緑の黒髪
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「ねえグリム、後ろ変じゃないよね?」
「ふな〜!もう聞きあきたんだゾ!」
ユウは鏡の前でくるくるとその場を回転しながら、心配気に眉を下げながらグリムに問いかけた。
今ので4度目の同じ問に、グリムは飽き飽きと返す。
先程からずっとこうなのだ。固定鏡しかなく、合わせ鏡で背後の姿を見ることが出来ないため、監督生はしきりにグリムに確認するのだ。
いつもならば手ぐしで下ろしたままの髪型か、体力育成の時は軽く1つに纏めた程度であったし、このように身嗜みをグリムに見てもらうことなど例のヤバい人魚に会う時に1度確認するくらいだ。
ゆるく編んだ三つ編みのお下げ。今まで寝癖程度なら多少放っておいたそれを、今日は気になって仕様がない。そこでひと騒ぎ。結んでしまえば分からないと2つに結べば今の確認祭りだ。まあ、そこはなんだかんだ面倒みの良いグリムである。昨日、酷く落ち込んでいた子分が今日になっていきなり元気を取り戻したのだ。親分は子分を見守ってやるもの。グリムは何かあったのか問うことも無く、気にしない振りをしてやり、分け目から零れていたはみ毛を、てしてしと肉球で抑えてやった。
監督生はお礼を言うとまた慌しく鏡面と睨めっこをしながら髪を結直した。
「いけない、もう時間だわ!グリムごめんね、行こ!」
2人は行ってきます、と早歩きでドアまで駆ける。ゴーストたちの見送りに手を振った。
「雌は毛並みばっかり気にして。理解できないんだゾ」
「まあ!そんなこと言って。髪は女の命って言うほどだから気にして損はないと思うけど。
ああ、それと。私今日からバイト探そうと思うの。作り置きはするけど、お夕飯1人で食べてもらうこと増えちゃうかも。お金が溜まったらグリムにも毛並ケアのオイル買ってあげるね」
「そんなんよりツナ缶の方がいいんだゾ〜……」
オンボロ寮の閑静な道から校舎に進むにつれ、人数が増えていく。
いつもの場所、いつもの時間、マブの2人と一緒に待ち合わせ登校。その日も時間通りに、2人は寮の鏡の前で手を振って出迎えた。
「はよー。ってか、今日珍しいじゃん。どったの?」
「おはよう、監督生。グリム。いつもと雰囲気が変わるな…。似合ってる」
「おはよう。ありがとう!さすがにちょっと身嗜みに気をつかおうかと思いましてね……」
いいじゃん!似合う。可愛いな!と、2人は口々に褒める。
何だか元の世界よりもこう、褒め方がオープンで、嬉しいんだけど恥ずかしいわコレ。普通に三つ編みしただけなんだけど。ユウは所在なさげにお下げにした三つ編みを摘んだ。
照れながらもなんとかお礼を言い流す。
今日の大きな目的は放課後だ。足取りは軽く。まずは授業をこなすべく、鞄を抱え直して教室に向かった。
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