、ふぅ、ん、アッ、め、めぇ、みみやだっ…!」

初めての感覚に身を捩る俺に構うことなく、めめの舌が俺の首筋を下り、そのままそっとベットに押し倒される。

「あっ、めめ……んぅ、ぁっ、はぁ、んんっ!」

今度はめめの舌が鎖骨の凹みをゆっくり辿り、俺の左の小さな赤い実に到達したかと思えば、次はそこに音を立てて吸い付き、舌の先で飽きることなく転がされ乳頭がプクリと立ち上がる。

目「こうじ、きもちい?」

「ンッ、しゃべんな…い!でッ…!」

俺の乳首を口に含み、その味を堪能したまま、めめは俺の感じている顔を凝視する。

これまで感じたことのない感覚に甘い声が漏れ、さらに聞いた事のない自分の高い声とめめの視線に羞恥心でおかしくなりそうやった。

女の子のような感高い声が出る口元を左手で抑えようと手を上げたが、それに気付いためめの右手がすかさずそれを制する。

目「駄目だよ康二。俺に隠し事はもう無しにして」

「………」

めっ!とお灸を据えられ、こんな調子で焦らされては乙女のように恥じらう自分のことなど、どうでもよくなってきた……。

めめも結構限界やろに、この状況をなんだか楽しんでいるようや。

目「こっちも触ってあげないとね」

俺の左手はめめの右手にシーツに縫い付けられ、空いているめめの左手が俺の放置されていた右の乳頭を強弱を付けて転がしていく。

さらにもう片方の突起をめめの唇でキツく吸い上げられ、強烈な刺激に

「え……あッ!めめッ…!ひ、あァ、あ、ん”んぅ ———んッッ!!」

張り詰めていた俺のモノが一気に弾けた。

「ッ、ハァ、ハァ、ハァ……

はぁ〜、…………マジか」

目「え、康二もしかしてイっちゃった?」

まさか、触られてもいないのに初めてで胸だけでイくなんてことがあるんか。

自分で弄ったことなんて、もちろん今まで一度だってない。

ここまでやっておいて今さらだが、俺も三十代半ばの男となり、乳首だけでイってしまったことが猛烈に恥ずかしく、同時に情けなくもあり……。

「うわ……」

そして、さらにテンションが下がっていく理由が、己が出した精液で下着の中の不快感指数が極まりないことである。

しばらく自己処理をしていなかったせいか思ったよりも量が出てしまい、それが尻にまで伝っていく。

そのベトっとした感覚がなんだか気持ち悪く、俺はそれを腰を上げてやり過ごそうとした。

が、

昇りつめた衝動で上がった息を整え、一人で自己嫌悪する俺にめめは「ちょうど良かった」と微笑み、俺のズボンをパンツごと両手で勢い良く引き抜いた。

「わぁぁあ!?」

腰を上げていた為、スッと引き抜かれた俺のズボンとパンツはめめの寝室に散らばった衣類の中にぶん投げられる。

めめの予期せぬ行動に俺はまた間抜けな叫び声をあげ、上体を起こし、あらわになった自分自身をすぐさま両手で隠す。

「なにするん!?」

目「なにってSEXでしょ?」

「いや、そうやけど、そうじゃなくて!
もっとこう、脱がし方ってもんがあるやろ!!」

めめはニコニコ笑い、俺一人が素っ裸のこの状況でボケをかます。

「——お前は、わッ!??」

随分と余裕があるんやなと返そうと思たら、精液をまとった股間を隠していた左手をガシッと掴まれ、そのままめめの局部に誘導された。

目「……俺もさ、もう本当にキツいから、早く康二の中に挿れさせてよ」

めめに困った顔で懇願される。

やっぱり、めめも我慢の限界が来てたみたいやな……。


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