☆チョッパー、親になる ※夢主は子供です
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▽服
今、女部屋では、ファッションショーが行われている。
というのも、先日の島での買い物時に服を買えなかったのが気掛かりになったナミが、もう着なくなった服をティナに着せているというわけだ。
まだ5歳といえど、女の子。可愛くしてあげたいと思うナミ。
いかんせん、2人の身長差の加減でピッタリという服が見付けられない。
「うーん……これもまだ大きいわね」
「ナミちゃん、私のも着せてみていいかしら」
ティナが着ている服を脱がせていると、ロビンが声をかけてきた。勿論断る理由もなく、今度はロビンの持ってきた服を着せていく。
「やっぱり私のは大きいわね」
「私のTシャツも、ほとんどワンピースになっちゃうのよ」
ロビンのお古の服も裾が床についてしまい、袖も手がなかなか出ない状態。
手を伸ばしてもまだ有り余るそれに、ティナは楽しそうに振り回して遊んでいる。歩こうと足を1歩踏み出せば裾に躓いて転んでしまう。
「子供はすぐ大きくなるって言うし、そのうちこの光景が懐かしく思う日が来るのかもね」
「そうね。私のお古を着てくれる程大きくなってくれるかしら」
「あっという間よ。気が付いたら私達の身長まで追いついちゃうんだから。もしかしたら追い越されるかも」
「……ティナが……私達より大きく……」
ナミとロビンの脳内に描かれるティナは、ナミとロビンが見上げないと顔が見れない程の背の高さ。
苦い顔で、その想像を手で振り払う2人。
「ナミさーん、遊び行きたーい」
「あ、ごめんごめん。ティナ、これもう1回着てくれる?丈ちゃんと見たいのよ」
ナミは、自分のお古のTシャツを、きちんと丈を調整して1つの服として着れるようにしてあげようと思っていたのだが、散々着せ替え人形をさせられていたティナは、えー!と嫌な表情を浮かべる。
「それさっき着たもーん。あそびたーい」
「ちょっとだけでいいから、ね。ちゃんと着れるようにしてあげるから。ティナも可愛くなりたいでしょ?」
「……可愛くなりたいけど、ナミさん、さっきもちょっとだけって言ったー。ちょっとだけ長いよー」
「これ1着だけだから。これ着たら遊びに行っていいから。ね、お願い」
顔の前で両手を合わせて懇願するナミ。
ティナはそれが信じられず、じとりとした目付きを送りつける。
「ナミさんウソちゅくもん!ヤ!」
頬を膨らませて怒るその態度に、ナミの堪忍袋の緒が切れそうになる。
「ティナ、ナミちゃんがここまでお願いしてるんだから着てあげたら?じゃなかったら、ナミちゃん悲しくて泣いちゃうかもしれないわよ」
「え……?」
ロビンの口添えに、ナミはそのポーズのまま目を見開く。
着なかっただけで泣きはしないけれど、ティナは眉を八の字にして困惑のそれを浮かべている。
「ナミちゃんが泣いてもいいの?」
ナミとロビンを交互に見て、まだその表情を崩さないティナ。
ここはロビンの提案に乗ってみる事にした。
「ティナ着てくれないの?悲しい」
大袈裟に、両手の中に顔を埋めて演技をする。
「え、ナ、ナミさん……えっとえっと……」
「さ、ナミちゃんの笑顔を取り戻す為よ。この服を着ましょ」
ティナは、まだ泣きそうになっているナミとロビンの顔を見た後、ロビンが差し出す服に視線を落とした。
「ナミさん、私、着るからね。泣かないでね」
ロビンの手からそれを受け取り、急いで袖を通した。
「ナミさん、どお?」
慌てて着た為、襟ぐりから片腕を出している。
それをきちんと直すロビン。
ちゃんと服を着ているティナを見たナミは、急いでメジャーとペンを手にして測っていく。ついでに身丈や色々な所のサイズも。
「ティナ、似合うわよ。素敵ね」
「ほんとー?」
「ええ」
その間に、ティナを褒めるロビン。
得意げな表情をして見せるティナ。
「ティナ、ありがとう」
「ナミさん、もう泣かない?」
「ええ、もう泣かないわ。ありがとね」
頭を撫でてくれるナミの笑顔を見て、ティナも満面の笑みを浮かべる。
服を脱いで、自分の服に着替えたティナは「あそびに行ってきます!」と手をあげた。
手を振って女部屋から出て行くティナを見届けてから、盛大にため息をつくナミ。
そんなナミに小さく微笑む。
「ナミちゃんも大変ね」
「ロビンがいてくれて助かったわ。ありがとう」
ナミは、裁縫箱を取り出したが、先程のやり取りで疲れてしまった為、1度落ち着こうとダイニングに足を運んだ。
「ナミ、相談があるんだけど、いいか?」
ゆっくりとダイニングのドアを開けて入ってきたチョッパーは、紅茶を飲んでいるナミを見るなりそう問いかけた。
「相談?何?どうしたの?」
カップをソーサーに置いて、聞く体勢を整える。
ナミのそばに来たチョッパーは話しにくいのか、ナミを見上げて口を開いては閉じてを繰り返している。
「何?そんなに言いにくい事なの?もしかして、私の蜜柑食べたとか言わないでしょうね?」
ナミの思ってもみない予想に、必死に首を左右に振って否定する。
チョッパーとて、ナミの蜜柑を食べてしまう程命知らずではない。
「ち、ち、違うんだ!そんな事しないよ!おれはただ、ティナの服を買ってあげたらと……あ」
勢いあまって口を滑らせてしまったチョッパーは、蹄で口を覆った。
「ティナの服?何よ。そんな事言う為にあんなに時間かけてたの?」
「あ、えっと……お金がかかるから、怒られると思って……こないだ、島に行った時も、結局服買わなかっただろ?だから……おれ……」
「服なら心配いらないわよ。私とロビンのお古あげる事になったから。だから、ティナの服に関してはこれからも心配いらないわ」
「あ、そうなのか。良かった……」
ホッと胸を撫で下ろす。
チョッパーは、いくら子供だからといってもずっと同じ服では可哀想だと、少しオシャレだったり可愛い服を着せてあげたいと考えていたのだ。
ナミやロビンの服ならオシャレだし、センスもあるので間違いないだろう。
しかし、ふと疑問がチョッパーの脳裏を横切った。
ナミとロビンの服となれば身長差がある。ティナが着るにはダボダボになってしまうだろう。
「そうだ。チョッパー、あんたもやってみる?」
「何をだ?」
「ティナの服作り」
ウインクをするナミの提案に、おずおずと頷いた。
「おれにも出来るか?」
「出来るんじゃない?いざとなれば私もいるし、大丈夫でしょ」
図書室は、基本的にナミがよく使う場所でもあり、人の出入りも多くはない。
ナミだけなら女部屋でやれるが、チョッパーも一緒なので落ち着いてやれるここが最適だと判断し、図書室に服や裁縫箱を持ち込んだ。
「服作りっていっても、私達の服をティナが着れるように調整するだけなんだけどね」
「調整……」
ナミは眼鏡をかけて簡単そうに言うが、チョッパーにとっては、1から作るのと、出来上がったものを調整し直すのと、どちらが簡単で難しいのか判断がつかない。
ナミに教えてもらいながら、蹄で器用に服を縫っていくチョッパー。
同じ針を駆使して縫う作業は、手術や治療などでやってはいるが、布を縫い合わせるとなるとまた勝手が違って難しい。
それでも、ティナの笑顔を見る為と縫い合わせていく。その懸命な姿に、ナミはレンズの奥の瞳を柔らかく細めた。
時折休憩を挟みながら漸く完成した服。
「チョッパー、これ、ティナに着せて……あ、嫌がるかしら?今日何回も着替えてるのよね……」
ナミは、数時間前の事を思い出してため息をつく。
「1回やってみるよ」
「そう?じゃあお願いね。嫌がるようなら無理しなくていいから」
返事をしてから、直した服の中から1着手にとって、滑り台でウソップやルフィと遊んでいるティナのところに行った。服を背後に隠して。
「ティナ、ちょっといいか?」
「あ、チョッパー。なあに?」
「えっと……ティナに服を着てほしくて。おれ、頑張って縫ったんだ」
背後から、仕立てあげたばかりのそれを差し出した。
「チョッパーがこの服作ったのか?すげーな。服屋で売ってる服みてーだぞ」
「チョッパーすっげーな!お前天才だな!」
ティナより先に反応したのは、ウソップとルフィ。
2人に褒められて、顔がだらしなく脂下がる。
「バ……バカヤロー!そんなの褒められても嬉しくねーぞコノヤローが」
手を叩いて、踊ってみせるチョッパーは、ものすごく嬉しそうだ。その姿に「嬉しそうだな」と冷静に声を重ねるウソップとルフィ。
その踊りを、隣に並んで真似をするティナ。
「ティナ、これ着てみろよ。チョッパーが作ったらしいぞ」
「おう、着てみろ着てみろ」
「これを?チョッパーが?チョッパーが作ったの?」
ウソップから受け取った服を見て、チョッパーに問いかける。
「作ったっていっても、ほとんどナミが手伝ってくれたんだけど」
「ナミさんとチョッパーが……」
着ていた服を恥じらいもなく脱ぎ捨て、その服に袖を通した。
元はTシャツだったそれがワンピースとして調整されていて、袖口にはフリルがあしらわれている。
長くもなく短くもない裾丈、襟ぐりや袖口もピッタリだ。それを見て安堵するチョッパー。
「おお、いいじゃねーか。可愛いぞティナ。良かったなー」
「似合う似合う。良かったなティナ」
「うん、似合ってて可愛いぞ」
ウソップとルフィ、チョッパーに一斉に褒められたティナは、どうしたらいいか分からず、顔を赤くしてチョッパーと同じ事をした。
「バ……バカヤロー!そんなの褒められても嬉しくねーぞコノヤローが」
手を叩いて踊るティナを見て、「チョッパーの子だな」とこれまた冷静に言うウソップとルフィ。
「おれ教えた覚えねーぞ!それに、本当の親子じゃ――」
「いや、お前らはれっきとした親子だ」
肩に手を乗せて言ってくるルフィ。
「ほら、アレを見ろ。笑い方まで一緒だ」
ウソップが視線で指し示すそこには、嬉しそうに「エッエッエッ」と口元に両手を当てて笑うティナの姿。
「完全にチョッパーの真似して覚えてるな。これで親子じゃねーは無理がある」
ウソップの隣で、ルフィも腕を組んで頷いている。
親になるとこんなにも子供に真似をされるんだなと、嬉しいやら悲しいやら複雑な思いを抱えた。
「チョッパーありがとう!大好き!」
飛び込むように抱きついてきたティナを受け止めた。
想像通りの笑顔が見れて、チョッパーも同じそれを返す。
「ティナが喜んでくれておれも嬉しいぞ」
エッエッエッと、顔を見合わせて笑う2人。
「ナミさん、つくってくれてありがとう」
「いい感じね。良かった。これだけじゃなくて他にもあるから着てね」
「ナミさん大好きー!」
ナミにも飛びかからんばかりの勢いで抱きつくティナを見て、少なからずヤキモチをやくチョッパーなのであった。
今、女部屋では、ファッションショーが行われている。
というのも、先日の島での買い物時に服を買えなかったのが気掛かりになったナミが、もう着なくなった服をティナに着せているというわけだ。
まだ5歳といえど、女の子。可愛くしてあげたいと思うナミ。
いかんせん、2人の身長差の加減でピッタリという服が見付けられない。
「うーん……これもまだ大きいわね」
「ナミちゃん、私のも着せてみていいかしら」
ティナが着ている服を脱がせていると、ロビンが声をかけてきた。勿論断る理由もなく、今度はロビンの持ってきた服を着せていく。
「やっぱり私のは大きいわね」
「私のTシャツも、ほとんどワンピースになっちゃうのよ」
ロビンのお古の服も裾が床についてしまい、袖も手がなかなか出ない状態。
手を伸ばしてもまだ有り余るそれに、ティナは楽しそうに振り回して遊んでいる。歩こうと足を1歩踏み出せば裾に躓いて転んでしまう。
「子供はすぐ大きくなるって言うし、そのうちこの光景が懐かしく思う日が来るのかもね」
「そうね。私のお古を着てくれる程大きくなってくれるかしら」
「あっという間よ。気が付いたら私達の身長まで追いついちゃうんだから。もしかしたら追い越されるかも」
「……ティナが……私達より大きく……」
ナミとロビンの脳内に描かれるティナは、ナミとロビンが見上げないと顔が見れない程の背の高さ。
苦い顔で、その想像を手で振り払う2人。
「ナミさーん、遊び行きたーい」
「あ、ごめんごめん。ティナ、これもう1回着てくれる?丈ちゃんと見たいのよ」
ナミは、自分のお古のTシャツを、きちんと丈を調整して1つの服として着れるようにしてあげようと思っていたのだが、散々着せ替え人形をさせられていたティナは、えー!と嫌な表情を浮かべる。
「それさっき着たもーん。あそびたーい」
「ちょっとだけでいいから、ね。ちゃんと着れるようにしてあげるから。ティナも可愛くなりたいでしょ?」
「……可愛くなりたいけど、ナミさん、さっきもちょっとだけって言ったー。ちょっとだけ長いよー」
「これ1着だけだから。これ着たら遊びに行っていいから。ね、お願い」
顔の前で両手を合わせて懇願するナミ。
ティナはそれが信じられず、じとりとした目付きを送りつける。
「ナミさんウソちゅくもん!ヤ!」
頬を膨らませて怒るその態度に、ナミの堪忍袋の緒が切れそうになる。
「ティナ、ナミちゃんがここまでお願いしてるんだから着てあげたら?じゃなかったら、ナミちゃん悲しくて泣いちゃうかもしれないわよ」
「え……?」
ロビンの口添えに、ナミはそのポーズのまま目を見開く。
着なかっただけで泣きはしないけれど、ティナは眉を八の字にして困惑のそれを浮かべている。
「ナミちゃんが泣いてもいいの?」
ナミとロビンを交互に見て、まだその表情を崩さないティナ。
ここはロビンの提案に乗ってみる事にした。
「ティナ着てくれないの?悲しい」
大袈裟に、両手の中に顔を埋めて演技をする。
「え、ナ、ナミさん……えっとえっと……」
「さ、ナミちゃんの笑顔を取り戻す為よ。この服を着ましょ」
ティナは、まだ泣きそうになっているナミとロビンの顔を見た後、ロビンが差し出す服に視線を落とした。
「ナミさん、私、着るからね。泣かないでね」
ロビンの手からそれを受け取り、急いで袖を通した。
「ナミさん、どお?」
慌てて着た為、襟ぐりから片腕を出している。
それをきちんと直すロビン。
ちゃんと服を着ているティナを見たナミは、急いでメジャーとペンを手にして測っていく。ついでに身丈や色々な所のサイズも。
「ティナ、似合うわよ。素敵ね」
「ほんとー?」
「ええ」
その間に、ティナを褒めるロビン。
得意げな表情をして見せるティナ。
「ティナ、ありがとう」
「ナミさん、もう泣かない?」
「ええ、もう泣かないわ。ありがとね」
頭を撫でてくれるナミの笑顔を見て、ティナも満面の笑みを浮かべる。
服を脱いで、自分の服に着替えたティナは「あそびに行ってきます!」と手をあげた。
手を振って女部屋から出て行くティナを見届けてから、盛大にため息をつくナミ。
そんなナミに小さく微笑む。
「ナミちゃんも大変ね」
「ロビンがいてくれて助かったわ。ありがとう」
ナミは、裁縫箱を取り出したが、先程のやり取りで疲れてしまった為、1度落ち着こうとダイニングに足を運んだ。
「ナミ、相談があるんだけど、いいか?」
ゆっくりとダイニングのドアを開けて入ってきたチョッパーは、紅茶を飲んでいるナミを見るなりそう問いかけた。
「相談?何?どうしたの?」
カップをソーサーに置いて、聞く体勢を整える。
ナミのそばに来たチョッパーは話しにくいのか、ナミを見上げて口を開いては閉じてを繰り返している。
「何?そんなに言いにくい事なの?もしかして、私の蜜柑食べたとか言わないでしょうね?」
ナミの思ってもみない予想に、必死に首を左右に振って否定する。
チョッパーとて、ナミの蜜柑を食べてしまう程命知らずではない。
「ち、ち、違うんだ!そんな事しないよ!おれはただ、ティナの服を買ってあげたらと……あ」
勢いあまって口を滑らせてしまったチョッパーは、蹄で口を覆った。
「ティナの服?何よ。そんな事言う為にあんなに時間かけてたの?」
「あ、えっと……お金がかかるから、怒られると思って……こないだ、島に行った時も、結局服買わなかっただろ?だから……おれ……」
「服なら心配いらないわよ。私とロビンのお古あげる事になったから。だから、ティナの服に関してはこれからも心配いらないわ」
「あ、そうなのか。良かった……」
ホッと胸を撫で下ろす。
チョッパーは、いくら子供だからといってもずっと同じ服では可哀想だと、少しオシャレだったり可愛い服を着せてあげたいと考えていたのだ。
ナミやロビンの服ならオシャレだし、センスもあるので間違いないだろう。
しかし、ふと疑問がチョッパーの脳裏を横切った。
ナミとロビンの服となれば身長差がある。ティナが着るにはダボダボになってしまうだろう。
「そうだ。チョッパー、あんたもやってみる?」
「何をだ?」
「ティナの服作り」
ウインクをするナミの提案に、おずおずと頷いた。
「おれにも出来るか?」
「出来るんじゃない?いざとなれば私もいるし、大丈夫でしょ」
図書室は、基本的にナミがよく使う場所でもあり、人の出入りも多くはない。
ナミだけなら女部屋でやれるが、チョッパーも一緒なので落ち着いてやれるここが最適だと判断し、図書室に服や裁縫箱を持ち込んだ。
「服作りっていっても、私達の服をティナが着れるように調整するだけなんだけどね」
「調整……」
ナミは眼鏡をかけて簡単そうに言うが、チョッパーにとっては、1から作るのと、出来上がったものを調整し直すのと、どちらが簡単で難しいのか判断がつかない。
ナミに教えてもらいながら、蹄で器用に服を縫っていくチョッパー。
同じ針を駆使して縫う作業は、手術や治療などでやってはいるが、布を縫い合わせるとなるとまた勝手が違って難しい。
それでも、ティナの笑顔を見る為と縫い合わせていく。その懸命な姿に、ナミはレンズの奥の瞳を柔らかく細めた。
時折休憩を挟みながら漸く完成した服。
「チョッパー、これ、ティナに着せて……あ、嫌がるかしら?今日何回も着替えてるのよね……」
ナミは、数時間前の事を思い出してため息をつく。
「1回やってみるよ」
「そう?じゃあお願いね。嫌がるようなら無理しなくていいから」
返事をしてから、直した服の中から1着手にとって、滑り台でウソップやルフィと遊んでいるティナのところに行った。服を背後に隠して。
「ティナ、ちょっといいか?」
「あ、チョッパー。なあに?」
「えっと……ティナに服を着てほしくて。おれ、頑張って縫ったんだ」
背後から、仕立てあげたばかりのそれを差し出した。
「チョッパーがこの服作ったのか?すげーな。服屋で売ってる服みてーだぞ」
「チョッパーすっげーな!お前天才だな!」
ティナより先に反応したのは、ウソップとルフィ。
2人に褒められて、顔がだらしなく脂下がる。
「バ……バカヤロー!そんなの褒められても嬉しくねーぞコノヤローが」
手を叩いて、踊ってみせるチョッパーは、ものすごく嬉しそうだ。その姿に「嬉しそうだな」と冷静に声を重ねるウソップとルフィ。
その踊りを、隣に並んで真似をするティナ。
「ティナ、これ着てみろよ。チョッパーが作ったらしいぞ」
「おう、着てみろ着てみろ」
「これを?チョッパーが?チョッパーが作ったの?」
ウソップから受け取った服を見て、チョッパーに問いかける。
「作ったっていっても、ほとんどナミが手伝ってくれたんだけど」
「ナミさんとチョッパーが……」
着ていた服を恥じらいもなく脱ぎ捨て、その服に袖を通した。
元はTシャツだったそれがワンピースとして調整されていて、袖口にはフリルがあしらわれている。
長くもなく短くもない裾丈、襟ぐりや袖口もピッタリだ。それを見て安堵するチョッパー。
「おお、いいじゃねーか。可愛いぞティナ。良かったなー」
「似合う似合う。良かったなティナ」
「うん、似合ってて可愛いぞ」
ウソップとルフィ、チョッパーに一斉に褒められたティナは、どうしたらいいか分からず、顔を赤くしてチョッパーと同じ事をした。
「バ……バカヤロー!そんなの褒められても嬉しくねーぞコノヤローが」
手を叩いて踊るティナを見て、「チョッパーの子だな」とこれまた冷静に言うウソップとルフィ。
「おれ教えた覚えねーぞ!それに、本当の親子じゃ――」
「いや、お前らはれっきとした親子だ」
肩に手を乗せて言ってくるルフィ。
「ほら、アレを見ろ。笑い方まで一緒だ」
ウソップが視線で指し示すそこには、嬉しそうに「エッエッエッ」と口元に両手を当てて笑うティナの姿。
「完全にチョッパーの真似して覚えてるな。これで親子じゃねーは無理がある」
ウソップの隣で、ルフィも腕を組んで頷いている。
親になるとこんなにも子供に真似をされるんだなと、嬉しいやら悲しいやら複雑な思いを抱えた。
「チョッパーありがとう!大好き!」
飛び込むように抱きついてきたティナを受け止めた。
想像通りの笑顔が見れて、チョッパーも同じそれを返す。
「ティナが喜んでくれておれも嬉しいぞ」
エッエッエッと、顔を見合わせて笑う2人。
「ナミさん、つくってくれてありがとう」
「いい感じね。良かった。これだけじゃなくて他にもあるから着てね」
「ナミさん大好きー!」
ナミにも飛びかからんばかりの勢いで抱きつくティナを見て、少なからずヤキモチをやくチョッパーなのであった。