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時は平安。

18歳の鳥羽上皇に仕える女官がいた。

その女官はとても美しく博識であったため寵愛されていた。

その名は玉藻前。

よく働き、美しい彼女を悪く思う人など誰一人としていなかった。


玉藻前が仕えてからしばらくすると、上皇は次第に病に伏せるようになった。

朝廷の医師にも原因はわからない。

「上皇様……」

上皇の家臣達は陰陽師の安倍晴明に依頼して占ってもらった。

「天竺（てんじく）では、班足王（はんぞくおう）の后となり、中国では、殷の紂王（ちゅうおう）の后、妲己（だっき）と名乗り、また、周の幽王 の后、褒姒（ほうじ）と名乗り、ことごとく王を惑わし、国を滅ぼした白面金毛、九尾の狐！……今、日本に来て、名を偽り、玉藻と名乗る！」

晴明が真言を唱えると玉藻前は苦しみ悶えた。

すると、その姿は九つの尻尾があり、真っ白の毛並みが美しい狐に変化した。

玉藻前は宮中を脱走し、天空へ逃げ去った。


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