番外
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▽坂田さんと
「あ、銀ちゃんだ」
団子屋のベンチに座って団子を食べていたら、警察の制服を身に纏った女に声をかけられた。
身長も体格も神楽と変わらない程。しかし、胸は神楽より育っている。服の上からではよく分からないけど、巨乳でもない貧乳でもない、ちょうどいい感じの2つの膨らみがそこに。
そんな女が、腰に刀なんて物騒な物を差して、似合わないったらありゃしねェ。もっとガキならガキなりにあんでしょうよ、もっと相応しい道が。どんな?とか聞かれても分かんねェけど。
警察もこんなガキを頼らなければいけなくなったのか、と世も末だなと、団子を咀嚼しながら女を見る。
しかし、名前が出てこない。俺の名前を知っているという事は、知り合いという事だ。どこで出会ったのかも思い出せない。
「あ、あー……もしかして、ヤマメちゃん?いやー立派になっちゃって。おばさんとの決着ついたの?ほら、ポテトサラダにリンゴ入れるかどうかの」
「ヤマメ?私の名前ヤマメだったっけ?」
ん?と首を傾げている女に、知らねェよ!自分の名前忘れてんじゃねェよ!と心の中で突っ込む。
「いや、違う違う。私内田美緒だわ。あっぶねェ。銀ちゃんに名前取られる所だった。もうちょっとでヤマメになりかけてたわ」
俺は湯婆婆か!お前が勝手に取られそうになっただけだろォ!なんなんだコイツ。調子狂うんだけど。
「私も一緒に団子食べていい?」
「いや、いいけど。つーか、俺らどっかで会った事ありましたっけ?」
お邪魔します、と隣に座った女は、俺の質問に答える前に、お茶を運んできたおばちゃんに団子を頼んだ。
「銀さん良かったねェ。こんな可愛い子と一緒に食べれてねェ」
おばちゃんにそう言われるが、初対面もいいところだ。確かにツラはいいと思うけど、バカだからねこの子。会って1分も経ってないのに1人で勝手にバカ晒してるからね。
女は、「え!?可愛い!?やだーおばちゃん、そんな事言われても団子しか食べないよー?」と喜んでいる。
「団子食べてくれるだけで嬉しいよ」と、微笑んで裏に引っ込んでいくおばちゃんを見届けた後、女の顔がこちらに向いた。
「そういえば、さっき何か言わなかった?ポテトリンゴの話だっけ?」
「ポテトリンゴって何。だから、俺らどっかで会ったかなって」
「え?覚えてない?マジか……まぁ、しょうがないか。あの時暗かったし、1回だけだったからね。お通ちゃんのライブの時に会ってるんだよ」
そう言われて、記憶を呼び起こす。
お通ちゃんのライブといえば、脱獄したあの親父を連れてって、変な天人やっつけて……思い出した。
新八とやたら仲良さそうにしていた女だ。
「おばちゃん、ここの団子美味しいね」
「そうかい、ありがとねェ。そんな美味しそうに食べてもらえて嬉しいねェ」
「あん時のか。思い出した」
「思い出してくれた?良かった。銀ちゃん、ここの団子美味しいね。もっと早く知りたかったな」
と、団子を頬張るその幸せそうな表情に、何故かこちらまで満たされた気分にさせられる。
食べている姿をずっと見ていても飽きない。
「これも食うか?」
普段なら絶対しない事を口走っていた。
甘味好きなこの俺が、人に分け与えるなんてどうかしている。
ガラにもなく、コイツの食べている姿をもっと見ていたいと思ってしまったのだ。
「いや、それは悪いよ。銀ちゃん食べなよ」
「……そうかい。じゃあ食うわ」
団子の串を手にとって、団子を頬張る。
美味いが、俺にはあんなに美味そうに食うなんて芸当、一生出来ないだろう。
女は、美味しいね、と口元に片手を当てて微笑む。つい、その頭に手が伸びた。
「良かったな」
頭を撫でてやれば、うん、とこれまた嬉しそうに笑った。
「お前、名前なんつったっけ?」
「美緒さァァァん?お前、仕事中に団子食うとかいい身分だなコラ」
俺がさっきまで手を乗せていた頭に、違う男の手が乗ってわし掴んでいる。
「痛たた!副長痛い!ちが、違うんです。退と順番に休憩してて」
「休憩する程長い時間入れてねェだろ!さっさと持ち場戻れ!」
その男は、瞳孔が開きV字の前髪が特徴的な……誰だっけ……多串くんだったかな?
その光景を横目で見ていたら、俺の視線に気付いたのか「何見てんだコラ。見せもんじゃねェぞ」と睨んできた。
「いやいや、団子食ってるの邪魔されちゃそりゃ見るでしょ。しかも何?お兄さん、部下だかなんだか知らねェけど、女の子に手荒なんじゃない?」
「うっせーな。コイツはいいんだよ。外野は黙ってろ。公務執行妨害で逮捕すんぞ」
「だったらテメェは、食事執行妨害で逮捕だコノヤロー」
「上等だコラ!やれるもんならやってみろ!」
「あ!?んだと!やんのかコラ!」
立ち上がって多串くんと睨み合い、それぞれの獲物に手をかけた時、美緒が割って入った。
「はいそこまで!2人とも団子屋さんの公務執行妨害になってます。よって、私が今ここで2人を逮捕します」
そんな事を言われて興が冷めた。
「お前に俺が逮捕出来るかバカヤロー!行くぞ!」
「あ、ちょっと待って。お金。おばちゃん、ごちそうさまでした。お金ここ置いとくね。じゃ、銀ちゃんまたね」
慌ただしく金をベンチに置くと、俺に手を振りながら、多串くんに腕を引かれて去って行った。
「あらやだ、あの子お金多く置いてってるわ」
置いてった金を拾いあげたおばちゃんが、どうしようかしら、と困惑のそれを浮かべている。
「もらっときゃいいんじゃねェの?」
「よく数えたら、銀さんのだわ。銀さんの団子代も置いてってるわあの子。あらまァ、スマートな事する子もいたもんだねェ。銀さんも見習わないとね。いつまでもツケで団子食べてないで、奢る事覚えないと」
「……んな事頼んでねェよ、あのアマ」
今日もツケで食うつもりだったから助かったが、女に金を払わせてまで団子を食いたいワケじゃない。
めんどくせェと思いながら、おばちゃんにごちそーさん、と告げて団子屋を後にした。
原付を走らせていると、美緒が交差点の真ん中で、台の上に乗ってスピーカー片手に交通整理をしている。
あの中に入り込んでまで、団子の件を言うのもめんどくさく、急を要したものでもないので、また会えた時にしようと引き返した。
後日、美緒に団子の金の件を伝えると、首を傾げられた。
「なんで私が銀ちゃんの分まで払わなきゃいけないの。自分の分だよアレ」
テメェの団子代も計算出来ねェだけのただのバカじゃねェか!おばちゃん、コイツに勘定の仕方教えてやってェェ!
「でも、それで銀ちゃんが助かったならいっか」
「お前騙されやすそうな性格してんなァ。警察向いてねェんじゃね?」
「そんな事ないよ失礼な!詐欺と分かれば、ビビッとくるから」
「へーへーそうですか」
耳をほじっていると、こちらをじっと見上げている。
「銀ちゃん、その髪どうやって染めてんの?維持大変そうだね」
「地毛だから維持とかねーよ」
「地毛!?えー!いいなぁ!私もそんな色で産まれたかったなー」
目をキラキラさせて、羨望の眼差しを向けてきた。
普段、モジャモジャだとか白髪だとかバカにされるし、自分でも気に入っていない髪をそこまで言われるとは思っておらず、どこかくすぐったくなる。
「いいだろ、羨ましいだろ。選ばれた者しかならねェ色だからな」
「いいなぁ!羨ましい!私も選ばれたかったー!」
「…………」
なんか調子狂うな、コイツと喋ってると。
ツッコミか?ツッコミ成分がたりないのか?
美緒は、ポケットから携帯を取り出すと、眉をしかめて嫌そうな表情を浮かべた。手の中で震えている携帯。
「何?どうした?」
「えっと……上司から電話かかってきたなって……」
「急ぎかもしんねェし出れば?」
そうだね……と、落胆したまま携帯を耳に当てた。
「はい、内田――」
《テメェ!どこほっつき歩いてんだ!書類整理しろっつったろ!仕事ナメてんのかコラ!》
咄嗟に携帯を耳から離したようだが、こちらまで丸聞こえの怒声だ。
「はい、すみません。今帰ります」
《帰ったらすぐ俺の部屋来いよ!逃げたら分かってんだろーな!》
「はい」
通話を切ると、盛大に吐かれたため息。
慰めるように、その頭を撫でる。
「お前、いっつも怒られてんな。何したらそんなに怒られるんだよ」
「あはは。ホントだよねー」
「何他人事みたいに言ってんの?お前の事言ってるからね。俺から土方くんに言ってやろーか?」
「いいよ、大丈夫。ありがとう。なんか怒ってるから帰るね。またね」
笑顔で手を振ると、屯所に向かって走り出した。
美緒は、俺の周りにあまりいない種類の人間だ。
定春じゃないのに、つい頭を撫でたくなってしまうのは何故だろう。
理由はどうであろうと、煩わしくも俺の荷となり糧となる、護るべき存在がまた1つ増えた事に気付き、息をついた。
「あ、銀ちゃんだ」
団子屋のベンチに座って団子を食べていたら、警察の制服を身に纏った女に声をかけられた。
身長も体格も神楽と変わらない程。しかし、胸は神楽より育っている。服の上からではよく分からないけど、巨乳でもない貧乳でもない、ちょうどいい感じの2つの膨らみがそこに。
そんな女が、腰に刀なんて物騒な物を差して、似合わないったらありゃしねェ。もっとガキならガキなりにあんでしょうよ、もっと相応しい道が。どんな?とか聞かれても分かんねェけど。
警察もこんなガキを頼らなければいけなくなったのか、と世も末だなと、団子を咀嚼しながら女を見る。
しかし、名前が出てこない。俺の名前を知っているという事は、知り合いという事だ。どこで出会ったのかも思い出せない。
「あ、あー……もしかして、ヤマメちゃん?いやー立派になっちゃって。おばさんとの決着ついたの?ほら、ポテトサラダにリンゴ入れるかどうかの」
「ヤマメ?私の名前ヤマメだったっけ?」
ん?と首を傾げている女に、知らねェよ!自分の名前忘れてんじゃねェよ!と心の中で突っ込む。
「いや、違う違う。私内田美緒だわ。あっぶねェ。銀ちゃんに名前取られる所だった。もうちょっとでヤマメになりかけてたわ」
俺は湯婆婆か!お前が勝手に取られそうになっただけだろォ!なんなんだコイツ。調子狂うんだけど。
「私も一緒に団子食べていい?」
「いや、いいけど。つーか、俺らどっかで会った事ありましたっけ?」
お邪魔します、と隣に座った女は、俺の質問に答える前に、お茶を運んできたおばちゃんに団子を頼んだ。
「銀さん良かったねェ。こんな可愛い子と一緒に食べれてねェ」
おばちゃんにそう言われるが、初対面もいいところだ。確かにツラはいいと思うけど、バカだからねこの子。会って1分も経ってないのに1人で勝手にバカ晒してるからね。
女は、「え!?可愛い!?やだーおばちゃん、そんな事言われても団子しか食べないよー?」と喜んでいる。
「団子食べてくれるだけで嬉しいよ」と、微笑んで裏に引っ込んでいくおばちゃんを見届けた後、女の顔がこちらに向いた。
「そういえば、さっき何か言わなかった?ポテトリンゴの話だっけ?」
「ポテトリンゴって何。だから、俺らどっかで会ったかなって」
「え?覚えてない?マジか……まぁ、しょうがないか。あの時暗かったし、1回だけだったからね。お通ちゃんのライブの時に会ってるんだよ」
そう言われて、記憶を呼び起こす。
お通ちゃんのライブといえば、脱獄したあの親父を連れてって、変な天人やっつけて……思い出した。
新八とやたら仲良さそうにしていた女だ。
「おばちゃん、ここの団子美味しいね」
「そうかい、ありがとねェ。そんな美味しそうに食べてもらえて嬉しいねェ」
「あん時のか。思い出した」
「思い出してくれた?良かった。銀ちゃん、ここの団子美味しいね。もっと早く知りたかったな」
と、団子を頬張るその幸せそうな表情に、何故かこちらまで満たされた気分にさせられる。
食べている姿をずっと見ていても飽きない。
「これも食うか?」
普段なら絶対しない事を口走っていた。
甘味好きなこの俺が、人に分け与えるなんてどうかしている。
ガラにもなく、コイツの食べている姿をもっと見ていたいと思ってしまったのだ。
「いや、それは悪いよ。銀ちゃん食べなよ」
「……そうかい。じゃあ食うわ」
団子の串を手にとって、団子を頬張る。
美味いが、俺にはあんなに美味そうに食うなんて芸当、一生出来ないだろう。
女は、美味しいね、と口元に片手を当てて微笑む。つい、その頭に手が伸びた。
「良かったな」
頭を撫でてやれば、うん、とこれまた嬉しそうに笑った。
「お前、名前なんつったっけ?」
「美緒さァァァん?お前、仕事中に団子食うとかいい身分だなコラ」
俺がさっきまで手を乗せていた頭に、違う男の手が乗ってわし掴んでいる。
「痛たた!副長痛い!ちが、違うんです。退と順番に休憩してて」
「休憩する程長い時間入れてねェだろ!さっさと持ち場戻れ!」
その男は、瞳孔が開きV字の前髪が特徴的な……誰だっけ……多串くんだったかな?
その光景を横目で見ていたら、俺の視線に気付いたのか「何見てんだコラ。見せもんじゃねェぞ」と睨んできた。
「いやいや、団子食ってるの邪魔されちゃそりゃ見るでしょ。しかも何?お兄さん、部下だかなんだか知らねェけど、女の子に手荒なんじゃない?」
「うっせーな。コイツはいいんだよ。外野は黙ってろ。公務執行妨害で逮捕すんぞ」
「だったらテメェは、食事執行妨害で逮捕だコノヤロー」
「上等だコラ!やれるもんならやってみろ!」
「あ!?んだと!やんのかコラ!」
立ち上がって多串くんと睨み合い、それぞれの獲物に手をかけた時、美緒が割って入った。
「はいそこまで!2人とも団子屋さんの公務執行妨害になってます。よって、私が今ここで2人を逮捕します」
そんな事を言われて興が冷めた。
「お前に俺が逮捕出来るかバカヤロー!行くぞ!」
「あ、ちょっと待って。お金。おばちゃん、ごちそうさまでした。お金ここ置いとくね。じゃ、銀ちゃんまたね」
慌ただしく金をベンチに置くと、俺に手を振りながら、多串くんに腕を引かれて去って行った。
「あらやだ、あの子お金多く置いてってるわ」
置いてった金を拾いあげたおばちゃんが、どうしようかしら、と困惑のそれを浮かべている。
「もらっときゃいいんじゃねェの?」
「よく数えたら、銀さんのだわ。銀さんの団子代も置いてってるわあの子。あらまァ、スマートな事する子もいたもんだねェ。銀さんも見習わないとね。いつまでもツケで団子食べてないで、奢る事覚えないと」
「……んな事頼んでねェよ、あのアマ」
今日もツケで食うつもりだったから助かったが、女に金を払わせてまで団子を食いたいワケじゃない。
めんどくせェと思いながら、おばちゃんにごちそーさん、と告げて団子屋を後にした。
原付を走らせていると、美緒が交差点の真ん中で、台の上に乗ってスピーカー片手に交通整理をしている。
あの中に入り込んでまで、団子の件を言うのもめんどくさく、急を要したものでもないので、また会えた時にしようと引き返した。
後日、美緒に団子の金の件を伝えると、首を傾げられた。
「なんで私が銀ちゃんの分まで払わなきゃいけないの。自分の分だよアレ」
テメェの団子代も計算出来ねェだけのただのバカじゃねェか!おばちゃん、コイツに勘定の仕方教えてやってェェ!
「でも、それで銀ちゃんが助かったならいっか」
「お前騙されやすそうな性格してんなァ。警察向いてねェんじゃね?」
「そんな事ないよ失礼な!詐欺と分かれば、ビビッとくるから」
「へーへーそうですか」
耳をほじっていると、こちらをじっと見上げている。
「銀ちゃん、その髪どうやって染めてんの?維持大変そうだね」
「地毛だから維持とかねーよ」
「地毛!?えー!いいなぁ!私もそんな色で産まれたかったなー」
目をキラキラさせて、羨望の眼差しを向けてきた。
普段、モジャモジャだとか白髪だとかバカにされるし、自分でも気に入っていない髪をそこまで言われるとは思っておらず、どこかくすぐったくなる。
「いいだろ、羨ましいだろ。選ばれた者しかならねェ色だからな」
「いいなぁ!羨ましい!私も選ばれたかったー!」
「…………」
なんか調子狂うな、コイツと喋ってると。
ツッコミか?ツッコミ成分がたりないのか?
美緒は、ポケットから携帯を取り出すと、眉をしかめて嫌そうな表情を浮かべた。手の中で震えている携帯。
「何?どうした?」
「えっと……上司から電話かかってきたなって……」
「急ぎかもしんねェし出れば?」
そうだね……と、落胆したまま携帯を耳に当てた。
「はい、内田――」
《テメェ!どこほっつき歩いてんだ!書類整理しろっつったろ!仕事ナメてんのかコラ!》
咄嗟に携帯を耳から離したようだが、こちらまで丸聞こえの怒声だ。
「はい、すみません。今帰ります」
《帰ったらすぐ俺の部屋来いよ!逃げたら分かってんだろーな!》
「はい」
通話を切ると、盛大に吐かれたため息。
慰めるように、その頭を撫でる。
「お前、いっつも怒られてんな。何したらそんなに怒られるんだよ」
「あはは。ホントだよねー」
「何他人事みたいに言ってんの?お前の事言ってるからね。俺から土方くんに言ってやろーか?」
「いいよ、大丈夫。ありがとう。なんか怒ってるから帰るね。またね」
笑顔で手を振ると、屯所に向かって走り出した。
美緒は、俺の周りにあまりいない種類の人間だ。
定春じゃないのに、つい頭を撫でたくなってしまうのは何故だろう。
理由はどうであろうと、煩わしくも俺の荷となり糧となる、護るべき存在がまた1つ増えた事に気付き、息をついた。