君がいるから
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かぶき町にある1軒の喫茶店。
レトロな外観に似合わない、オシャレな看板。
そこに惹かれて、なんとなくその店のドアを開けた。
それが、今では行きつけの店となってしまって……
「あっ、山崎さん。いらっしゃいませー」
綺麗な笑顔で迎えてくれたのは、アルバイトの矢浪さん。
俺は、ぎこちない笑顔で頭を下げる。
「カウンターでもいいですか?」
「あ、はい」
少し声が裏返ってしまった。恥ずかしい。
矢浪さんは、気にした様子もなく、カウンター席の1つに案内してくれた。そこに腰を落ち着かせる。
「ご注文が決まりましたら、お呼び――」
「いつものブレンドで!」
気持ちが逸って、矢浪さんの言葉に被せてしまった。
失敗した失敗した。矢浪さんを呼ぶという手段を自らなくしてしまった。なんてこった!山崎退一生の……っ、不覚ではなかったらしい。
口元に手を当てて、クスクスと小さく笑っている矢浪さん。
その笑顔を見れたので、さっきの失敗は成功とも言える。引かれなくて良かった。さっきの俺ナイス!
「今日はお忙しいんですか?」
「あ、いえ、全く忙しくないです。どうして、ですか」
「いえ、慌てて注文くださったので、お忙しいのかなと思いまして。お持ちしますのでお待ちください」
頭を下げる矢浪さんに、ははっと顔を引きつらせる。
奥に引っ込んでいく矢浪さんの背中を見送った後、息を吐き出した。
緊張したけど、今日はいつもより少し多く話せた。自然と緩んだ頬に気が付き、引き締める。
笑顔の矢浪さんを見ると、副長に怒られた事とか、仕事に失敗した事とか忘れさせてくれる。
少ししてから、コーヒーが運ばれて来た。
「……あれ?」
矢浪さんがテーブルに並べてくれたのは、コーヒーとクッキー。
頼んでないけど、と俺が疑問を呈するより先に、矢浪さんから、サービスです。と返ってきた。
「いつも来てくださるからって、店長からです」
「あ、ありがとうございます」
立ち上がって頭を下げたら、カウンターの中から店長も微笑んで会釈をしてくれた。
椅子に座り直して、コーヒーを飲んだ。
いつもと変わらない味に癒しを覚える。
アットホームな雰囲気とオルゴール調のBGMが、俺の気持ちを更に落ち着かせてくれる。
コーヒーを飲んだ後、クッキーをかじれば、サクリといい音がなった。
「美味しい」
ほのかにするバターの風味が口いっぱいに広がり、思わずもう1つ。
「山崎さんにそう言ってもらえて嬉しいです」
ふんわりと柔らかい笑みをこぼした矢浪さんに、心臓がどくんと大きく波打つのが分かった。
あっという間に、クッキーもコーヒーもカラにしてしまい、席を立つ。
楽しい時間は、何故こうも短いのか。
もう矢浪さんとの別れがそこまで迫っている。
会計をしてくれている矢浪さんに、思い切って声をかける事にした。
「あっ、あの!あっ、明日……明日、も、来ていい……ですか?あ、えっと、あの、く、クッキーを、食べに……あのクッキー、とても美味しかったから、あっ、今度はお金払いますちゃんと!」
照れ隠しに、慌ててそう追加する。
「クッキー気に入ってもらえたみたいで良かったです。明日もお待ちしてますね」
彼女の純粋な笑顔に、クッキーはただの言い訳とは言えなかった。
いつか、本当の気持ちを伝えられる日が来るだろうか……
レトロな外観に似合わない、オシャレな看板。
そこに惹かれて、なんとなくその店のドアを開けた。
それが、今では行きつけの店となってしまって……
「あっ、山崎さん。いらっしゃいませー」
綺麗な笑顔で迎えてくれたのは、アルバイトの矢浪さん。
俺は、ぎこちない笑顔で頭を下げる。
「カウンターでもいいですか?」
「あ、はい」
少し声が裏返ってしまった。恥ずかしい。
矢浪さんは、気にした様子もなく、カウンター席の1つに案内してくれた。そこに腰を落ち着かせる。
「ご注文が決まりましたら、お呼び――」
「いつものブレンドで!」
気持ちが逸って、矢浪さんの言葉に被せてしまった。
失敗した失敗した。矢浪さんを呼ぶという手段を自らなくしてしまった。なんてこった!山崎退一生の……っ、不覚ではなかったらしい。
口元に手を当てて、クスクスと小さく笑っている矢浪さん。
その笑顔を見れたので、さっきの失敗は成功とも言える。引かれなくて良かった。さっきの俺ナイス!
「今日はお忙しいんですか?」
「あ、いえ、全く忙しくないです。どうして、ですか」
「いえ、慌てて注文くださったので、お忙しいのかなと思いまして。お持ちしますのでお待ちください」
頭を下げる矢浪さんに、ははっと顔を引きつらせる。
奥に引っ込んでいく矢浪さんの背中を見送った後、息を吐き出した。
緊張したけど、今日はいつもより少し多く話せた。自然と緩んだ頬に気が付き、引き締める。
笑顔の矢浪さんを見ると、副長に怒られた事とか、仕事に失敗した事とか忘れさせてくれる。
少ししてから、コーヒーが運ばれて来た。
「……あれ?」
矢浪さんがテーブルに並べてくれたのは、コーヒーとクッキー。
頼んでないけど、と俺が疑問を呈するより先に、矢浪さんから、サービスです。と返ってきた。
「いつも来てくださるからって、店長からです」
「あ、ありがとうございます」
立ち上がって頭を下げたら、カウンターの中から店長も微笑んで会釈をしてくれた。
椅子に座り直して、コーヒーを飲んだ。
いつもと変わらない味に癒しを覚える。
アットホームな雰囲気とオルゴール調のBGMが、俺の気持ちを更に落ち着かせてくれる。
コーヒーを飲んだ後、クッキーをかじれば、サクリといい音がなった。
「美味しい」
ほのかにするバターの風味が口いっぱいに広がり、思わずもう1つ。
「山崎さんにそう言ってもらえて嬉しいです」
ふんわりと柔らかい笑みをこぼした矢浪さんに、心臓がどくんと大きく波打つのが分かった。
あっという間に、クッキーもコーヒーもカラにしてしまい、席を立つ。
楽しい時間は、何故こうも短いのか。
もう矢浪さんとの別れがそこまで迫っている。
会計をしてくれている矢浪さんに、思い切って声をかける事にした。
「あっ、あの!あっ、明日……明日、も、来ていい……ですか?あ、えっと、あの、く、クッキーを、食べに……あのクッキー、とても美味しかったから、あっ、今度はお金払いますちゃんと!」
照れ隠しに、慌ててそう追加する。
「クッキー気に入ってもらえたみたいで良かったです。明日もお待ちしてますね」
彼女の純粋な笑顔に、クッキーはただの言い訳とは言えなかった。
いつか、本当の気持ちを伝えられる日が来るだろうか……
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