1章
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「おはようございます!今日は暖かいですねー!」
二度寝のおかげですっかり元気になった私はいつも以上に元気に挨拶をした。おはよう、と返してくれるマスターに少し被りながら、奥さんが口を開いた。
「愛梨ちゃん、1時間くらい前に高校生のカッコいい男の子が来てね、これ、愛梨ちゃんにって置いて行ったわよ!もしかして昨日のお客さんかしらね?」ふふっと笑う奥さんから手渡されたのは今日の青空のような、淡い青の紙袋だった。中には見覚えのある傘と、小さな袋が入っている。...やっぱり、もう来ちゃったのか。少し顔を見て話したかったな、なんて思いながらその小さな袋を持ち上げたら、底の方にメモが入っていた。...小さな袋は触った感じ、おそらくクッキーなどのお菓子が入っているだろう。いつもの私なら食べる事優先に、メモなんて後でいっか、と思ってしまうが、今回はわけが違う。
奥さんがにこにことこちらの様子を見ている。マスターもこちらを気にしているらしい。...準備して来ます、と言い残し私は裏へ向かった。
そこからメモを取り出し、開く。どうやらこのメモは即興で残したものらしい。ルーズリーフを4分の1に切り取ったものだ。...几帳面な文字が並んでいる、止め、はねがしっかりした字だな、と感じた。
『昨日は有難う御座いました。助かりました。兄もお礼を申し上げております。...』硬すぎる文章に思わず吹き出してしまった。高校生なのにしっかりしすぎ!なんて思っていた私の心の余裕は、次の文章で無くなってしまう。『今日はお会いできなかったので、また後日に伺います。また、色々話して下さい。』...っえ、返して終わりじゃないの。また、来てくれるのか。...嬉しい。少し顔が熱くなった。
常連さんで私に会いに来てくれる方はそこそこいる。とは言っても、年配のおじいちゃんおばあちゃんばかりだ。孫と話してるみたいで楽しいねぇ、とか、若い子と話すと新鮮だねぇ、とか、そういう理由かららしい。前はスマホの使い方を教えてあげた事もある。そうした常連さんとは、明らかに違う理由で、私に会いに来てくれるのか。...いや、勘違いするのは、期待するのはやめよう。きっとしっかり躾けられた息子さんなんだろうな!直接お礼を言う事が当たり前なんだろうな!、と無理矢理自分を納得させる。
その後クッキーは気持ちばかりのお礼です、と書いてあった。1番下には『和泉一織』と、丁寧に書かれていた。...いずみ、いおり。心の中で繰り返した。綺麗な名前だな。彼をよく表現しているな、なんて考えていたらコーヒーが入ったと奥さんに呼ばれた。
いつものやつを飲むと、これからバイトだなー、と感じる。奥さんから詳しく突っ込まれないように、荷物預かってくれてありがとうございました、とさらっと伝えたつもりでいたのに、やはり奥さんは許してくれなかった。
「やっぱり昨日のお客さん?かっこよくて綺麗な男の子ね。しっかりした子だったわよ。また来るって言ってたわ。」「そうなんですか。昨日傘を貸したので、そのお礼でした。むしろこっちが申し訳無いですよね...」「あ、名前教えちゃったわよ。帰るときに聞かれたの。あの店員さんの名前を教えて頂けませんか?って。いい子そうだったから教えちゃたけど、事後報告になってごめんね。」...奥さんは時々人の話を聞かなくなる。興奮している証拠だ。前も彼氏がいるのか、とか、好きな人はいるのか、と聞かれた事もある。もうやめてやれ、とマスターの声に耳も貸さずにそう質問してくる奥さんにタジタジになってしまったのは、もう2年前の話か。
生憎、生まれてこのかたそういった相手は出来たことはない。好きな人がいた時期もあったが、中学の頃の話だ。高校の頃は...友達と遊ぶのが楽しすぎて、それどころではなかった。うちら一生彼氏出来ないんじゃね?なんて笑いあっていたのに、今ではみんな彼氏持ちだ。大学に入ったら出来るかな、なんて思っていて、少しいい感じになった人も何人かいた。でも、なんか違う。彼氏ってこんなものなのかな。二人で一緒にご飯に行っても、飲みにいっても、友達という感覚から抜け出せない。告白された事も一回だけあったが、今のままで十分楽しいと返してしまった。そっか、と笑っていた彼は、それっきり、たまに学校ですれ違うだけになってしまった。もったいないだの、一回付き合ってみればだの、友達はそんなことを言って来るが、私は納得が出来なかった。恋愛に夢を見ているわけではないが、やはり付き合うなら心から大好きな人じゃないと嫌だ。
名前を聞かれただけで、こんなにその人を考えてしまうのは、やはり、これが、恋なのだろうか。
二度寝のおかげですっかり元気になった私はいつも以上に元気に挨拶をした。おはよう、と返してくれるマスターに少し被りながら、奥さんが口を開いた。
「愛梨ちゃん、1時間くらい前に高校生のカッコいい男の子が来てね、これ、愛梨ちゃんにって置いて行ったわよ!もしかして昨日のお客さんかしらね?」ふふっと笑う奥さんから手渡されたのは今日の青空のような、淡い青の紙袋だった。中には見覚えのある傘と、小さな袋が入っている。...やっぱり、もう来ちゃったのか。少し顔を見て話したかったな、なんて思いながらその小さな袋を持ち上げたら、底の方にメモが入っていた。...小さな袋は触った感じ、おそらくクッキーなどのお菓子が入っているだろう。いつもの私なら食べる事優先に、メモなんて後でいっか、と思ってしまうが、今回はわけが違う。
奥さんがにこにことこちらの様子を見ている。マスターもこちらを気にしているらしい。...準備して来ます、と言い残し私は裏へ向かった。
そこからメモを取り出し、開く。どうやらこのメモは即興で残したものらしい。ルーズリーフを4分の1に切り取ったものだ。...几帳面な文字が並んでいる、止め、はねがしっかりした字だな、と感じた。
『昨日は有難う御座いました。助かりました。兄もお礼を申し上げております。...』硬すぎる文章に思わず吹き出してしまった。高校生なのにしっかりしすぎ!なんて思っていた私の心の余裕は、次の文章で無くなってしまう。『今日はお会いできなかったので、また後日に伺います。また、色々話して下さい。』...っえ、返して終わりじゃないの。また、来てくれるのか。...嬉しい。少し顔が熱くなった。
常連さんで私に会いに来てくれる方はそこそこいる。とは言っても、年配のおじいちゃんおばあちゃんばかりだ。孫と話してるみたいで楽しいねぇ、とか、若い子と話すと新鮮だねぇ、とか、そういう理由かららしい。前はスマホの使い方を教えてあげた事もある。そうした常連さんとは、明らかに違う理由で、私に会いに来てくれるのか。...いや、勘違いするのは、期待するのはやめよう。きっとしっかり躾けられた息子さんなんだろうな!直接お礼を言う事が当たり前なんだろうな!、と無理矢理自分を納得させる。
その後クッキーは気持ちばかりのお礼です、と書いてあった。1番下には『和泉一織』と、丁寧に書かれていた。...いずみ、いおり。心の中で繰り返した。綺麗な名前だな。彼をよく表現しているな、なんて考えていたらコーヒーが入ったと奥さんに呼ばれた。
いつものやつを飲むと、これからバイトだなー、と感じる。奥さんから詳しく突っ込まれないように、荷物預かってくれてありがとうございました、とさらっと伝えたつもりでいたのに、やはり奥さんは許してくれなかった。
「やっぱり昨日のお客さん?かっこよくて綺麗な男の子ね。しっかりした子だったわよ。また来るって言ってたわ。」「そうなんですか。昨日傘を貸したので、そのお礼でした。むしろこっちが申し訳無いですよね...」「あ、名前教えちゃったわよ。帰るときに聞かれたの。あの店員さんの名前を教えて頂けませんか?って。いい子そうだったから教えちゃたけど、事後報告になってごめんね。」...奥さんは時々人の話を聞かなくなる。興奮している証拠だ。前も彼氏がいるのか、とか、好きな人はいるのか、と聞かれた事もある。もうやめてやれ、とマスターの声に耳も貸さずにそう質問してくる奥さんにタジタジになってしまったのは、もう2年前の話か。
生憎、生まれてこのかたそういった相手は出来たことはない。好きな人がいた時期もあったが、中学の頃の話だ。高校の頃は...友達と遊ぶのが楽しすぎて、それどころではなかった。うちら一生彼氏出来ないんじゃね?なんて笑いあっていたのに、今ではみんな彼氏持ちだ。大学に入ったら出来るかな、なんて思っていて、少しいい感じになった人も何人かいた。でも、なんか違う。彼氏ってこんなものなのかな。二人で一緒にご飯に行っても、飲みにいっても、友達という感覚から抜け出せない。告白された事も一回だけあったが、今のままで十分楽しいと返してしまった。そっか、と笑っていた彼は、それっきり、たまに学校ですれ違うだけになってしまった。もったいないだの、一回付き合ってみればだの、友達はそんなことを言って来るが、私は納得が出来なかった。恋愛に夢を見ているわけではないが、やはり付き合うなら心から大好きな人じゃないと嫌だ。
名前を聞かれただけで、こんなにその人を考えてしまうのは、やはり、これが、恋なのだろうか。