1章
夢小説設定
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「はぁー、終わった!」
「愛梨これからバイトでしょ?何時から?」
「15時から!今から向かうんだー。」
「結構余裕ないじゃん。なんだー、買い物誘おうと思ったのにー。」
「ごめんごめん、また今度ね!じゃあおつかれ!」
そう言い残した私は足早に駅に向かう。バイト先のカフェまでは電車で僅か一駅だ。一年生の頃からずっとお世話になっている。もう働き始めて三年目か、時が経つのは早いものだ。
そこのカフェを知ったきっかけは、偶然だった。その日も今日の様に青空から一転し、雨が降っていた。上京したばかりだったので、土地勘をつかもうと、キャンパス周りを散歩していた。田舎で一駅というとかなりの距離があるが、どうやら都会では違うようだ。キャンパスからしばらく歩くと、隣の駅なんて余裕で行ける。へぇー、この道がここに出るんだ、なんて呑気な事を考えていた私の頬に、冷たい水が落ちてきた。
うそ、雨!?傘無いしどうしよう...、と考えていた私の目に飛び込んできたのはこじんまりとしたカフェだった。「rabbit」...うさぎ?可愛らしい名前だな、なんて考える前に、もう足は動いていた。
チリンチリン、と控え目に入店のベルが鳴る。いらっしゃいませ、と声を掛けてきてくれたのは、渋くてかっこいいマスターだった。大体60歳くらいかな、都会の人は歳取ってもかっこいいんだな。ーー、濡れてるけど入店して大丈夫だったのかな...。素敵なお店だし...。幸いお店は空いていたが、ここにいる私が場違いな気がして、少し引け目を感じた。
「あら、濡れちゃってるじゃない。大丈夫?いま、タオル持ってくるから、奥の席に掛けててちょうだい。」優しい声がしてそちらに目を向けると、ふわふわとした雰囲気の、きっとマスターの奥さんであろう方が私にそう言っていた。
「あっ、ありがとうございます...!」一瞬どもってしまったが、ずっと入り口に立っているのも邪魔だと思い、足早に奥の席に向かった。するとすぐに、ふわふわで真っ白なタオルを持って奥さんがやって来た。
「風邪引かないようにしっかり拭きなさい。突然の雨だもの、困っちゃうわよねぇ?」眉を下げてそう言う、優しい顔の奥さんに少し見とれてしまった。「タオルありがとうございます。注文いいですか?」カフェに入ったのだから何かしら頼もう。コーヒー...あまり詳しくないけど。「無理して注文しなくてもいいのよ、でも、一応メニュー持ってくるわね。」その後手渡されたメニューを見ても結局訳が分からなかった。苦いのが苦手な私は、一番甘いのくださいと言ったが、客層が基本年配の方が多く、どれも苦いかもしれないと言われてしまった。
「ホットミルクはどう?」「...じゃあそれでお願いします。」
あったかくて甘い液体が私の体をじんわりと温めていく。雨に打たれたのはほんの数分だったが、私の体は思いのほか冷えていたようだ。しかし困った。雨は一向に止む気配がない。それどころか強まってきている。駅までダッシュでどのくらいかな、とスマホで調べていたら「傘無いのよね?良かったらこれ、使って。あと、ホットミルクは本来ないメニューだからお代はいいからね。」「えっ...それは流石に!お支払いします!」「いいのよ。貴女大学生?一年生かしらね?」「あっ、はい、そうですけど...」「この辺りに住んでるの?」「電車で10分くらいの所です...」奥さんの突拍子も無い質問に困惑していたら、「ごめんなさいね、若い子が来店してくれたのが珍しくて嬉しくて...。また来てくれればそれで良いから、今日はお代は要らないのよ。」そう微笑まれてしまっては、何も言い返せなくなってしまった。「わかりました、ありがとうございます!とりあえずまた明日に来ますね!」と言ったら奥さんはもちろん、マスターにも少し笑われてしまった。
たまたまバイト先を探していた私は、いい事を思い付いた。ならば早目のが良いだろうと思い、次の日傘を返しつつ、バイトは雇っていないのかを聞いた。ダメ元だったが、マスターと奥さんは大歓迎だったらしく、その場でバイト先が決定した。
「愛梨これからバイトでしょ?何時から?」
「15時から!今から向かうんだー。」
「結構余裕ないじゃん。なんだー、買い物誘おうと思ったのにー。」
「ごめんごめん、また今度ね!じゃあおつかれ!」
そう言い残した私は足早に駅に向かう。バイト先のカフェまでは電車で僅か一駅だ。一年生の頃からずっとお世話になっている。もう働き始めて三年目か、時が経つのは早いものだ。
そこのカフェを知ったきっかけは、偶然だった。その日も今日の様に青空から一転し、雨が降っていた。上京したばかりだったので、土地勘をつかもうと、キャンパス周りを散歩していた。田舎で一駅というとかなりの距離があるが、どうやら都会では違うようだ。キャンパスからしばらく歩くと、隣の駅なんて余裕で行ける。へぇー、この道がここに出るんだ、なんて呑気な事を考えていた私の頬に、冷たい水が落ちてきた。
うそ、雨!?傘無いしどうしよう...、と考えていた私の目に飛び込んできたのはこじんまりとしたカフェだった。「rabbit」...うさぎ?可愛らしい名前だな、なんて考える前に、もう足は動いていた。
チリンチリン、と控え目に入店のベルが鳴る。いらっしゃいませ、と声を掛けてきてくれたのは、渋くてかっこいいマスターだった。大体60歳くらいかな、都会の人は歳取ってもかっこいいんだな。ーー、濡れてるけど入店して大丈夫だったのかな...。素敵なお店だし...。幸いお店は空いていたが、ここにいる私が場違いな気がして、少し引け目を感じた。
「あら、濡れちゃってるじゃない。大丈夫?いま、タオル持ってくるから、奥の席に掛けててちょうだい。」優しい声がしてそちらに目を向けると、ふわふわとした雰囲気の、きっとマスターの奥さんであろう方が私にそう言っていた。
「あっ、ありがとうございます...!」一瞬どもってしまったが、ずっと入り口に立っているのも邪魔だと思い、足早に奥の席に向かった。するとすぐに、ふわふわで真っ白なタオルを持って奥さんがやって来た。
「風邪引かないようにしっかり拭きなさい。突然の雨だもの、困っちゃうわよねぇ?」眉を下げてそう言う、優しい顔の奥さんに少し見とれてしまった。「タオルありがとうございます。注文いいですか?」カフェに入ったのだから何かしら頼もう。コーヒー...あまり詳しくないけど。「無理して注文しなくてもいいのよ、でも、一応メニュー持ってくるわね。」その後手渡されたメニューを見ても結局訳が分からなかった。苦いのが苦手な私は、一番甘いのくださいと言ったが、客層が基本年配の方が多く、どれも苦いかもしれないと言われてしまった。
「ホットミルクはどう?」「...じゃあそれでお願いします。」
あったかくて甘い液体が私の体をじんわりと温めていく。雨に打たれたのはほんの数分だったが、私の体は思いのほか冷えていたようだ。しかし困った。雨は一向に止む気配がない。それどころか強まってきている。駅までダッシュでどのくらいかな、とスマホで調べていたら「傘無いのよね?良かったらこれ、使って。あと、ホットミルクは本来ないメニューだからお代はいいからね。」「えっ...それは流石に!お支払いします!」「いいのよ。貴女大学生?一年生かしらね?」「あっ、はい、そうですけど...」「この辺りに住んでるの?」「電車で10分くらいの所です...」奥さんの突拍子も無い質問に困惑していたら、「ごめんなさいね、若い子が来店してくれたのが珍しくて嬉しくて...。また来てくれればそれで良いから、今日はお代は要らないのよ。」そう微笑まれてしまっては、何も言い返せなくなってしまった。「わかりました、ありがとうございます!とりあえずまた明日に来ますね!」と言ったら奥さんはもちろん、マスターにも少し笑われてしまった。
たまたまバイト先を探していた私は、いい事を思い付いた。ならば早目のが良いだろうと思い、次の日傘を返しつつ、バイトは雇っていないのかを聞いた。ダメ元だったが、マスターと奥さんは大歓迎だったらしく、その場でバイト先が決定した。