- Hannes side -





『私、“アレ”になりたい！！！』




そうだなあ。とか、そりゃいい夢じゃねえか！とか、色々言ってやれる言葉はあったはずなのに。




『はぁ〜。』



机に突っ伏す俺に、いつもの仲間が絡んでくる気配がした。



『お、なんだハンネス！えらく落ち込んでんじゃねえか！』


『噂によりゃあ、ラウルちゃんにフラれたんだと！』


『ラウルちゃんの夢を大笑いして、挙げ句の果てに打たれたんだと！』



『ハハッ。そいつは、自業自得ってもんだなぁ。』



どんまいハンネス！なんて仲間の慈悲も慰めもない言葉を受けながら、俺はゆっくり起き上がった。





『だってよぉ、思いもしねえだろ？』



俺はあの日をゆっくり思い返す。


普通あの年の子供が考える夢ってのは、もっと単純で可愛いもんだ。








それがなんで…、











『あいつ、ラウルさ…大きくなったら、鳥になりたいんだと。』



『『『鳥ィィ！？』』』





なんだラウル、鳥なんか好きなのか？可愛い夢じゃねえか！なんて言葉が俺の頭上で飛び交っているが、俺はゆっくりと頭を振った。




『…ちげえよ、アイツが鳥なんかになりたい理由はそんなんじゃない。』








そう、俺は確かに昔、もっとアイツが幼かった頃に聞いたことがある…

















〈…おじさんあのね、わたしね、みたいの。〉













〈…おっきな“ソラ”がね、みたいの。〉










瞼の裏に映ったのは、そう言って笑うアイツの幼い頃。






『…生きるってのは難儀な事だな、ラウル。』






ラウルは確かに今もまだ幼いが、数年側で見守ってきて、アイツがそこらにいる子と違って単純な子じゃないって事は、こんな俺でもよく分かった。









結局、ラウルの夢の理由は仲間には述べず、文句を垂れるそいつらを尻目に俺は立ち上がった。






『よし！さてと…、そろそろアイツのご機嫌伺いにでも行くとするか！』
















…なぁ、ラウル。











________________…俺にはこの“ソラ“が、眩しすぎたよ。














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ハンネス大放出の回、終了です。次から現在になります。