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3月21日

命令も無いのに百足を飛び出し黄泉の周りをみっちり取り囲んだ野郎共を押し退け蹴飛ばし、軀はようやく人垣の中心へと抜け、黄泉と対面した。

黄泉は躯が目の前に来たのを認めると、にわかに表情を輝かせた。

「軀!」

「黄泉……」

彼が手に風呂敷包みを掲げているのが目に留まった。もしかして、もしかしなくてもそれは……。

嫌われてはいなかった、忘れられてもいなかった!

軀は今すぐにでも黄泉に思い切り抱きつきたいくらいだったが、部下の手前、ドスの効いた声色で彼に訊ねた。

「黄泉……何しに来たんだテメェ」

すると黄泉は風呂敷をほどき、熨斗の付いた箱を取り出した。

「いやあ遅くなってすまない。これ、ホワイトデーの」


「何!」
「ホワイトデーだと!」
「ホワイトデー!」
「ってもうとっくに過ぎたんじゃ」
「バレンタインのお返し!?」
「ということは軀様は黄泉にバレンタインチョコをあげたと」

兵士達のざわめきに、軀は顔が熱くなった。

何も、こんな衆人環視の真っ只中で渡してくれなくても……!

「黄泉ぃ…貴様というやつは……っっっ」

「えっ」

「有り難いぜコノヤローーー!」
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