君にひとつの隠し事
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「今日天気で良かった」
ミントンは室内でやるから、天気は関係ないんだけど、雨の中行くよりはマシだ。
「山崎、どっか出掛けんのか?」
玄関で靴を履いていると、背後からかけられた声。この声は、確認するまでもなく副長だ。
でも今日は非番だし、正直に言っても副長も許してくれるだろう。
いや、副長は俺の予定に興味はないだろうから、何か頼まれる確率の方が高い。そうなら面倒だなと思いつつ、「ミントンしに行くんです」と、振り返って正直に告げる。
「そうか。じゃあ帰りにマヨネーズ1箱買ってきてくれ」
やっぱりか。めんどくせェな……
「いや、でも、帰り何時になるか……」
「明日から休みいらねーのかァ。そうかそうか」
咥えタバコで、腕を組み踵を返す副長。
そんな事を言われたら、買って来るしかない。
「分かりました。買ってきます……」
肩を落として、玄関から出る背中に、「頼んだぞー」と呑気な声がかけられた。
今日は待ち合わせをしているから、遅れて行くわけにはいかない。
携帯で時間を確認すれば、まだ待ち合わせの時間には余裕がある。なのに、自然と速くなる足。地面を蹴る足が軽い。気持ちも早く行きたくて、そわそわしてしまう。
待ち合わせの場所である、公園の近くまで辿り着くと、足を止めた。
公園の出入口の傍らに立っている彼女を見て、なんとなく帽子を被り直して、呼吸を整える。軽く咳払いをしてから、そこに歩み寄った。
「紗羽ちゃん、待たせてごめん」
俺の方に向き直って、柔らかい笑みを浮かべる彼女に、心臓が跳ねた。
「私も今来た所。それより久しぶりだね」
「ごめん、なかなか行けなくて……」
「仕方ないよ。今日来てくれただけでも凄く嬉しい」
今日は退くんに勝つつもり!と笑う紗羽ちゃんに俺は恋をしている。
まだ気持ちを伝えていない。いや、伝えるつもりはない。
俺が真選組にいる以上、紗羽ちゃんを傷付けてしまう可能性は十二分にある。だから、伝えない方がいいんだ。
「退くーん、行くよー?」
ラケットを構えて、紗羽ちゃんが打ったシャトルを打ち返す。
大きな広い体育館には、他にもたくさん人がいるのに、コートの中でネットを挟んで打ち合っていると、なんだか2人だけの世界にいるような気がして胸が弾む。
「ちょっとは手加減してよー!」
ネット越しに文句を言う紗羽ちゃんに笑ってしまう。
「手加減したらおもしろくないでしょ」
「次はスマッシュ決めるからね」
挑発的な笑みを浮かべる君も好き。
「はいアウトー!」
「明らかにインだっただろ!ルール覚え直せ!」
ライン上に落ちた時はインなのに、すぐアウトにしようとするから、ちゃんと見てないといけない。
それでも許してしまえるのは、紗羽ちゃんだからだろう。
勝利を収めたのは俺。
「紗羽ちゃん、俺そろそろ帰るよ」
「じゃあ私も帰ろ。退くんいないとつまんないもん」
つまんない、か……きっと、からかう相手がいないからだろう。
他のミントン仲間に挨拶をして、紗羽ちゃんと共に体育館を後にした。
空はすっかり真っ暗で、月がぼんやりと町を照らしている。冬は、暗くなるのが早い。
長居したつもりはないのに、結構遊んでいたようだ。
「ジュース飲もうか」
自販機を見つけて、財布を取り出したけれど、それより先に紗羽ちゃんが500円を俺に見せた。
「私に奢らせて。今日誕生日でしょ?」
「あ……覚えててくれてたんだ」
そうだ、今日誕生日だった。すっかり忘れてた。
「当たり前じゃない。お誕生日おめでとう」
笑顔と一緒に差し出されたのは、ホットコーヒーと無病息災と交通安全のお守り。
「退くん、いつも危険な仕事してるから。私にはこれくらいしか出来ないけど……」
「ありがとう」
今すぐにでも彼女を抱きしめたかった。
だけど出来ない。しちゃダメなんだ。
気持ちを伝える気もないのに、そんな事は出来ない。
紗羽ちゃんを家まで送ってから、マヨネーズ1箱を買って屯所に帰った。
箱を台所に置いてから、縁側に座り、濃紺色の空を見上げる。
自然と思い浮かぶ彼女の笑顔が、この先も曇らないように、陰ながら彼女を護っていこう。
これからも紗羽ちゃんとミントンで遊ぶ、平和で幸せな日々を送る為に――
ミントンは室内でやるから、天気は関係ないんだけど、雨の中行くよりはマシだ。
「山崎、どっか出掛けんのか?」
玄関で靴を履いていると、背後からかけられた声。この声は、確認するまでもなく副長だ。
でも今日は非番だし、正直に言っても副長も許してくれるだろう。
いや、副長は俺の予定に興味はないだろうから、何か頼まれる確率の方が高い。そうなら面倒だなと思いつつ、「ミントンしに行くんです」と、振り返って正直に告げる。
「そうか。じゃあ帰りにマヨネーズ1箱買ってきてくれ」
やっぱりか。めんどくせェな……
「いや、でも、帰り何時になるか……」
「明日から休みいらねーのかァ。そうかそうか」
咥えタバコで、腕を組み踵を返す副長。
そんな事を言われたら、買って来るしかない。
「分かりました。買ってきます……」
肩を落として、玄関から出る背中に、「頼んだぞー」と呑気な声がかけられた。
今日は待ち合わせをしているから、遅れて行くわけにはいかない。
携帯で時間を確認すれば、まだ待ち合わせの時間には余裕がある。なのに、自然と速くなる足。地面を蹴る足が軽い。気持ちも早く行きたくて、そわそわしてしまう。
待ち合わせの場所である、公園の近くまで辿り着くと、足を止めた。
公園の出入口の傍らに立っている彼女を見て、なんとなく帽子を被り直して、呼吸を整える。軽く咳払いをしてから、そこに歩み寄った。
「紗羽ちゃん、待たせてごめん」
俺の方に向き直って、柔らかい笑みを浮かべる彼女に、心臓が跳ねた。
「私も今来た所。それより久しぶりだね」
「ごめん、なかなか行けなくて……」
「仕方ないよ。今日来てくれただけでも凄く嬉しい」
今日は退くんに勝つつもり!と笑う紗羽ちゃんに俺は恋をしている。
まだ気持ちを伝えていない。いや、伝えるつもりはない。
俺が真選組にいる以上、紗羽ちゃんを傷付けてしまう可能性は十二分にある。だから、伝えない方がいいんだ。
「退くーん、行くよー?」
ラケットを構えて、紗羽ちゃんが打ったシャトルを打ち返す。
大きな広い体育館には、他にもたくさん人がいるのに、コートの中でネットを挟んで打ち合っていると、なんだか2人だけの世界にいるような気がして胸が弾む。
「ちょっとは手加減してよー!」
ネット越しに文句を言う紗羽ちゃんに笑ってしまう。
「手加減したらおもしろくないでしょ」
「次はスマッシュ決めるからね」
挑発的な笑みを浮かべる君も好き。
「はいアウトー!」
「明らかにインだっただろ!ルール覚え直せ!」
ライン上に落ちた時はインなのに、すぐアウトにしようとするから、ちゃんと見てないといけない。
それでも許してしまえるのは、紗羽ちゃんだからだろう。
勝利を収めたのは俺。
「紗羽ちゃん、俺そろそろ帰るよ」
「じゃあ私も帰ろ。退くんいないとつまんないもん」
つまんない、か……きっと、からかう相手がいないからだろう。
他のミントン仲間に挨拶をして、紗羽ちゃんと共に体育館を後にした。
空はすっかり真っ暗で、月がぼんやりと町を照らしている。冬は、暗くなるのが早い。
長居したつもりはないのに、結構遊んでいたようだ。
「ジュース飲もうか」
自販機を見つけて、財布を取り出したけれど、それより先に紗羽ちゃんが500円を俺に見せた。
「私に奢らせて。今日誕生日でしょ?」
「あ……覚えててくれてたんだ」
そうだ、今日誕生日だった。すっかり忘れてた。
「当たり前じゃない。お誕生日おめでとう」
笑顔と一緒に差し出されたのは、ホットコーヒーと無病息災と交通安全のお守り。
「退くん、いつも危険な仕事してるから。私にはこれくらいしか出来ないけど……」
「ありがとう」
今すぐにでも彼女を抱きしめたかった。
だけど出来ない。しちゃダメなんだ。
気持ちを伝える気もないのに、そんな事は出来ない。
紗羽ちゃんを家まで送ってから、マヨネーズ1箱を買って屯所に帰った。
箱を台所に置いてから、縁側に座り、濃紺色の空を見上げる。
自然と思い浮かぶ彼女の笑顔が、この先も曇らないように、陰ながら彼女を護っていこう。
これからも紗羽ちゃんとミントンで遊ぶ、平和で幸せな日々を送る為に――
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