10th ANNIVERSARY
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「ヒトメボレしたぁ!?」
でけぇよ、声が。
「おう。さっきな」
「さっきっていつだよ!?」
「自分チから最寄り駅に向かってるとき」
今日は諸星とメシ。
諸星とはインターハイや国体んときに知り合って、コイツが東京の大学に進学してからはたまにこうやってメシを食うようになった。
神奈川から東京なら電車ですぐだしな。
愛知の星なんて仰々しい呼び方されてるけど、気取らないヤツでけっこー気が合う。
今日明日は大学入試があってお互い部活はオフ。牧も誘ったけど用事があるってことでサシになった。
「は?えっ?駅!?何で!?」
諸星って元気なヤツだけど普段こんなに慌てふためくようなタイプじゃないのに……
“さっきヒトメボレした”というワードはかなり衝撃的だったらしい。
「犬の散歩してる人が歩いてきてたんだけど、その犬が俺に向かって飛びかかってきてな、」
「こらっ!ケンジ!」
「!?」
「すみません!大丈夫ですか?」
「あ、ハイ」
「この子、若い男の人が好きで……」
「はは、そうなんですね」
「オスなんですけどねぇ。ね、ケンジ」
「僕も健司なんです」
「ええっ!?ケンちゃん、お兄さんもケンジさんなんだって!」
「ちなみに家族にはケンちゃんって呼ばれてます」
「えーっ!あはは!すごい偶然ですね!」
「ってコトがあった」
「すげぇ……漫画みてぇだな」
「だよな」
「それでアレか、運命感じたって?」
「そう」
今までの人生で一目惚れなんてしたことなかったのに。さっきの出来事は心臓を鷲掴みにされたみたいにギュウっとなった。インパクトがあったからっていうのもあるけど。
「可愛かった?」
「うん」
ちょっとしか喋ってないけど、笑った顔が可愛くて印象的だった。
飼い犬と普通に喋ってる感じも犬飼いあるあるなのかもしれないけど可笑しくて。
「で、どうすんの?」
「どう、って……」
「連絡先とかは?」
「ナシナシ。すぐ別れたし」
「えー、ヤバイじゃんかよ」
そう、ヤバイ。
一瞬の絡みだけで、あの人がどこの誰なのか何も知らない。
知ってるのはあの犬の名前がケンジってことだけで。
犬の散歩してるくらいだからあのエリアに住んでるんだろうけど……
でも親戚の犬の散歩してた可能性だってあるしな…
「また同じ時間に通るのが一番可能性あるか…」
「あ、ランニングの時間色々変えてみるとかは?」
「俺も実家で犬飼ってるんだけどさ〜」
諸星は、俺とあの人がまた出会うためにはどうすればいいかとあれこれ考えながらブツブツ言っている。
「おい、藤真聞いてるか?」
「聞いてる。サンキューな」
いーヤツだな、諸星。
「お前彼女とは?順調か?」
「うん、順調」
「結婚してぇって言ってなかった?」
「言ってた。早くしたいな〜」
「お前が愛想尽かされなきゃだろ?」
「うるせぇよ。まあ、そうだな」
「まだ若いし他にイイ人がいるかもとか思わねぇの?」
「思わねぇ」
諸星の彼女に初めて会ったとき、正直ちょっと意外だった。
もちろん可愛い子だと思ったけど、諸星が付き合うのはもっと派手な女を想像していたからだ。
「諸星って小動物系が好み?」
「いや、料理上手なコが良かった」
「ステレオタイプだな」
「メシは大事だろ」
「まぁな」
「藤真は?」
「フツーに、優しくて可愛い子とか?あんまりこだわりとかねぇな」
「藤真ならよりどりみどりだろ」
お前もな、と言いかけてやめた。
コイツはもう決めた相手がいるのだから野暮ってもんだ。
諸星にとってはあのコが一番なんだよな。
そういえば自分の好きなタイプなんて今まで深く考えたことがなかったかもしれない。
そもそも自分は恋愛にそこまで頓着ない方だと思う。
全く恋愛をしてこなかったワケじゃないけど、いつでもバスケ優先だったし、こんなこと言うのはアレだけど女性の方からアプローチされてきたから……
「もし俺があの人とまた会えたとしてもうまくいくとは限らないよな?」
「そりゃ、まぁな。彼氏いるかもしれないし」
「だよなぁ」
世の中の恋愛への興味ってすごいもんな……
彼氏……普通にあり得る話だ。
「運良く彼氏がいなくても好みじゃないとか言われたらどうしよ……」
「その顔のヤツが言うセリフじゃねぇな」
「牧みたいなのが好きかもしれねぇじゃん」
「あはは!牧!かもな!」
そうなったらお手上げじゃね?
ワイルド系の需要ってどのくらいあるんだろ…
「そもそもお前そんなネガティブなタイプじゃねぇだろ?」
「そうだけど……俺って意外と慎重なのかも。今思った」
「二面性あるよな。監督時代の名残り?」
「なるほど、そうかもしんね」
「ま、頑張れよ。ケンちゃん」
翌日、諸星のアドバイス通りに昨日と同じ時間に駅までの道を歩いてみることにした。
諸星いわく犬の散歩の時間は決まってることが多いそうだ。
ケンジ、頼むぞ。同じ名前のよしみだろ。
俺とあの子をもう一回会わせてくれよ。
………つってもな、そう簡単に会えたら苦労はしねぇよな。
現実は甘くないことを今までの人生で嫌ってほど知っているだけに、あの子とまた会える確率はそこまで高くはないだろう。
期待しすぎないよう自分に念押ししながら歩いていると駅の建物が見えてきた。
ああ、やっぱりな。ま、こんなもんだろ。
普段は大学があるからこの時間にこの道を歩くことはほとんどないし……
あとできることは夜のランニングでこの辺を走ってみるくらいか。
ハァ…短い恋だったな。
「こんにちは!」
「あ、」
半ば諦めモードで歩いていた俺の背後から声をかけられて振り向けば、そこには昨日の女性が立っていた。犬を連れて。
「あの、昨日の!ケンジ、さん、ですよね?」
「そうです。健司です」
すっ、げ……
諸星、お前すごすぎ。
やっぱ持ってるな?いや、持ってるのは俺か?
もうこの際どーでもいい。
会えた、また。
「すみません、下の名前しかわからなくて……馴れ馴れしくなっちゃいましたね」
「いえ、健司でいいですよ。でもあれかな、犬のケンジくんと混ざるかな」
「ふふ、そうですね。ね、ケンちゃん、どうしよっか?」
彼女が昨日一瞬会っただけの俺のことを覚えていてくれた。
笑ってる。昨日可愛いなって思った笑顔で。
「いつもこの時間に散歩してるんですか?」
「あ、いえ、仕事が休みの日だけで。普段は家族が」
ラッキーって、こういうことか?
俺だって昨日と今日だけだったのに。
これは、いくしかない?
いくしかねぇよな?
いけ。
いけ健司。
「あなたのお名前、聞いてもいいですか?」
藤真健司、人間、オス。
人生初の一目惚れ、絶対に成功させてみせます。
でけぇよ、声が。
「おう。さっきな」
「さっきっていつだよ!?」
「自分チから最寄り駅に向かってるとき」
今日は諸星とメシ。
諸星とはインターハイや国体んときに知り合って、コイツが東京の大学に進学してからはたまにこうやってメシを食うようになった。
神奈川から東京なら電車ですぐだしな。
愛知の星なんて仰々しい呼び方されてるけど、気取らないヤツでけっこー気が合う。
今日明日は大学入試があってお互い部活はオフ。牧も誘ったけど用事があるってことでサシになった。
「は?えっ?駅!?何で!?」
諸星って元気なヤツだけど普段こんなに慌てふためくようなタイプじゃないのに……
“さっきヒトメボレした”というワードはかなり衝撃的だったらしい。
「犬の散歩してる人が歩いてきてたんだけど、その犬が俺に向かって飛びかかってきてな、」
「こらっ!ケンジ!」
「!?」
「すみません!大丈夫ですか?」
「あ、ハイ」
「この子、若い男の人が好きで……」
「はは、そうなんですね」
「オスなんですけどねぇ。ね、ケンジ」
「僕も健司なんです」
「ええっ!?ケンちゃん、お兄さんもケンジさんなんだって!」
「ちなみに家族にはケンちゃんって呼ばれてます」
「えーっ!あはは!すごい偶然ですね!」
「ってコトがあった」
「すげぇ……漫画みてぇだな」
「だよな」
「それでアレか、運命感じたって?」
「そう」
今までの人生で一目惚れなんてしたことなかったのに。さっきの出来事は心臓を鷲掴みにされたみたいにギュウっとなった。インパクトがあったからっていうのもあるけど。
「可愛かった?」
「うん」
ちょっとしか喋ってないけど、笑った顔が可愛くて印象的だった。
飼い犬と普通に喋ってる感じも犬飼いあるあるなのかもしれないけど可笑しくて。
「で、どうすんの?」
「どう、って……」
「連絡先とかは?」
「ナシナシ。すぐ別れたし」
「えー、ヤバイじゃんかよ」
そう、ヤバイ。
一瞬の絡みだけで、あの人がどこの誰なのか何も知らない。
知ってるのはあの犬の名前がケンジってことだけで。
犬の散歩してるくらいだからあのエリアに住んでるんだろうけど……
でも親戚の犬の散歩してた可能性だってあるしな…
「また同じ時間に通るのが一番可能性あるか…」
「あ、ランニングの時間色々変えてみるとかは?」
「俺も実家で犬飼ってるんだけどさ〜」
諸星は、俺とあの人がまた出会うためにはどうすればいいかとあれこれ考えながらブツブツ言っている。
「おい、藤真聞いてるか?」
「聞いてる。サンキューな」
いーヤツだな、諸星。
「お前彼女とは?順調か?」
「うん、順調」
「結婚してぇって言ってなかった?」
「言ってた。早くしたいな〜」
「お前が愛想尽かされなきゃだろ?」
「うるせぇよ。まあ、そうだな」
「まだ若いし他にイイ人がいるかもとか思わねぇの?」
「思わねぇ」
諸星の彼女に初めて会ったとき、正直ちょっと意外だった。
もちろん可愛い子だと思ったけど、諸星が付き合うのはもっと派手な女を想像していたからだ。
「諸星って小動物系が好み?」
「いや、料理上手なコが良かった」
「ステレオタイプだな」
「メシは大事だろ」
「まぁな」
「藤真は?」
「フツーに、優しくて可愛い子とか?あんまりこだわりとかねぇな」
「藤真ならよりどりみどりだろ」
お前もな、と言いかけてやめた。
コイツはもう決めた相手がいるのだから野暮ってもんだ。
諸星にとってはあのコが一番なんだよな。
そういえば自分の好きなタイプなんて今まで深く考えたことがなかったかもしれない。
そもそも自分は恋愛にそこまで頓着ない方だと思う。
全く恋愛をしてこなかったワケじゃないけど、いつでもバスケ優先だったし、こんなこと言うのはアレだけど女性の方からアプローチされてきたから……
「もし俺があの人とまた会えたとしてもうまくいくとは限らないよな?」
「そりゃ、まぁな。彼氏いるかもしれないし」
「だよなぁ」
世の中の恋愛への興味ってすごいもんな……
彼氏……普通にあり得る話だ。
「運良く彼氏がいなくても好みじゃないとか言われたらどうしよ……」
「その顔のヤツが言うセリフじゃねぇな」
「牧みたいなのが好きかもしれねぇじゃん」
「あはは!牧!かもな!」
そうなったらお手上げじゃね?
ワイルド系の需要ってどのくらいあるんだろ…
「そもそもお前そんなネガティブなタイプじゃねぇだろ?」
「そうだけど……俺って意外と慎重なのかも。今思った」
「二面性あるよな。監督時代の名残り?」
「なるほど、そうかもしんね」
「ま、頑張れよ。ケンちゃん」
翌日、諸星のアドバイス通りに昨日と同じ時間に駅までの道を歩いてみることにした。
諸星いわく犬の散歩の時間は決まってることが多いそうだ。
ケンジ、頼むぞ。同じ名前のよしみだろ。
俺とあの子をもう一回会わせてくれよ。
………つってもな、そう簡単に会えたら苦労はしねぇよな。
現実は甘くないことを今までの人生で嫌ってほど知っているだけに、あの子とまた会える確率はそこまで高くはないだろう。
期待しすぎないよう自分に念押ししながら歩いていると駅の建物が見えてきた。
ああ、やっぱりな。ま、こんなもんだろ。
普段は大学があるからこの時間にこの道を歩くことはほとんどないし……
あとできることは夜のランニングでこの辺を走ってみるくらいか。
ハァ…短い恋だったな。
「こんにちは!」
「あ、」
半ば諦めモードで歩いていた俺の背後から声をかけられて振り向けば、そこには昨日の女性が立っていた。犬を連れて。
「あの、昨日の!ケンジ、さん、ですよね?」
「そうです。健司です」
すっ、げ……
諸星、お前すごすぎ。
やっぱ持ってるな?いや、持ってるのは俺か?
もうこの際どーでもいい。
会えた、また。
「すみません、下の名前しかわからなくて……馴れ馴れしくなっちゃいましたね」
「いえ、健司でいいですよ。でもあれかな、犬のケンジくんと混ざるかな」
「ふふ、そうですね。ね、ケンちゃん、どうしよっか?」
彼女が昨日一瞬会っただけの俺のことを覚えていてくれた。
笑ってる。昨日可愛いなって思った笑顔で。
「いつもこの時間に散歩してるんですか?」
「あ、いえ、仕事が休みの日だけで。普段は家族が」
ラッキーって、こういうことか?
俺だって昨日と今日だけだったのに。
これは、いくしかない?
いくしかねぇよな?
いけ。
いけ健司。
「あなたのお名前、聞いてもいいですか?」
藤真健司、人間、オス。
人生初の一目惚れ、絶対に成功させてみせます。
