本編
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▽新八との出会い
徐々にではあるが、真選組の仕事や副長の瞳孔が開いた目、沖田隊長のからかいにも慣れてきたように思う。
真選組は、近藤局長を始め、とても気のいい人達で私の事もよくしてくれる。
入隊してから何度目かのオフ。
残念ながら、今日もまた退と休みが重ならず、暇を持て余している。
何人かの隊士が遊びに誘ってきてくれたが、丁重にお断りをさせていただいた。
屯所にいても暇なので、散歩をする事に。
さすが江戸なだけあり、天人や人間が多い。
私が住んでいた所はここよりも田舎で、こんなにも人は多くなかったので目が回りそうになる。
「何しようかな……」
特別何かしなきゃいけないという掟があるわけでもないが、手持ち無沙汰で町を歩いているのもなんとなく暇というものだ。
空を見上げれば、異郷の船が横切っている。
やっぱり屋敷に戻ろうかと悩んでいた時、風に乗って音楽が耳に届いた。
本当に音楽か分からないけれど、ギターの音が聞こえてきたから音楽で間違いないだろう。
私は、何故かその音楽が聞こえる方に急いで足を向けた。
どこだ?
なんでこんなにも聞きたいかなんて分からない。
音楽にさ程興味がない私の体が、近くで聞きたいとざわめく。
「いた……」
誰も足を止めない中、ギターを弾きながら楽しそうに歌うその姿。
吸い込まれるように足が動き、その子の前で止まった。
私より年下の女の子が、一生懸命歌っている。
先客がいたようで、その少年の隣に座って耳を傾けた。
彼女が動く度に、サイドテールに結われた紫色の髪が軽やかに揺れる。
歌詞の意味なんて理解出来たもんじゃない。
だけど、凄く惹かれたのは事実。
鼻をすする音が聞こえて隣を見ると、眼鏡を外して涙を拭っている少年に驚く。
歌い終わったあと拍手を送れば「ありがとう」と嬉しそうに片手を挙げて応えてくれた。
私も頑張ろう、なんだかそんな風に思えてきたから不思議だ。
「……大丈夫ですか?」
歌っていた女の子が帰った後、残された私と眼鏡の少年。
知り合いでもないので先に帰ってもいいのだけれど、なんとなく泣いている少年をそのままに出来ず、少年に話しかけた。
よく見れば、少年の体はボロボロで、殴られたような痕があった。
暴行でも遭ったんだろうか。
この少年なら気が弱そうなので有り得ない事もないだろうな。
少年はまだ流れる涙を手の甲で拭って、苦笑交じりに頷いた。
「なんだか涙が出てきて……ごめんなさい……」
「あ、いやそっちじゃなくて、いや、そっちもか。えっと、誰かに殴られたんですか?警察には行きましたか?」
ハンカチを差し出せば、大丈夫と断られてしまい受け取ってもらえず、寂しそうなハンカチをポケットに戻す。
少年は自分の腫れている頬に手を当てると、恥ずかしそうに俯きながら言った。
「警察なんて大事にはしたくないっていうか……ダメなんですよね、僕。レジ打ちすら出来なくて、その度に店長に殴られてばっかで……」
いや、そんな殴られてんの?そのうち顔歪むんじゃ……
私が言葉を発するより先に、少年は何かに気付き、笑顔を浮かべて自己紹介を始めた。
少年の名前は志村新八。
店長に殴られて、自信喪失していた時に彼女の歌声が聞こえてきたらしい。
嬉しそうに笑顔を浮かべた志村新八くん。
私も笑顔を返して名乗った。
「でも、さっきの人の歌良かったですね。元気をもらっちゃいました。仕事頑張れそうです」
「私もです。音楽でここまで感動させられたの初めてです」
あの彼女繋がりで、志村さんと長い付き合いになるとは、この時微塵も思わなかった。
「志村さんにも色々事情があるとは思いますけど、殴られて顔の造形変わる前に、転職とか考えた方がいいと思いますよ。余計なお世話でしょうけど」
「いえいえ。心配してくださってありがとうございます。彼女の歌に勇気もらえたので、もう少し頑張ってみようと思います」
それ以上何も言えず、志村さんと別れた私は、またする事もなくなってしまい、今度こそ屯所へと足を向ける。
そういえば、なんだかあの地味さ誰かに似てるな……
「美緒ちゃん、どっか行ってたの?」
肩を叩かれて振り向けば退がいた。
……なるほど、退だったか
徐々にではあるが、真選組の仕事や副長の瞳孔が開いた目、沖田隊長のからかいにも慣れてきたように思う。
真選組は、近藤局長を始め、とても気のいい人達で私の事もよくしてくれる。
入隊してから何度目かのオフ。
残念ながら、今日もまた退と休みが重ならず、暇を持て余している。
何人かの隊士が遊びに誘ってきてくれたが、丁重にお断りをさせていただいた。
屯所にいても暇なので、散歩をする事に。
さすが江戸なだけあり、天人や人間が多い。
私が住んでいた所はここよりも田舎で、こんなにも人は多くなかったので目が回りそうになる。
「何しようかな……」
特別何かしなきゃいけないという掟があるわけでもないが、手持ち無沙汰で町を歩いているのもなんとなく暇というものだ。
空を見上げれば、異郷の船が横切っている。
やっぱり屋敷に戻ろうかと悩んでいた時、風に乗って音楽が耳に届いた。
本当に音楽か分からないけれど、ギターの音が聞こえてきたから音楽で間違いないだろう。
私は、何故かその音楽が聞こえる方に急いで足を向けた。
どこだ?
なんでこんなにも聞きたいかなんて分からない。
音楽にさ程興味がない私の体が、近くで聞きたいとざわめく。
「いた……」
誰も足を止めない中、ギターを弾きながら楽しそうに歌うその姿。
吸い込まれるように足が動き、その子の前で止まった。
私より年下の女の子が、一生懸命歌っている。
先客がいたようで、その少年の隣に座って耳を傾けた。
彼女が動く度に、サイドテールに結われた紫色の髪が軽やかに揺れる。
歌詞の意味なんて理解出来たもんじゃない。
だけど、凄く惹かれたのは事実。
鼻をすする音が聞こえて隣を見ると、眼鏡を外して涙を拭っている少年に驚く。
歌い終わったあと拍手を送れば「ありがとう」と嬉しそうに片手を挙げて応えてくれた。
私も頑張ろう、なんだかそんな風に思えてきたから不思議だ。
「……大丈夫ですか?」
歌っていた女の子が帰った後、残された私と眼鏡の少年。
知り合いでもないので先に帰ってもいいのだけれど、なんとなく泣いている少年をそのままに出来ず、少年に話しかけた。
よく見れば、少年の体はボロボロで、殴られたような痕があった。
暴行でも遭ったんだろうか。
この少年なら気が弱そうなので有り得ない事もないだろうな。
少年はまだ流れる涙を手の甲で拭って、苦笑交じりに頷いた。
「なんだか涙が出てきて……ごめんなさい……」
「あ、いやそっちじゃなくて、いや、そっちもか。えっと、誰かに殴られたんですか?警察には行きましたか?」
ハンカチを差し出せば、大丈夫と断られてしまい受け取ってもらえず、寂しそうなハンカチをポケットに戻す。
少年は自分の腫れている頬に手を当てると、恥ずかしそうに俯きながら言った。
「警察なんて大事にはしたくないっていうか……ダメなんですよね、僕。レジ打ちすら出来なくて、その度に店長に殴られてばっかで……」
いや、そんな殴られてんの?そのうち顔歪むんじゃ……
私が言葉を発するより先に、少年は何かに気付き、笑顔を浮かべて自己紹介を始めた。
少年の名前は志村新八。
店長に殴られて、自信喪失していた時に彼女の歌声が聞こえてきたらしい。
嬉しそうに笑顔を浮かべた志村新八くん。
私も笑顔を返して名乗った。
「でも、さっきの人の歌良かったですね。元気をもらっちゃいました。仕事頑張れそうです」
「私もです。音楽でここまで感動させられたの初めてです」
あの彼女繋がりで、志村さんと長い付き合いになるとは、この時微塵も思わなかった。
「志村さんにも色々事情があるとは思いますけど、殴られて顔の造形変わる前に、転職とか考えた方がいいと思いますよ。余計なお世話でしょうけど」
「いえいえ。心配してくださってありがとうございます。彼女の歌に勇気もらえたので、もう少し頑張ってみようと思います」
それ以上何も言えず、志村さんと別れた私は、またする事もなくなってしまい、今度こそ屯所へと足を向ける。
そういえば、なんだかあの地味さ誰かに似てるな……
「美緒ちゃん、どっか行ってたの?」
肩を叩かれて振り向けば退がいた。
……なるほど、退だったか