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日記なんてものがあるんですね…

読書感想文 『猿』

2026/08/01 14:26
生存報告もかねて、読了した本の感想メモを投稿します。
※個人的な書き付けの為、ネタバレ等も含めて感想を書き散らしております。もしも読む方はお気をつけください。

京極夏彦『猿』

ホラーとして読むと怪異が出ずに道中で振り落とされ、
事件という事件には巻き込まれていないのでミステリーとは言えず、
でもずっとじめっとした陰鬱さがもやもやとつきまとうような不思議な読み味のお話でした。
強いてジャンルを当てはめるならサスペンスなのかな、と言う感じ。
京極先生、日常に不穏さを混ぜ込んだり、曖昧な不安感を描写するの上手いなぁ。

ストーリーに関しては、たぶん賛否分かれそうだな……と。

自分は読了してまず第一に、
待って!? 置いてかないで!???
そのラストどういうことなんですか先生!?
と、大困惑しておりました。
自分が考察とか苦手だからなのもあると思うんですけど、二、三回終盤読み直しても何が起こったのか分からず、
急展開過ぎやしませんか!?……と。

ざっくり『猿』のお話の概要をまとめると、
主人公の祐美さんは、今まで会ったこともないひいお婆ちゃんが亡くなった知らせを受け、遺産相続の手続きの為にひいお婆ちゃんの住んでいた山奥の村に行かなくてはいけなくなった。
家には、コロナ罹患後の後遺症で精神を患って引きこもりになってしまった旦那さんがいて、外出も他者とのコミュニケーションも取るのが厳しい為、一人留守番をしてもらわないといけない。
旦那を置いて長期間離れる事に、心配と後ろめたさを感じる祐美さんの、村までの旅程を描くお話ーー
といった感じ。

お話の冒頭、旦那さんは「猿がいる」という。
でも、祐美さんにはそれが見えない。
タイトルも『猿』だし、旦那さんが見てる“何か”に関する怪異譚か、はたまた精神的な話かと身構えて読み進めていたのですが……
本の半分まで読み進めても、村が……見えてこない(!?)

村の話が中心になるのかな、と思っていたのですが、
道中、登場人物同士の会話で、
「因習村」「事故物件」「怪談話」「呪物」など最近のホラーにありがちなものを、そんなもんねぇよ、と丁寧に丁寧に論じられていくので、
お化けの話ではない、のか…??? 
ホラーでもサスペンスでもなさそうだけど、残り1/4くらいのページからどう着地するんだ…!??
と、逆に興味がそそられました。

たしかに、祐美さんの視点ではずっと世界が不穏に見えてはいるものの、特にこれと言った怪奇現象はない。
たびたび『くろいもやもや』が見える気がするという描写はあるものの、ずっと不安を抱えている祐美さんの気のせいで片付けられてしまうようなレベルだし、
途中のホテルの怪奇現象は野生の猿のせいだった…

…だったんですけど、村に到着後、自殺者2名!!行方不明者数人!!迫る台風!!謎に怯える村人と同行者!!
と、いきなり村ホラー感(?)が急ハンドル切って突進してくる!
※でも、怪異も怪物も出てこない

怒濤の勢いで畳まれていく残りページに、
おわ、おわっ、終わっ……た……??
えっ、祐美さんはどうなって……え、急に自宅に戻った? 村は?? 旦那さんは……?? 猿……??
と言う感じで、打ち切りエンドじゃないんだろうけどはっきりとしないラストでした。
これは狙ったもやもや感なのかな……?

一番の謎は最後の「机の上に猿がいた。猿は振り返って笑った。」のところなんですけど、
オカルト肯定/否定で考えるとしたら、

①オカルト肯定
祐美さんが作中ずっと感じてた『くろいもやもや』と、旦那さんが言ってた『猿』は同じもので、
村を覆う恐怖の源である何かが、ひいお婆ちゃんの死を皮切りに次の後継者である祐美さんのところへ行やってきた。
旦那さんはそれが猿に見えていて、祐美さんはもやもやに見えていた。
村シーンラストで祐美さんはくろいもやもやを受け入れるようにみえる描写があったから、
机の猿=旦那さんinもやもやというパターン。

②オカルト否定
ギリギリ精神を保ってた旦那さんが、祐美さんの不在による孤独に耐えられなくなり、狂を発して『自認:猿』になってしまったパターン。
祐美さんのくろいもやもやも、旦那さんの猿も全部精神的なストレスとかからくる妄想、みたいな感じ。

祐美さんは、社会生活が厳しい旦那さんのために仕事辞めてまで尽くしてしまうタイプで、作中の不安も全てが旦那さん要因のもの。
村到着後にみんなが恐怖する中、祐美さんひとりだけ怖くなかったのは、村のには『旦那さんを失う』という祐美さんにとっての恐怖の核がなかったから、なのかな、と。
怪異が居ようが居まいが、祐美さんは人間としての旦那さんを失ってしまうわけだから、最後の最後でようやく恐怖を感じたのかな……と。
現実的に考えると猿が笑うように見えるのは威嚇の顔だし、やっぱり最後の笑う猿は旦那さんなのかな……。

湿気の多い時期に読むには、ある意味ぴったりのお話でした。
他の人の考察も見てみたいな。

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