お通初ライブ
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「副長終わりました。夕方楽しみです」
終わったのであろう書類を副長に渡して、明るい声で副長と話している美緒ちゃん。
「そーか。これ頼むわ」
「……あ、はい」
その声音も分厚い書類を持たされた瞬間、一気に消沈した。
声だけでなんとなくだが、表情が浮かんでくる。
すると、副長がおもむろに立ち上がり、美緒ちゃんを自分の方に抱き寄せた。
だ、抱き寄せたァ!?なんで!?ってか、ちょ、待って待って。夕方楽しみ=抱き寄せる=デート=浮気!?
勝手に方程式を組んで、顔から血の気が引いていく。
ていうか、美緒ちゃんもなんで拒否しないんだ!?マジでどういう事!?
「マジですか!?」
急に美緒ちゃんの嬉しそうな声が響いた。
え、何が?何がマジ?
「やったー!さすが副長!いつにしますか?」
「さーな。それはお前の頑張り次第だ。せいぜい勝手に頑張れ。あー、この事は内密にしとけよ」
「勿論であります。ケロ〇軍曹であります」
意味不明な言葉をつけて、敬礼をした後書類を持って部屋を出て行った。
気になる。なんであんなに喜んでたんだ?内密にするような話って……やっぱり浮気か。
気になるあまり、屋根裏からおりて、美緒ちゃんの部屋に向かった。
深呼吸を繰り返す事でどうにか緊張を払拭し、ノックをすると「はぁい」と明るい声が聞こえてきた。
「俺だけど入ってもいい?」
返事の代わりに襖が開いて、満面の笑顔で迎えられた。なんか複雑だ。
「退だったらノックしないで入ってきていいのに」
書類で溢れかえる机に向かう彼女の隣に腰をおろす。嫌な緊張感に手が汗ばんできた。
筆をはしらせる美緒ちゃんの横顔を見て、第一声を切り出す。
「あのさ、なにかいい事……あったの?」
ピタリと筆が止まったかと思えば、こっちを見てニタリと笑った。
「今日の夕方、お通ちゃんの初ライブなんだよ!初ライブだよ、行かなきゃ損だよネクロマンサー」
……ネクロマンサー?
よく分からない語尾につっこもうと思ったけれど、何をどうつっこんでいいのか分からない。
語尾よりも今は副長との関係だ。
意を決して、その事を聞いた。
「ごめん、退さん。何を言っているのかな?」
「だから、副長と抱き合ってただろ?それから内密がどうとかって」
俺はさっき見た事を確かめるべく、美緒ちゃんに問い詰めている。
頭に疑問符を浮かべている美緒ちゃんの言葉を、イライラしながら待つ。
「抱き合ってた?私と副長が?なにそれ?そんなのするわけないのに、浮気疑われるのは気分悪いよ」
「俺だって疑いたくないけど、本当についさっき見たんだ。副長と2人で何かする予定なのは分かってる。何するつもりなの?事によっちゃ許さない」
「なんにもしないよ。退は本気で私が副長と浮気してるとでも思ってるの?」
「だから、それを確かめる為に聞いてんだよ」
「誓ってしてない」
壁にかけてある時計を目にして、再び書類に目を通し始める。
うやむやにされてるような、なんだこの疎外感……
更にイラついて、問答無用で美緒ちゃんを後ろから抱きしめた。
「あ、ちょっと」
文字が歪んだって知らない。書類出せなくて副長に怒られても知らない。
「俺今すげームカついてんの分かる?」
更に力を入れて抱きしめた。
抱きしめている間、美緒ちゃんは何も言わなかった。ただ俺の腕を優しく落ち着かせるように、規則正しく叩いているだけ。
心なしか、美緒ちゃんの匂いも相俟って、俺の気持ちも落ち着いてきているみたいに感じた。
美緒ちゃんのその華奢な肩に額を乗せて、軽く息を吐く。
「……ごめん、妬いた。副長が相手だと自信なくて……」
俺今ものっそいかっこ悪いや。彼女に情けない姿晒して何やってんだろ……
腕を叩いていた手がとまり、今度は俺の頭を撫でてくる優しく暖かい手。
「退、私の中では退が1番だよ」
顔をあげれば、絡み合った視線。
その顎ラインに手を添えて、優しく無理ない程度に顔をこちらに向かせれば重なり合う唇。
少し離してからもう一度キスをする。
ゆっくりと名残惜しく離れると、目を開いた美緒ちゃんの頬が朱に染まる。
きょときょとと動いていた瞳が恥ずかしそうに伏せられ、俯いてしまった。
その反応に愛しさが込み上げ、頬と同じように朱に染まっている耳の形を、なぞるように唇ではんでいく。時折、軽く歯を立てれば、美緒ちゃんの口から甘い息が短く吐き出され、力が抜けたのか俺にもたれかかってきた。
それを気にせず、髪を避けながら、耳から首筋へと流れるように唇を滑らせていく。舌を這わせ、痕をつけないよう加減してそこに吸い付く。
「あ……っ、や……」
「大丈夫。痕はつけてない」
「……さ、さがる……」
俺の腕を掴んでいる美緒ちゃんの両手に力が入っていく。でも全然痛くない。
うなじに当てていた唇を耳元に寄せて「好きだよ」と紡げば、両手で顔を覆って何度も頷いている。
初めてというわけでもないのに、いちいちウブな反応を見せられては、どうしようもない程の愛しさと独占欲が心を支配して、いたたまれなくなってしまう。
この子を誰にも取られたくない。
副長にも誰にも渡したくない。
顔を覆っているその左手を手の甲から握ってこちらに寄せて、手首にキスをする。
視線だけを美緒ちゃんに流せば、俺を見て口をパクパクさせた後、また恥ずかしそうに伏せられる顔。
「美緒ちゃん?」
名前を呼べば、ゆっくりとこちらを見る目や表情に妙な色気や熱情が含まれているような気がして、思わず息を飲んだ。
「私も好き」
あー、これ以上は我慢出来そうにない。
今キスでもしようものなら、途中で止められる自信がない。ここは屯所だ。
付き合っているのをみんなに知られているとは言っても、そういう事はしたくない。格好の餌食だ。
慌てて理性を総動員させて、その頭に手を乗せるだけにとどめる。
「じゃあ俺はこれで。邪魔してごめんね。書類整理頑張って」
部屋から出ようと腰をあげた瞬間、腕を軽く引っ張られた。
「退も手伝って」
なん、だと……!?
これ以上一緒にいるのは危険だと分かっているのに、俺の体は脳を裏切って、また彼女の隣へと腰を落ち着かせてしまった。いや、煩悩と欲望に忠実に従ったと言うべきか。
今にも押し倒そうとする手を、必死に抑え込むように紙へと伸ばした。
↓美緒視点↓
「まだ仕事残ってんだろォォ!」
「帰ったらやります!時間ないんで行ってきます!」
「おいコラ!ちょっと待てェェ!」
副長の怒声を背中に浴びながら、ダッシュで屯所を飛び出した。
退のせいで時間が……副長とはなんもないのに!
いつもの制服ではなく、親衛隊の隊服を身に纏い、時間がないので駕籠屋を拾った。
会場につき、受付をすませてからホールの少し重い扉を開けて中に入れば、溢れんばかりの人、人、人。
女より男の方が圧倒的に多く、思わず尻込みしてしまう。
「あ、美緒ちゃん!」
同じ隊服を来た眼鏡の少年、寺門通親衛隊の隊長である志村新八くんが、こっちに向かって片手を挙げている。
既に隊員も揃っているようで、自分の場所があるのかと思いながら階段をおりる。
「隊長、遅れてごめんなさい」
「大丈夫ですよ。まだ始まってないから」
隊長が取っておいてくれたのか、親衛隊の席の1番前にあいている場所があった。
もしかして、と思いながら隊長に視線を向けると、さも当たり前のようにその場所に誘導してくれた。
なんていい人なんだ……!
「ありがとうございます!」
「何言ってんの。僕と美緒ちゃんの仲じゃないですか」
この人を隊長と敬って間違いなさそうだ。
隊長が志村さんで良かったぁ。
辺りを見回せば、やはり初ライブという事もあり、気合いが入っている人が多く見られる。
私もその中の1人。
ライブ終わったら、隊長誘ってグッズ買いに行こうかな。
「美緒さん、お疲れ様ッス」
隣にいた軍曹が挨拶をしてくれたので、挨拶を返すといきなり視線が逸らされた。そして、ほんのりと頬を染めて、もごもごと口の中で何か話している。
「きょ、今日も、美緒さんは、か、か、かわ……かわい……っすね……」
「今かわいいって言いましたか?」
「はいィ!すんません!かわいいです!」
ただ聞き返しただけなのに、先程とは打って変わって、背筋を伸ばして言い直してきた。
「軍曹、よく聞いて。私もかわいいと言われるのは嬉しいです。ありがとうございます。だけど、かわいいという言葉は、お通ちゃんの為に作られたと言っても過言ではないと思いませんか?」
「思います!お通ちゃんは世界一かわいいです!」
「分かってるじゃないですか、軍曹。かわいいと言うのは私にじゃないんです。お通ちゃんに言う言葉です」
それを合図かのように、ステージに本日の主役がライトアップされた。
その瞬間、会場の熱気がヒートアップ。
終わったのであろう書類を副長に渡して、明るい声で副長と話している美緒ちゃん。
「そーか。これ頼むわ」
「……あ、はい」
その声音も分厚い書類を持たされた瞬間、一気に消沈した。
声だけでなんとなくだが、表情が浮かんでくる。
すると、副長がおもむろに立ち上がり、美緒ちゃんを自分の方に抱き寄せた。
だ、抱き寄せたァ!?なんで!?ってか、ちょ、待って待って。夕方楽しみ=抱き寄せる=デート=浮気!?
勝手に方程式を組んで、顔から血の気が引いていく。
ていうか、美緒ちゃんもなんで拒否しないんだ!?マジでどういう事!?
「マジですか!?」
急に美緒ちゃんの嬉しそうな声が響いた。
え、何が?何がマジ?
「やったー!さすが副長!いつにしますか?」
「さーな。それはお前の頑張り次第だ。せいぜい勝手に頑張れ。あー、この事は内密にしとけよ」
「勿論であります。ケロ〇軍曹であります」
意味不明な言葉をつけて、敬礼をした後書類を持って部屋を出て行った。
気になる。なんであんなに喜んでたんだ?内密にするような話って……やっぱり浮気か。
気になるあまり、屋根裏からおりて、美緒ちゃんの部屋に向かった。
深呼吸を繰り返す事でどうにか緊張を払拭し、ノックをすると「はぁい」と明るい声が聞こえてきた。
「俺だけど入ってもいい?」
返事の代わりに襖が開いて、満面の笑顔で迎えられた。なんか複雑だ。
「退だったらノックしないで入ってきていいのに」
書類で溢れかえる机に向かう彼女の隣に腰をおろす。嫌な緊張感に手が汗ばんできた。
筆をはしらせる美緒ちゃんの横顔を見て、第一声を切り出す。
「あのさ、なにかいい事……あったの?」
ピタリと筆が止まったかと思えば、こっちを見てニタリと笑った。
「今日の夕方、お通ちゃんの初ライブなんだよ!初ライブだよ、行かなきゃ損だよネクロマンサー」
……ネクロマンサー?
よく分からない語尾につっこもうと思ったけれど、何をどうつっこんでいいのか分からない。
語尾よりも今は副長との関係だ。
意を決して、その事を聞いた。
「ごめん、退さん。何を言っているのかな?」
「だから、副長と抱き合ってただろ?それから内密がどうとかって」
俺はさっき見た事を確かめるべく、美緒ちゃんに問い詰めている。
頭に疑問符を浮かべている美緒ちゃんの言葉を、イライラしながら待つ。
「抱き合ってた?私と副長が?なにそれ?そんなのするわけないのに、浮気疑われるのは気分悪いよ」
「俺だって疑いたくないけど、本当についさっき見たんだ。副長と2人で何かする予定なのは分かってる。何するつもりなの?事によっちゃ許さない」
「なんにもしないよ。退は本気で私が副長と浮気してるとでも思ってるの?」
「だから、それを確かめる為に聞いてんだよ」
「誓ってしてない」
壁にかけてある時計を目にして、再び書類に目を通し始める。
うやむやにされてるような、なんだこの疎外感……
更にイラついて、問答無用で美緒ちゃんを後ろから抱きしめた。
「あ、ちょっと」
文字が歪んだって知らない。書類出せなくて副長に怒られても知らない。
「俺今すげームカついてんの分かる?」
更に力を入れて抱きしめた。
抱きしめている間、美緒ちゃんは何も言わなかった。ただ俺の腕を優しく落ち着かせるように、規則正しく叩いているだけ。
心なしか、美緒ちゃんの匂いも相俟って、俺の気持ちも落ち着いてきているみたいに感じた。
美緒ちゃんのその華奢な肩に額を乗せて、軽く息を吐く。
「……ごめん、妬いた。副長が相手だと自信なくて……」
俺今ものっそいかっこ悪いや。彼女に情けない姿晒して何やってんだろ……
腕を叩いていた手がとまり、今度は俺の頭を撫でてくる優しく暖かい手。
「退、私の中では退が1番だよ」
顔をあげれば、絡み合った視線。
その顎ラインに手を添えて、優しく無理ない程度に顔をこちらに向かせれば重なり合う唇。
少し離してからもう一度キスをする。
ゆっくりと名残惜しく離れると、目を開いた美緒ちゃんの頬が朱に染まる。
きょときょとと動いていた瞳が恥ずかしそうに伏せられ、俯いてしまった。
その反応に愛しさが込み上げ、頬と同じように朱に染まっている耳の形を、なぞるように唇ではんでいく。時折、軽く歯を立てれば、美緒ちゃんの口から甘い息が短く吐き出され、力が抜けたのか俺にもたれかかってきた。
それを気にせず、髪を避けながら、耳から首筋へと流れるように唇を滑らせていく。舌を這わせ、痕をつけないよう加減してそこに吸い付く。
「あ……っ、や……」
「大丈夫。痕はつけてない」
「……さ、さがる……」
俺の腕を掴んでいる美緒ちゃんの両手に力が入っていく。でも全然痛くない。
うなじに当てていた唇を耳元に寄せて「好きだよ」と紡げば、両手で顔を覆って何度も頷いている。
初めてというわけでもないのに、いちいちウブな反応を見せられては、どうしようもない程の愛しさと独占欲が心を支配して、いたたまれなくなってしまう。
この子を誰にも取られたくない。
副長にも誰にも渡したくない。
顔を覆っているその左手を手の甲から握ってこちらに寄せて、手首にキスをする。
視線だけを美緒ちゃんに流せば、俺を見て口をパクパクさせた後、また恥ずかしそうに伏せられる顔。
「美緒ちゃん?」
名前を呼べば、ゆっくりとこちらを見る目や表情に妙な色気や熱情が含まれているような気がして、思わず息を飲んだ。
「私も好き」
あー、これ以上は我慢出来そうにない。
今キスでもしようものなら、途中で止められる自信がない。ここは屯所だ。
付き合っているのをみんなに知られているとは言っても、そういう事はしたくない。格好の餌食だ。
慌てて理性を総動員させて、その頭に手を乗せるだけにとどめる。
「じゃあ俺はこれで。邪魔してごめんね。書類整理頑張って」
部屋から出ようと腰をあげた瞬間、腕を軽く引っ張られた。
「退も手伝って」
なん、だと……!?
これ以上一緒にいるのは危険だと分かっているのに、俺の体は脳を裏切って、また彼女の隣へと腰を落ち着かせてしまった。いや、煩悩と欲望に忠実に従ったと言うべきか。
今にも押し倒そうとする手を、必死に抑え込むように紙へと伸ばした。
↓美緒視点↓
「まだ仕事残ってんだろォォ!」
「帰ったらやります!時間ないんで行ってきます!」
「おいコラ!ちょっと待てェェ!」
副長の怒声を背中に浴びながら、ダッシュで屯所を飛び出した。
退のせいで時間が……副長とはなんもないのに!
いつもの制服ではなく、親衛隊の隊服を身に纏い、時間がないので駕籠屋を拾った。
会場につき、受付をすませてからホールの少し重い扉を開けて中に入れば、溢れんばかりの人、人、人。
女より男の方が圧倒的に多く、思わず尻込みしてしまう。
「あ、美緒ちゃん!」
同じ隊服を来た眼鏡の少年、寺門通親衛隊の隊長である志村新八くんが、こっちに向かって片手を挙げている。
既に隊員も揃っているようで、自分の場所があるのかと思いながら階段をおりる。
「隊長、遅れてごめんなさい」
「大丈夫ですよ。まだ始まってないから」
隊長が取っておいてくれたのか、親衛隊の席の1番前にあいている場所があった。
もしかして、と思いながら隊長に視線を向けると、さも当たり前のようにその場所に誘導してくれた。
なんていい人なんだ……!
「ありがとうございます!」
「何言ってんの。僕と美緒ちゃんの仲じゃないですか」
この人を隊長と敬って間違いなさそうだ。
隊長が志村さんで良かったぁ。
辺りを見回せば、やはり初ライブという事もあり、気合いが入っている人が多く見られる。
私もその中の1人。
ライブ終わったら、隊長誘ってグッズ買いに行こうかな。
「美緒さん、お疲れ様ッス」
隣にいた軍曹が挨拶をしてくれたので、挨拶を返すといきなり視線が逸らされた。そして、ほんのりと頬を染めて、もごもごと口の中で何か話している。
「きょ、今日も、美緒さんは、か、か、かわ……かわい……っすね……」
「今かわいいって言いましたか?」
「はいィ!すんません!かわいいです!」
ただ聞き返しただけなのに、先程とは打って変わって、背筋を伸ばして言い直してきた。
「軍曹、よく聞いて。私もかわいいと言われるのは嬉しいです。ありがとうございます。だけど、かわいいという言葉は、お通ちゃんの為に作られたと言っても過言ではないと思いませんか?」
「思います!お通ちゃんは世界一かわいいです!」
「分かってるじゃないですか、軍曹。かわいいと言うのは私にじゃないんです。お通ちゃんに言う言葉です」
それを合図かのように、ステージに本日の主役がライトアップされた。
その瞬間、会場の熱気がヒートアップ。