ありがとう ※死ネタ注意
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※死ネタ注意
「ふ、くちょ……」
「テメーに副長って呼ばれたくねーんだけど」
昨日まで一緒に仕事をしていた真選組の隊士に周りを囲まれ、刀の切っ先が向けられている。その瞳に宿っているのは、敵に向ける双眸そのもの。
副長は、煙草を吹かすと、それを私目掛けて放る。肩口にそれが当たり、音もなく地面に滑り落ちた。
「なんでこんな……」
「まさかテメーが攘夷浪士のスパイだったとはな。騙された俺らも俺らだ」
「違う!私はもう――」
「違わねーよ。ネタはもう上がってんだ。なァ?山崎」
山崎さんが出したのは、写真や上司との会話が録音されたテープ。
証拠にするには十分だ。
「攘夷浪士はやめたんです。だから今は――」
「やめたなんて言い訳通じると思ってんのか。真選組局中法度、第21条、敵と内通せし者これを罰する」
土方さんの言葉が、私の体の奥深くに突き刺さる。
どんなに言葉を尽くしても、副長達には届かない。
山崎さんの瞳にも宿っている殺意。
「山崎さ……」
「仲良くなれたと思ってたのに残念だよ」
鞘から刀身を抜き、ためらいもなく私に向ける。
どうしたらいいか分からない。
考える気力も、行動する気力も何もない。
その場に膝から崩れ落ちるように座り込んだ。
「……ごめ、……なさい……」
謝って許してもらえるなんて思ってない。
目から滴る涙が、地面や手の甲に落ちる。
何に対しての涙なのか。
自衛?謝罪?悲哀?それとも感謝?
色々な感情が混沌とする中、ただ声を押し殺して、拭っても拭っても止められない涙を流す。
髪の毛を掴まれ、無理矢理立たされる。
痛いはずなのに、何も感じない。
「泣いてもお前の処分は変わらねーよ」
目に映るのは、いつもより開いた瞳孔。
土方さんの冷めた表情が、私の中に入り込み、目を逸らしたいのに逸らせない。逸らす事を許されない。いや、自分が逸らしたくないのかもしれない。
さっき落ちきれなかった涙が、頬を伝った。
「シャバ最期だ。何か言いたい事があるんなら言えや」
髪の毛を乱暴に離された。
決まっている。そんなのは……
殺気立つ隊士達を、ぐるりと見回して頭を下げる。
「い、今まで……」
泣いたからだろう、声が震える。
小さく咳払いし、もう1度最初からやり直す。
きちんと言いたかったから。
「今まで良くしてもらい、ありがとうございました……騙して、裏切って……本当にすみませんでした……」
それから、最期なら、想いを伝えたい……今更迷惑だろうけど。
「……山崎さん、好きでした。返事はいりません……」
もらっても仕方ない。私は今から死ぬ身。
伝えられて後悔はない。
「副長、俺が粛清してもいいですか?」
タバコに火をつけて紫煙を吐き出すと、好きにしろと返した。
山崎さんが、私との距離を縮めてくる。
「俺に殺されるんだから、もっと喜んでよ」
恐い……
ギラリと妖しく光る瞳が私を映す。
それからは一瞬だった。
首元に鋭いものが刺さった事を認識した瞬間、体は倒れていて――
「気持ちは嬉しかったよ。ありがとう」
山崎さんの優しい声が遠くの方で小さく聞こえた。
「ふ、くちょ……」
「テメーに副長って呼ばれたくねーんだけど」
昨日まで一緒に仕事をしていた真選組の隊士に周りを囲まれ、刀の切っ先が向けられている。その瞳に宿っているのは、敵に向ける双眸そのもの。
副長は、煙草を吹かすと、それを私目掛けて放る。肩口にそれが当たり、音もなく地面に滑り落ちた。
「なんでこんな……」
「まさかテメーが攘夷浪士のスパイだったとはな。騙された俺らも俺らだ」
「違う!私はもう――」
「違わねーよ。ネタはもう上がってんだ。なァ?山崎」
山崎さんが出したのは、写真や上司との会話が録音されたテープ。
証拠にするには十分だ。
「攘夷浪士はやめたんです。だから今は――」
「やめたなんて言い訳通じると思ってんのか。真選組局中法度、第21条、敵と内通せし者これを罰する」
土方さんの言葉が、私の体の奥深くに突き刺さる。
どんなに言葉を尽くしても、副長達には届かない。
山崎さんの瞳にも宿っている殺意。
「山崎さ……」
「仲良くなれたと思ってたのに残念だよ」
鞘から刀身を抜き、ためらいもなく私に向ける。
どうしたらいいか分からない。
考える気力も、行動する気力も何もない。
その場に膝から崩れ落ちるように座り込んだ。
「……ごめ、……なさい……」
謝って許してもらえるなんて思ってない。
目から滴る涙が、地面や手の甲に落ちる。
何に対しての涙なのか。
自衛?謝罪?悲哀?それとも感謝?
色々な感情が混沌とする中、ただ声を押し殺して、拭っても拭っても止められない涙を流す。
髪の毛を掴まれ、無理矢理立たされる。
痛いはずなのに、何も感じない。
「泣いてもお前の処分は変わらねーよ」
目に映るのは、いつもより開いた瞳孔。
土方さんの冷めた表情が、私の中に入り込み、目を逸らしたいのに逸らせない。逸らす事を許されない。いや、自分が逸らしたくないのかもしれない。
さっき落ちきれなかった涙が、頬を伝った。
「シャバ最期だ。何か言いたい事があるんなら言えや」
髪の毛を乱暴に離された。
決まっている。そんなのは……
殺気立つ隊士達を、ぐるりと見回して頭を下げる。
「い、今まで……」
泣いたからだろう、声が震える。
小さく咳払いし、もう1度最初からやり直す。
きちんと言いたかったから。
「今まで良くしてもらい、ありがとうございました……騙して、裏切って……本当にすみませんでした……」
それから、最期なら、想いを伝えたい……今更迷惑だろうけど。
「……山崎さん、好きでした。返事はいりません……」
もらっても仕方ない。私は今から死ぬ身。
伝えられて後悔はない。
「副長、俺が粛清してもいいですか?」
タバコに火をつけて紫煙を吐き出すと、好きにしろと返した。
山崎さんが、私との距離を縮めてくる。
「俺に殺されるんだから、もっと喜んでよ」
恐い……
ギラリと妖しく光る瞳が私を映す。
それからは一瞬だった。
首元に鋭いものが刺さった事を認識した瞬間、体は倒れていて――
「気持ちは嬉しかったよ。ありがとう」
山崎さんの優しい声が遠くの方で小さく聞こえた。
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