本編
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▽懸賞金と刀
「海行きたいんで休みください!」
「はァ!?ふざけるのは顔だけにしろよ。何が海だ。それより祭りで逃した高杉の――」
「海行きたいんで休みください!」
「だから高杉の件洗えって」
「海行きたいんで休みください!」
土下座が効いたのか、とりあえず理由だけでも聞いてもらえる事に成功した。
事の発端は、神楽ちゃんからの電話。
《美緒、一緒に海行って懸賞金もらうアルヨ!》
「懸賞金?何それ行きたい!お金欲しい!」
神楽ちゃんからの説明によると、海に出た謎の宇宙生物に懸賞金がかけられたとの事。
神楽ちゃんも私もお金には困っている。この話に飛びつかない理由がない。
いつ行くのか聞けば、なんと今日だと言うのだ。急にも程がある。
「でも、土方さんがなんて言うかなぁ?今日私仕事なんだよねー」
《美緒は、懸賞金と仕事どっちが大事アルか!?》
「あー、めんどくせぇ彼女みたいな事言い出した。一応掛け合うだけは掛け合ってみるけど、期待はしないでね」
《待ってるアルヨ》
という事で、副長に掛け合っているのだ。
その懸賞金で刀を買いたいと説明したら、ふざけるなと一蹴された。
「だって刀買うのに経費出ないじゃないですか。今月ピンチだし、手っ取り早くエイリアン退治して、その懸賞金で買おうかなって思ったんです。今鞘ないから、段ボールですよ。見てくださいよ、段ボールに刀を収めてるんですよ」
「山崎に買ってもらえばいいだろ」
「自分の刀は自分で買わないと。あ、そうだ。副長も一緒にどうですか?海」
「行かねーよ。んなガキくせーとこ」
めんどくさそうに紫煙を吐いた副長。
どう頼んでも、首を縦に振ってもらえそうにない。
こうなったら強行突破だ。
「行ってきます。夕方までには戻りますから」
「オイ!コラ待て美緒!許可してねーぞ!」
怒鳴る副長を無視して自室へ戻り、海に行く用意をしていく。
最後に海行ったのいつだったかな?
水着……ダイエットするんだった……
ワンピースを身に纏い、麦わら帽子を被る。
日焼け止めも塗った。水筒も持った。適当に荷物を持って屯所の門をくぐる。
「いやぁ夏っぽい!」
強い日差しに手を翳す。ギラギラジリジリと肌や地面を焦がす太陽。
「え!?美緒ちゃん、そんな格好で偵察行く気!?」
「いや私は海に――」
「はいはい。んな寝ぼけた事言ってないで着替えて仕事行くよ」
私の意思に反して、退に引きずられて屯所に戻っていく体。
あー……懸賞金……刀……海……
「神楽ちゃん、今日行けなくてごめんね。懸賞金もらえた?」
夜、謝罪と共に万事屋へと電話をする。
《そうヨ。聞いてヨ。懸賞金嘘だったアル》
「マジか。とんだ無駄足じゃん」
《腹いせに、あのおっさんが焼いた焼きそば食べたアルけど、やっぱり嘘つくようなやつが焼く焼きそばは、モサモサしてたアル。焼きそばがあのおっさんの人生現してたネ》
そこまで言われるおっさんの焼きそばって、一体なんなんだろう。
おっさんを見た事もなければ、その人が作った焼きそばを食べた事もないけれど、神楽ちゃんからの言われように少し同情した。
「今度の休みに一緒に海行こうよ。今日のお詫びも兼ねて」
《いいけど、私泳げないから、きっと美緒もつまらないヨ》
「あら。泳げないなら教えてあげるよ」
《じゃなくて、私夜兎だから、海は日差しが強いから泳げないアル》
神楽ちゃんから放たれた衝撃発言に、時間が止まった気がした。
「え、神楽ちゃん、夜兎なの?」
《うん。知らなかったアルか?てっきり知ってると思ってたヨ》
「知らなかったー。でもそうだよね。神楽ちゃん色白いしね」
どこかで聞いた事がある。
最強最悪の傭兵部族『夜兎』。
姿形は人間と大差ないが、驚異的な戦闘力を誇り、数多の星を潰してきた、ただ戦だけを嗜好する戦闘民族。日の光を嫌い、常に日傘を離さないので透けるような肌が特徴的だと。
特徴が合致しているのに、何も気付かなかった。
知ったからと言って、神楽ちゃんの事を嫌いになったり、関係を変えたりする気は毛頭ない。
「じゃあ、神楽ちゃんも一緒に遊べるような所行こうか。どこか行きたい所ある?」
《うーん……そうアルなぁ……あ!私が美緒に遊びを教えるでもいいアルヨ。私こう見えて色々知ってるアル》
「マジか。じゃあそうしよう。楽しみだなー」
《覚悟するヨロシ。私の遊びはハードアルヨ。最後はラブホで締めるのが鉄則ヨ》
「……ん?今なんて?」
今、いたいけな女の子の口からとんでもないワードが出てきた気がするのだが、気のせいだろうか?
《楽しみにしてるアルー》と、言い残して電話が切られた。
「最後はラブホって……何?どんな遊び?」
朝、新聞を見ていると、1つの記事が目を引いた。
「これ、神楽ちゃんが行ったところだ」
あまり大きくない記事だが、見出しには『大人気!怪獣と遊ぶ海水浴場!?』と写真付きで書いてある。
恐らく、神楽ちゃんがご馳走になった焼きそばは、この写真に写っている男性が作ったものだろう。
その時は笑いもしなかったが、今になって、神楽ちゃんの言葉を思い出して笑ってしまいそうになる。
「退、この人の作る焼きそば、モサモサしてるんだって」
「そうなんだ。っていうか、この記事見て言うのそれなの?」
「いや、神楽ちゃんのモサモサ……焼きそばが、ふふ、モサモサで人生みたいだったが面白くて。あははは」
我慢しきれず腹を抱えて笑っていると「朝から楽しそうだね」と言われた。
いい加減刀を買わないと、ラケットが折れそうだ。
フレームにところどころヒビも入っていて、色も禿げてきているラケットを見ながら軽く息をついた。
ラケットも新しいのにしたいな。
カッコイイデザインのラケットが出たのでそれも気になるところ。
スポーツ店でもらった、チラシに書いてある新デザインのラケットの金額と財布の中身を見比べる。
お金が足りない。
名前が書いてあるにも関わらず沖田隊長に飲まれてしまう為、自分だけの冷蔵庫が欲しいと思って、部屋に置いておけるミニ冷蔵庫をつい最近購入してしまったのだ。
フォルムも少し丸みを帯びていて、カラーも水色と可愛いのでとても気に入っている。
だが、買うんじゃなかったと後悔が押し寄せてくる。
でも今はラケットではなく刀優先だ。
鞘を段ボールで簡易に作っている為、たまに刃が段ボールに当たって切れてボロボロになっていく。
刀は仕事で使うものだから、安いものではなくて、なるべくいい物を買うと自分の中で決めているのだが、なかなか金銭的に厳しい。
「さ、退……あのさ……」
昼間、一緒に見廻りをしている時、思い切って声をかけたはいいが、やはり言いにくくて、なんでもないと濁した。
「少しなら貸してもいいよ」
何を言いたかったのか、全てお見通しのように欲しかった言葉をくれた。
「俺も貸せる限度あるけど」
「え?本当にいいの?お金貸してくれるの?」
「いいよ。刀ないといざという時困るだろ」
「退が優しすぎて私にはもったいないよ、どうしよう」
「どうもしなくていいから。戻ったら、ちゃんと計算しようか」
今使っている刀は、手に馴染み斬れ味も良かったので、他の刀を選ぶ頭はなかった。
なんとか退のおかげもあって、刀を新調出来て一安心。
これから、無闇やたらに刀を貸さないようにしようと心に誓った。
「ありがとう、退」
「気にしなくていいよ。お金さえ返してもらえればいいから」
「ちゃんと返すよ。お金の事はちゃんとしないとね」
金の切れ目が縁の切れ目という諺もあるように、いくら退が優しいからと言って甘えてばかりもいられない。借りたら返すは基本のうち。
そこまで頻繁にお金を借りているわけではないし、退を金目当てで見ているわけでもないけれど。
「あ、そうだ。先々月だったかな?貸した1000円返ってきてないけど」
「え!?ちゃんと返したよ!」
「チッ、騙されなかったか」
焦って、必死に記憶を遡っていたが、その言葉にドっと力が抜けた。
こういう系の冗談は心臓に悪い。
「海行きたいんで休みください!」
「はァ!?ふざけるのは顔だけにしろよ。何が海だ。それより祭りで逃した高杉の――」
「海行きたいんで休みください!」
「だから高杉の件洗えって」
「海行きたいんで休みください!」
土下座が効いたのか、とりあえず理由だけでも聞いてもらえる事に成功した。
事の発端は、神楽ちゃんからの電話。
《美緒、一緒に海行って懸賞金もらうアルヨ!》
「懸賞金?何それ行きたい!お金欲しい!」
神楽ちゃんからの説明によると、海に出た謎の宇宙生物に懸賞金がかけられたとの事。
神楽ちゃんも私もお金には困っている。この話に飛びつかない理由がない。
いつ行くのか聞けば、なんと今日だと言うのだ。急にも程がある。
「でも、土方さんがなんて言うかなぁ?今日私仕事なんだよねー」
《美緒は、懸賞金と仕事どっちが大事アルか!?》
「あー、めんどくせぇ彼女みたいな事言い出した。一応掛け合うだけは掛け合ってみるけど、期待はしないでね」
《待ってるアルヨ》
という事で、副長に掛け合っているのだ。
その懸賞金で刀を買いたいと説明したら、ふざけるなと一蹴された。
「だって刀買うのに経費出ないじゃないですか。今月ピンチだし、手っ取り早くエイリアン退治して、その懸賞金で買おうかなって思ったんです。今鞘ないから、段ボールですよ。見てくださいよ、段ボールに刀を収めてるんですよ」
「山崎に買ってもらえばいいだろ」
「自分の刀は自分で買わないと。あ、そうだ。副長も一緒にどうですか?海」
「行かねーよ。んなガキくせーとこ」
めんどくさそうに紫煙を吐いた副長。
どう頼んでも、首を縦に振ってもらえそうにない。
こうなったら強行突破だ。
「行ってきます。夕方までには戻りますから」
「オイ!コラ待て美緒!許可してねーぞ!」
怒鳴る副長を無視して自室へ戻り、海に行く用意をしていく。
最後に海行ったのいつだったかな?
水着……ダイエットするんだった……
ワンピースを身に纏い、麦わら帽子を被る。
日焼け止めも塗った。水筒も持った。適当に荷物を持って屯所の門をくぐる。
「いやぁ夏っぽい!」
強い日差しに手を翳す。ギラギラジリジリと肌や地面を焦がす太陽。
「え!?美緒ちゃん、そんな格好で偵察行く気!?」
「いや私は海に――」
「はいはい。んな寝ぼけた事言ってないで着替えて仕事行くよ」
私の意思に反して、退に引きずられて屯所に戻っていく体。
あー……懸賞金……刀……海……
「神楽ちゃん、今日行けなくてごめんね。懸賞金もらえた?」
夜、謝罪と共に万事屋へと電話をする。
《そうヨ。聞いてヨ。懸賞金嘘だったアル》
「マジか。とんだ無駄足じゃん」
《腹いせに、あのおっさんが焼いた焼きそば食べたアルけど、やっぱり嘘つくようなやつが焼く焼きそばは、モサモサしてたアル。焼きそばがあのおっさんの人生現してたネ》
そこまで言われるおっさんの焼きそばって、一体なんなんだろう。
おっさんを見た事もなければ、その人が作った焼きそばを食べた事もないけれど、神楽ちゃんからの言われように少し同情した。
「今度の休みに一緒に海行こうよ。今日のお詫びも兼ねて」
《いいけど、私泳げないから、きっと美緒もつまらないヨ》
「あら。泳げないなら教えてあげるよ」
《じゃなくて、私夜兎だから、海は日差しが強いから泳げないアル》
神楽ちゃんから放たれた衝撃発言に、時間が止まった気がした。
「え、神楽ちゃん、夜兎なの?」
《うん。知らなかったアルか?てっきり知ってると思ってたヨ》
「知らなかったー。でもそうだよね。神楽ちゃん色白いしね」
どこかで聞いた事がある。
最強最悪の傭兵部族『夜兎』。
姿形は人間と大差ないが、驚異的な戦闘力を誇り、数多の星を潰してきた、ただ戦だけを嗜好する戦闘民族。日の光を嫌い、常に日傘を離さないので透けるような肌が特徴的だと。
特徴が合致しているのに、何も気付かなかった。
知ったからと言って、神楽ちゃんの事を嫌いになったり、関係を変えたりする気は毛頭ない。
「じゃあ、神楽ちゃんも一緒に遊べるような所行こうか。どこか行きたい所ある?」
《うーん……そうアルなぁ……あ!私が美緒に遊びを教えるでもいいアルヨ。私こう見えて色々知ってるアル》
「マジか。じゃあそうしよう。楽しみだなー」
《覚悟するヨロシ。私の遊びはハードアルヨ。最後はラブホで締めるのが鉄則ヨ》
「……ん?今なんて?」
今、いたいけな女の子の口からとんでもないワードが出てきた気がするのだが、気のせいだろうか?
《楽しみにしてるアルー》と、言い残して電話が切られた。
「最後はラブホって……何?どんな遊び?」
朝、新聞を見ていると、1つの記事が目を引いた。
「これ、神楽ちゃんが行ったところだ」
あまり大きくない記事だが、見出しには『大人気!怪獣と遊ぶ海水浴場!?』と写真付きで書いてある。
恐らく、神楽ちゃんがご馳走になった焼きそばは、この写真に写っている男性が作ったものだろう。
その時は笑いもしなかったが、今になって、神楽ちゃんの言葉を思い出して笑ってしまいそうになる。
「退、この人の作る焼きそば、モサモサしてるんだって」
「そうなんだ。っていうか、この記事見て言うのそれなの?」
「いや、神楽ちゃんのモサモサ……焼きそばが、ふふ、モサモサで人生みたいだったが面白くて。あははは」
我慢しきれず腹を抱えて笑っていると「朝から楽しそうだね」と言われた。
いい加減刀を買わないと、ラケットが折れそうだ。
フレームにところどころヒビも入っていて、色も禿げてきているラケットを見ながら軽く息をついた。
ラケットも新しいのにしたいな。
カッコイイデザインのラケットが出たのでそれも気になるところ。
スポーツ店でもらった、チラシに書いてある新デザインのラケットの金額と財布の中身を見比べる。
お金が足りない。
名前が書いてあるにも関わらず沖田隊長に飲まれてしまう為、自分だけの冷蔵庫が欲しいと思って、部屋に置いておけるミニ冷蔵庫をつい最近購入してしまったのだ。
フォルムも少し丸みを帯びていて、カラーも水色と可愛いのでとても気に入っている。
だが、買うんじゃなかったと後悔が押し寄せてくる。
でも今はラケットではなく刀優先だ。
鞘を段ボールで簡易に作っている為、たまに刃が段ボールに当たって切れてボロボロになっていく。
刀は仕事で使うものだから、安いものではなくて、なるべくいい物を買うと自分の中で決めているのだが、なかなか金銭的に厳しい。
「さ、退……あのさ……」
昼間、一緒に見廻りをしている時、思い切って声をかけたはいいが、やはり言いにくくて、なんでもないと濁した。
「少しなら貸してもいいよ」
何を言いたかったのか、全てお見通しのように欲しかった言葉をくれた。
「俺も貸せる限度あるけど」
「え?本当にいいの?お金貸してくれるの?」
「いいよ。刀ないといざという時困るだろ」
「退が優しすぎて私にはもったいないよ、どうしよう」
「どうもしなくていいから。戻ったら、ちゃんと計算しようか」
今使っている刀は、手に馴染み斬れ味も良かったので、他の刀を選ぶ頭はなかった。
なんとか退のおかげもあって、刀を新調出来て一安心。
これから、無闇やたらに刀を貸さないようにしようと心に誓った。
「ありがとう、退」
「気にしなくていいよ。お金さえ返してもらえればいいから」
「ちゃんと返すよ。お金の事はちゃんとしないとね」
金の切れ目が縁の切れ目という諺もあるように、いくら退が優しいからと言って甘えてばかりもいられない。借りたら返すは基本のうち。
そこまで頻繁にお金を借りているわけではないし、退を金目当てで見ているわけでもないけれど。
「あ、そうだ。先々月だったかな?貸した1000円返ってきてないけど」
「え!?ちゃんと返したよ!」
「チッ、騙されなかったか」
焦って、必死に記憶を遡っていたが、その言葉にドっと力が抜けた。
こういう系の冗談は心臓に悪い。