short story
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やってしまった
やってしまった
やってしまった
健ちゃんと同棲して2年。
お付き合いはうまくいってると思う。
一緒に居ると楽しいし、お互いのことを思いやりながら生活できてる。
一緒に住み始めた頃は価値観のズレが原因でよく喧嘩してたのが懐かしいな。
だって健ちゃんってばテーブルの上にコップ置きっぱなしにするんだもん。
その度に私が片付けてさ。私は健ちゃんのお母さんじゃないんだから!
おっと、話がズレちゃった。
長く一緒に居ると色々あるからね、うん。
それでね、私………やってしまった。
禁忌を犯してしまった。
リビングの机の上に、結婚情報誌を置いた。
私たち、結婚のケの字も話題に出てなかったのに。
周りの友達がちらほら結婚するようになって子供を授かったり幸せそうにしてるのを見てたら……ちょっと、羨ましくなったというか…
今だって充分幸せだし、仕事だって充実してるし、年齢的にもまだ焦る歳じゃないのに。
何より、結婚の話が出てないってことはまだ時期じゃないってことだってわかってる。
結婚はひとりじゃできないもん。
それなのに……
察してほしいとばかりに結婚情報誌って…
こんなことする女、健ちゃんはきっとキライだと思う。
健ちゃんはハッキリ物を言う人が好きだし、あやふやとか中途半端とか、そういうのは違うって知ってるのに。
私たちがうまくいってるのだって、何でも言い合える関係だからだもん。
でも……
さすがに結婚のことを私から言うのって、ねぇ?
なんだか急かしてるみたいだし、もし健ちゃんにその気がなかったら気まずいだけじゃん。
サラッと?
さりげなく?
私そんな器用な人間じゃないんだよ……
ていうか!ヤバイ!
そろそろ健ちゃんが帰って来る時間だ…!
晩ごはんはリビングでテレビを観ながら食べるから、テーブルのど真ん中に置いてある雑誌は配膳のときに嫌でも目に入るはず。
綺麗なモデルさんがウエディングドレス姿で微笑んでる表紙……
いつも読んでるファッション雑誌とは明らかに違う雰囲気だもん。「何これ?」って、なるよね?
「何これ?」って聞かれて……えーっと、私はなんて答えたらいいの?
結婚ってどう思ってる?結婚したい?結婚しよう?
いやいやいや!全部違う気がする!
勢いでこんなことしちゃったけど、具体的にどうしたいとか全然考えてなかったよ……
どうしよう……やめる?やめよっか?今ならまだ間に合うし……
「ただいま」
ガチャ、と鍵を開ける音に身体が飛び跳ねた。
「おかっ!おかえり!」
「メシ作った?」
「うん、できてるよ。すぐ食べる?」
「サンキュ。食う」
どうしよう……
健ちゃんが手を洗ってる今しか雑誌を隠すチャンスはない。
やめとこうかな……気まずくなったら嫌だもんね……でもせっかく買ったし……
「メシ何?」
「しょ、生姜焼き!」
「最高〜!」
手を洗い終わった健ちゃんがリビングに向かう。
雑誌は隠さなかった。
完全にノープランだけど、やるだけやってみる!
「お皿持ってくからテーブル片付けて〜!」
「おー」
よ、よし、今の結構自然だったよね?
これで絶対見るはず!
あ!あ!あ!雑誌持った!
見た?表紙見たよね?気づいた?
パサ
テーブルに置かれた雑誌は、健ちゃんの手を経由してソファに移動した。
期待していた「何これ?」は健ちゃんの口から発されることなく、ご飯を食べて、お風呂に入って、食後のアイスを一緒に食べて、寝た。
あーあ、大失敗。
あそこまで綺麗にスルーされるとは思わなかったなぁ。
すごい期待してたわけじゃなかったけど、結構落ち込んだかも。内心期待してたんだろうなぁ。
でもあんなズルいやり方したんだから、怒ったり悲しんだりするのも違うし……
次の日は土曜日で、アラームをかけずにゆっくり寝て目が覚めたら、隣で寝ていた健ちゃんの姿はなかった。
「おはよぉ〜」
「はよ」
のそのそと寝室から出てリビングに行くと、パジャマ姿の健ちゃんがソファに座っていた。
「けけけけ健ちゃんそれ!」
健ちゃんの膝には、例の雑誌が広げられていて。
その姿が目に入った瞬間、私の眠気は一瞬で吹き飛んだ。
「これ?なまえのだろ?」
「よ、よ、読んだ?」
「読んだ。勉強になったわ」
「勉強!?なんの!?」
「なんの、って……」
「へ、へへ……はは、は…」
「お前さぁ」
健ちゃんは雑誌を閉じてテーブルに置くと、小さくため息をついてソファから立ち上がった。
あれ!?健ちゃんちょっと怒ってる?
何やってくれてんだって?
まわりくどいことしてんじゃねぇって?
だよね、わかる。わかるよ。どうしよう、怒らせちゃった……
「ご、ごめんね」
「来月、何がある?」
「えっ?来月?」
「誕生日だろ、なまえの」
「たんじょうび……うん」
「指輪もレストランも予約してたんだけど」
誕生日…
指輪……
レストラン………
「えっ!?えっ!?それって……」
「俺の一世一代のプロポーズ計画をどうしてくれるんだよ」
「うぅ…だって…」
「不安だった?」
「あの、ちょっと、焦っちゃって…」
「そっか。誕生日に合わせたのがアレだったな」
「健ちゃんは悪くないよ!」
「なまえにここまでさせたのはよくねぇだろ」
「ど、どう思った?」
「さすがに動揺したな。予定どうしようって」
そう言って笑いながら健ちゃんは私の頬をつまんだ。
私はバカだ。健ちゃんのこと信じて待ってたら良かったのに。
周りと比べて変に焦ったりして……反省。
「大丈夫!私知らなかったことにできるよ!」
「いや無理あんだろ」
「すごい新鮮なリアクションできるから!」
「もういいから。一緒に雑誌見ようぜ」
来月の誕生日の朝。
机の上には
置きっぱなしのコップと
婚姻届
コップはシンクに下げなさーい!
やってしまった
やってしまった
健ちゃんと同棲して2年。
お付き合いはうまくいってると思う。
一緒に居ると楽しいし、お互いのことを思いやりながら生活できてる。
一緒に住み始めた頃は価値観のズレが原因でよく喧嘩してたのが懐かしいな。
だって健ちゃんってばテーブルの上にコップ置きっぱなしにするんだもん。
その度に私が片付けてさ。私は健ちゃんのお母さんじゃないんだから!
おっと、話がズレちゃった。
長く一緒に居ると色々あるからね、うん。
それでね、私………やってしまった。
禁忌を犯してしまった。
リビングの机の上に、結婚情報誌を置いた。
私たち、結婚のケの字も話題に出てなかったのに。
周りの友達がちらほら結婚するようになって子供を授かったり幸せそうにしてるのを見てたら……ちょっと、羨ましくなったというか…
今だって充分幸せだし、仕事だって充実してるし、年齢的にもまだ焦る歳じゃないのに。
何より、結婚の話が出てないってことはまだ時期じゃないってことだってわかってる。
結婚はひとりじゃできないもん。
それなのに……
察してほしいとばかりに結婚情報誌って…
こんなことする女、健ちゃんはきっとキライだと思う。
健ちゃんはハッキリ物を言う人が好きだし、あやふやとか中途半端とか、そういうのは違うって知ってるのに。
私たちがうまくいってるのだって、何でも言い合える関係だからだもん。
でも……
さすがに結婚のことを私から言うのって、ねぇ?
なんだか急かしてるみたいだし、もし健ちゃんにその気がなかったら気まずいだけじゃん。
サラッと?
さりげなく?
私そんな器用な人間じゃないんだよ……
ていうか!ヤバイ!
そろそろ健ちゃんが帰って来る時間だ…!
晩ごはんはリビングでテレビを観ながら食べるから、テーブルのど真ん中に置いてある雑誌は配膳のときに嫌でも目に入るはず。
綺麗なモデルさんがウエディングドレス姿で微笑んでる表紙……
いつも読んでるファッション雑誌とは明らかに違う雰囲気だもん。「何これ?」って、なるよね?
「何これ?」って聞かれて……えーっと、私はなんて答えたらいいの?
結婚ってどう思ってる?結婚したい?結婚しよう?
いやいやいや!全部違う気がする!
勢いでこんなことしちゃったけど、具体的にどうしたいとか全然考えてなかったよ……
どうしよう……やめる?やめよっか?今ならまだ間に合うし……
「ただいま」
ガチャ、と鍵を開ける音に身体が飛び跳ねた。
「おかっ!おかえり!」
「メシ作った?」
「うん、できてるよ。すぐ食べる?」
「サンキュ。食う」
どうしよう……
健ちゃんが手を洗ってる今しか雑誌を隠すチャンスはない。
やめとこうかな……気まずくなったら嫌だもんね……でもせっかく買ったし……
「メシ何?」
「しょ、生姜焼き!」
「最高〜!」
手を洗い終わった健ちゃんがリビングに向かう。
雑誌は隠さなかった。
完全にノープランだけど、やるだけやってみる!
「お皿持ってくからテーブル片付けて〜!」
「おー」
よ、よし、今の結構自然だったよね?
これで絶対見るはず!
あ!あ!あ!雑誌持った!
見た?表紙見たよね?気づいた?
パサ
テーブルに置かれた雑誌は、健ちゃんの手を経由してソファに移動した。
期待していた「何これ?」は健ちゃんの口から発されることなく、ご飯を食べて、お風呂に入って、食後のアイスを一緒に食べて、寝た。
あーあ、大失敗。
あそこまで綺麗にスルーされるとは思わなかったなぁ。
すごい期待してたわけじゃなかったけど、結構落ち込んだかも。内心期待してたんだろうなぁ。
でもあんなズルいやり方したんだから、怒ったり悲しんだりするのも違うし……
次の日は土曜日で、アラームをかけずにゆっくり寝て目が覚めたら、隣で寝ていた健ちゃんの姿はなかった。
「おはよぉ〜」
「はよ」
のそのそと寝室から出てリビングに行くと、パジャマ姿の健ちゃんがソファに座っていた。
「けけけけ健ちゃんそれ!」
健ちゃんの膝には、例の雑誌が広げられていて。
その姿が目に入った瞬間、私の眠気は一瞬で吹き飛んだ。
「これ?なまえのだろ?」
「よ、よ、読んだ?」
「読んだ。勉強になったわ」
「勉強!?なんの!?」
「なんの、って……」
「へ、へへ……はは、は…」
「お前さぁ」
健ちゃんは雑誌を閉じてテーブルに置くと、小さくため息をついてソファから立ち上がった。
あれ!?健ちゃんちょっと怒ってる?
何やってくれてんだって?
まわりくどいことしてんじゃねぇって?
だよね、わかる。わかるよ。どうしよう、怒らせちゃった……
「ご、ごめんね」
「来月、何がある?」
「えっ?来月?」
「誕生日だろ、なまえの」
「たんじょうび……うん」
「指輪もレストランも予約してたんだけど」
誕生日…
指輪……
レストラン………
「えっ!?えっ!?それって……」
「俺の一世一代のプロポーズ計画をどうしてくれるんだよ」
「うぅ…だって…」
「不安だった?」
「あの、ちょっと、焦っちゃって…」
「そっか。誕生日に合わせたのがアレだったな」
「健ちゃんは悪くないよ!」
「なまえにここまでさせたのはよくねぇだろ」
「ど、どう思った?」
「さすがに動揺したな。予定どうしようって」
そう言って笑いながら健ちゃんは私の頬をつまんだ。
私はバカだ。健ちゃんのこと信じて待ってたら良かったのに。
周りと比べて変に焦ったりして……反省。
「大丈夫!私知らなかったことにできるよ!」
「いや無理あんだろ」
「すごい新鮮なリアクションできるから!」
「もういいから。一緒に雑誌見ようぜ」
来月の誕生日の朝。
机の上には
置きっぱなしのコップと
婚姻届
コップはシンクに下げなさーい!
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